大国支配に対立:テヘラン・サミット 2012.8.26

26日から、イランの首都テヘランで、非同盟国会議(NAM:Non-Aligned Movement)のサミットが開催される。

<大国支配に対立する勢力:非同盟国会議>

非同盟国会議(以後NAMと略す)とは、東西冷戦時代からの大国が支配する世界に対し、どちらの陣営にもつかないと宣言する国々の集まりのこと。弱小発展途上諸国の声を、国際社会に反映させることを目的として、1961年に設立された。

NAM参加国は年々増えており、現在、国連加盟国の3分の2を占める120カ国、世界人口の55%が参加していることになる。国連以外では最大の世界組織である。

NAMの発言力は、徐々に大きくなってきており、2009年、カイロでのサミットでは、”ニュー・グローバル・オーダー(新世界秩序)”樹立を宣言している。

NAMが対立するのは、アメリカ、ロシアといった大国だが、ヨーロッパ連合、イスラエルも含まれる。日本もNAM参加国ではない。一方、NAM参加国は、イランやエジプトなどの中東諸国やアフリカ諸国、中南米、アジアの国々。

また、NAMには、加盟国ではないが、オブザーバーが17カ国あり、その中に中国が含まれている。
(添付地図Wikipediaより:紺色部分は参加国 うすい青はオブザーバー国)

NAM地図

<最も対立的な国イランが議長国>

NAMの国際会議は3-5年に1度開催される。この8月26-30日の弟16回サミットは、今、核兵器開発問題で、世界とまっこうから対立しているイランの首都テヘランで開催される。今後3年はイランが議長国となる。会議ではシリア情勢にも言及するとみられ、注目されている。

*ブログ内取材記事「イランがめざすもの」参照

<テヘラン・サミットに参加するかしないかが問題となる人々>

1.バン・キ・ムーン国連総長

アメリカとイスラエルは、国連総長の立場でこのサミットに出席することは、イランに経済制裁を貸している国連の方針と逆行することになると、強く反対してきた。しかし、ムーン国連総長はその反対を押し切り、出席を決めている。

2.ハマスの指導者イスマエル・ハニエ

イランは、ガザ地区ハマスの指導者イスマエル・ハニエを会議に招いた。ハマスをテロ組織と認定するアメリカ西側諸国に対抗するものである。これで困るのがパレスチナ自治政府のアッバス議長。西側の支援なしには生きのびることができない。苦渋の決断だったと思うが、アッバス議長は、ハニエ氏が来るならサミットには出席しないと発表した。

今回、エジプトのムルシ新大統領も出席することになっている。エジプトもまた西側からの支援が必要不可欠だが、同時にイスラムの立場も守らなければならず、イスラエルとの関係も含めて、綱渡り状態である。

シリア:24日だけで、330人死亡(1日の死亡者数最大を記録) 2012.8.26

シリアで24日、1日の死亡者数としては最大となる330人を記録した。うち200人は、ダマスカス郊外で発見された遺体群の数。シリア政府軍が、激しい空爆の後、戦車と地上軍を投入し、反政府勢力とみられる市民を至近距離で殺害する”虐殺”を始めていると分析されている。

現在の戦況は、シリア政府軍がダマスカス中心部をおさえてじわじわと周辺へ反撃しているもよう。8月に入ってからの死者は3700人を超え、すでに一月の死者数では最大となった。周辺諸国への難民の数は、さらに増えて20万人。

イスラエル軍兵士の現状:憎しみのないところに憎しみがうまれる 2012.8.26

今朝、Yネットニュースに、一瞬出た記事(すぐに取り下げられたということ)。イスラエル人自身の調べによると、イスラエル軍に従軍した兵士約300人が、西岸地区での任務中、パレスチナの子どもたちへの暴力を経験したと証言。

たとえば、西岸地区ではいきなり、5才の子どもに銃をつきつけなければならないことがある。普通の家族たちを一つの部屋に押し込めて見張りをする、など。最初は、「何かおかしい」と思っていても、そのうちなれてきてしまう。そうしたことをしていても、パレスチナ人の石投げやテロはおさまらない。やがてなんのためにこんなことをしているのかわからなくなるという。

イスラエル人は、18-19才で徴兵され、十分な心理的準備がないまま西岸地区へ派遣される。憎しみに満ちたパレスチナ人の目をみるうちに、落ちこんで自殺するか、心に彼らに対する憎しみを持つようになると報告していた。

この記事からわかることは、まだ10代の若いイスラエル軍兵士が、自分も死ぬかも知れないという恐怖の中で、パレスチナ市民に対し、特に子どもたちに対して暴力をふるわなければならない、またふるってしまうことがあるということである。

それが、パレスチナの子どもたちだけでなく、イスラエル軍兵士の心にも重大な傷を残す場合があるということである。(*これは一部の兵士のことであり、すべての兵士に当てはまるものでないことに注意してください。)

憎しみのなかった心に憎しみが生まれる・・・。ちょうどリバイバル・ジャパンに、イスラエルの中高生と従軍したビリーバーの青年の証の記事を執筆したところでこの記事に遭遇した。次号リバイバル・ジャパンを参照にしていただければ幸いである。

シリアの化学兵器と米ロの対立 2012.8.23

シリアはサリンガス、マスタードガス、シアンガスなど、世界一の化学兵器保有国と言われる。これらが、反政府勢力に対して使われること、またアルカイダや、ヒズボラの手に渡ることが非常に懸念されるところである。

アメリカのオバマ大統領は、シリアのアサド政権に対し、「化学兵器の使用はもはや許容の限界を超えている。アメリカは注意深く監視している。」と、化学兵器使用時には軍事介入も辞さないとの意味合いを含む表明を行った。

ロサンゼルス・タイムスによると、アメリカは実際に、万が一の場合に備えて小さな規模のチームをシリア領内へ派遣する具体的な計画を立てているという。

<西側と共産圏の対立>

これに対し、ロシアのラブロフ外相は、安保理承認なしの、アメリカの単独軍事介入は認められない。」と牽制。ロシアはあくまでもシリアへの軍事介入には反対するもようだ。

するとイギリスが、アメリカに続いて、シリアの化学兵器に対する懸念を表明。アメリカ、イギリスに、フランスも加えた3首脳は、今後シリアのスムースな政権移行について協力する方向で電話会談を行った。

すると中国が、「西側は、化学兵器を理由に、軍事介入しようとしている」と非難。あくまでも国連の仲介による停戦を目指すべきと語っている。

<シリア現地では・・・>

こうしている間にも人は死んでいる。シリアでは、ダマスカスなどの激戦で、昨日も全国で180人以上が死亡。先日、日本人女性ジャーナリストの山本さんが死亡したが、今日もダマスカスでジャーナリストが一人死亡した。

これまでにシリアで死亡したジャーナリストや現地ブロガーは54人に上っており、シリア政府軍がメディア関係者を狙っているとの分析もある。

シリア国内には、支援がとどかない120万人の避難民がいる。先月だけで、国連は82万人もの人々に食糧支援をした。

シリア内戦、レバノンへ波及、死者7人 2012.8.23

レバノン北部とシリア国境の町で、レバノン第二の都市トリポリ(人口20万人・地図参照)で、昨日より、スンニ派イスラムと、シーア派イスラムのアラウィー派(アサド政権)が撃ち合いの戦闘をはじめた。これまでに7人が死亡。70人以上が負傷した。

トリポリは、シリアと同様、多数派のスンニ派イスラムの中に、少数のアラウィー派が住んでいる町。今回の戦闘は、昔からある軋轢に、シリア内戦が火をそそいだ形だ。

レバノンのミカリ首相は「よそ(シリア)の戦争にまきこまれないようにと警告してきた。愚かな争いは止めるように。」とトリポリの人々に呼びかけた。

シリアで日本人女性ジャーナリスト死亡 2012.8.21

時事通信によると、日本通信社アジアプレス所属のビデオジャーナリスト、山本美香さん(45)が、激戦地となっているシリアのアレッポで、政府軍の攻撃を受けて死亡した。遺体は自由シリア軍(反政府勢力)によってトルコに搬送され、在日トルコ大使館によって、身元が確認された。

山本さんは、山梨県出身。放送局の記者を経てフリーとなった。コソボやボスニア、アフガニスタンやイラク戦争など様々な戦地に出向いてビデオカメラで取材し、2003年には国際報道の分野で賞も受賞。気鋭のジャーナリストだった。

アサド政権は、最初から現在に至るまで、基本的に外国からのメディアの入国を拒否している。しかし、多くの命知らずのジャーナリストたちが、自由シリア軍(反政府勢力)の協力で潜入し、報道を試みている。

イスラエル防衛関係者が、超正統派のチーフラビにイラン攻撃を相談 2012.8.21

イランを攻撃すべきかどうかで揺れるイスラエル政府。ハアレツ紙によると、イスラエルの防衛関係者が、ユダヤ教超正統派チーフラビ、オバディア・ヨセフ師(91)を訪れている。

オバディア師は、いわば現在の大祭司的存在。イスラエル政府は世俗派だが、イラン攻撃に関しては、オバディア氏の賛同を得たいと言う者もあれば、そうでない者もいる様子。

オバディア師は先の安息日の説教において、「今イスラエルがどんな状況におかれているか知る必要がある。今は神の前に祈るときだ。」と語ったという。

一方、野党に転向したばかりのモファズ・カディマ代表は、イラン攻撃を推進するネタニヤフ首相に対し、「イラン攻撃は、益よりも害の方が大きい。いったいなんのためにイランを攻撃するのかその理由を説明せよ。」と首相につめよったという。

シリア情勢:国連停戦監視団撤退 2012.8.20

国連安全保障理事会の決定により、国連停戦監視軍300人が19日をもって撤退となった。内戦が激化する一方で、”停戦監視”の意味がなくなっているため。代わりに、今後の交渉拠点として、国連事務所がダマスカスに置かれる。

これまで停戦を目標に活動していたアナン元国連事務総長も8月末をもって辞任する。代わってアルジェリア出身のベテラン外交官ブラヒミ氏(78)が、戦闘停止に向けた努力を続けることになる。

国連停戦監視軍の撤退は、シリア市民にとっては強烈な「見捨てられ」感となる。またこれほどの無秩序に対して、国際社会は何もできないというメッセージを発することになり、戦闘が激しくなるだけでなく、世界的テロ活動を助長することにもなりかねないと懸念されている。

アラブ人リンチ犯行グループ逮捕 2012.8,20

先週木曜夜中過ぎ、エルサレムの目抜き通りシオン広場でアラブ人少年ら4人が、ユダヤ人少年らにリンチされた一件。被害者のアラブ人少年(17才)は重傷で、エルサレムのハダッサ病院の集中治療室で治療を受けている。意識は戻ったものの記憶喪失がある様子。あとの3人はのそのいとこで、軽傷のみ。

イスラエル警察は土曜、19才のエルサレム在住ユダヤ人少年を逮捕。続いて日曜、13,15,17才の少年3人と、15才の少女1人を逮捕した。いずれもユダヤ人。3人は、今も拘置所で拘束されているもよう。逮捕された5人は未成年であるため、刑務所には入らず、少年院などで対処されることになると思われる。

<週末前の夜は別の顔:エルサレム>

エルサレム新市街。日中は、観光客や親子連れ、高齢者が目立つ普通の町だが、夜、特に安息日前の木曜、金曜になるとまったく違う顔になる。バーなどが開かれ、通りには、10代とみられる少年少女が集中してたむろする。シオン広場には通常パトカーが配備される。(写真)その中で、ハバッド派などユダヤ教正統派が、”悔い改めへの伝道活動”している姿もみられる。

DSCN5641 (小)

通常、イスラエルの世俗派の若者の夜は遅く、夜10時以降に外出するのも普通。週末前の木曜(日本でいえば金曜)や金曜では、特に夜は遅く、そのまま朝方まで騒いでいる者も少なくない。当然アルコールや麻薬も出回っていると思われる。

<ネタニヤフ首相、アッバス議長に謝罪>

西岸地区でパレスチナ人のタクシーに手榴弾が投げ入れられた事件。被害者は重傷で、ハダッサ病院で手当を受けている。こちらの犯人はまだつかまっていない。ネタニヤフ首相は、アッバス議長にラマダン明け例祭の祝辞とともに、この一件について謝罪。犯人を徹底的に処罰すると伝えた。

しかしこの後にも、ユダヤ人がパレスチナ人の車に投石する事件が発生し、犯人はまもなく逮捕されている。

イランの悪口極まる:反イスラエルラリー 2012.8.18

www.youtube.com/watch?v=7AtwCJkZwOg 

イランのアフマディネジャド大統領は、テヘランでの反イスラエルラリーにおいて、「シオニスト(イスラエル)は人類のしみ。癌。細胞が(パレスチナに)一つ残っただけでも、また同じことの繰り返しになる。完全に消し去ってしまわなければならない。」と公言、悪口を極めた。

またレバノンのヒズボラは、「イスラエルの要所をロケット弾で攻撃する用意がある。ターゲットは少なくても、実行すれば大勢のイスラエル人の死につながり、イスラエルは地獄になる」と語った。これは、イスラエル南部ディモナにある核兵器(イスラエルはその所有を肯定も否定していない)保管地をさしているものと思われる。

ユダヤ人がアラブ人をリンチ 2012.8.18

16日夜、エルサレムの中心地シオン広場で、木曜夜、多数のユダヤ人の10代の少年たちが、3人のアラブ人少年(同じく10代)らに対し、罵声を浴びせて暴行を加え、一人は意識不明の重体となった。救急隊が駆けつけたときには、犯人らはすでに逃走していたが、目撃者によると、リンチのようだったという。

この前日、西岸地区ではパレスチナ人のタクシーに手榴弾が投げ入れられ、子ども2人を含む6人のパレスチナ人が負傷した。6人はエルサレムのハダッサ病院で手当を受けている。負傷者の証言によると、犯人は、キッパをつけた(ユダヤ人)若者たちだったという。

イスラエルの治安組織は全力を挙げて犯人の捜査にあたっているが、西岸地区ユダヤ人入植地の過激派であるとみられている。