続報・西岸地区情勢 2013.2.26

<ヘブロンの様子>

昨日ヘブロンにおいて、メギドの刑務所で死亡したパレスチナ人アラファト・ジャラダト(39)の葬儀が行われ、数千人が参列した。群衆はイスラエルへの報復を叫んだが、イスラエル軍との大きな紛争はなかった。プリムでにぎわう嘆きの壁の上に位置する神殿の丘も無事だった。

<ベツレヘムで少年2人負傷>

しかしベツレヘムでは、石投げをするパレスチナ人にイスラエル軍が実弾も使ったため、13-15才の少年2人が負傷した。うち1人は頭部外傷で重傷となっている。少年二人は現在、エルサレムのハダッサヘブライ大学病院(イスラエルの病院)で治療を受けている。

少年の家族らは、「息子はデモには加わっていなかった。息子はイスラエル軍に狙われたのだ。」と主張している。しかし、石投げをしているのは10-20代の若者がほとんど。負傷した少年らがその場にいながらデモに加わっていなかったとは言い難い状況である。

もしこの少年たちが死亡するようなことになれば、再び暴力に火がつくと懸念される。パレスチナの若者たちをおぼえてとりなしが必要である。

オバマ大統領の訪問日程 3月20-22日 2013.2.26

オバマ大統領のイスラエル訪問日程が、イスラエル政府プレスオフィスより発表された。来月20-22日。今回の訪問の目的は”Unbreakable Alliance(切れない同盟関係)”。

イスラエル・パレスチナを交渉のテーブルに戻すねらいもあると言われる。オバマ大統領は、エルサレムを拠点に、パレスチナ自治政府、ヨルダンも訪問する予定である。

しかし皮肉にも、オバマ大統領の訪問目的とは逆に、現在、西岸地区でパレスチナ人とイスラエル軍が衝突し、第三インティファーダの可能性すらある。アメリカ政府は双方に対し、すみやかな事態の収束を要請しているもようである。

国際社会対イラン:核対話始まる 2013.2.26

26日から、カザフスタンで、3回目となるP5+1(アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、ロシア、ドイツ)とイランが核問題で対話を行っている。国際社会は、もしイランが実質的にウランの濃縮を停止する手段を提示するなら、経済制裁を緩和すると言っている。

しかし、イランは会議に先立ち、最新の遠心分離器を導入したり、16基の新しい核施設を増設するなど、聞く耳まったく持たず状態である。

<シリア問題でも外向的努力>

新しく就任したアメリかのケリー国務長官は、イラン問題に加えてシリア問題でもまだ外交的解決の希望があるとして、改めて「アメリカは反政府勢力を支援する。」と述べた。

これを受けて、いったんは国際会議「シリアの友達会議」に欠席すると言っていたシリア連合は、気を変えて出席すると発表した。

イスラエル地対空迎撃ミサイル(アロー3)実験成功 2013.2.26

26日、イスラエルは、アロー2、アイアンドーム、ダビデの石投げ(長距離迎撃ミサイル)などに続いてさらに性能を伸ばすアロー3の飛行実験を行い、成功を収めた。

ネタニヤフ首相は、「イスラエルは常に平和的解決を求めているが、そうでない場合にも備えなければならない。」と語った。

今日、ヘブロン警戒態勢(日本時間今夜) 2013.2.25

先週からパレスチナ人の囚人らがイスラエルの刑務所でハンガーストを行って問題となっているが、23日土曜、メギドの刑務所でアラファト・ジャラダト(39)が突然の心停止で死亡した。

翌24日、ジャラダトの死因は、イスラエルの拷問だと主張するパレスチナ人らが、西岸地区各地でイスラエル軍に投石したり火炎瓶を投げるなどして衝突、負傷者も出て緊張が高まっている。

さらに本日、ジャラダトの葬儀が出身地ヘブロンで行われるため、再び暴動になる可能性が高いとみて、イスラエル軍はヘブロンはじめ西岸地区各地で高い警戒態勢に入っている。

<遺体の解剖検査>

ジャラダトは先週、暴動に参加していたことで逮捕されていた。その後の取り調べが拷問的であったかどうかが焦点となる。逮捕前のジャラダトは健康そのものだったと家族は言っている。

パレスチナ自治政府は、ジャラダトの死因解明のための解剖検査を要求。昨日、家族、パレスチナ人病理学者、自治政府法律関係者らの立ち会いのもと、遺体の解剖が行われた。

結果、遺体に外傷はなく、拷問の形跡はみられなかったとイスラエル政府は発表している。しかし、死因となる病的所見もなかったため、パレスチナ自治政府は死因は拷問だと主張し続けている。

<パレスチナ囚人のハンガースト>

昨日、ジャラダトの死に抗議して、全国でさらに4500人が同時ハンガーストに入っているという。(ただし最低48時間断食しないとハンガーストとは認められない)イスラエル政府は、パレスチナ自治政府に対し、こうした動きを収束させるよう要請している。

プリム:エステル記を読む日 2013.2.24

エルサレムでは24日日没より、25日の日没までプリムの例祭となる。祭日ではないが、学校は休み。シナゴグでは、エステル記を朗読し、イスラエルの敵「ハマン」という名が出るたびに、騒音を出す楽しい例祭である。

この例祭では、大人も子供も仮装して町に出る。パーティの日でもある。いろいろなイベントも催されるが、あいにく天気は悪いとの予想。

<エルサレムの講壇から>

23日、エルサレム・アッセンブリーでもプリムを覚える礼拝。メノー牧師より、「主がイスラエルを選んだと言われた瞬間から、イスラエルはサタンの抹殺の対象となった。確かに、諸国の中で、イスラエルだけが常に抹殺の危機におかれている。

しかし、その試みはいつも失敗し、そのたびにイスラエルには例祭が与えられた。エジプトのパロが来たときは過ぎ越し。ハマンが来たときはプリム。ヒトラーが来たときは、独立記念日。次、アフマディネジャド(イラン)が来たら、どんな祭りになるというのだろうか。もう祭りは必要ないと思うが。」と語った。

エステル記8:17日本語では、民がユダヤ人を恐れるようになったので、「ユダヤ人であることを宣言した。」と訳してあるが、原語では「ユダヤ人になった」または、「イスラエル(の神、または信仰)を信じるものになった」という意味。

「主のゆえに、イスラエルには逆らってはならないと歴史は語っている。しかし世界はそれを学ばない」とメノー牧師。自分の理解だけに頼み、主の前にへりくだらないことの危険性を語った。

イラン核施設増やして物議を醸す 2013.2.24

イスラエルと世界の懸念をよそに、高速度のウラン遠心分離器を導入しているイランだが、今日あらたに16基の新しい核施設を立ち上げる計画を発表。

同時にイラン革命軍の訓練を始めるなど、26日の世界との核会議の前に、いろいろと物議を醸すイランである。

神殿の丘、西岸地区各地、ナザレでもデモ・暴動 2013.2.24

エルサレムの新市街はプリムで平和にお楽しみムードだが、旧市街では22日金曜、イスラムの礼拝後、神殿の丘でパレスチナ人と警察が衝突した。石投げをするパレスチナ人に対し、イスラエル警察は、催涙弾などで対処した。

22日はヘブロンなど西岸地区各地でも同様の様相。23日、イスラエル国内のナザレでもアラブ人たちがデモを行った。
また23日には、西岸地区のユダヤ人入植者とパレスチナ人が衝突し、イスラエル軍が実弾を使ったため、パレスチナ人3人が負傷。1人は重傷となっている。

<衝突の発端>

デモの訴えは、イスラエルの刑務所にいるハンガースト中のパレスチナ人の解放である。ハンガースト中のパレスチナ人2人は昨日、病院に搬入されている。なお、これらのパレスチナ人は、テロ行為で刑務所にいるのだが、パレスチナ人の概念ではそれはテロではなく、民族解放運動なので、刑務所に入るのはおかしいというわけである。

<兵士を覚える祈り>

西岸地区にいるイスラエルの若い兵士たちを覚えてほしい。彼らは志願ではなく徴兵された普通の若者である。近距離で憎しみにみちたパレスチナ人の顔を見、石を投げられる。こうした拒絶の経験から、自殺する兵士もいる。身の危険だけでなく、心理的な打撃は予想以上である。

オスカーに、パレスチナ・イスラエル紛争のドキュメンタリーがノミネート 2013.2.24

本日ハリウッドでアカデミー賞(オスカー)の授賞式が行われるが、ドキュメンタリー部門で、イスラエルからの2作品がノミネートされている。

「壊れた5つのカメラ」は、パレスチナ人農夫撮影映像で、西岸地区でのイスラエルの占領政策を批判する。パレスチナ人とイスラエル人の協力作品。
予告編:http://www.youtube.com/watch?v=q_93nOqwmhU&feature=youtube_gdata_player

「ゲートキーパース」は、イスラエルの治安組織シン・ベトの大物6人のインタビューを含むドキュメンタリー。シン・ベトは諜報機関でもあり、その指導者らがインタビューに登場するのは初めてで注目されている。
予告編:http://www.youtube.com/watch?v=FWx0e7KXg0Q&feature=youtube_gdata_player

双方とも、イスラエル政府には批判的な作品。それがイスラエル人自身によって発表されることで、イスラエルがいかに民主国家で、言論の自由が認められた国かを証明しているとの解説もある。

切れたシリア反政府勢力:世界にさじをなげる 2013.2.24

3週間前、シリアの反政府勢力・シリア国民連合が、アサド政権との対話の可能性を示唆。アメリカもロシアもこれを歓迎し、それぞれが代表らをワシントン、モスクワに招いていた。

しかし、その後も、政府軍による空爆やスカッドミサイルで市民が続々と死亡。アレッポの町は徐々に完全破壊になりつつある。

23日、シリア国民連合は、2年以上もシリア人の虐殺に対処しなかった世界に怒りを訴え、来月ローマで予定されている世界諸国による「シリアの友達会議」を欠席すると発表した。

同時にワシントン、モスクワへの招待も断ると発表した。特にロシアに対しては、シリア市民を殺害している武器がロシア製であると、名指しで批判している。

シリア国民連合は、来月2日、アサド政権後の暫定政権を発表する予定だったが、これで国際的な支持を得られるかどうか疑問となった。シリアの混迷は深まる一方である。

イラン:ウラン濃縮を加速 2013.2.22

核兵器開発疑惑の続くイラン。それを裏付けるように21日、「イランが、ウラン濃縮を加速する最新式の遠心分離器180基を稼働しはじめたことを確認した」とIAEA(国連原子力機構)が発表した。

この遠心分離器はIR2mとよばれ、これまでの3倍の速度でウランを濃縮することが可能となる。これは、予想した以上に、イランが核兵器を完成させる時期が早まる可能性を示唆するものである。

ただし、今回、IR2mの導入が確認されたナタンツはウランを5%まで濃縮する施設。もしこれが、20%に濃縮しているファルドーの核施設に導入されはじめた場合、事態はさらに深刻となる。

この報告を受けてイスラエルのネタニヤフ首相は、「(軍事介入への)”赤線”に近づいている。この問題は、来月のオバマ大統領のイスラエル訪問での最優先議題になる。」とのコメントを出した。

なお、欧米とイランとは来週26日にウラン濃縮問題について8ヶ月ぶりの直接対話を予定しており、その直前のこの動きは、世界に対し不遜とも言える挑戦行為である。

<イランは核兵器までどの段階か>

核兵器に必要なウランは濃縮90%と高い。その前段階としてまずは濃縮20%のウランを一定量、準備する必要がある。

20%のウランが核兵器一発分に達した場合、そこから90%にする時間は数ヶ月で、IAEAの査察の合間に核兵器を完成することが可能。そのため、ネタニヤフ首相は昨年9月の国連総会で、20%ウランが、核兵器一発分になった時点を軍事介入への赤線にするべきとの警鐘をならしていた。

アルーツ7によると、現在イランは170キロの20%ウランを保有している。これが280キロになれば核兵器一発分となる。

<現在のハマンはイラン!?>

イスラエルでは、明日日没からプリム(エステルの例祭)が始まる。(エルサレムでは24日日没から)この日、シナゴグでは、エステル記が朗読され、イスラエルを滅ぼそうとした敵ハマンが、どんでん返しで討ち滅ぼされ、イスラエルに勝利がもたらされたことを覚える。

多くのイスラエル人たちがこの時期、「イスラエルを地図から消し去る」といったイランのアフマディネジャド大統領から、ハマンを連想している。

<ナイジェリアにもイラン分子>

ナイジェリア政府は、国内でイスラエル人とアメリカ人をターゲットにしたテロを計画していたテロリスト3人を逮捕。イランに関係するグループであることがわかった。ナイジェリアにはイスラエル系の会社が150ある。

西岸地区での衝突がインティファーダになる!? 2013.2.22

西岸地区ラマラ近郊のオフィルの刑務所周辺で、刑務所内でハンガーストをしているパレスチナ人を釈放するよう求めるデモが、まだ続いている。

先週に続き昨日も、数百人がファタハ(アッバス議長の党)の旗をふりながらデモに参加。10代の若者たちが、石投げ等を使うなどしてイスラエル軍兵士に石を投げつけた。

イスラエル軍もこれに催涙弾で応酬。イスラエル人ジャーナリストを含む数人の負傷者が出ている。その様子は第一インティファーダ(1980年代のパレスチナ人の民衆蜂起)を思い起こさせるものである。

現在ハンガーストを行っている4人のうち、断食日数最長はイサウィだが、もし彼が死亡するなどすれば、暴動は西岸地区一帯にひろがると、パレスチナ政府関係者は警告する。

イサウィの健康状態については、断食200日に入り死にそうだとの報告があるが、イスラエル側の発表によると、イサウィは、断食の合間に時々食べており、命に別状はないとのこと。