シドニーのハヌカを祝うユダヤ人イベントで銃撃テロ15人死亡:テロリストはイラン・IS関連か 2025.12.15

シドニーのハヌカ1日目イベントで銃撃テロ:15人死亡

イスラエルと世界のユダヤ人たちは、12月14日(日)日没から8日間、毎日ろうそくを灯すハヌカの祝いを行っている。

People and emergency workers gather at the location of a deadly terror shooting at a Jewish event at Bondi Beach in Sydney, Australia, December 14, 2025. (AP/Mark Baker)

その第一日目、14日(日)午後、オーストラリアの首都、シドニーのボンダイ・ビーチでは、「海辺のハヌカ」と呼ばれるハヌカの1日目のイベント(超正統派ハバッド派主催)が行われ、1000人以上が参加していた。

そのユダヤ人たちに向かって、テロリスト2人が銃撃を開始した。銃撃は10分続き、銃声は50発との情報もある。

これにより、銃撃犯1人を含む15人が死亡。38人が負傷。27人が今もまだ病院におり、6人は重傷である。

人々が、悲鳴を上げながら逃げる様子がビデオに残されている。恐怖の中、「お母さん、お母さん」と言うヘブライ語も聞こえている。(以下のクリップではない)

オーストラリアでは、ここ30十年で、最悪のユダヤ人暴力事件であり、10月7日以降、イスラエルの外で発生した反ユダヤ主義による虐殺では最悪規模であった。

イスラエル国家安全保障会議は、こうした事件が発生すると、別のテロリストたちが触発され、同様の事件を起こす可能性が高まると警告を発している。

イスラエル政府は、国外にいるイスラエル人たちに対し、無防備な公共イベントには参加しないようにと警告を出した。

オーストラリア政府は、現在、「シェルター作戦」を立ち上げ、ユダヤ人関係機関に、警察官300人を派遣して、警備にあたらせている。

オーストラリアでは、最近、大規模な反イスラエルデモが発生しており、ユダヤ人に対するテロが懸念されるとして、イスラエルからは、オーストラリア政府に取り締まりの強化を要請していたという。

しかし、現場では、反シオニズムから反イスラエル主義の沸騰が始まっており、オーストラリアにいるユダヤ人たちからすると、オーストラリア政府は何もしていないとみられていた。

(ABIR SULTAN / POOL / AFP)
(Hilary Wardhaugh / AFP)

事件後、ネタニヤフ首相は、オーストラリア政府は何もしてこなかったと、強い非難を表明した。

なお、これに先立ち、オーストラリア政府は、パレスチナ国家設立に賛成する声明を表明したことから、ネタニヤフ首相が、非難声明を出す中での今回の事件であった。

www.timesofisrael.com/shooters-in-sydney-attack-ided-as-father-and-son-isis-flag-said-found-in-their-car/

www.ynetnews.com/article/hyer00m6gwx#autoplay

銃撃犯はIS関係の父息子:背後にイランの影?

Sydney’s Bondi Beach on December 14, 2025 (Screen grab/Sky News)

テロを実行した2人は、ナヴィード・アクラム容疑者(24)と、その父親サジド(50)と特定されている。

サジドは、現場で警察に射殺されたが、ナヴィード容疑者は重傷で病院に搬送されている。

父親のサジドは、1998年にオーストラリアに来て、2001年にオーストラリア人(または永住権保持者)のパートナーとして、在住許可をもらっていた人物だった。

ナヴィード・アクラム容疑者は、2019年に、ISとの関わりで、捜査を受けていた。また、オーストラリアTV、ABCの情報によると、父息子は、ISに忠誠を誓っていたとのこと。銃撃現場の近くにあった車には、ISの旗があった他、即席の爆破装置も発見されていた。

www.timesofisrael.com/shooters-in-sydney-attack-ided-as-father-and-son-isis-flag-said-found-in-their-car/

問題はこの背後に、イランの存在が疑われる点である。イスラエルの諜報機関モサドは、ちょうど1月前、オーストラリア情報機関に対し、イランの支持下にあるテロの“インフラ”が、ユダヤ人を標的としたテロを計画していると伝えていた。

これを受けて、オーストラリア政府は、その“インフラ”はすべて撤去したと表明していた。今回のテロが、この“インフラ”と関連があるかどうか、オーストラリア当局は捜査しているとのこと。

モサドによると、この“インフラ”は、IRGC(イラン革命防衛隊)クッズ部隊の上級司令官サルダル・アマルが率いている。この部隊は、2023年10月7日以降、世界中でユダヤ人やイスラエル人を対象としたテロを計画しているとみられている。

実際、オーストラリアでは、2024年夏に、メルボルンのシナゴーグと、シドニーのコシェルレストランへの放火事件が発生していた。この時、オーストラリア政府は、IRGCをテロ組織に指定。在オーストラリア・イラン大使を追放していた。

テロリストと戦ったイスラム教徒男性:ネタニヤフ首相も称賛

一方、今回のテロ事件では、一人の男性が、銃撃犯に果敢に飛びかかる様子が記録されていた。男性は犯人と言い合いになる中、腕を2発撃たれて、病院へ搬送されていた。

この男性は後で、イスラム教徒のアフマド・アル・アフマドさん(43)と判明。ネタニヤフ首相は、ユダヤ人を助けようとしたアフマドさんを英雄の頂点と敬意を表している。オーストラリアのアルバネーゼ首相も「同胞オーストラリア人を助けようとした」ヒーローと称賛している。

ハヌカ1日目に殺害されたユダヤ教正統派ハバッド派ラビも2人他これまでに判明した犠牲者 2025.12.15

大変な虐殺の影響は大きい。事件翌日から、現場には、たくさんの花が捧げられている。

オーストラリアのアルバネーゼ首相も、事件翌日の15日(月)に現場を訪問。この日は全国で半旗とした。「オーストラリアは、分断、暴力、憎悪は受け入れない。共にこの件も乗り越える」と語った。

死者のうち、現時点で身元が明らかになった人は7人。1人は、10歳の少女マチルダさん。

また、ホロコーストサバイバーで、ウクライナ出身のアレックス・クレイとマンさん。銃撃時、一緒にいた妻のラリサさんを自分の体で守って死亡していた。

もう一人は、昨年、仕事で、フランスからシドニーに移住していたダン・エルヤカムさん(27)。旧ソ連出身のルーベン・モリソンさん(62)。成功したビジネスマンで、ハバッド派の慈善事業に、たくさん献金していた人だった。

ティフォール・ヴァイツェンさん(78)は、家族の友人を守ろうとして死亡した。シナゴーグでは、子供たちにお菓子を配るおじいちゃん的存在だったとのこと。

定年退職した元警察官のピーター・ミーガーさん。マリカ・ポガニーさん(82)は、孫のいる祖母で、20年以上、コシェルの食事12000食を作って配達してきたことで、ユダヤ人コミュニティから表彰を受けていた人だった。

ハバッド派のラビも2人死亡した。1人は、シドニーで18年間、ラビとして仕えたラビ・エリ・シュランガー(40)。遺族は妻と5人の子供たちである。

もう一人は、ラビ・ヤコブ・ハレヴィ・レヴィタン。その他、犠牲者の多くは、シナゴーグの教会員だったとみられている。

今回、襲撃を受けた、シドニーのハバッド派シナゴーグの総責任者、ラビ・イェホラム・ウルマンは、殺害されたラビ・エリ・シュリンガーの義理の父親だった。

事件翌朝の礼拝で、ラビ・ウルマンは、「テロリストは、我々を亡き者にしようとする。しかし、そうはならない。私たちは変わらない。同じようにする」と語っている。

しかし、神の奇跡を思うハヌカの初日にこのような大虐殺で、しかも神に忠実だったラビたちが殺されたのである。

ラビ・ウルマンは、「本当にわからない。しかし、選択の余地はない。「真の裁き主に祝福を」と言うのだ」と目の涙を抑えながら語り、残された信者たちに一致を呼びかけた。

www.timesofisrael.com/chabad-rabbis-ukrainian-holocaust-survivor-among-those-killed-in-sydney-hanukkah-attack/

<石のひとりごと>

亡くなった方々の人生を思うと、失われたそれぞれの世界を思わされる。

それにしても、ハヌカの第一日目である。まさにクリスマスや復活祭の祝いをしている時に、愛する家族や、教会の牧師やスタッフが殺されたらどうだろうか。主への疑いを持つ人もいるかもしれない。

ラビ・ウルマンは、それでも裁き主である主に信頼すること、信仰を失わないで共に一致しようと呼びかけている。ユダヤ人の信仰からは、学ぶところが多すぎると思う。

日本にもハバッド派はいる。ハヌカを祝っている。オーストラリアのハバッド派とも関連は深いと思われ、ショックは大きいだろう。

オーストラリアだけでなく、全世界のハバッド派やその他のユダヤ人シナゴーグの人々、コシェルレストランなどが守られるように祈りが必要である。

エルサレムと世界のハヌカ1日目 2025.12.15

エルサレムの嘆きの壁広場では、12月14日(日)日没から、多くの市民が集まる中、ハヌカの1本目の点灯式が行われた。油で揚げたスフガニヨットを配る様子もみられる。

このほか、これから1週間の間、町のあちこちには、ハヌカの9本のメノラーが、毎日順番に点灯されていく。エルサレム旧市街のユダヤ地区では、狭い通りに面する家の前に、毎日1本ずつ、ろうそくが灯されていく。ほのぼのした美しい光景である。

さまざまなイベントも行われる。18日(木)には、YMCAからヘブライユニオンカレッジまでの間で音楽行進が行われる。この他にも、ハヌカ・コンサート、ヘルツェルの丘では、建国と合わせたイベントなど、目白押しで行われる。全て、テロから守られるように。

www.jpost.com/israel-news/article-880021

ネタニヤフ首相とヘルツォグ大統領は、まだ返還されていない遺体の最後の一人、ラン・グヴィリ軍曹の家族とともに、ハヌカの1本目の点灯式を行った。

家族たちは、国家警察アカデミーにおいても、ネタニヤフ首相、警察庁のトップである、ベン・グヴィル国家安全保障相とともに、ハヌカの点灯式に同席していた。

この他、ヘルツォグ大統領夫妻は、生きて戻ってきた人質たちとも点灯式を行った。ザミール参謀総長は、イスラエル北部で行われた、ハヌカ点灯式に出席していた。

世界では、アメリカの各地、ニュージーランド、ハワイ、ドイツのベルリンでも大きなハヌカのキャンドルが設置されている。世界1万5000か所に、公のハヌカのキャンドルが設置される。シドニーもその一つであった。

厳しい治安状況の中、かつて主が、イスラエル人たちの独立を導いたことを覚えるハヌカである。希望はなかなか見えにくいが、聖書には、主は彼らを見捨てないと書いてある。

どんなどんでん返しがあるのか、希望の光が、イスラエル中に、世界のユダヤ人たちの心に灯るようにと祈る。

順境の日には喜び、逆境の日には反省せよ。これもあれも神のなさること。それは後の事を人にわからせないためである。(伝道者の書7:14)

大嵐バイロン被害:1人死亡14人救出・ガザも洪水で悲惨 2025.12.12

イスラエル大雨で洪水・気温低下:死亡1人

大嵐バイロンは、12月10日(水)夜から11日、12日にかけて、イスラエルにとどまり、沿岸部や中央地域で、大雨になった他、南部ネゲブ地方含め、全国的な雨となった。同時に、10度以下という急激な気温の低下も記録した。

特に降水量が多かったのは、北部アトリートで200ミリ、ハイファで150ミリ、テルアビブに近いリションレチオンで120ミリなどとなっている。

洪水の被害が著しかったヤブネでは、道路からスーパーなどが浸水。8カ所から14人が車から救出された。また、自宅で男性(53)が、低体温の兆候を呈して死亡しているのが発見された。

以下はヤブネのスーパー、ラミレビ

道路の浸水は、ナハリヤ、スデロット、レホボトでも見られた。リションレチオンでは、学校で木が倒れ、10歳前後の少女2人が軽傷を負った。エルサレムでも、洪水に巻き込まれた車から脱出して、高台に逃れた人が救出された。

南部ベエルシェバや、ミツぺ・ラモン、死海でも雨が観測された。死海地域では、北部からの鉄砲水も発生したが、国道90号線の封鎖は近い地域に限定されていたとのこと。

ピークは12日朝(日本時間午後)には過ぎると予測されている。

www.ynetnews.com/environment/article/by46bjkzwe#autoplay

www.timesofisrael.com/man-found-dead-of-suspected-hypothermia-amid-winter-storm/

ガザ避難民のテント洪水:十分な保温もできず

ガザ地区では、避難民のほとんど全員がテントに住んでいる中で、この大嵐と低気温に見舞われている。

テント村は水浸し。テントの中が水浸しで、バケツで汲み出そうとする人もいる。道路は泥水に覆われている。子供たちはサンダルを履いている。

気温も下がっているが、毛布などもまだ不十分だという。支援物資は、停戦になって以来、毎日平均600台で入っていたが、今もまだ不十分であることがわかる。

ハマスの横領もあるが、冬に入って雨が降ることをまったく考えにいれていないということである。これから寒い冬に入り、伝染病もはやってくるだろう。

この点から見ても、ガザを支配するハマスが、ガザの人々のことなど、全く気にしていないことは明らかである。

abcnews.go.com/International/wireStory/winter-storm-rips-gaza-exposing-failure-deliver-aid-128308124

2024年に殺害された人質6人がガザでハヌカのろうそく点灯する映像公開 2025.12.12

イスラエル、また全世界のユダヤ人たちは、12月13日(日)夕刻から、22日(月)まで、ハヌカを祝う。9本ある特別なメノラーに毎日、ろうそくを灯して、イスラエルの独立を取り戻した時の神の奇跡を思う。

その3日前になる12月11日(木)、イスラエル軍が、ガザで発見した、ハマスが撮影したビデオクリップを、人質家族フォーラムが公開した。

(The Hostages Families Forum via AP)

映っているのは、2024年8月に、トンネルの中で殺害された状態で発見された、人質6人である。

ハーシュ・ゴールドバーグ・ポーリンさん(23)、エデン・イエルシャルミさん(24)、オーリー・ダニーノさん(25)、アレックス・ロバノヴさん(32)、カーメル・ガットさん(40)、アルモグ・サルシさん(27)

クリップは、ハマスがプロパガンダとして撮影した者と考えられ、かなり長い。ハヌカのろうそくに火を灯す様子もあった。ハヌカの歌を歌い、共に祈っている。笑顔で「ハグ・サメアッハ」とも言っている。

ビデオにむかって、「シャナ・トバ」と新年の祝いを告げるとともに、必ず帰るなどとも言っている。

6人は、共に語り合い、肩を寄せ合って共に祈る様子もあった。拉致されたからすぐの2023年12月の様子であることがわかる。暗いトンネルを歩く様子もある。

この他、映像の中での6人は、髪を刈りあったり、カードゲームをしたりしている。

6人はこの約8ヶ月後の2024年8月、ラファの地下トンネルで殺され、その2日後にイスラエル軍に遺体で発見されたのであった。イスラエル軍は、近くまで来ていたのに、6人を救出できなかったのである。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/newly-screened-footage-gives-unprecedented-insight-into-what-hostages-went-through-in-first-month-of-hamas-captivity/

もう死亡していて、この世にはいないのだが、まるで今もまだ生きているようである。ハーシュ・ゴールドバーグ・ポーリンさんの母親は、ポーリンさんの笑顔に目を止めていた。

今は亡き人質6人の家族たちは、「6人は、生きて帰るべきだった」と語り、なぜ彼らが死ななければならなかったのか、真実を追求し、国家が責任をとってこそ、癒しが始まると語っている。

イスラエル国民に対し、今年、ハヌカを祝うにあたり、人質と、戦死した兵士たちを忘れないでほしいと訴えた。

www.ynetnews.com/article/rkksf3om11e#autoplay

石のひとりごと

生き生きした6人の様子。なぜ今、ここにいないのかと思わない家族はいないだろう。

この人々はなぜ死ななければならなかったのか。主は皆の祈りを聞いてくださらなかったのか。

それでも、ユダヤ人は、すべては彼らの神である主のみこころであることを認めるしかない。ユダヤ人たちは、今年もハヌカを祝うのである。

行方不明のヨットの無事を確認:暴風雨バイロン到来中 2025.12.11

ギリシャ、キプロスを襲った暴風雨バイロンが、イスラエルに到来し、全国的な雨となっている。

沿岸部では大雨になっているが、今の所大きな洪水などの被害の報告はない。ピークは本日(日本時間今夜)と予測されている。

7日(日)から連絡がとれなくなっていた、イスラエルからキプロスへ向かっていたヨットだが、昨日、連絡がとれ、乗っていた5人全員の無事がわかった。

ヨットはその後、バイロンのピーク前にイスラエルへ到着するよう、急いでいるとのこと。

www.ynetnews.com/article/skv3rkpmzl

暴風雨バイロンの雨は、150ミリ以上になる可能性があり、海岸部、北部で洪水になると警戒されている。ネゲブへの鉄砲水で、南部にも洪水が発生するとみられ、様々な警戒体制がとられている。

IDF

軍では、週末に帰宅予定の兵士を早く帰宅させた。

また、10日(水)午後5時から、12日(金)朝6時まで(日本時間11日2時から12日午後1時まで)の外出は必要最小限とし、予定されていた軍の活動を保留にするなどの対処がとられている。

www.jpost.com/israel-news/defense-news/article-879944

(Photo: Kfir Sabag)

北部ヘルモン山(標高2100メートル)のイスラエル軍基地からは、今年初めての雪が降ったとの報告が出ている。

www.ynetnews.com/environment/article/bj9jniuz11g

ガザへの国際部隊派遣は来年初頭へ延期とトランプ大統領 2025.12.11

ガザへの国際部隊派遣は来年初頭へ延期とトランプ大統領

トランプ大統領は、先週、“2週間以内”、言い換えれば、今年中に、ガザについて、第二段階へ進ませると言っていた。

しかし、12月10日(水)になり、来年初頭にまで延期すると発表した。

第二段階では、多国籍軍による国際安定化軍(ISF)がハマスの武装解除をすすめるとともに、ISFとパレスチナ人文民管理職によるガザ地区の管理を設立していく委員会が立ち上がることになっている。

後者の委員会については、トランプ大統領側近クシュナー氏、ウィトコフ米特使、また元英国首相トニー・ブレア氏、元国連中東問題特使ムラデノフ氏が加わることになっている。

しかし、アメリカ以外にどの国が、ISFとこの委員会に加わるのかは、まだ明らかではない。トランプ大統領は、それについても来年年明けに発表するとしている。

しかし、ハマスは、基本的に完全な武装解除には応じないとしているほか、多国籍軍のガザでの駐留は、「占領」だとして反対を表明している。多国籍軍は、レバノンのUNIFILのように、国境周辺に限ると主張している。

イスラエルにとっても、まだ、最後の人質遺体、グヴィル軍曹が戻ってきていない。ハマスの非武装化も断固として達成するつもりである。ISFにトルコが加わることにも反対を表明している。

これでは、武装衝突になる可能性が高く、明確にトランプ大統領の計画に参加すると公宅に表明している国はない。クリスマスも近いことから、トランプ大統領は、第二段階の発表を延期したと、Times of. Israelの記事は書いている。

www.timesofisrael.com/not-in-time-for-christmas-trump-delays-gaza-peace-board-unveiling-to-early-2026/

複雑すぎるガザの現状:反ハマス勢力増加も期待うすし

ガザ地区では、現在、イスラエル軍が、イエローラインまでの領域、ガザ地区の58%を管理している。200万人近いガザ市民は、ほぼ全員が、その外側のハマスが支配する地域にいる。

様々な情報によると、ハマスは、今も数千人はいるとみられ、停戦になって以来、その地域での支配力を強めている。

最新のニュースでは、6ヶ月前から、ハマスが乳児用食料を、大量に横領していたとの訴えも出ている。それらを高値で売るなどして、人々の従順を余儀なくしている。

また住居を破壊することで、ビーチに住むしかなくなった人々に、借地料を取り立てているといった情報もある。

こうした中、ガザには、反ハマス勢力もいる。先週、南部ラファで、イスラエルとも協力していると言われていた、反ハマス部族の最高指導者、ヤセル・アブ・シャバブが家族間抗争?で死亡した。*イスラエルとの協力はアブ・シャハブ自身は否定

その後、すぐに後継者、ガッザン・アル・デュハイニが立ち上がり、変わらぬハマスへの反抗を表明している。

エジプトの治安関係者によると、反ハマス勢力は、まだまだ小さいものの、増加傾向にあるという。停戦以降だけで、400人増え、今は、1000人になっているとみられている。

新しい指導者になった後も、イスラエルとの協力は継続している可能性はあるが、イスラエルからのコメントはない。

ガザの反ハマス勢力について、西岸地区の大学で国際情勢を教えるパレスチナ人、ガッサン・アル・カティブ氏は、ガザでは、ハマスによって、生活が崩壊したことから、ハマスへの支持は低下していると語る。

しかし、一方で、反ハマス勢力は、イスラエルとの協力が疑われていることから、裏切り者との認識であり、こちらも支持率は低いという。反ハマス勢力は、ハマス鎮圧を目指すイスラエルに利用されていると考えられている。

パレスチナ自治政府に主要勢力であるファタハ(アッバス議長所属)も、反ハマス勢力とは無関係だと強調している。

www.jpost.com/international/article-879895

アムネスティ(国際人権保護NPO団体)10月7日のハマス襲撃を非人道的戦争犯罪と非難:最後の人質遺体返還を要求 2025.12.11

アムネスティ(国際人権保護NPO団体)が、2年以上たって初めて、10月7日のハマスのイスラエル人襲撃とその後の行為が、非人道的な戦争犯罪であったと認め、これを、国際人道法に違反として、非難する声明を出した。

アムネスティは、これまでからも、ハマスの行為を戦争犯罪とは位置付けていたが、非人道的と表現するのは今回が初めてである。

173ページにわたる報告書の中で、アムネスティは、死亡した民間人は、パレスチナ人テロリストによる殺人、絶滅、投獄、拷問、強制失踪、強姦など、非人道的な扱いを受けた証拠を提示している。

また、人質とその遺体を返還しないという点でも国際法に違反しているとも記載しており、最後の一人になっているラン・グヴィリ軍曹の遺体を速やかに返還するよう要求している。

これらの犯罪行為について、今回、アムネスティは、ハマスの軍事部門、アル・カッサム旅団が主な責任者で、この他にも、イスラム聖戦、アルアクサ殉教団、組織とは無関係の民間人も、程度には差があるとはいえ、犯罪に加わっていたと明記しているとのこと。

www.jpost.com/international/article-879982

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/in-first-amnesty-accuses-hamas-of-crimes-against-humanity-during-oct-7-attack-and-gaza-war/

なお、アムネスティは、イスラエルに厳しい報告を出すことも少なくない組織である。

昨年12月には、パレスチナ人を大量虐殺したとして、イスラエルを非難する報告を出していた。

負傷兵増加の見通し:PTSDを予防する効果が期待されるプログラム 2025.12.11

IDF Chief of Staff Lt. Gen. Eyal Zamir meets with troops wounded in Syria, at Sheba Hospital in central Israel, November 28, 2025. (Israel Defense Forces)

イスラエルでは、ガザとの戦争の2年の間に、2万2000人の負傷兵が出ている。

その半分以上にあたる58%は、PTSD(心的外相後ストレス症候群)と診断されている。

イスラエルは、このままであれば、2026年末までに、新たに1万人が負傷して、リハビリセンターに来ると予測している。

このため、政府のリハビリセンターへの予算、83億シェケルのうち、半分近い41億シェケルは、心理的ケアに充てられているという。イスラエル軍は、2024年3月に、兵士のメンタルケアの部署を立ち上げている。

それでも、イスラエルはまだガザや西岸地区、レバノンなど各地に、兵士を送り込まなければならない。イスラエル軍は、現在、厳しい人員不足に直面している。このため、いよいよ超正統派の若者を徴兵するかどうかで大揉めになっているところである。

こうした中、テルアビブ大学と、イスラエル軍医療部隊、アメリカ国防軍が、世界で初となる、PTSDを予防するプログラムのテストを行い、効果が認められたと発表した。

Prof. Yair Bar-Haim, (Courtesy/Tel Aviv University)

プログラムを開発したのは、テルアビブ大学の心理学神経科学スペシャリストで、国立トラウマ回復センターの代表者でもある、ヤイール・バル・ハイム博士である。

PTSDは、日頃から、自分に差し迫る危機に鈍感な人がなりやすいという傾向があるという。そういう人が、PTSDになると、危機的な状況でない時にも、自分の身に危機になるかもしれないことに注意を集中させてしまうことで、症状が出るという一面があるとも考えられている。

このため、ヤイール・バル・ハイム博士は、逆に危機的になりうる状況に慣れる訓練を考えたということである。いわば、PTSDのワクチンのようなものだろうか。

訓練は、コンピューターを通して、1回目は、普通の声と脅威の声を聞かせて、どちらが危機かを、すばやくクリックさせる。2回目は、普通の顔と脅威の顔を見せて、どちらが脅威かを選ばせる。一回につき160回で7分間、このプログラム4回を、日をおいて実施する。

プログラム自体は、単純で、ゲーム感覚とのことだが、兵士たちが、現場において、危機的状況に、より集中できるようになるという。

最初の調査は、2012年から始まり、2014年のガザとの戦争では、すでに実戦からの結果も得ていた。それによると、訓練を受けていた兵士でPTSDになった人は、2.6%だが、受けていなかった兵士は、7.8%だった。

その後、2022―2023年にかけて、イスラエル兵800人で行われたテストによると、このプログラムを受けていて、PTSDになった兵士は、1%だったのに対し、プログラムを受けていなかった兵士は5.3%と、5分の1に抑えられていた。

また、この時、オリジナルのプログラム、改善が加えられたプログラムと、プラセボの兵士でみたところ、最も予防効果を発していたのは、オリジナルのプログラムだったという。

このプログラムはまだ軍の、メンタルケアに取り入れられていないが、今後に期待がよせられている。

www.timesofisrael.com/computerized-prevention-program-could-lower-ptsd-to-1-of-former-combat-troops/

石のひとりごと

まさにPTSDのワクチンのような感じである。なので、ワクチンと同様、プログラムを受けておけば、PTSDをある程度予防できるとはいえ、なってしまう兵士もいる。

それにしても、訓練で使われる怖い顔をみただけで、すでに心に染みつきそうな感じもする。

記事を書きながら、日本人には、とうてい、ついていけそうもないと思わされたが、イスラエルが置かれている状況が、それほどに厳しいということも実感できるのではないだろうか。

受け入れ難い状況を、しっかり直視して、その対策をしていくという、いつものイスラエルの様相ともいえる。

イスラエルに大嵐バイロン到来で記録的大雨と洪水警告:イスラエル人のヨット不明のまま 2025.12.10

ギリシャとキプロスを通過し、洪水をもたらしていた嵐、バイロンが、12月9日(火)夜(日本時間本日朝)から、イスラエルに上陸し始めている。

風速80メートル/時、降水量は、100-150ミリで、警報は全国的に出されているが、特にヘルツェリアなど、海岸部都市で、深刻な洪水になる可能性があるという。救出用のボートが準備されている。

Times of Israelによると、排水が追いつかなくなると予測されており、エレベーターの使用や、地下の駐車場は使わないようにするなどの指示が出ている。

テルアビブでは、2020年の大雨の時に、エレベーターに取り残された男女が死亡する事故が発生していた。

ベン・グリオン空港も警戒に入っている。高速道路については、洪水になりやすい地域をマッピングし、追加のポンプが用意されているほか、早い警告を出すためのパトロールを強化している。

北部で洪水になると、南部のネゲブ地方に向けて、鉄砲水になる。大雨の直撃はなくても、こちらでも洪水になる可能性が高い。

www.ynetnews.com/environment/article/by5rfcbgze

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/storm-byron-begins-to-hit-israel-as-officials-warn-of-difficult-conditions-rain-expected-like-weve-never-seen/

こうした中、アシュドドからキプロスへ、向かっていたヨットが、キプロスに到着する直前、12月7日(日)から、コンタクトが取れなくなっており、今も行方がわかっていない。ヨットには、イスラエル人5人が乗っているとのこと。

嵐が発生している最中に、なぜ出航が認められたのかなども含め、捜索と捜査が進められている。

www.jpost.com/environment-and-climate-change/article-879804

また、イスラエルが、この大嵐に見舞われるということは、ガザも同様である。駐留しているイスラエル兵たちはどうするのか。テント生活の人々への打撃は計り知れない。主のあわれみを祈る。

テルアビブ市がクリスマスの挨拶:サイバーウイーク開催中 2025.12.10

テルアビブでは、12月8(月)から11日(木)の3日間、テルアビブ大学で、毎年恒例で、今年15回目になるサイバーウイークが行われている。

サイバーウイークは、国際的なサイバーセキュリティのカンファレンスである。

サイバーセキュリティの専門家、技術者、業界リーダーや、スタートアップ、投資家や学者、外交官や、政治家まで様々な人々が、99カ国から11000人以上参加している。

イスラエルには、政府機関としての国家サイバー総局(INCD)があり、サイバーウィーク主催者の中にあがっている。

イスラエルは、この分野では、文字通り世界をリードする国である。

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こうした中、テルアビブ市が、世界に向けて、クリスマスの挨拶クリップを発表した。

イスラエルでは、今週末12月14日(日)日没から、22日(月)までハヌカの祭りに入る。その後にクリスマスと、祭り気分の12月ということである。

 

なお、このビデオが発表された後に、嵐バイロンが到来するという、なんとも皮肉な流れである。まあそんなことには、いっさい負けないイスラエル人だろう。

イスラエル、は戦争中であり、傷ついている人も多いのだが、それでも前に進むという感じである。

ガザ第二段階の論議始まる:ハマスは武装解除拒否も武装凍結は示唆 2025.12.8

ガザでは、人質の解放が進み、あと一人、ラン・グヴィル軍曹の遺体が残されているだけとなった。イスラエルは、ハマスは、遺体の場所を知っているはずだとして、速やかに引き渡すよう、仲介者を通してハマスに伝えている。

Ben Gurion Airport, October 13, 2025, near Tel Aviv. (AP/Evan Vucci)

こうした中、トランプ大統領が、ガザ停戦20項目に基づき、第一段階はほぼ完了したとして、2週間以内にも第二段階が始まるだろうと表明した。

ネタニヤフ首相も、ドイツのメルツ首相訪問時の共同記者会見において、まもなくハマスの武装解除という第二段階に進み、その後、ガザ全体の非過激化を進める時が来たと述べた。

それが可能であると考える理由として、第二次世界大戦後にドイツと日本などで、国家レベルの非過激化に成功したことを例として挙げていた。(当時の日本は、過激化されていたという認識である)

しかし、トランプ大統領の20項目による第二段階は、多国籍軍による国際安定化軍(ISF)によるハマスの武装解除となっており、これに合わせてイスラエル軍は撤退。パレスチナ人文民管理職によるガザ地区の管理を進めるとなっている。

ネタニヤフ首相は、国際安定化軍(ISF)が、ハマスの武装解除ができるとは思えないとの考えを表明しており、撤退する気はないとみられる。

一方、ハマスは、武装解除とガザからの離脱も考えられないと明確に拒否を表明。国際安定化軍がハマスの武装解除をすることはできないと言っている。

Bassem Naim, an official in Hamas’s political wing, speaks in Istanbul, Turkey, December 5, 2024. (AP/Francisco Seco)

しかし、ドーハ(カタール)で・ガザのハマスを主導する者の一人、バセム・ナイムは、パレスチナ国家樹立に向けたプロセスの一環として、武器の凍結、または格納する用意はあると表明した。

バセル・ナイムは、この武器凍結・格納の期間として、5―10年という長期期間を上げた。

その間に、パレスチナ国家を樹立するということだが、その間、武器には触れないと言っている。

www.timesofisrael.com/hamas-ready-to-discuss-freezing-or-storing-its-weapons-says-terror-group-official/

トランプ大統領の20項目は、おおさっぱであることから、双方が様々な捉え方で、それぞれの動き方をする可能性が出てくるので、ハマスがこんな自分中心の意見を出してくると思われる。

実際のところ、ガザではイエローラインが新たな国境のようになっており、それを境に、ハマスとイスラエル軍の衝突が頻発している。イスラエル軍が反撃で空爆したこともある。

AP

また、グヴィル軍曹の遺体引き渡しも終わっていないので、家族たちは、第二段階に進むことに反対を表明している。

第二段階の議論が始まっているが、理想的な計画と現状には、大きな開きがあるように思う。