ハマスへの最後通告?ネタニヤフ首相がトランプ大統領のガザ停戦案合意 2025.9.30

トランプ大統領のガザ停戦案にネタニヤフ首相が合意表明

9月29日(月)、ネタニヤフ首相はワシントンDCに移動し、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談した。この会談は、トランプ大統領が、ネタニヤフ首相を招いて、ガザの停戦案を提示し、合意を求めるための会談であった。

1)イスラエル軍の段階的撤退と72時間以内の人質解放

その案とは、昨日紹介した21項目からなる和平案である。(実際には1項目削除されて20項目になったとのことだが、どれが削除されたかは不明)会談後、両首脳は共同記者会見を実施した。

ネタニヤフ首相は、イスラエルがガザでの戦闘で目標としていたことが、全部含まれているとして、この案を受け入れると発表した。

その目標とは、次の5点。①人質全員解放、②ハマス非武装化、③ガザ非武装化、④今の所はイスラエルが治安維持を担当する、⑤ガザ地区の管理はハマス、パレスチナ自治政府以外の文民が行う。

これに対し、トランプ大統領が提示した20項目の中には、以下が含まれていた。

①イスラエル軍は段階的に撤退するが、完全撤退ではなく、当分ガザに残留することになる。(地図)

②最初の撤退後、72時間以内に、人質全員が解放される。ただし、これに対して、イスラエルは、終身刑レベルのパレスチナ囚人250人と、ガザで拘束した1700人、15人のガザからの遺体を釈放する。

③戦後のガザの治安維持のためにが、国際安定化軍(ISF)が設けられる。その総責任者はトランプ大統領で、トニー・ブレア元英首相など世界的に著名な人々が加わる国際組織になる。

④戦後のガザ統治にハマスは関わらない。文民系のパレスチナ人が担う。

トランプ大統領の20項目によると、将来的には、パレスチナ自治政府が関わることになっているが、その前に、改革が行われることが条件になっている。

今のパレスチナ自治政府は、イスラエルにテロ攻撃をした者やその家族に報酬が与えられている。汚職もあり、支持率は最低である。こうした問題点の改革が条件となっている。

しかし、ネタニヤフ首相は、パレスチナ自治政府が、戦後ガザの統治に加わることは、明確に拒否を表明している。トランプ大統領もそれは承知しているとネタニヤフ首相は強調している。

2)ハマスが合意しない場合は戦闘再開・アメリカはイスラエルを支援

もしハマスが、この案を受け入れない場合は、イスラエルは自力で戦闘を再開し、目標を達成すると強調した。トランプ大統領は、もしそうなった場合は、アメリカがイスラエルの側に立って戦うと語った。

トランプ大統領は、イスラエルはその地に留まるのであり、消えることはないと強調。ハマスはこの案を受け入れるべきだと語った。

これは非常に歴史的な時だと語り、これはガザだけで終わらず、中東の平和につながることだと語った。トランプ大統領は、2020年にイスラエルとアラブ諸国との間で始まった、アブラハム合意による繁栄の可能性を強調した。

中東のアラブ諸国イスラム諸国には、(イスラエルを認めず、中東の平和を脅かす)ハマスと対峙する機会が与えられるべきだと語った。

トランプ大統領によると、この和平案の策定には、アラブ諸国、イスラム諸国、ヨーロッパの多くの同盟国も協力したとのこと。それらの国々に感謝を表明した。

以下は両首脳の会見の全文

www.timesofisrael.com/the-closest-weve-ever-come-full-text-of-trump-netanyahu-statements-on-deal-to-end-gaza-war/?utm_source=article_hpsidebar&utm_medium=desktop_site&utm_campaign=the-closest-weve-ever-come-full-text-of-trump-netanyahu-statements-on-deal-to-end-gaza-war

ニューヨークタイムスは、これは要するに、アメリカとイスラエルが、ハマスに、これを受け入れるよう詰め寄っているのであり、もし受け入れないなら、ハマスはいよいよ破滅だと言っているということだと分析している。

アラブ諸国、ヨーロッパ諸国から称賛:パレスチナ自治政府も歓迎を表明

トランプ大統領の20項目からなるガザ停戦案は、29日(月)朝、ネタニヤフ首相との会談の直前に正式に公表された。

これを受けて、イスラム教徒が8割を占めるアラブ・イスラムの8カ国外相が、「戦争を終わらせるためのトランプ大統領の誠実な努力を歓迎する」と、これを称賛する共同声明を出した。

Arab leaders attend a multilateral meeting with US President New York City on September 23, 2025. (Reuters)

その8カ国とは、サウジアラビア、ヨルダン、UAE、インドネシア、パキスタン、トルコ、カタール、エジプト。これらのアラブ諸国が、ガザの平穏を見守ることになるとみられる。

www.timesofisrael.com/arab-muslim-nations-pledge-to-realize-trumps-gaza-plan-hamas-examining-it-responsibly/

一方、ネタニヤフ首相が、この案を受け入れると表明すると、ヨーロッパからも称賛が相次いだ。フランス、イタリア、イギリスが、ハマスに武器を置いて、この提案を受け入れるようにとの声明を出した。

www.timesofisrael.com/europe-hails-trumps-plan-to-end-gaza-war-as-turning-point-for-the-region/
パレスチナ自治政府にとっては、ライバルであるハマスが消えることは歓迎することである。自治政府も、トランプ大統領の案を歓迎すると表明。アメリカや国際社会と協力すると表明した。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/palestinian-authority-welcomes-trumps-sincere-and-determined-efforts-to-end-gaza-war/

イスラエル国内の反応:人質家族と野党左派は歓迎・右派は?

トランプ大統領の停戦案が公表され、ネタニヤフ首相が合意したとの知らせを受けると、人質家族たちは、ユダヤの祝福の祈りをもって感謝を表明した。また野党議員たちも、称賛を表明した。

現地からの報告によると、希望の空気が漂ってはいるものの、この20項目の順番が明確でなく、ハマスの武装解除がいつなのかなどが明確でなく、専門家の間では、実現性について懐疑的な声が多い。

連立与党からは、ユダヤ教政党のシャス党は、合意を歓迎したが、その他の右派系議員は、この案が実現するのかどうか懐疑的である。極右政治家のベン・グヴィル氏や、スモトリッチ氏たちは、30日(火)緊急の会議を開催するとしており、対応を出してくるとみられる。

なお、極右勢力が進めようとしている西岸地区の併合について、トランプ大統領は、「それは絶対にありえない」と宣言している。この強硬右派たちが、トランプ大統領の案を妨害するような動きに出る可能性も否定できない。

www.timesofisrael.com/hostage-families-opposition-lawmakers-hail-us-gaza-plan-but-pms-allies-remain-skeptical/

ハマスの反応は?イスラム聖戦は逆に地域に火をつけることになると警告

photograph: afp

ハマスもこの条件を受け取ったとして、責任持って検討すると言っている。ただ、どうみても、ハマスには不利なので、これを受け入れるかどうかは懐疑的である。

実際、この案が出る前に、ハマスは、人質2人を見失ったと表明しており、48人をきっちり出せない可能性もある。

もしハマスがこの案を受け入れない場合、ガザ地区にはこれまで以上の攻撃になるので、イスラム聖戦などは、トランプ大統領の案は地域に火をつけることになると言っている。ガザの人々からも、停戦とは逆の動きになることへの懸念の声が出ているとのこと。

www.timesofisrael.com/arab-muslim-nations-pledge-to-realize-trumps-gaza-plan-hamas-examining-it-responsibly/

石のひとりごと

膨大な記事を読みまくって、一体何が起こっているのか、理解しようと試みている。

先週から始まっている国連総会で、イスラエルとアメリカは、世界から攻められ孤立する様相にあった。それがなにやら、逆転したかのように、この件では、トランプ大統領と称賛し、これに合意したネタニヤフ首相にも、満足な様相になっている。

ガザの戦後復興にハマスとパレスチナ自治政府も加わらないことや、ガザにイスラエル軍が駐留を続けること。これを、サウジアラビアを含むアラブ、イスラム諸国が認め、協力するとまで言っている点も、驚きである。

また、ハマスがもし、合意しなかった場合、イスラエルは、準備している大規模なハマス殲滅作戦を、“国際社会の理解のもと”で、計画通り10月7日にも開始することも可能になる。

どちらに転んでも、イスラエルには有利に進むようには見える。トランプ大統領の停戦案は、指摘されているように、ハマスに降参を突きつける形ではないかと思う。

ただこの20項目については、本当に、計画通りに進むかどうかはわからない。中東では予想外のことばかりが起こるので、特にハマスがどう出てくるのかに注目しつつ、お伝えしていきたいと思う。

ネタニヤフ首相がホワイトハウスからカタールへ電話:ドーハ攻撃について謝罪 2025.9.30

9月29日(月)、ネタニヤフ首相が、トランプ大統領と、ガザ停戦案についての会談のため、ホワイトハウスに到着すると、ネタニヤフ首相は、まず、大統領執務室から、カタールのアル・シャニ首相に電話をかけ、9月9日に、カタールの首都ドーハへの攻撃をしたことについて謝罪した。

イスラエルはこの日、ガザの外にいるハマス高官ら5人が、ドーハに集まるとの情報から、5人の暗殺を狙って、ミサイルによる攻撃を実施した。しかし、この攻撃で死亡したのは、ハマスの5人ではなく、ハマスの下級隊員とカタールの警備員1人であった。

ネタニヤフ首相は、カタールが人質交渉を進めている最中に、カタールの主権下にあるドーハへの攻撃を行ったことへの遺憾と謝罪を述べ、このようなことは二度と起こらないと約束した。

これを受け、カタールのアル・シャニ首相は、ネタニヤフ首相の約束を歓迎し、カタールは地域の安全のために貢献する用意があると述べた。ネタニヤフ首相も同じだと述べた。

この謝罪は、ガザ停戦案をいよいよ公にする前に、トランプ大統領が企画したものだった。カタールからの協力を得るために、イスラエルとのしこりを取り除いておきたかったのだろう。

ネタニヤフ首相、トランプ大統領に電話をさせられた感じも拭えず、やはり、アメリカに頭が上がらないという感じである。

しかし国内からは反発が出た。カタールは、ハマスへ現金を送るなど、これまでハマスの支援者だったことから、右派のベン・グヴィル市は、その国への攻撃は、“道徳的”だったと反論していた。

www.timesofisrael.com/netanyahu-apologizes-to-qatar-for-strike-on-hamas-leaders-in-call-with-trump/

ものごとは、どちらからどう見るかで、見え方が違ってくる。外交、特に中東での外交にはその傾向はかなり強いと思う。

ガザ戦闘でイスラエル兵5人重傷:ガザ市から約78万人避難したとIDF 2025.9.30

国際社会では停戦にむけた大きな動きになっているが、ガザでは変わらず、イスラエル軍によるハマスのインフラ破壊、ハマスとの戦闘が続いている。イスラエル軍の攻撃は1日で140か所などと報告されている。

イスラエル軍は、人質を連れ去るVTRなどに写っているハマスたちを追い詰めて殺害もしている。

一方、ハマスは、先週、アシュドドに向かってロケット弾を発射。29日(月)にもイスラエル領内に向かってロケット弾を2回、発射したが、いずれも届かず、ガザ内部に着弾していた。

また、ハマスは、人質2人の行方がわからなくなったと発表した。人質家族とイスラエル軍への心理作戦とみられる。イスラエル軍は、以前、人質を、ハマスと謝って殺害してしまった苦い経験がある。以来、誤って人質を殺さないよう、慎重になっている。それを狙っての作戦かもしれない。

9月29日(月)午後5時半ごろ、ガザ市のイスラエル軍駐屯地にハマス戦闘員5人が、忍び込み、戦車に向かって、爆発物2つを投げつけた。すぐに銃撃戦となり、ハマス2人を殺害したが、3人は逃げた。

この戦闘で、衛生兵1人、戦車隊員1人、兵士3人の5人が重傷となり、6人が軽傷を負った。

イスラエル軍によると、ガザ市からは、27日(土)の時点で、約78万人が南部へ避難とみられている。停戦合意の情報も、戦闘現場では、まだ現実味はない。

www.timesofisrael.com/two-rockets-fired-at-israel-from-strip-as-idf-pushes-into-gaza-city/

JCPOA合意から10年・イランへの制裁再発動:経済に打撃 2025.9.30

イランは、2015年に、JCPOA(包括的共同行動計画(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国、ロシアとEU)と、イランが、イランが核兵器開発を停止し、ウラン濃縮活動を停止することなどを約束することで、その時まで課されていたイランへの制裁を解除した。

それから10年、イランは、2018年にアメリカが、トランプ大統領の元、JCPOAから離脱して、独自のイランへの制裁を再開。イランは、IAEA(国際原子力機関)の査察を拒否し、ウランの濃縮も平和利用以上に高めているなど、約束に違反するようになった。

また今年6月に、イスラエルとアメリカが、イランの核施設や軍事施設を攻撃した後、IAEAの査察を中断していた。このため、イギリス、フランス、ドイツから、制裁を再開すると警告されていた。

September 26, 2025. (AP Photo/Angelina Katsanis)

イランは、危険レベルにまで濃縮されているウランを全て提出するなら、制裁を3ヶ月遅らせると言われたが、これを拒否した。

イランのペゼシュキアン大統領は、こうした措置を「不公平で違法だ」と非難した。アメリカなどは核兵器を保有できるのに、なぜイランはできないのかと言うのである。

ロシアと中国が、国連安保理において、制裁を6か月遅らせる案を出したが、可決できなかった。その後も改善が見られないことから、9月28日(日)、イランへの経済、軍事面における制裁が再発動となった。スナップバックプロセスと呼ばれている。制裁が再開となった今、今後イランは、次のような取り扱いを受ける。

武器輸出禁止、ウラン濃縮の禁止、核弾頭装着可能な弾道ミサイルに関する活動の禁止、数十人のイラン人物と会社の資産凍結、渡航禁止、イランの航空、海運業における荷物の査察許可

Iranians walk past shops at the Grand Bazaar in Tehran on September 27, 2025. (ATTA KENARE / AFP)

これを受けて、イランの通過リアルの価格は、過去最低にまで下落。経済的な打撃が予想され、イランから脱出する市民の数が急増している。

BBCによると、イランのアラツキ外相は、「トランプは、外交的に裏切った(JCPOA離脱)が、E3(イギリス、フランス、ドイツ)は、それを葬った」と語ったとのこと。

www.bbc.com/news/articles/c39rpgpvwy1o

制裁が発動した後も、欧米諸国は、もしイランが、IAEAの査察を再開させ、危険レベルの濃縮ウランについて、適切な処置をするなら、制裁の再開を6ヶ月延期することは可能だと言っている。トランプ大統領は、イランには、外交的な窓はまだ開いていると言っている。

ところで、制裁が発動になる直前、ロシアが、イラン南部に4基の原子力発電所を建設する250億ドルの契約を結んでいた。イランがこれを払えるのかどうか・・?

また制裁が発動した翌日29日(月)、イランは、イスラエルのスパイだったとする人物バフマン・コウビ・アスルを処刑したと発表した。

www.timesofisrael.com/iran-hangs-man-accused-of-spying-for-israel-amid-wave-of-executions/

石のひとりごと

イランへの制裁が発動になる2日前の26日(金)、ネタニヤフ首相は、国連総会での演説の中で、イランへの制裁は再発動するべきだと言っていた。その2日後と言うタイミングに注目させられた。

また、フランスやイギリスは、パレスチナ国家問題で、イスラエルに厳しい状況を突きつけたが、イランについては、イスラエルと同じところに立っているという様子も興味深いと思った。

やはり、イスラエルという国はあなどってはならないと感じる。

アメリカがガザ停戦に向けた21項目提示:ネタニヤフ首相は合意するか 2025.9.29

アメリカが湾岸アラブ諸国にガザ停戦案21項目を提示

US Secretary of State Marco Rubio attends a meeting with the Foreign Ministers of the Gulf Cooperation Council nations at the Lotte Palace Hotel, Wednesday, Sept. 24, 2025, in New York. (AP Photo/Stefan Jeremiah, Pool)

ガザの戦争が終わらない限り、イスラエルへの非難と孤立は深まる一方である。アメリカのトランプ大統領は、まずは、停戦に持ち込むことを目標にしている。

このため、国連で世界諸国の代表が、ニューヨークに集まる機会を利用して、9月24日(水)、ルビオ国務長官が、湾岸協力会議(GCC)の外相に対し、ガザの戦争を終わらせるための21項目を提示し、協議する時を持った。

GCC諸国とは、バーレーン、クエート、オマーン、カタール、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)の6か国である。

この21項目には、人質全員解放や、ハマスがガザで権力を持たないなど様々な項目を取り入れながら、将来的にパレスチナ国家を設立するためになすべきことがあげられている。

かつてトランプ大統領は、ガザを一掃して、リゾート地にすると言っていたが、それとは違って、パレスチナ人がガザにとどまることを認め、将来的なパレスチナの国を目指すなど、湾岸諸国の意向も取り入れた現実的な案である。その21項目のまとめは次のとおりである。

1)ガザは非過激化され、テロのない、近隣に脅威のない地域になる。
2)ガザはその住民たちにとって有益になるよう、再開発される。

3)もしイスラエルとハマスが合意した場合、イスラエルは直ちに作戦を停止し、徐々にガザから撤退する。

4)イスラエルが合意を公に受け入れた場合、その48時間以内に、人質は全員解放される。

5)人質が解放されると、イスラエルは、数百人のパレスチナ囚人(終身刑囚人)と、ガザ戦争勃発後に拘束したガザのパレスチナ人1000人を解放する。ガザのパレスチナ人数百人の遺体も解放する。

6)人質を解放したハマスには、恩赦が与えられ、ガザからの退去を希望する場合は、受け入れ国までの安全な通行を認める。

7)合意が成立すれば、1日に支援物資600台のトラックの搬入や、重要インフラの復旧、瓦礫の撤去機材の搬入を再開する。

8)支援物資は、ハマスと関係ない国連や赤十字社が配布する。

9)ガザは、パレスチナの技術系の人々からなる暫定政府が統治し、市民の生活のサービスを提供する。監督は、アメリカとアラブ諸国、欧州諸国が協議の上、設立する新たない国際期間が担う。この委員会が、パレスチナ自治政府(汚職まみれ)の改革が終まで、資金調達の枠組みを構築する。

10)中東における近代都市建設の経験ある専門家が、投資誘致や雇用創出を目的とした計画を作成する。

11)経済特区を設立し、参加国の間で、関税などの料金を引き下げる。

12)ガザから強制的な移住を求められることはない。出ることを決めた人も戻ることは可能とする。

13)ハマスは、ガザの統治に一切、関与しない。トンネルなど軍事インフラはすべて破壊する。新しいガザの指導者は、近隣諸国との平和共存を約束する。

14)ハマスとガザの他の組織は義務を遵守し、地域に安全を保障する。

15)アメリカは、アラブ諸国とその他の国際パートナーと協力し、ガザに展開する国際安定化部隊を編成し、国内帰還としてのパレスチナ警察部隊の育成と訓練を行う。

16)イスラエルはガザ地区を占領、または併合しない。イスラエル軍は、現在占領している部分を徐々に引き渡す。

17)ハマスがこの提案を拒否する場合、上記項目は、テロに同い地域ですすめられる。イスラエル軍は徐々に、国際安定化部隊に治安維持の役割を引き継いでいく。

18)イスラエルは今後、カタールへの攻撃は行わない。

19)住民の脱過激化を図るプロセスを確立する。

20)ガザの再開発が進み、自治政府の改革が実施できた場合、パレスチナ国家樹立への道筋になる可能性があるとする。しかし、いつその道筋ができるのかも含め、それを決定づけるものではない。

21)アメリカは、イスラエルとパレスチナの平和的共存に向けた対話を支えることとする。

www.timesofisrael.com/revealed-us-21-point-plan-for-ending-gaza-war-creating-pathway-to-palestinian-state/

イスラエルは受け入れるのか?ハマスは?

この21項目について、トランプ大統領は、まもなく合意に至るといつもの楽観を主張している。しかし、GCC諸国、アッバス議長も、何らかの変更を提案しているとの情報がある。

イスラエルでは、このまま戦争を続けても、人質を危険に追い込み、戦死者も増えるだけであり、仮に勝利を得た場合でも、国際社会からの孤立という、“敗北”が待っているだけだとして、停戦交渉に応じるようにと訴えるデモも起こっている。

しかし、右派系議員がこれを認めるとは考えにくい。ネタニヤフ首相は、本日、トランプ大統領とも会談することになっている。

エルサレムポストは、ネタニヤフ首相は、トランプ大統領をとるか、国内で、自身の立場を支えている右派議員を取るのか、歴史的な決断になると書いている。

www.jpost.com/israel-news/article-868776

石のひとりごと

この21項目。どうにもまとまりがなく、順番もバラバラな感じである。具体性や現実味がない項目もある。どうにも先が見えない感じである。今後、どうなるのか、注目しつつ、お伝えしていく。

第80回国連総会で孤立するイスラエル:ネタニヤフ首相演説前に出ていく代表たち 2025.9.29

ガザ問題でイスラエルの孤立がいよいよ深まる中、ニューヨークでは、9月22日(月)から国連総会が行われている。

22日初日には、フランスとサウジアラビアが先導して、ガザ問題に関連してパレスチナ国家承認に関する議論が行われ、フランスはじめ、新たに10か国がパレスチナ国家承認を発表した事は、お伝えした通りである。

国連総会一般演説で相次ぐイスラエルとネタニヤフ首相非難

ネタニヤフ首相が登壇する2日前の24日(水)、カタールとヨルダンが、ネタニヤフ首相を戦争挑発であり、地域の脅威になっていると非難した。トルコのエルドアン大統領は、イスラエルはガザでジェノサイドを行っていると非難。「ネタニヤフ首相は、和平交渉や、人質解放には興味がないと非難した。

国連のグテーレス事務総長は、イスラエルが、アンバランスな集団懲罰を行っていると非難。基本的な人道を欠く行為だとして、「在任中の9年間で最も大きな死と破壊だ」と述べた。

September 25, 2025. (AP Photo/Richard Drew)

パレスチナ自治政府アッバス議長(89)は、アメリカが入国を禁止したので、25日(木)オンラインで演説した。

アッバス議長は、イスラエルのガザでのジェノサイドを非難するとともに、ハマスによる10月7日の虐殺についても、これはパレスチナ人全員を表すものではなく、独立への運動とも無関係だと非難した。

ハマスやその他の組織は、パレスチナの国家を設立するために、武器を自治政府に引き渡さなければならないと述べた。

しかし、イスラエルは自治政府がガザを支配することは拒否しており、国際社会も、今のままの自治政府ではなく、大きな変革が必要であることは認めていることである。しかし、アッバス議長は、新たにパレスチナの国を承認した欧米諸国に感謝を表明した。

アッバス議長は、演説の中で、即刻の停戦や、飢餓を武器として使うことを辞めさせるなど9項目を強調した。

www.timesofisrael.com/in-un-speech-abbas-denounces-israeli-genocide-rejects-what-hamas-did-on-oct-7/

ネタニヤフ首相演説:ガザでも拡張機でライブ配信

こうした非常に厳しい雰囲気の中、ネタニヤフ首相は、26日(金)に登壇。約40分の講演を行った。演説に先立ち、反発を表現するためか、アラブ、イスラム諸国や欧州諸国の代表や外交官たちが、大勢ぞろぞろと会場からで出て行く様子が世界に流れることとなった。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/hundreds-of-diplomats-stage-walkout-from-un-general-assembly-as-netanyahu-enters-to-speak/

ネタニヤフ首相はまず、イラン傀儡であるヒズボラのナスララ党首は死亡、シリアのアサド政権も崩壊、イエメンのフーシ派もかなりの打撃を与えたこと、またイランそのものへの核開発への打撃を与えたことを語った。

しかし、イランの核開発は終わったわけではないとして、イランへの制裁を再開しなければならないと訴えた。

*この翌日の27日(土)、国連安保理は、イランが核開発の監視に従わない動きが続いていたことから、2015年にイランとの核合意で解除していた制裁の再会を決め、28日に制裁は再発動した。これにより、イランは、ウランの濃縮活動停止や武器の取引も制限される。

ガザのハマスについては、10月7日の残虐な行為を世界は忘れているとして、再度訴えるとともに、ハマスは、何度でもこれを繰り返すと言っていると訴えた。また、パレスチナ人の90%が、10月7日を踊りながら賞賛していたと報告した。

September 26, 2025. (Social media; used in accordance with Clause 27a of the Copyright Law)

ネタニヤフ首相はこの講演が、ガザにいるハマスや人質にも聞こえるよう、ガザ周囲に拡声器を設置して、ライブ配信を行なっていた。

このため、今も生きているとみられる人質の名前を全部あげ、まずはヘブライ語で、人質たちに救出を約束。英語に戻って、ハマス指導者たちに、ただちに武器を捨て、人質全員を解放するように訴えた。

ネタニヤフ首相は、国際社会が本来は、イスラエルを助けるべきところ、その逆を行っていると非難した。

10月7日の結果として、エルサレムから1マイルのところに、パレスチナの国を認めることは、9.11(アメリカ同時多発テロ)を行ったアルカイダに、ニューヨークから1マイルの地点に国を与えるようなものだと訴えた。

また、ベツレヘムの住民は、イスラエルが支配していたころは、80%がクリスチャンだったが、パレスチナ自治政府の支配になってからは、20%にまで減少したと述べ、イスラエルではなく、パレスチナを支援することは、キリスト教徒を殺した者に、褒美を与えることになると語った。

最後に、「イスラエルは、3000年にわたって、自分の国を持ち、軍を持ち、さまざまな発明を通して、世界の光となることを夢見てきた。10月7日、イスラエルの敵はその光を消そうとした。しかし、神の助けで、わたしたちは、素晴らしい将来と繁栄、平和を勝ちとるだろう。」と締めくくった。

www.timesofisrael.com/full-text-of-netanyahus-speech-we-wont-let-the-world-shove-a-terror-state-down-our-throat/

国連外では数千人が反イスラエルデモ:ネタニヤフ首相演説中

ネタニヤフ首相が演説していた間、ニューヨーク市では、ネタニヤフ首相に反対するデモを行なっていた。ガザでジェノサイドをしているのに、(国際裁判所がある)ハーグではなく、ニューヨークにいるのはおかしいなどと言っていた。

www.aljazeera.com/news/2025/9/26/protests-calls-for-sanctions-greet-netanyahu-at-un-amid-gaza-horrors

アラブ諸国首脳たちの演説:厳しいイスラエル非難続く

ネタニヤフ首相に続く首脳たちの演説でも、ガザにおけるイスラエルの行動、それを導いているネタニヤフ首相への非難が相次いだ。エジプトのアブデラディ外相は、「中東が内部崩壊の危機に瀕していると警告し、その原因は、イスラエルによる理不尽な侵略にある」と述べた。

サウジアラビアのファイサル王子は、「飢餓、強制移住、組織的殺害など、占領軍による野蛮な行為が行われている。ガザにおけるパレスチナ人の苦しみは前例のない人道危機だ。」と非難した。

中東の首脳たちは、ユダヤ国家がガザで大量虐殺をしていると非難し、パレスチナの独立国家を求めると訴えた。

www.timesofisrael.com/arab-leaders-decry-gaza-genocide-urge-palestinian-state-in-impassioned-un-speeches/

イランのハメネイ師は、ネタニヤフ首相演説の後、Xに「邪悪なシオニスト政権は、最も軽蔑され、孤立しているとアップした。

また同じ頃、ベイルートでは、イスラエルに殺されたヒズボラのハッサン・ナスララ党首の死後1年を記念する行事が行われ、イスラエルへの敵意を表明していた。

www.timesofisrael.com/khamenei-mocks-netanyahu-un-walkout-most-despised-regime-in-the-world/?utm_campaign=most_popular&utm_source=website&utm_medium=article_end&utm_content=3

石のひとりごと

別項目で詳細をお伝えするが、ネタニヤフ首相がイランへの制裁復活を求めた翌日に、それが実現したことに驚かされた。いくら世界から孤立しても、主はやはり背後におられるのだろう。

世界はイスラエルを非難し、西岸地区とガザ地区にパレスチナの国を建てようと訴えている。それが実現可能かどうかは別として、次のみことばを思い出した。

見よ。わたしがユダとエルサレム回復させるその日、わたしはすべての国民を集め、彼らをヨシャパテの谷に連れ下り、わたしの国、民、わたしのゆずりイスラエルのために、そこで彼らをさばく。彼らはわたしの民を諸国の民の間に散らし、わたしの地を自分たちの間で分配したのだ。(ヨエル書3:1-2)

聖書によると、西岸地区とガザ地区は、いわゆるイスラエルへの約束の地に含まれている。現状にそれが、そのまま当てはまると主張しているわけではない。

しかし、いかんせん、その地域を人間たちが二国家に分けようとしているのが、今の世界である。それを訴えている人々や国々は、もしかしたら、将来、主の裁きにあうのではないだろうか。

大多数の意見が、いつも正解ではないということは、太平洋戦争でユダヤ人迫害を、国をあげて押し進めたドイツ、またその周辺の国々の歴史からも明らかである。

イスラエルは聖書の神が実在することを、その歴史を通して明らかにしている。イスラエルに敵対するイランなどの国々、イスラエルに非難する声を上げる人々や、世界のこの動きに、なにやら背筋が凍る思いもする。

フーシ派ドローンがエイラット市街地に着弾:イスラエル人20人負傷 2025.9.25

9月24日(水)夜、イエメンからフーシ派が発射したドローンが、イスラエル最南端エイラッとのショッピングエリア2着弾。イスラエル人20人以上が負傷した。

このうち60歳男性と26歳男性の2人が重傷で、26歳男性は命の危険に陥っている。この他、30歳男性が中東度、すくなくとも19人が軽症となっている。

イスラエル軍によると、まだ調査中ではあるが、ドローンがかなり低空飛行しいたことから、アイアンドーム迎撃ミサイルが、キャッチできなかったと見られている。

ドローンの発見が遅れたため、市民への警報は鳴らせたが、戦闘機などが発進して迎撃することもできなかったとのこと。フーシ派は、この攻撃の責任を認めている。

フーシ派のドローンは、今月初頭、エイラットのラモン空港に着弾。1人が負傷したほか、先週、エイラットのホテルにも着弾した。この時、負傷者は出なかった。今回の攻撃は3回目である。

フーシ派は、イスラエルへの攻撃をするたびに、イスラエル軍による、首都サナアなどへの相当厳しい反撃を受けている。今回も、カッツ防衛相は、「イスラエルに危害を加えるものは、7倍の危害を受ける」と言っている。

www.timesofisrael.com/over-20-wounded-including-2-seriously-in-houthi-drone-attack-on-eilat/

ガザ市戦闘でイスラエル兵2人戦死 2025.9.25

国際社会では、パレスチナ人の国を承認するなどの話題になっているが、ガザ、特にガザ市では、イスラエル地上軍によるハマス打倒にむけた空爆と地上軍による戦闘が続いている。

ハマスは、人質全員をガザ市各地にばらばらに置いているとしており、イスラエル軍の攻撃で犠牲になりやすい形にしていると主張しており、まさに昔の銀行強盗のように人質を盾にする様相である。

またハマスは、相変わらず民間施設の背後からの攻撃を続けている。イスラエル軍は、シファ病院から攻撃してくる様子を発表した。シファ病院は以前からハマスの拠点として使われていた病院で、イスラエル軍は、これまで2回攻撃に及び、地下トンネルや司令室を摘発、破壊している。

イスラエル軍の呼びかけで、ガザ市に100万人はいるとみられていた避難民の70万人以上は、すでにガザ南部へ移動したとイスラエル軍は見ている。

しかし、ガザの民間防衛隊なる組織によると、移動を警告されても、交通手段がなく、自費で移動する金もない人が多く、まだ45万人はいると主張している。

www.timesofisrael.com/idf-troops-push-deeper-into-gaza-city-as-half-a-million-residents-said-to-have-left/

ハマスは、イスラエル軍の激しい戦闘の中、毎日何十人もの市民が死んだと報じ続けている。

IDF

こうした中、イスラエル軍の側にも戦死者が2人となった。9月23日(火)早朝、ハマス戦闘員が、イスラエル軍戦車に対戦車砲を発射し、中隊長だったシャハル・ネタネル・ボザグロ少佐(27)が負傷。病院に運ばれたが、死亡した。

www.timesofisrael.com/idf-officer-killed-in-gaza-city-combat-the-first-fatality-in-armys-new-offensive/

ボサグロ少佐の妻アディさんは、妊娠初期で、6ヶ月後には、息子が生まれる予定である。新年の例祭の最中に、夫が負傷したとの連絡を受け、病院に急いだが、夫は死亡した。

ボサグロ少佐は、自分の最も重要な任務は、部下たちを無事に帰らせると言っていたという。その任務は果たせたということである。

つづいて、24日(水)、駐屯地の警備にあたっていたとき、遠方からの射撃を受け、チャラチュウ・シモン・デマラシュ二等軍曹(21)が死亡した。

ガザ地上戦が始まってからのイスラエル軍戦死者は471人となった。

www.timesofisrael.com/idf-soldier-killed-in-hamas-sniper-attack-on-gaza-city-guard-post/?utm_source=article_hpsidebar&utm_medium=desktop_site&utm_campaign=idf-officer-killed-in-gaza-city-combat-the-first-fatality-in-armys-new-offensive

www.ynetnews.com/article/r1efpvznxe#autoplay

ガザ市でハマスがイスラエル協力容疑パレスチナ人3人を公開処刑:国際社会は西岸地区とガザの医療回廊を要求 2025.9.25

ハマスがイスラエル協力容疑でパレスチナ人3人を公開処刑

ガザでは、反ハマスの部族が、わかっているだけでも2つは立ち上がっており、イスラエルに新年の挨拶を送った者もいた。

そうした中、ハマスが3人を見せしめに公開処刑する映像が流れてきている。

場所はガザ市内で、処刑された3人の中には、ガザ南部でイスラエル軍の治安維持に協力しているアブ・シャバブの関係者とみられている。

www.timesofisrael.com/hamas-executes-collaborators-in-strip-as-it-faces-rising-challenges-from-militias/

国際社会が西岸地区とガザを結ぶ医療回廊設立をイスラエルに要請

激戦が続く中、オーストリア、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、EUなど24か国が、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区とガザ地区を結ぶ医療回廊を設立するよう、イスラエルに要請を出した。

国際社会は以前にも同様の要求をしたが、イスラエルは治安上の理由として、拒否した経過があったとのこと。

西岸地区とガザを結ぶ、しかも東エルサレムを含めとなっており、およそ非現実的といえる。イスラエルは今回も拒否すると予想される。アメリカはこれには署名していない。

www.timesofisrael.com/idf-officer-killed-in-gaza-city-combat-the-first-fatality-in-armys-new-offensive/

石のひとりごと

ハマスの残虐さは、世界にどのぐらい伝わっているのだろうか。国際社会は、この状態にあるガザと西岸地区を結ぶ医療回廊と作るという。現状の認識のズレがあまりにも大きく驚かされる。

ウィトコフ特使は、ここ数日の間にガザで突破口が開けると言っている。しかし、これがいったい、どのように終るのか、まだほとんど見えないといえる。

二国家解決に関する国連総会:フランスなど10か国がパレスチナ国家承認を表明 2025.9.24

フランス、サウジアラビア主導でパレスチナ国家承認に関する国連会議

イスラエルと全世界のユダヤ人が、ローシュ・ハシャナを祝っていた9月22日(火)、ニューヨークの国連本部では、フランスとサウジアラビアが中心となり、パレスチナ問題における二国家解決の促進議題にした総会が行われた。

この会議は、7月末に、フランスとサウジアラビアが出した、いわゆるニューヨーク宣言*に基づき、パレスチナ国家承認に向けて具体的な案を進めようとする会議である。

*ニューヨーク宣言:フランスとサウジアラビアが国際社会に提示している内容

at the United Nations aimed at galvanizing support for a two-state solution to the Israeli-Palestinian conflict, Monday, Sept. 22, 2025, at UN headquarters. (AP Photo/Yuki Iwamura)

ニューヨーク宣言は、7月29日に国連で行われた、高官レベルでのパレスチナ問題の平和的解決を目指す会議で、合意されて出された宣言である。

会議共同議長:フランス、サウジアラビア
作業部会共同議長:ブラジル、カナダ、エジプト、インドネシア、アイルランド、イタリア、日本、ヨルダン、メキシコ、ノルウェー、カタール、セネガル、スペイン、トルコ、イギリス、EU、アラブ連盟

ニューヨーク宣言では、ガザにおける戦争を終結させることを喫緊の課題として認識し、敵対行為の恒久的な終結、すべての人質の解放、パレスチナ捕虜の交換、すべての遺体の返還、イスラエル軍のガザからの完全撤退につながる停戦合意の全ての段階での履行を求めるとしている。

ここで宣言されたことは、「戦争、占領、テロ、そして強制的な避難は、平和も安全ももたらさない。政治的解決のみがそれを可能にする」「イスラエル・パレスチナ紛争の終結のためには、国際法に基づき、イスラエル人とパレスチナ人双方の正当な願望を満たすことが唯一の道だ」ということである。

このイスラエル人とパレスチナ人双方の正当な願望というのが、イスラエル人もパレスチナ人もどちらもが、国を持って、同じ立場に立てるようにするということである。この問題解決の第一歩は、国際社会が、パレスチナ国家を認めることから始まるということである。

ガザはヨルダン川西岸地区と統合されなければならないとし、占領、包囲、領土縮小、強制的な移住があってはならない。 パレスチナ全土における統治、法執行、安全保障は、適切な国際社会の支援の下、パレスチナ自治政府のみが担わなければならない。我々はパレスチナ自治政府の「一国家、一政府、一法、一銃」政策を歓迎するとしている。

パレスチナとイスラエルという二つの民主的で主権国家が、エルサレムに関するものも含め、1967年の境界線に基づき、平和かつ安全に共存する二国家解決の実施を支持するとなっている。(以下のページで全文確認可能)

onu.delegfrance.org/new-york-declaration

*マクロン大統領は、ハマスは統治に関わらないとし、段階的にハマスの非武装化を進めると言っている。

フランス含め10カ国がパレスチナの国の承認を発表

国連総会が行われている中、上記ニューヨーク宣言を基に9月22日(月)に、フランス、サウジアラビア主導でパレスチナ国家承認に関する国連会議が行われた。

パレスチナ国家を認めないとするイスラエル、アメリカは欠席。日本もパレスチナ国家承認は、今回は見送るとして欠席を表明。パレスチナ自治政府のアッバス議長は、アメリカが入国を認めなかったので、オンラインでの出席となった。

フランスのマクロン大統領は、この会議において、ハマスの暴力で死亡したイスラエル人の犠牲者は忘れないし、人質の解放に重要性や、反ユダヤ主義との戦いもやめないと述べた上で、しかし、イスラエルの対応は行き過ぎだったと述べた。

今、ガザでの戦争はとにかく終わらせなければならないと述べ、国際社会は、終わりのないイスラエルとパレスチナの平和の欠如に対する「集団責任」を追っていると述べた。

フランスのマクロン大統領は、フランスがパレスチナ国家を承認すると正式に表明。続いて、ベルギー、ルクセンブルグ、マルタ、サンマリノ、アンドラも同様にパレスチナ国家承認を表明した。

Source: United NationsBy The New York Times

この前日の21日(月)には、イギリス、オーストラリア、カナダ、ポルトガルがパレスチナ国家承認を発表していた。これにより、国連加盟国193カ国中、157カ国が、パレスチナを国と承認することとなった。

NYTによると、NATO加盟32か国中18か国、G20のうち14か国が、パレスチナ国家を承認した形である。

G20で、現時点でパレスチナ国家承認していない国は、ドイツ、イタリア、日本、韓国、アメリカである。

国連安全保障理事会で、実効力ある決議を出すことができる常任理事国の中では、イギリス、フランス、中国、ロシアが、パレスチナ国家認めたことから、これに反対するのは、アメリカのみとなった。

イスラエルとアメリカの孤立が明確になったと言われている。

www.timesofisrael.com/france-leads-group-of-european-nations-recognizing-palestinian-state-at-un-summit/

パレスチナ国家?現実味なし?:地元パレスチナ人とハマスからの反応 2025.9.24

西岸地区のパレスチナ人の反応

フランスの案では、パレスチナの国は、ガザと西岸地区を合わせた地域を領土とし、支配者の中心は、パレスチナ自治政府になっている。オンラインで演説したアッバス議長は、その用意があると主張した。

地元西岸地区のパレスチナ人たちの間では、国際社会がパレスチナの国を認めたことを、象徴的だと喜ぶ声もある。ラマラでは、これを祝うラリーも報告されている。しかし、なんとなく笑顔がない・・?感じである。

一方で、実際の生活には何も変化はないとの予想から、冷めた様相にあるとの記事も複数出ている。

ガザのパレスチナ人は、フランスの動きを歓迎すると言っているが、笑顔はなく、今日のサバイバルに追われている感じであった。

www.timesofisrael.com/west-bank-palestinians-shrug-off-frances-statehood-recognition-what-will-this-bring-us/

www.france24.com/en/middle-east/20250923-palestinians-in-west-bank-have-mixed-feelings-over-france-s-recognition-of-palestinian-state

実際のところ、自治政府内の通貨はイスラエルのシェケルである。パレスチナ人たちの生活は、イスラエルなしにはありえない。

その肝心のイスラエルが反対している以上、独立したパレスチナの国など、現実味がないといえる。

さらには、アッバス議長率いるパレスチナ自治政府は、経済的に崩壊寸前で、自治政府自体も汚職問題で市民からの支持はほとんどない。崩壊直前の状態なのである。

ハマスの反応:武装解除は拒否

24日になり、ハマスがこの件に関して声明を出した。それによると、パレスチナ国家を承認し、ガザでの戦争を終わらせる具体的な措置がとられたことは称賛に値すると述べた。

しかし、占領が集結し、エルサレムを首都とする独立したパレスチナ国家が樹立されるまでは、武器を保有することは国際法によって保障されている権利であると述べ、武装解除への拒否を表明した。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/hamas-lauds-palestinian-state-recognition-but-insists-on-right-to-retain-weapons/

親パレスチナデモはパレスチナ国家承認に反対!!?

22日の会議が行われていた国連の前では、親パレスチナのデモ隊数百人が、パレスチナ国家承認の動きに反発するデモを行っていた。

このデモ隊は、イランの旗も振りながら、「イスラエルは地獄に堕ちろ」などとの叫びが出ていた。

www.timesofisrael.com/anti-israel-activists-protest-at-un-after-wave-of-palestinian-statehood-recognitions/

結局、パレスチナ人の中に、本気で国家を立ち上げようとする動きはなく、目立つのは、イスラエルを破滅させようとするハマスなどの過激派だけというのが現実である。

これで国家が成立するのかというところである。

パレスチナ国家承認の動きにイスラエルは西岸地区入植地拡大政策で対決姿勢 2025.9.24

イスラエルは、パレスチナ自治政府とのこれまでの関係や、今自治政府が崩壊寸前であること、ハマスが、イスラエル殲滅を諦めるはずがないことなどから、フランスが主導しているこの動きが、空想にすぎないと表明。

パレスチナ国家承認は、ハマスに10月7日の報酬を与えるようなもので、イスラエルだけでなく、将来的にも世界にもテロが拡大する危機につながると警告している。

ネタニヤフ首相は、9月22の国連でのパレスチナ国家承認に関する会議を前日、パレスチナ国家の設立はありえないと明言する声明を出した。

また、与野党統一した声明として、パレスチナ国家承認は、テロへの奨励となり、イスラエルの安全保障に大きな脅威になるとして、イスラエルはその対抗措置を講じると発表した。

その措置として、ネタニヤフ政権の一部の閣僚は、西岸地区の併合を主張する。ネタニヤフ首相は、併合には同意しないが、“ユダヤ・サマリヤ地区”(西岸地区の聖書名)における、ユダヤ人入植地を倍増させると発表した。

すると、世界では、西岸地区でのユダヤ人入植者とパレスチナ人の衝突が、報じられるようになり、国際社会からイスラエルへの新たな非難につながっている。

野党議員たちは、パレスチナ国家併合に向けた世界の動きに反対することには合意しつつも、このような事態になったのは、ネタニヤフ首相の外交ミスが招いたデザスター(災害)だと言っている。

www.timesofisrael.com/coalition-figures-push-west-bank-annexation-as-response-to-palestinian-state-recognition/

石のひとりごと

フランスのマクロン大統領の案は、人間的には、理想的に聞こえるかもしれないが、現地の現状や価値観からはかけ離れている。現地に住んだことがある人ならすぐわかることと思う。にもかかわらず、国際社会は、どんどんそちらへ流れようとしている。なんとも理解不能な様相である。

実際、現地では、西岸地区の入植地に話題が拡大し、さらなる問題に発展しはじめている。世界がどんどん混乱の深みに向かうのではないかとの不安な様相である。

しかし、覚えるべきは、ともかくも、主がイスラエルを見捨てることはないということである。また、イスラエルは、今はまだ聖なる国ではなく、聖書の価値観はあるものの、まだ救われていない状態にある国であるということ。

イスラエルの悪も裁かれずに置かれることはない。しかし、イスラエルについては、国全体が悔い改めに導かれ、恵によって赦される時が約束されているということである。その時に、イスラエルに敵対してきた組織や国々は、主の前に恥を見ることになるのだろう。

ニュースでイスラエルの悪を見る時、それを非難するのではなく、主の前にとりなし、とるべき道へと導きを祈る時であると考える。

兄弟たち。私はあなたがたに、ぜひこの奥義を知っていていただきたい。それは、あなたがたが自分で自分を賢いと思うことがないようにするためです。

その奥義とは、イスラエル人の一部がかたくなになったのは異邦人の完成のなる時までであり、こうして、イスラエルはみな救われる、ということです。こう書かれているとおりです。「救う者がシオンから出て、ヤコブから不敬虔を取り払う。

これこそ、彼らに与えたわたしの契約である。それは、わたしが彼らの罪を取り除く時である。(ローマ書11:25-27)

 

見よ。わたしがユダとエルサレムの繁栄を元どおりにする、その日、その時、わたしはすべての国民を集め、彼らがヨシャパテの谷に連れ下り、その所で、彼らがわたしの民、わたしのゆずりの地イスラエルにしたことで彼らをさばく。

彼らはわたしの民を諸国の民の間に散らし、わたしの血を自分たちの間で分け取ったからだ。(ヨエル書3:1-2)