雪:ダンからベエルシェバまで 2015.2.20

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4628929,00.html

予報されていた通り、イスラエルでは、北部ゴラン高原で木曜朝から雪が降り始め、だんだん南下して、金曜朝までには、ベエルシェバやアラッドなどネゲブ地方にまで雪が降った。

エルサレムでは、これまでに何度かオーバーすぎる雪警報があっては肩すかしとなっていたが、今回は、本当に本降りとなり、金曜朝9時現在で20センチの積雪となっている。時々ひょうになりながらも、まだ雪が降り続いている。

朝起きて窓を見ると、ひさしの下で鳩が丸くなって固まっていた。凍死しているのかと思ったが、ちょっと窓をさわると首を動かした。

テレビでは、普段なら買い物客でごったがえすマハネイヤフダ(市場)の店のほとんどが閉まったままになっている様子を報じていた。安息日入りの金曜に店が閉まるのは15年ぶりだと、開店しているわずかな店の店主。

路面電車は走っているが、バスは停止している。エルサレムに続く1号線、443号線は状況に応じて閉鎖を繰り返している。死海への道路90号線では、道路上に大きな穴が発見されたことと、鉄砲水の危険性もあるため、通行止めとなっている。

学校は休み。積雪のある地域ではすべての遠足も中止。家族そろって、家にこもる週末というちょうどよいパターンになった。

北部ではすでに先週から雪が降っていたが、今回の雪嵐で、昨夜妊婦を乗せた救急車が立ち往生となり、救急車の中で女の子を出産させた。生まれたあと、救急車の外で踊り回る男性家族たちの様子が伝えられた。

雪はこのまま土曜から日曜朝まで続くとの予報である。

それでも祈る!雪の嘆きの壁中継
www.jpost.com/Israel-News/WATCH-Western-Wall-blanketed-in-white-as-snowfall-begins-in-Jerusalem-391615

<みごとな準備態勢>

今回、エルサレムでは、雪に備えて除雪車を230台準備。道路にまく塩も1500袋準備。

皆が一斉に電気ヒーターを使うので、予想される電力は最大12000メガワットだが、13500メガワットまでは準備しているという。万が一に備えて発電機の準備もできている。今のところ、電気もインターネットも停止している地域は報告されていない。

一般市民は、木曜までに食料も水も買い込んでいる。一人くらしの高齢者や、ホームレスには、市がヒーターや暖かい食事の提供をはじめる。また緊急救援のためのホットラインの準備も完了している。

雪は当然、パレスチナ自治区にも降っている。パレスチナ自治政府も、雪に備えて緊急センターを設置。外出を控え、車を運転しないよう指示を出している。つまりテロはない。

というわけで、テレビのレポーターの様子を見ていると、「雪です!ヒャッホー」である。

<イスラエルをおおう”極端”気象>

イスラエルは今年の冬、相当”極端”な気象が続いている。ほんの2週間前は、平均気温を上回って2-3週間早い花の開花だったのが、今は、平均気温を下回る氷点下の雪である。

ハイファ大学の気象専門家は、イスラエルは、まるでジェットコースターのような”極端”気候にみまわれていると語る。この不安定な気候は3月から4月まで続くという。

また今冬の特徴は、雨が多いということ。北部では、先週からの雪で、ガリラヤ湖の水位が4センチ上昇。昨夜からの雪だけで、1.5センチ上昇したという。現在の水位は212.35センチとなっている。

カイザリヤで金貨2000枚発見

www.bbc.com/news/world-middle-east-31517433

カイザリヤ沖の海底で、金貨2000枚がダイバーによって偶然発見された。イスラエル史上最大のお宝発見ということで、BBCや日本でもニュースになっていた。

金貨は、エジプトのファーティマ朝で使われていたもの。ファーティマ朝は、969年から、イスラエルを支配し、国中の教会を徹底破壊したスンニ派イスラム王朝である。その後、十字軍が来る1099年まで、ファーティマ朝は、エジプトを拠点に、イスラエルを支配した。

ファーティマ朝は、ヘロデ王が建築した地中海の人口港カイザリヤにも駐留軍を置いていた。

金貨は、その兵士たちに配る給料だったか、裕福な商人の財産だったか、いずれにしても船が転覆して海中に眠ることになったとみられる。今後の研究で詳しい事がわかってくるはずである。

IAA(イスラエル考古学庁)によると、この金貨の価値は計り知れないほど大きいという。しかし、もちろん、イスラエルの法律では、こうした考古学的資産を販売することは禁じられている。金貨は国の財産ということになり、発見者への謝礼はない。

2年前の投石テロ被害者少女(4)死亡 2015.2.19

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4628171,00.html
 
2年前、アデル・バイトンちゃん(4)は、母親の運転する車に乗って西岸地区入植地アリエル付近を走行中、パレスチナ人に石をなげつけられ、重傷となった。その後、療養を続けていたが、先週末から肺炎に陥り、昨夜死亡した。

今日、冷たい雨が降る中、アデルちゃんの実家がある町で、数百人が参列して、傘をさしての悲しい葬儀が行われた。アデルちゃんの町のラビは、「4才の子供について何を語れというのか。笑うことを学んだところだった。」とやり場のない思いを語っている。

ISISに対して奮闘するペシャメルガ(クルド人勢力)2015.2.19

残虐性がだんだんエスカレートするISISだが、今度は西イラク地方の町で、45人を行きたまま焼殺したと地元警察が報告した。殺害されたのは、イラクの治安部隊とも考えられるが、確定はできていない。

しかし、地上では、有志軍とともに戦うクルド人勢力が、奮闘している。BBCによると、クルド人勢力は、これまでにISISにとられた領地をだいたい奪回したもようである。

また、数週間前、激戦地となっていたコバネも奪回したと伝えられていたが、2月2日付けで、BBCのテレビクルーがコバネ内部の様子を報じていた。町は完全破壊といってもよいほど破壊と激戦の後となっている。

www.bbc.com/news/world-middle-east-31088684

殺戮と破壊。これはもうサタン的といってもよいだろう。祈りで戦うときである。

寒い週末に備えるエルサレム~スーパーのひとこま~ 2015.2.19

イスラエルでは明日から週末にかけて、気温がかなり下がり、北部を中心にエルサレムでも雪になる可能性も0ではないとの予報になっている。大学の明日の夜の授業はキャンセルになった。

今日午後、スーパーに行くと、普通ならすいているはずの時間帯なのに、レジには相当な列・・・。カートもかごもなくなっている。店員にきくと、全部使われているとのことで、かわりに段ボール箱を与えられた。

外には車が列をなして、駐車場入りを待っている。客の女性に聞くと、皆、明日からの寒波に備えて、買い込んでいるのだという。

それにしてもイスラエル人の買い方は、アメリカ人以上かもしれない。大人が2人は乗れるカートに、文字通り山のようにてんこもりで買っている。日本人と比べるなら、5倍以上買っている人も普通にいる。

イスラエル人の食べる量は、日本人の3倍ぐらい、いやもっとなので、これだけ買っても、おそらく1週間後には、すっかりなくなっているのだろう。ちなみにイスラエルの物価は、野菜果物以外は、日本以上である。

<イスラエル一の激安スーパー・ラミレビ>

ところで、イスラエルで最も安いスーパーは、やっぱり、全国チェーンのラミレビ。社長の名前そのものの店名なのだが、これがそうとう”勉強”している。他店より、一品一品、ほぼ2-3シェケル(60-90円)安い。中には軽く5シェケル(150円)安いものもある。

さらに!メンバーズカードというものがあり、そこからさらに割り引いてくれる。最近、銀行残高で問題を起こさないということで、新しくグレードアップされたカードをもらった。それを元にラミレビ・メンバーズカードを手に入れることができた。

支払ったあとのレシートをみてびっくり。メンバーには、トイレットペーパーなど特定の数点の商品にメンバー割引がついていたらしく、合計21シェケル(約630円)も割り引かれていた。これは混むはずだ。

様々な種類のユダヤ人客がそれぞれの世界に入った状態で、ところせましとショッピングしているラミレビ。その横で、私語をつつしまない店員たちが、豪快なアラビア語で、商品を出し入れしている。レジをうっている女性もアラブ人がほとんどだ。

なんやかんや言って、日常生活では、ユダヤ人とアラブ人はけっこう、共存しているのである。

コプト・クリスチャン21人斬首:エジプト軍リビアのISIS空爆  2015.2.17

北アフリカのリビアには、エジプト人のコプト・クリスチャンが多く出稼ぎに来ている。その人々をイスラム過激派が昨年末から1月にかけて次々に誘拐。昨日、ISISが、このうちの21人を、「十字軍だ」として、斬首する映像を公表するに至った。

これを受けてエジプトのシシ大統領は、直ちに厳しい報復を行うと宣言。今日、リビア領内のデルナにあるISIS関係施設への空爆を実施した。空爆は、リビア政府との協力で行われており。リビア空軍機もエジプトに続いて空爆したと伝えられている。

この攻撃でISIS戦闘員40-50人が死亡したとみられている。

<エジプト国内の様子> www.bbc.com/news/world-middle-east-31494806 

今回殺害された21人のコプト・クリスチャンのうち、13人は同じ町の人々だった。映像を見て家々から悲しみの叫びがあがったとBBCは伝えている。

シシ大統領は、カイロ市内のコプト教・マルコ聖堂を訪問し、クリスチャンたちを慰めるとともに、「エジプトは世界諸国と、同じ目標を持ち、非道なイスラム過激派グループと戦う。」と伝えた。

BBC(エジプト人記者)によると、エジプトのイスラム教の最高権威(スンニ派)が、「このような野蛮な行為はイスラムを代表するものではない。」として、エジプト政府の空爆を支持している。http://www.bbc.com/news/world-middle-east-31483631

しかし、シシ政権は、国内の安定をはかるため、強大なエジプト軍を背景に、シナイ半島などで、イスラム過激派の掃討作戦を展開中だ。

今回のISISとの戦いへの介入が、エジプト国内のイスラム過激派との戦いにどのような影響が出て来るか注目されている。

*コプト・クリスチャン

エジプトのキリスト教はマルコがエジプトを訪問したところから始まっている。東方系教会(ギリシャ正教など)の一つであり、儀式も、東方系キリスト教会に類似する。独自の法王を持つ、。

エジプトはアラブの春以来、経済が非常に悪く、仕事がない。特にクリスチャンには仕事はない。リビアはイスラム過激派が勢力を伸ばしており、非常に危険であることは知られていたが、コプト教徒にとってはリビアが唯一の出稼ぎ国だった。

<リビアに勢力伸ばすISIS>www.bbc.com/news/world-africa-31113659

リビアは2011年に、長年国を支配して来たカダフィ大佐が失脚。一時、非イスラム主義の政府が立ち上がるかに見えたが、すぐに転覆。以後、イスラム過激派が、ダルマ付近を中心に勢力を伸ばしてリビア政府は弱体化しており、内戦状態といえる。

そのダルマで、昨年10月、過激派勢力が、ISISの傘下に入ることを宣言。ISISの”カリフ”もこれを歓迎する声明を出し、ISISの旗が堂々とはためく状態になっていた。以来、リビアでは多数の犠牲者を出すテロ事件が数々発生している。

欧米諸国は、ISISが活発になり始めた昨年からすでに大使館を引き上げている。今回の事件を受けて、最後に残っていたイタリアも、大使館を閉鎖して職員を帰国させた。

アフリカでは、この他にもナイジェリアで勢力を伸ばすイスラム過激派ボコ・ハラムがISISの傘下に入ったと宣言している。ボコ・ハラムの脅威が大きいとして、ナイジェリアでは、大統領選挙を延期するほどである。

ISISは、無政府状態か、政府があっても無力になっている国々をその支配下に入れる政策をすすめることを明らかにしている。シリア、イラクからアフリカにも支配域を広げつつあるようである。

<リビアから決死の脱出:地中海で少なくとも300人死亡>

混乱をきわめるリビアから、決死の覚悟で対岸のイタリアへ行こうとする難民が2014年から急増している。難民は、小さなボートに過剰に乗っているため、途中で難破し、大勢が溺死するケースが多い。国連によると、昨年だけで3500人が途中で死亡した。

先週も多くの船に分かれて数百人がイタリアへ向かっている中、4隻が不明で、少なくとも300人が死亡したと可能性が高まった。イタリアが救出に向かい、これまでに2000人もの難民が救出された。

北アフリカからの難民は、一番近いヨーロッパ、イタリアに集中している。イタリア政府はこれに対処しかねており、EUも協力するべきだと訴えている。

移住を断るデンマークのユダヤ人コミュニティ 2015.2.17

昨日、ネタニヤフ首相が、デンマークやヨーロッパのユダヤ人に集団移住をすすめたことは昨日、お伝えした通り。

これに対し、デンマークのユダヤ人コミュニティは、その申し出に感謝しつつも、「私たちはユダヤ人だが、デンマーク人だ。テロに屈しての移住はしない。」として、移住はしないと返答した。

デンマークの首相も、「デンマークのユダヤ人はデンマークに所属する」として、デンマークから出て行かないようにと語った。

ヨーロッパのユダヤ人に集団移住呼びかけ:ネタニヤフ首相 2015.2.15

デンマークの主都コペンハーゲンで発生した銃撃テロ。14日(土)、言論の自由を訴える集会を開催していたカフェへが銃撃され、市民1人が死亡したのに続いて、その夜15日深夜過ぎに、シナゴーグが襲撃され、ユダヤ人のボランティア警備員1人が死亡。警察官2人が負傷した。

被害にあったシナゴーグでは、この日、80人が出席して、バットミツバ(12才女子の成人式)が行われていたが、幸い、襲撃は内部にまでは至らなかった。犠牲となった警備員は、ダン・ウダンさん(37)。母親がデンマーク人、父親がイスラエル人だった。

犯人は犯行後、徒歩で逃亡。大規模な捜査が行われていたが、数時間後、家に帰って来た犯人を警察が呼び止めたところ発砲したため、その場で射殺された。2件の銃撃事件が同一犯によるものかどうかはまだ確定していないが、可能性は高いとされている。

朝のカフェで標的になったと思われる人物は、預言者モハンマドの風刺画を書いた人物であり、以前から殺害予告されていたことと、その後、襲撃されたのがユダヤ機関であったことから、政治的背景、つまりはテロとの味方が強まっている。

コペンハーゲンでは、現在、相当な数の警察官を配備して警戒態勢を続けている。

バットミツバに出席していたラビは、「ユダヤ関係施設の警備強化は、以前から訴えてきた。パリでの銃撃事件のあと、警備は強化されたが、十分ではなかった。」と語っている。

Yネットによると、デンマークにいるユダヤ人は7000人。このうち5000人がコペンハーゲンにいる。デンマークでの反ユダヤ主義は、昨年のガザ紛争以来、特に悪化しているという。

<リーバーマン外相・ネタニヤフ首相コメント>

リーバーマン外相は、事件を受けて、「イスラム過激派と、欧米。自由社会との戦いにおいては、まずユダヤ人が狙われる。ユダヤ人がこの戦いの最先端にいるからだ。各国は、非難決議やラリー(デモ行進)ではなく、イスラム過激派を根から壊滅させる対策を講じるべきだ。」と訴えた。

ネタニヤフ首相は、今週の閣議開始にあたり、「ヨーロッパで、再びユダヤ人が、ユダヤ人だからという理由で殺された。ヨーロッパでのこうした反ユダヤ主義行為は、これからさらに悪化すると思われる。

各国が治安強化をはかることは大切だが、ヨーロッパのユダヤ人は、大挙してイスラエルに移住すべきだ。」との声明を出した。またネタニヤフ首相は、ヨーロッパとウクライナの移住促進プログラムに新たに1億8000万シェケル(約54億円)の計上を議論するとしている。

www.jpost.com/Israel-News/Netanyahu-to-European-Jews-Terror-attacks-in-Europe-will-continue-Israel-is-your-home-391049

ユダヤの家党のナフタリ・ベネット党首は、「ヨーロッパでのイスラム過激派の台頭に大変懸念している。イスラエルはユダヤ人社会の自衛をある程度助けることはできる。しかし、ヨーロッパにいるユダヤ人の保護の責任は、最終的にはその国の政府にある。

イスラエルがいつでも受け入れる用意をして待っていることを知らないユダヤ人はいない。ユダヤ人自身が、こうした攻撃は単発ではないことに目覚め、イスラエルへ帰還することを決めなければならない。」と語った。

また、「国際社会は、自由世界の最先端で戦っているイスラエルを助けるべきであって、その手を縛り上げることではない。」とも語っている。

エルサレムからウクライナを覚えて 2015.2.15

東ウクライナで、親ロシア派が、激しい攻撃を行い、多数の市民に犠牲が出ている問題。先週、フランスとドイツが仲介に入り、ロシアのプーチン大統領と、ウクライナのポロシェンコ大統領が、連続16時間の徹夜交渉を行った。

結果、なんとか合意に至ったものの、停戦ぎりぎりまで親ロシア派の攻撃が続き、合意は履行されないのではないかと懸念された。その停戦に昨夜から入り、なんとか今のところ砲撃がない状態だという。しかし、まだまだ予断は赦さない状況だ。

www.bbc.com/news/world-europe-31475744 (すごみの表情で停戦遵守を訴えるポロシェンコ大統領)

イスラエルにはウクライナから移住し、家族を東ウクライナに残して来ている人が多数いる。エルサレムアッセンブリーの0さん夫妻は娘と息子が渦中にあるという。ウクライナ政府、東ウクライナの人々、特に教会を覚えて、エルサレムでも祈りがささげられた。

この他、イスラエルで働くクリスチャンのEさん夫妻は娘がアフリカのチャドでの働きに行っているという。

アフリカでは、ナイジェリアのイスラム過激派組織ボコハラムが、ISISの傘に入ったと宣言し、ますますの暴力と勢力を拡大している。数日前には、ボコハラムが、隣のチャド領内を襲撃したとのニュースが入っている。このためにもエルサレムから祈った。

冬・低気圧再び 2015.2.13

イスラエルでは先週、全国的に平均気温より高く、春の花が2-3週間も早く開花。エルサレムでも最高気温24度まで上がった。

ところが予報されていた通り、今週11日からは、冬の嵐となり、エルサレムでも冷たく強い風が続いて、今日もまだ平均気温より低い最高気温7度。最低は2度。11日には、一瞬だが、ひょうも降った。

ヘルモン山や、北部では、雪が今もつもっている他、ネタニヤなど北部では、雨で冠水している様子がテレビで報じられている。 
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4625663,00.html (11日)

選挙一色・イスラエル国内 2015.2.13

イスラエルでは、3月17日の総選挙に向けて、主に右派ネタニヤフ陣営と、左派労働党ヘルツォグ・リブニ陣営が激しい論争を繰り広げている。

選挙名簿が出そろった時点では、ネタニヤフ陣営の支持率が落ちて、ヘルツォグ陣営が優勢だった。しかし、先月、イスラエル軍がイランとヒズボラの前哨地点とみられる地点を攻撃して以来、再び右派ネタニヤフ陣営が逆転するに至った。

この攻撃で、「イスラエルには危機がある。左派のようにパレスチナ側への譲歩をしていたのでは危ない。思い切った防衛をする政府が必要だ。」と考える国民が増えたためである。しかし、ヘルツォグ陣営も、まだまだ負けていない。

次なる論点は、ネタニヤフ首相が、アメリカ議会の招きに応じて訪米し、総選挙2週間前の時点で、議会でイランに関する演説をするかどうかという点である。

<アメリカとの関係が崩れる!?>

今回の議会への招きは、ホワイトハウスのオバマ大統領から出たものではない。

オバマ大統領は、イランの核兵器問題について、これまで伸ばし伸ばしになっていた交渉期限”目標”3月を遵守する方針を明らかにしている。課題は残るが、何らかの譲歩点をみつけて、この問題に一応の区切りをつけたいということである。

いったん、イランとの合意が成立してしまった場合、これを覆すことは不可能である。ネタニヤフ首相は、オバマ大統領と対立する議会に訴えてでも、イランとのいかなる譲歩も成立させないようにしたいと考えているのである。

しかし、ホワイトハウスの方針に反する演説を、ホワイトハウスに対立する議会で行うということは、完全にオバマ大統領に反旗を翻すことを意味する。

実際、ネタニヤフ首相がアメリカを訪問する際、オバマ大統領は面会しないと伝えている。バイデン副大統領も、他の予定ということでネタニヤフ首相には会わない方針である。

イスラエルでは、「決断を下すのはオバマだ。議会ではない。ネタニヤフ首相は、アメリカを敵にまわしてイスラエルを危機に陥れようとしている。」といった意見まで出ている。

時期が選挙2週間前ということも問題とされる。イスラエルだけでなく、アメリカ国内でも、双方の内政干渉になりうるとする意見が出ている。しかし、いずれにしてもネタニヤフ首相は訪米するつもりのようである・・・。

イラン・ヒズボラのあやしい動き 2015.2.13

先月18日、イスラエルがゴラン高原シリア側への空爆で、ヒズボラとイランの戦闘員12人を殺害したが、懸念されていた通り、そのイランとヒズボラが、シリア南部、ゴラン高原イスラエル側に近くに新しい拠点を設立しようとする動きがあると伝えられた。

これを押さえようとしているのがシリア反政府勢力だという。エルサレムポストによると、反政府勢力は、ゴラン高原イスラエル側在住のドルーズを通じて、イランとヒズボラへの攻撃を再度実施すべきだ(つまりは反政府勢力支援)と、イスラエル軍に伝えたという。

www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Syrian-rebels-call-on-Israel-to-bomb-Hezbollah-Iran-Syria-positions-390896

もしこの情報が正しかった場合、放っておけば、ヒズボラとシリアは、レバノン南部に加えてシリア南部にも拠点を持つ事になる。シリア南部の拠点は、まずはISISやシリア反政府勢力を牽制するためと思われるが、将来のイスラエル攻撃の拠点にもなりうる。

イスラエルも諜報機関を最大限に働かせて、早期の情報収集につとめているものと思われる。

<カオス状態のシリア>

ここでシリアがいったいどうなっているのかをみてみよう。シリアの内戦は、もともとアサド大統領に反政府勢力(スンニ派)が対立してはじまったものだった。

そこへ、アルカイダに続いて、ISIS(イスラム国)といったスンニ派の過激派が混乱に便乗して、自らの勢力を拡大するために、”反政府勢力への加勢”という名目で、シリアに入り込んで来た。

するとそこへシーア派のヒズボラとその背後にいるイランが、こちらもまた”アサド大統領への加勢”という名目でシリアに入り込んで来た。

今や、シリアが舞台となって、外国から来たスンニ派VSシーア派という形になっている。すると、国がこうした外国勢に荒らされるのを見て、シリアの反政府勢力が、今度はアサド政権側に立って、アルカイダやISIS、ヒズボラと戦い始めた。

つまり、シリア国内では、今やだれとだれが敵で、だれがだれに対して戦っているのかわからなくなっているということである。

その混乱の中へ、今、オバマ大統領が、ISIS(イスラム国)撲滅に向けて、地上戦を開始しようとして、議会への承認を要請している。シリアにいるのは、ISISだけではない。その他のグループは避けてISISだけ攻撃というわけにもいかない。泥沼にさらなる泥沼に陥る可能性もある。

オバマ大統領、相変わらず重責を追っている。

*ヨルダン軍パイロットが、ISISの捕虜になってから、有志軍への参加を控えていたUAE(アラブ首長国連邦)は、有志軍に戻り、ISISへの攻撃を再開している。