エジプトの騒乱、その後 2012.12.7

エジプトではムルシ大統領が、強行的に進めている憲法案をめぐって、反ムルシ派が大統領府周辺で大規模なデモを展開。これまでの騒乱で、7人が死亡(6人はムスリム同胞団関係者)した。警察は昨夜から戦車を出動させ、沈静化をはかっている。

ムルシ大統領は、テレビを通じて、「8日(土曜)に反対勢力との話し合いに応じる。大統領の最高権力は、15日の国民投票の結果がでたらすぐに解除する」と発表した。

しかし、反対派らは、起草されている憲法案の破棄を条件としており、話し合いに応じる気配はない。反ムルシ勢力は7日、イスラムの礼拝後に、再び大規模デモを計画している。

イスラエル総選挙アップデート-全34党が選挙名簿提出 2012.12.7

1月22日の総選挙を前に7日、全政党が、選挙名簿を提出した。日本では13党だが、イスラエルではなんと34党。(イスラエルは小さな国なので比例代表はなし、国民は、党名だけを書いて投票する。)

これまで選挙名簿をめぐって、様々な駆け引きや根回し、人の移動などがあったが、それも終了ということになる。

<右派優勢はかわらず>

結局、野党である中道左派政党4党は、ばらばらで一致することができなかった。ネタニヤフ首相率いる中道右より勢力のリクードと、リーバーマン外相率いる右派ベイテイヌの合併党を打ち破ることは困難とみられる。

「雲の柱作戦」以後増えるイスラエル軍とパレスチナ人の衝突 2012.12.7

6日、ヘブロンで駐留しているイスラエル軍に対し、パレスチナ人たちが投石するなどの攻撃。これに対し、イスラエル軍は、催涙弾で対応するなど、かつてのインティファーダ(民衆石投げ蜂起)の様相となった。

調べによると、イスラエル軍と衝突を起こしているパレスチナ人は、いずれもハマス支持者。西岸地区ではハマス支持者が増えているもよう。

イスラエル軍によると、雲の柱作戦以来、西岸地区でのこうした衝突が急激に増えている。また国連総会でパレスチナが「国」との認識を得た後にも、こうした事件が増えるとみて警戒しているという。

西岸地区では13日も、パレスチナ人がイスラエル軍のジープに車ごと衝突し、ジープは横転。はい出てきた兵士に向かって、「アラーこそ神」と叫びながら斧で襲撃、2人を負傷させた後、その場で射殺されている。

<ガザ地区でハマス25周年-パレスチナから追放されていたマシャアル政治部長官もガザ入り>

国連総会で「国」の認識を得たパレスチナ自治政府(ファタハ)だが、ハマスとの和解を目指している。ハマスも、創立25周年を迎え、明日の式典にファタハをガザへ招待。ファタハも出席する予定。

7日、パレスチナ地域から追放され、イスラエルからの暗殺未遂も経験しているハマス政治部門長官のカリッド・マシャアルが、45年ぶりにガザ入りを果たした。

皆が励まされたイスラエルのお笑いイベント 2012.12.7

「コビーのためのコメディ」と称するコメディ・イベント・ツアーがイスラエル全国で行われ、7日最終日を迎えた。

今回のイベントは、イスラエルに世界のトップコメディアンを招くプロジェクトを10年以上も続けている男性が、今年は特別に、2001年にパレスチナ人テロリストに殺されたコビー少年の名をつけてイベントを開催したもの。

コビー少年は、2001年、自宅近くで友達とハイキングしている時に、パレスチナ人テロリストに殺害された。

両親のマンデル夫妻は、彼の死後、当時多発していたテロの被害で、愛する家族を失った他の人々とともに悲しみから立ち上がるため、コビー・マンデル財団を立ち上げた。これまで継続して夏キャンプなどの活動を行い、数え切れないイスラエル人が立ち上がるための支援を行っている。

イベントを開催した男性は、この財団の働きに大いに感銘を受け、「緊迫した情勢が続くイスラエル人を少しでもリラックスさせたい。」「イスラエルがテロに負けることは決してない。」と訴えたいと願い、今回のイベントとなった。

両親は、「コビーはコメディが好きだった。彼の名が前向きなイベントに用いられたことがうれしい。」と語っている。

今回、治安上の問題があるとしてイスラエルへの訪問を断ったコメディアン2組にかわって、初めてイスラエル入りしたアメリカ人コメディアンらも「イスラエルへ来て人生観を変えられた。笑いが癒しの役に立ってうれしい」と語っている。

分裂するエジプト(イザヤ19章?) 2012.12.6

先週、エジプトのムルシ大統領が、自らの権力を最高レベルにあげ、ごり押しでイスラム主義勢力主体の委員会で憲法の草案を作製、来週15日に国民投票すると発表したことで、エジプトがまっぷたつに分裂する様相となっている。

先週からタハリル広場で大規模な反ムルシデモが起こり、テントで泊まり込んでのデモが続いていたが、5日、反ムルシを叫ぶ群衆が大統領府周辺に集結。「市民の意向を反映していない憲法草案を撤回せよ。」と叫んだ。

夜になって、ムスリム同胞団の親ムルシ派の群衆も同じ大統領府でデモを始め、両者10万人とも推測される群衆が石や火焔瓶を投げ合う暴力的な衝突となった。

暴徒に対応する警察が催涙弾などを使って対応にあたっているが、対応しきれず、負傷者多数、死者も2名出ている。

ムルシ大統領はあくまでも草案した憲法を撤回せず、15日に国民投票を決行するもよう。今後どうなるか先行きはまったく見えない状況だが、聖書のイザヤ書19章を思い起こさせる状況である。

<イザヤ書19:3・・・19章全体がエジプトに対する宣告>
わたしは、エジプト人を駆り立ててエジプト人にはむかわせる。兄弟は兄弟と、友人は友人と、町は町と、王国は王国と相逆らって争う。エジプトの霊はその中で衰える。わたしがその計画をかき乱す。彼らは偽りの神々や死霊、冷媒や口寄せに伺いを立てる。わたしはエジプト人をきびしい主人の手にわたす。力ある王が彼らを治める。(イザヤ書19:3)

なお、イザヤ書によれば、エジプトは混乱と没落の後に救われるようである。

イスラエルE1地域に3400件を建築推進のかまえ 2012.12.6

イスラエルは、国際社会の非難反対にも関わらず、1967年ラインよりパレスチナ側でエルサレムとマアレイ・アドミムの間、E1と呼ばれる問題の地域に3400件の建設する手続きを次の段階にすすめた。

建設計画が提出された後は反対意見を待つ期間60日を待って実際の建設に入ることになる。

これを受けてパレスチナ自治政府のアッバス議長は、国連事務総長と国連安保理、カルテット(国連、EU,アメリカ、ロシア)にイスラエルの入植活動を止めてほしいとの訴えを出した。

今週、ひっぱりだこの迎撃ミサイル 2012.12.5

<日本、沖縄にパトリオット配備>

ミサイルというものが日本にも無関係ではなくなってきた。北朝鮮は近日再び衛星打ち上げを行うと発表。実は弾道ミサイルの発射実験であるとの見方が強い。(発表によれば10-22日の間だが、早まる可能性もある)

日本は、ミサイルの発射を控えるよう、北朝鮮に要請した上、万が一国内に落下する場合に備え、沖縄にパトリオット迎撃ミサイルを配備した。パトリオットは20-35キロ圏内に侵入するミサイルを迎撃することができる。

韓国は、アイアンドームを含むイスラエルの迎撃ミサイルを導入しつつあるという。(イスラエル政府プレス関係者談話)

<トルコとシリア国境にパトリオット配備>

シリア情勢がますます悪化している。4日、シリア政府軍が学校を攻撃し、少なくとも40人の子供たちが死亡した。
同じく4日、シリア政府が、化学兵器サリンを準備しているもようとの情報を受けて、世界にも緊張が走った。

アメリカのオバマ大統領はシリア政府に対し「もし、化学兵器を使用したら、すぐに対処する。」との釘をさす声明を発表した。

同じく4日、NATO(北大西洋条約機構)は、トルコとシリアの国境にパトリオット迎撃ミサイルを配備することを決めた。パトリオットはミサイルだけでなく、戦闘機をも撃ち落とす能力がある。

ここ一月以内に配備されるとみられるが、これに伴い、アメリカ、ドイツ、オランダ軍の兵士300-400人がトルコ国境に駐留することになる。NATOは、これが防衛目的であることを繰り返した。

国連でイスラエルに再び厳しい決議 2012.12.5

先週、国連はパレスチナを国家オブザーバーにすることを決め、対抗処置としてネタニヤフ首相が、東エルサレムと西岸地区に3000戸のユダヤ人住宅建設許可を出した一件。イスラエルは東エルサレムにさらに1600件の許可も出す方向で準備中である。

これを受けてアメリカやヨーロッパもいっせいに「和平につながらない」とイスラエルを非難。パレスチナ自治政府は、国際法廷へ訴えることも示唆している。しかし、今のところいずれも具体的な対抗処置にはなっていない。

<イスラエルに関するもう一つの決議>

これとは別件になるが、国連総会では4日、「イスラエルも、核開発施設の査察に応じるべきだ」との採択がとられ、賛成176、反対6 棄権6で圧倒的多数で採択された。

イスラエルは核兵器保有について、保持を肯定も否定もしないというスタンスを続けているが、当然保有していると思われている。

この11月、中東非核化を進める会議(イランもイスラエルも皆でいっせいに核保有をやめようという会議)がヘルシンキで行われる予定だったが、イスラエルと、アメリカも出席を拒否したため、会議は中止となったばかりだった。

なお、今回も反対票を投じた6カ国々は、先のパレスチナ格上げに反対した国々と同じだった。イスラエルは、カナダとチェコに感謝を伝えている。

世界食料危機に備えるイスラエル 2012.12.5

聖書の終末預言をモチーフにした小説、ならびに映画「レフトビハインド」と見た方はあるだろうか。

この小説(映画)では、イスラエル人科学者が、世界の食糧危機を解決する農業技術を開発。その技術を使ってアラブ過激派をおさえ、国連が神殿の丘に第三神殿を建てる許可を出すという設定になっている。

12月4-5日、イスラエルでは、ARO(政府農業研究機関・ボルカニ・センター)が「食糧危機に備える」とした国際カンファレンスを開催。映画が何となく現実味をおびてきたようなので報告する。

<2050年の人口は90億・解決は科学技術だけではない>www.agri.gov.il/en/events/events/927.aspx

アメリカ政府農業省のラムズウェリー教授によると、今から30-40年後の2050年、地上の人口は90億に達する。それに伴い、約10億人は飢餓状態に陥る。地下水が不足し、あと地球が2つあっても飲み水が不足する。

これを解決するのは、科学技術だけではない。社会的、経済的、国際的な問題など、”人間社会の決断”が必要となると警告する。たとえば、農家の収入確保や流通の問題、世界が一つになって協力しなければ解決しないということ。

<イスラエルが貢献する可能性>

イスラエルは、建国する前、まったくの不毛の地に苦労して農業を成功させた。今もかなりの水不足の中、砂漠や砂の多い土壌でも高品質の野菜を作ることに成功している。「イスラエルには世界食料危機に対処する技術がある。世界にこれを知ってもらいたい。」カンファレンスは英語で行われ、インターネットを通じて生中継された。

ネタニヤフ首相の逆襲 2012.12.1

国連総会で、パレスチナのオブザーバー格上げが決まった翌日、イスラエルのネタニヤフ首相が、1967年ラインよりパレスチナ側の土地に3000戸の入植地住宅建設の許可を出した。3000戸といえば町がひとつできるほどの数である。

許可が出た地域はE1エリアと呼ばれ、東エルサレムとマアレイ・アドミムの間の地域(地図参照・BBC)。ここが入植地になると、西岸地区が分断されるため、パレスチナの”国”作りには大きな障害となる。

エルサレムE1

国際世論を鑑みて、この処置はよくないというのがネタニヤフ首相のアドバイザーの意見だったが、首相はあえて、この処置に踏み切ったもよう。労働党はじめ野党は、「この土地がイスラエルのものであることには同意する。しかし今はそれを主張するタイミングではない。」と反論している。

アメリカは和平を推進するものではないと、イスラエルの動きを非難した。

エジプトで急速に進む憲法策定 2012.12.1

先週、大統領の権威を最高レベルにあげると宣言したムルシ大統領。全国的な反ムルシデモが展開される中で、急ピッチで憲法の策定をすすめている。

現在、エジプトには憲法がなく、議会もない状態。ただ憲法策定のための特別委員会(100人)だけがあり、それを監視するのが最高裁という図式である。今回、ムルシ大統領は、自分の権限を最高裁よりも上にあげて内外から批判されているのだが、それは迅速な憲法制定が目的だと説明している。

つまり、ムバラク前大統領の息のかかった最高裁に文句を言わせず、さっさと憲法を制定し、それによって議会の選挙を行い、早くエジプトの政治を軌道に乗せたいというのがムルシ大統領のねらいである。

<エジプトでイスラム化がすすむ?>

問題は、その憲法策定をになっている委員会。ムルシ大統領が所属するムスリム同胞団(イスラム主義組織)が多数派となっている。そのためエジプトの新憲法がイスラム主義に傾くのではないかとエジプト市民と世界は懸念しているのである。

委員会は、11月29日からわずか19時間で、234箇条からなる新憲法の草稿をしあげたもよう。現時点での新憲法は、イスラム法シャリアを基盤にするということはこれまでと変わらないが、大統領の任期を4年、2期まで(計8年)とした点、また軍の上に民間の監視を置くなどが画期的である。

今後は新憲法の国民投票が行われる運びとなるが、こうした急激なイスラム化への動きに懸念・反発する群衆が、タハリル広場初め、全国で大規模デモを継続中である。

今週末、イスラム同胞団も、親ムルシ大統領の大規模デモを組織する予定だったが、そうなると暴力的な対立が懸念されるため、大統領は同胞団にデモの中止を指示したとのこと。(先週からすでに2人が死亡、数百人が負傷している)

民衆はイスラム化に反対しているのだが、しかし、憲法をたたきあげるだけの組織力は、現在のエジプト社会では、ムスリム同胞団にしかなく、実際には他の選択の余地がないのである。

シリア情勢緊迫-空港、ネット遮断 2012.12.1

シリアではさらなる死者と国外にのがれる難民が続出している中、反政府勢力がダマスカスでの決戦に入っているもよう。反政府軍が、空港を制覇しようとしていることから、ダマスカスへの航空機の発着ができなくなった。政府側は30日から、インターネットも遮断している。