超多忙 ネタニヤフ首相がお笑い番組に登場 2013.4.17

時々紹介しているイスラエルの人気テレビ番組「エレツ・ネエデレット(スペシャルな国)」。様々な時事問題をお笑いにしてしまう番組だ。特にネタニヤフ首相の物まねは、けっさく。

そのエレツ・ネエデレットの独立記念日スペシャルにネタニヤフ首相本人が訪れ、物まねタレントとならんでお茶の間に登場した。

<超多忙な首相業務>

ネタニヤフ首相は、ホロコースト記念日(前夜と翌朝)、戦没者記念日(前夜と当日)でそれぞれスピーチ。

独立記念日では、前夜、ヘルツェルの丘での式典、翌朝8時半からの大統領宅イベントでは歌を歌わされ、午後バイブルクイズ大会出席、再び大統領宅にもどって外交官イベントでスピーチ、夜イスラエルで昨年活躍した学者立ちの授賞式。

今日はロンドンでサッチャー氏の葬儀参列となっている。

エルサレムをかつぐ?-アメリカのイスラエル軍事支援 2013.4.17

1.イスラエルの迎撃ミサイル費用を新たに計上

厳しい削減予算を強いられているアメリカだが、アメリカの国防省は、2014年経済年(10月1日スタート)予算で、通常の軍事支援の他に、2億2000万ドルをイスラエルの迎撃ミサイル費用枠として別途計上したことがわかった。

これは、ホワイトハウスと下院がイスラエルへの軍事支援として計上している4億8600万ドルにプラスしてということである。国防省は、継続した迎撃ミサイル支援のため、2015年度分としては1億7590万ドルを計上している。

なお、アメリカのヘーゲル国防省が、近々イスラエルを訪問予定。

*17日朝ロケット攻撃

17日朝、エイラット(イスラエル最南端の町)に警報が響き、ロケット弾3発が着弾した。2発は市内に着弾したが、物損なし。ショックで数人が治療を受けている。

シナイ半島から発射されたとみられ、エジプトが調査にあたっている。サラフィストとよばれるイスラム聖戦主義グループが犯行声明を出した。*サラフィストとは、ハマスよりもっと過激なグループとのこと

2.イスラエルのイラン攻撃を支持

アメリカの上院海外支援委員会は、もし、イスラエルが自衛のためにイランを攻撃することがあれば、アメリカはイスラエルを全面的に支持するべきということで合意承認した。

ネタニヤフ首相は、昨日の独立記念レセプションに招待された100カ国以上の大使(日本の佐藤大使も含む)を前に、改めてイランの核化が危険であると強調。アメリカの同盟関係に感謝するとのべ、各国の協力に感謝すると述べた。

しかし同時に、「国というものは、最終的には自己責任において自衛するというのが基本である。イスラエルの自衛を認めてほしい。」と訴えた。

*イランでまたM7.8の大地震

そのイランだが、パキスタンとの国境付近で16日、再びM7.8の大地震にみまわれた。パキスタン側で34人が死亡しているがイラン側の被害状況は不明。イランでは10にも、M6.3の自身で37人が死亡したばかり。

<なぜアメリカはイスラエルを支援するのか?>

なぜアメリカはここまでイスラエルを支持するのだろうか。それはアメリカがイスラエルを愛しているとか、聖書的な視点とかいうものではなく、イスラエル支持がアメリカの国益につながると考えているからである。

イスラエルは、中東では唯一の民主国家である。さらに天然ガスの発見で、今後中東で、政治的経済的にも安定し、アメリカが最も信頼できる国があるとすれば、それはイスラエルである。

先月、イスラエルを訪問したオバマ大統領は、「イスラエルとの同盟強化は、アメリカ自身の国益になる」とはっきり言っていた。

しかし、聖書の以下のことばが思いおこされるところである・・・。

「見よ。わたしはエルサレムを、その回りのすべての国々の民をよろめかす杯とする。ユダについてもそうなる。エルサレムの包囲されるときに。その日、わたしはエルサレムを、すべての国々の民にとって重い石とする。すべてそれをかつぐ者は、ひどく傷を受ける。地のすべての国々は、それに向かって集まってこよう。」(ゼカリヤ書12:2,3)

<ボストン・マラソン爆破事件その後>

16日にアメリカで発生したボストン・マラソンでの爆破事件。オバマ大統領は、これをテロと認めた。しかしだれが犯行に及んだかはまだ手がかりはつかめていない。

爆弾は圧力鍋を使い、中に仕組まれた釘や金属片が飛び散ってより多くの人間を殺傷するようになっていた。こうした悪意に満ちた爆弾はイスラエルが経験してきたタイプのものである。

ネタニヤフ首相は、オバマ大統領に電話で、悲しみと共に負傷者の回復を祈るとのメッセージを伝えた。

この他エジプト(ムスリム同胞団)、サウジアラビアが、「市民を傷つけることはイスラムの教えではない。」と事件を非難する声明を出した。

第65回 独立記念日 2013.4.16

<イスラエルの人口800万人突破>

イスラエルは今年15日、独立してから65年を数えた。4月15日現在の総人口は、801万8000人。ついに800万人を突破した。1948年の独立当時からすると10倍。

このうち、ユダヤ人は75.3%で604万2000人。アラブ人(イスラム)は、20.7%で165万8000人。残りの31万8000人はアラブ・クリスチャンを含むその他の宗教。

昨年度に生まれた赤ちゃんは16万3000人。新移民は1万9500人。死亡は4万1000人。

<戦没者記念から祝祭へ>

イスラエルでは先週、ホロコースト記念日があったが、今日は戦没者記念日。国が独立し、存続するために多くの兵士とテロの犠牲者がいたことを覚える式典が、エルサレムを中心に全国各地で行われた。

建国以来、今年までの戦没者は、23085人。国防軍兵士の他、テロの犠牲者、殉職した警察官、刑務官、消防士も含む。

14日午前11時、全国的に2分間のサイレンがなり、人も車も立ち止まって戦没者に思いをはせた。

エルサレムのヘルツェル(建国の父)の丘にある戦没者墓地には、いわば国をあげての”お墓参り”だが、日本のように霊的な意味合いはなく、家族友人が墓の周りに集まって故人を思い出すのである。

エルサレムでも前夜から多くの店が閉まり、道路を走る車も少なくなっていた。驚いたのはテルアビブである。いつもは激しい渋滞であるはずの道路がまるで贖罪の日のように、がらがらだった。

店はほとんどが閉まっていて、日没までは歩いている人もかなり少なかった。

これは、イスラエル人のほとんど皆が、家族か友人に戦没者を出しているということである。特に世俗派で若者の多い町テルアビブは、あきらかにエルサレムよりも兵士を多く出している。

<独立記念日前夜のエルサレム>

イスラエルは、今年独立65年目。幸い、今年も無事に平和な独立記念日を迎えている。平和・・・といっても静かなというよりは、はちゃめちゃなパーティお祝いである。

今、夜中の1時だが、町では、12,3才から20代くらいの若者たちを中心に、いわゆる”馬鹿騒ぎ”である。心臓がひっくりかえりそうなビートのきいた音楽、どかんどかんと花火があがる。

イスラエルの旗をあしらったふうせんでなぐりあったり、スプレーの泡をかけあったりのお遊びで、やかましい、ごみだらけ、とにかく”むちゃくちゃ”である。

しかしアルコールはないので、酔っぱらいはいない。大人もあまりいないので、エルサレムの高校卒業パーティといったところ(日本の皆様には想像つきにくいかもしれないが、時間制限なし。大人なし。プログラムなしのパーティ)。

こんな夜だが、夜中に女性が1人でも身の危険はまったく感じない。大阪の夜中1時は、アルコールぷんぷんで訳のわからないよっぱらいや、やくざもいるので、エルサレムの方がよほど安全といえる。

エルサレムに先立ち、テルアビブにも行ってきたが、予想外にもテルアビブより、エルサレムの方がむちゃくちゃだった。

<バーベキューを楽しむ日>

明日は午前中、ペレス大統領宅で記念式典。昨年度、貢献した兵士120人が招かれている。国民はその様子をテレビでみたあと、一斉に、家族一緒にバーベキューに出てくる。

イスラエル人は本当に、祝うこと、徹底的に楽しむこと、しかも家族で楽しむことを知っているようである。

シリアへミサイルで反撃 2013.4.13

シリアでは、レバノンとの国境、ヨルダンとの国境付近でも激しい戦闘が行われているとの情報がある中、12日夜、レバノンに近いゴラン高原北部に駐屯中のイスラエル軍へも砲撃があった。

流れ弾か計画的かは不明だが、イスラエル軍は、発射元にむけて、ミサイルで反撃した。

シリアでは、先週から、反政府勢力が急に勢力を拡大しているもよう。先週からアラブ諸国が反政府勢力にヨルダン経由で武器を流しはじめたという情報がある。

<シリア内部にアルカイダ>

10日、現在シリアで戦闘に加わっているアル・ヌスラと呼ばれる聖戦主義組織が、アルカイダの首謀者ザワヒリに忠誠を誓うと宣言する録音を世界に流した。アル・ヌスラは、以前よりアメリカではテロ組織に指定されている。

これについて、欧米に正式な反政府勢力として認められている自由シリア軍は、アル・ヌスラとは関係がないと主張している。しかし、シリア内部にアルカイダ系テロ組織がおり、危険な武器がその手に渡る可能性があることは間違いないことである。
  
12日、トルコで、アンカラのアメリカ大使館と、イスタンブールのユダヤ教シナゴーグの爆破を計画していたアルカイダの一派が逮捕された。爆破が成功していたら大惨事になるところだった。

悲惨な交通事故 2013.4.13

イスラエルでは、テロや戦争より交通事故で命を失う人の方が多いといわれる。先週、ハイファ近郊のネシェルで、信号待ちしていた車列に大型トラックがつっこみ、6人(17才2人、18才2人、40才、45才)が死亡。15人が負傷した。

運転手も負傷してまだ治療中だが、トラックのブレーキがきかなくなったことが原因とみられている。

死亡した6人は、全員がガリラヤ地方に住むアラブ人のダルーシャ一族の男性たちだった。

イスラエルでは先月の過ぎ越しの週にも全国の交通事故で7人が死亡している。警察は「たのむから安全運転を」と言っていた。

若手新閣僚、奮闘中 2013.4.13

新党「未来がある党」、「ユダヤの家党」から新しく入閣した若手の閣僚たちが動き始め、物議、話題となっている。その中でも最も渦中にいるのがラピード財務大臣。

1.ラピード財務大臣(未来がある党)-削減予算でつるしあげ

ラピード財務大臣が、ネタニヤフ首相に削減予算案を提出した。削減は今年140億シェケル、来年、再来年と60億シェケルづつ削減する。

削減するのは、公務員給与削減で40-45億シェケル、防衛費30-40億シェケル、子供手当30-40億シェケル、列車など公共交通事業費20-40億シェケルなど。これを受けて、各省庁、地方自治体などから一斉に正式な反対が出されている。

税収を増やす点では、高級な家や車、たばこなど”ぜいたく品”の税金を上げる他、VAT(付加価値税)を1%上げる。

*消費者の立場から

イスラエルでは最近、すでに食品や日用品の値段が一品1-2シェケル(30~50円)近く上がった。また電気代等光熱費は、消費税がすでに17%もある。

家賃はほぼ毎年上がるが、それに伴い、アルノナという税金も上がっていく。これ以上消費税があがると庶民の暮らしには大きな圧迫となる。

*大富豪はイスラエルで税金を払っていない!?

注目点は、いわゆるイスラエル人大富豪が、税金の高いイスラエルに住まず、海外で税金を払っているいう事実をどうするのかということ。

ビジネス誌フォーブスの世界の大富豪リストに、イスラエル人は17人もいる。中でも化学関係企業をしきるイダン・オフェル氏は、1人で65億ドル(234億シェケル)の資産(世界182位)があると言われる。

そのイダン氏が先週、ロンドンへ引っ越すと発表したことに対し、ラピード財務相は、「イスラエルで稼いでロンドンへ逃げるとは赦しがたい。」とのコメントを出した。なお、多くの大富豪はすでにロンドンへ移動しているという。

また、ラピード財務相は、イスラエルの化学工場ポタッシュ・コープレーションをカナダの会社が買収しようとしていることについて、「イスラエルの資源による収益はイスラエル市民が教授すべきだ」と反対する意見を出した。

2.パイロン教育大臣(未来がある党)-ユダヤ教正統派にも数学を

ユダヤ教超正統派の子供たちは、トーラーなどユダヤ教関連のことしか勉強しない。数学も英語も社会も国語もなしである。つまり将来働くみこみなしの状態。

パイロン教育大臣は、一般必修科目を履修しないなら補助はないと言っている。

3.ベネット通産相、経済担当大臣(ユダヤの家党)-ブラックメール届く

ベネット氏は、ユダヤ教徒だが、ユダヤ教神学校イシバで学ぶ学生も、兵役免除は1800人までとし、他は18才で従軍か社会奉仕に就くとする案を提出している。

これに反対する何者かが、「神ののろいがくる。アリエル・シャロンのように植物人間になる。」とのブラックメールが届いた。警察が調査にあたっている。

天然ガスとトルコとの関係 2013.4.13

アメリカの仲介でイスラエルとトルコの関係回復が期待されているが、トルコはイスラエルとの交渉を延期するなど、少々腰が引けている状態。

この状況に最近供給をはじめた天然ガスが貢献する可能性がある。トルコには天然資源がないため、もしイスラエルとの関係が回復すれば、トルコはイスラエル天然ガスの最大のお得意様になると予想される。

様々な可能性を秘めるタマル天然ガス田。イスラエルのテレビによると、テロにねらわれないよう、海軍が厳しく警備しているという。

イランの核施設近くでM6.3の地震 2013.4.10

イランの原子力発電所のあるブシャーラから90キロの地域で、9日17時ごろ(現地時間)、マグニチュード6.3の地震が発生した。この地震で、これまでに死者30人、負傷者800人以上と報告されている。

BBCによると、家屋700軒が全半壊。200家族が被災しているという。現在も救出活動が行われており、まだ犠牲者は増えるとみられる。イラン政府は、原子力発電所に被害はなく、通常に稼働していると伝えた。

イランでは2003年にもバムで大きな地震があり、25000人が死亡している。

トルコが和解交渉の日程を延期 2013.4.10

イスラエルが正式に謝罪をトルコに申し入れて2週間後の12日、イスラエルの交渉チームがトルコのアンカラを訪問し、実務交渉に入る予定だった。しかし、8日、トルコは、ダウトオール外相が不在になるという理由で、会談を21日まで延期すると言った。

これは、マビ・マルマラ事件の遺族らが、関係したイスラエル兵の国際法廷への訴えを却下しないと言った翌日のことである。遺族たちは、イスラエルからの賠償金には手をつけず、そのままハマスに献金するとも言っている。

6日にトルコを訪問したケリー米国務長官は、「アメリカはトルコに指図する立場にはないが、イスラエルとトルコの和解は中東全体の安定化につながる。」と伝えた。

これに対し、ダウトオール外相は「イスラエルとの和解には少々時間がかかるだろう」との見解を述べた。

ケリー米国務長官の中東、仲介活動アップデート 2013.4.10

トルコの次にイスラエルを訪問したケリー国務長官。これまでにラマラのアッバス議長、ペレス大統領、ネタニヤフ首相それぞれと会談し、9日夜、アジアへ向かって移動していった。今回の中東訪問での進展は以下の通り。

1.パレスチナ問題について・・・なんらかの動きあり???

エルサレムポストによると、アメリカとイスラエルが協力して、西岸地区で、なんらかの新しい経済プロジェクトが計画されているもよう。ケリー氏は、現時点ではメディアには公表しないと言っている。

ネタニヤフ首相との会談後の共同記者会見においてケリー氏は「それぞれが、これからの数週間、”宿題”をすることになった。進歩はあったと言える。」と語った。

<ネタニヤフ首相に不信感満々のアッバス議長>

ケリー氏とアッバス議長との会談については、アッバス議長の中に、「いくら話し合いをしても、ネタニヤフ首相は結局なんの譲歩もしないだろう」という不信感が強く、現時点では、直接交渉実現への前進はみられていない。

不信感満々のアッバス議長は、「2国家解決」を支持するというなら、イスラエルはどんな国境線を思い描いているのか、地図で提示するよう、ネタニヤフ首相に求めた。

また、どこまでネタニヤフ首相が譲歩する気があるのかを確かめるため、たとえば東エルサレムのパレスチナ自治政府の拠点であったオリエントハウスの閉鎖を解くなど、実質的な誠意をまず示すことが条件だと言った。

ネタニヤフ首相は、国境線については治安状況など話し合いで決まっていくものであり、話し合いの前に提示することはできないと返答した。

ネタニヤフ首相は、一時的な和平ではなく、恒久的な和平をめざすと語り、なんらかの方策があるような含みのある発言をしている。その上で、パレスチナ側に求めるのは、まずイスラエルの存在と治安の必要を認めることだと語った。

*ユダヤ人テロリストも終身刑

イスラエルはパレスチナ人テロリストはかんたんに逮捕するのに、パレスチナ人に対してテロを行うユダヤ過激派は逮捕しないとの批判が出ている。

9日、イスラエルは、パレスチナ人2人を殺害、他に殺人未遂もあるユダヤ人テロリスト、ヤコブ・タイテルに対し、終身刑2回分と、犠牲者への賠償金の支払いを命じた。

2.イラン問題について・・・時間切れ近づく

先週行われた国際社会とイランとの直接会談は、予想された通り不発に終わった。今回は次回会合の日程さえも決まらなかった。ケリー米国務大臣は「時間切れが近づいている。」と語った。

ネタニヤフ首相と会談したケリー国務長官は、改めてイランを核保有国にしてはならないこと、今も外交的解決に希望をおいているが、永遠に待つということではないと語った。

ホロコースト記念日2013 2013.4.9

エルサレムにあるホロコースト記念館、ヤド・バシェムでは今年も記念行事が7日日没から8日にかけて行われた。

7日の記念式典には、ホロコーストの生存者とその家族(1500人以上?)、ペレス統領、ネタニヤフ首相と閣僚に加えて、イスラエル支持を表明しているカナダの外務相が列席していた。

式典の様子は国営放送の3つのチャンネルで生中継された。生存者は皆80-90才代の高齢になっている。現在イスラエルにいる約20万人の生存者の多くはテレビのむこうか、もうテレビを見る気力もない人も多かっただろう。

生存者の数は、毎年着実に減っている。式典では6人の生存者が、600万人の犠牲者を記念して6つの火をともしたが、1人は式典の1週間前に死去していた。妻が代わりに灯火した。

8日の献花式には、中東歴訪中のケリー米国務長官が列席した。

<ネタニヤフ首相の国民へのメッセージ>

ネタニヤフ首相の国民に向けたメッセージは、気迫とすごみに満ちあふれていた。準備したものを読むのではなく、本気で言っていることが伝わってきた。

・・ユダヤ人はあらゆる世代において、絶滅の危機を通ってきた。今もイランはユダヤ人を菌やウイルスだといい、イスラエルは癌だから中東から消し去らなければならないと言っている。

ホロコーストにおいては、多くの者が危険に気がつくのが遅く、手遅れになってしまった。チーフラビのラウ氏によると、彼のいた収容所を解放に来たアメリカ連合軍の司令官が、後に涙をこぼしながら、「赦してほしい。来るのが遅すぎた」と言ったという。

ホロコーストで学んだことは、ユダヤ人は自衛しなければならないということ。イラン問題では国際社会の外交努力を認めるが、たとえ最高の友人であっても、他者の手に自分の運命をゆだねてはならないと言った。

その上で、もう二度と「遅すぎる」という状況にはしない。二度とホロコーストが起こることはないとの覚悟を語った。

少し気になったことがある。ネタニヤフ首相は、ホロコーストの闇から建国に至ったことを「私たちの勝利」「自由を勝ち取った誇り」と言い、今イスラエルが持つ強い軍隊を信頼していると言っていることである。

首相から国民へのメッセージなので、それで当たり前かも知れないが、神に栄光を帰す表現ではなかった。

<8日 犠牲者の名前を読み上げる>

8日は、ホロコーストの犠牲者をその家族が読み上げるという式典が行われた。多くの人々が、自分の父母、兄弟姉妹の名を読み上げ、亡くなった収容所の名のところに白い花を置いた。

高齢になった生存者をその子とイスラエル軍の軍服を着た孫との親子3代で支えている姿に感動した。祖母の読み上げる名前に、孫娘が泣いている姿もあった。

<証で綴られるホロコースト記念博物館>

ヤド・バシェムでは、ところどころでホロコーストを経験した人々が証を語るビデオが流されている。今日は、多くの若い兵士たち、ユダヤ人がそれらの証に聞き入り、涙を流す人も多かった。証はどんな写真よりも力がある。

今回、できるだけこれらの証の前にすわって話を聞いていたら、夕方になってしまった。当時の人々が、何の情報もないまま流されていく様子に、自分だったらどうしていただろうと考え続けた。

ここでは書ききれないが、今回特に記憶に残ったのは、ホロコースト末期に、ナチスドイツが、靴もろくにはいていない女性たちを、食べ物も与えず、雪の中、3ヶ月以上にわたって800キロ(1日25キロ)も歩かせていたこと。目的は途中で全員が死ぬことである。同じ女性として、人ごととは思えなかった。

ある記者はユダヤ人が虐殺されていることを知り、1940年、チャーチルや、ルーズベルトにまで会いに行ったという。その当時、欧米は惨事をすでに知っていた。しかし彼らにとって大事なのはドイツを降伏させることであって、ユダヤ人を救う事はまったく頭になかったと証した。

ホロコーストは600万人虐殺の一言ではない。殺すだけではない。家族をひきさき、いじめ、はすかしめ、拷問し、ありとあらゆる苦しみを与えたのがホロコーストである。そして、世界からの拒絶。無視。

あるガイドさんが「ニツォレイ・ショア(ホロコースト生存者)」は、「ソブレイ・ショア(ホロコーストに苦しむ人々)」だと言っていた。これらの生存者は目をみればすぐにわかる。彼らの目にはいまもまだ地獄を見ているような恐怖が見える。この人々のほとんどは、まだ救われていない・・・。

<希望の証>

希望の証もあった。このホロコーストのただ中で、あるラビは、皆で集まって礼拝したことを、昨日のことのように感動の表情で語った。聖書を読み、3-4時間も賛美したそうである。その後は、もはやドイツ人も、空腹も苦しみも吹き飛んだという。

また先の死の行進で亡くなった人のポケットからみつかった小さな詩篇の書。8×10センチくらい。どれほど足が重くなってもこれだけは持っていたのだろう。

国民がユダヤ人引き渡しを拒否したブルガリア。政府はナチスに引き渡そうとしたが、勇気ある議員と、ロシア正教の神父らが抗議に出た。ユダヤ人の引き渡しの日、市民らが一斉に出てきてユダヤ人を引き渡さなかった。政府はユダヤ人引き渡しをあきらめた。

この一部始終を経験したユダヤ人女性は、ブルガリア市民に深く感謝し、この日を死ぬまで忘れないだろうと証した。

またパルチザン(ヨーロッパでナチスと戦ったユダヤ人の若者の抵抗運動組織)の笑顔。ユダヤ人を救ったユダヤ人と異邦人の協力グループ。解放後の結婚、出産ブーム、イスラエルへの帰還。

*パレスチナ人のヤド・バシェム訪問

ホロコースト記念日の前に、イスラエル人とパレスチナ人が共同ですすめる組織によってパレスチナ人8人がヤド・バシェムを訪問した。1人はイスラエル軍との衝突で娘を亡くしていた。

8人は、初めて見るホロコーストの事実に愕然とし、「イスラエルの占領をホロコーストと比べる人がいるが、ここへ来て、それは全く違うということがよくわかった。」と語った。

パレスチナのテロ(パレスチナ人側では抵抗運動)は、かつてパルチザンが、自由と解放のために、ドイツ兵を殺害していたことにつながるが、ユダヤ人虐殺の度合いはイスラエルの”占領”とは比べるべきものではないほど大違いだということ。

しかしイスラエル南部では、記念式典をしている真っ最中にロケット弾の警報がなり、参列者は蜘蛛の子を散らしたように逃げた。人的物的被害はなかった。

<今も聖書時代>

記念館の外へ出たとき、町を歩く人全員が、ホロコーストの人々と重なって見えた。ホロコーストはなぜ必要だったのだろう。そう考えていると、もしかしたらバビロン捕囚の時もこのような惨劇だったのではないだろうかと思った。

この国は、今も聖書の時代なのである。ユダヤ人、そしてイスラエルは、神に愛されているとはいうものの、今も、この神の前に生きているのである。聖書に書かれた神は甘くない。この神に仕えることは甘いだけではない。

メノー牧師がよくいうことばを思い出した。「皆イエスがまだ子羊のイメージしかない。次来られる時はアリエル(ライオン)の厳しさで来られる。主への正しい恐れを持ちなさい。罪から離れ、主に聞き従いなさい。」

実際、ホロコーストの苦しみを思えば、少々の拒絶や苦しみは苦しみのうちには入らないと思わされた。

和平交渉と紛争の連鎖 2013.4.5

昔からイスラエルとパレスチナの間に和平交渉が進みそうになると、テロや紛争が起こる。今回も、オバマ大統領が来て、2国家解決へテコ入れし始めて以降、西岸地区で激しい衝突が発生している。

今回の引き金は、2日朝、イスラエルの刑務所で服役中だった63才のパレスチナ人アブ・ハマディアが癌で死亡したことだった。

アブ・ハマディアの死亡を受けて、全国の刑務所と西岸地区などで暴動が発生。3日には、イスラエル軍に火炎瓶を投げつけた少年4人との闘争で、2人(17,18才)が死亡した。

ヘブロンでは4日、アブ・ハマディアと上記2人の葬儀が行われ、群衆が叫びながら葬列に加わった。これに合わせて、若者らが、イスラエル軍に石や火焔瓶をなげたり、タイヤを燃やすなど深刻な暴動に出た。イスラエル軍もこれに応戦した。なお、5日現在は落ち着きをとりもどしているもよう。

<冷たいメディアの反応>

アブ・ハマディアが癌と診断されたのは2月。パレスチナの新聞は、死因はイスラエルの誤診と誤薬だと伝えたという。また末期癌なのだから、診断された時点で、刑務所から解放するべきだったとも訴えている。

刑務所でパレスチナ人受刑者が病死するのはここ数ヶ月の間で2回目。この状況に関して、世界のメディアの多くはイスラエルに厳しい視線を送っている。しかし、アブ・ハマディアはイスラエルではトップクラスのソローカ・ホスピタルで治療を受けていたのである。

<ガザにハマスより危険な分子登場!?>

西岸地区のこうした動きに賛同するとして、4日、ガザから再びイスラエル南部にロケット弾が着弾した。(人的物的被害はなし)

この犯行はハマスによるものではなく、ハマスよりさらに過激な「サラフィスト」と呼ばれるグループによるものだった。ハマスは犯人2人を逮捕したと報じられたが、後にハマスはこれを否定。イスラエルへの”抵抗運動”は奨励すると言った。

<ケリー国務長官、中東での仲介開始予定>

西岸地区での紛争の報告が入っているが、来週早々にもケリー米国務長官がエルサレムに戻り、イスラエルとトルコ、イスラエルとパレスチナの実際の交渉仲介に入る予定になっている。

今朝のニュースだが、アッバス議長はこれに備えて、国連その他で展開している様々な一方的な(イスラエルの合意なし)手続きを2ヶ月間、停止すると述べた。