左派・労働党+リブニ氏決定/右派と左派の対決へ 2014.12.12

www.jpost.com/Israel-News/Politics-And-Diplomacy/Livni-Herzog-expected-to-announce-unity-deal-at-Tel-Aviv-press-conference-384248

来年3月の選挙をめぐって、すでにテレビでも毎日、政治家たちの動きや世論の統計状況などが報道されるようになっている。

注目されていたのは、今回、ネタニヤフ首相(65)に解任された元法務相のツィッピー・リブニ氏(56)の身の振り方。リブニ氏は、かつては第二の女性首相になるかとも言われ、珍しくクリーンで、支持率も高い政治家である。

昨年は、パレスチナとの交渉担当をつとめた。厳しくもハト派のイメージがあり、パレスチナ自治政府、またアラブ諸国全般においても、比較的、受け入れがよい。彼女を取り込む党が次期選挙で優勢になる可能性がある。

このリブニ氏をめぐって、最大野党で左派の労働党ヘルツォグ党首(54)と、今回、リブニ氏と共にネタニヤフ首相に解任された、未来がある党のラピード党首(51)が、ラブコールを送っていたが、最終的にリブニ氏が選んだのは労働党だった。

10日夜、ヘルツォグ氏とリブニ氏(ハツナ党)は、協力して選挙に臨むと共同記者会見を行った。ヘルツォグ氏によると、もしこのチームで、最多数議席を獲得できた場合、首相職2年の任期を分け合うことで合意しているという。

つまり、ヘルツォグ氏がまず前半の2年間、首相となり、後半2年は、リブニ氏が首相になる。また、リブニ氏率いるハツナ党には、選挙名簿に、計3つのポジションが約束されている。

<左派と右派がとんとんの接戦へ>

労働党は明らかに左派。リブニ氏自身は中道だが、今回、中道でも左派よりを選んだということである。これで、右派に傾くネタニヤフ陣営に対して、かなり強力な左派勢力が誕生したことになる。

チャンネル2の世論調査によると、現時点で、ヘルツォグ+リブニ組の予想獲得議席は24、ネタニヤフ首相のリクードは23。

もし、ネタニヤフ首相が、全右派勢力とユダヤ教政党を連立に取り込めた場合、予想獲得議席は72(国会120議席)。一方、左派勢力が、右派以外の中道やアラブ政党もすべて取り込めた場合の予想獲得議席は71。いずれも過半数になり、政権が右派から左派へ変わる可能性は十分ある。

ネタニヤフ首相は、こうした左派勢力の動きに対し、来年1月に予定されていた、リクード党内選挙(党首と選挙名簿を決める)を12月30日に前倒しで実施すると発表した。党内に協力なライバルがおり、党内選挙が早ければ早いほど、対抗勢力が不利になるからである。

しかし上記発表がなされた11日夜、党内から最有力の対抗馬とみられていたギドン・サル氏(48)は、出馬しないと表明した。サル氏は、つい最近、「家族との時間を持つ。」としてしばらく政治からの休養宣言を行ったばかりだった。

右派陣営では11日、元リクードのカフロン氏が、自らが率いる新党を「クーラヌ(みんな)党」だと発表し、来年3月の選挙への意欲を見せた。

カフロン氏は、国民の支持率が高いので、立ち上がったばかりでも9議席は取ると予想されている(チャンネル2データ)。カフロン氏は、右派のイスラエル我が家党(リーバーマン党首)と共同キャンペーンを行うことで合意している。

<中道の言い分>

リブニ氏を獲得できなかったラピード氏の未来がある党の獲得議席は19から8に下がると予想されている。しかし他党との共同キャンペーンには走らず、自分はあくまでも中道であると主張。イスラエルは、今は右か左かの両極端に走るのはやめるべきだと訴えている。

ラピード氏によると、選挙の後の3月後半に、エジプトでアラブ同盟(穏健派)の会議が行われる。

アラブ同盟は、パレスチナ自治政府に対して大きな影響力を持つ組織。膠着しているパレスチナ人との交渉を再開するには、ある程度譲りながらも、イスラエルに有益な形で、アラブ同盟に交渉再開をすすめてもらわねばならない。

そのアラブ同盟の会議直前の選挙で、両極端に走り、チャンスを失ってはならないと中道・ラピード氏は訴えている。しかし、ラピード氏が政権をとるチャンスはほとんどない。

日本では、何党が政権をとっても、国民の暮らしにほとんど変わりはないが、イスラエルの場合、どんな政権かで、国の存続、ひいては自分や、家族の命にまで関わる事態にまで発展する。

国民は、引き続きネタニヤフ首相の右より運転を選ぶのか、労働党の左より運転に方向転換を望むのか、難しい選択をせまられることになりそうである。

シリア領内空爆でヒズボラ2人死亡か:イスラエル空軍 2014.12.9

7日夜、シリアとレバノンのメディアが、イスラエル軍8機が、シリア領内を空爆したというニュースを流した。

情報によると、空爆を受けたのは、ダマスカス近郊の国際空港と、レバノンとの国境に近いディマ。両地点は、高度な地対空ミサイルS-300の倉庫とヒズボラへの搬入拠点だったとみられる。

8日になり、アラブ系メディアは、この攻撃で、ヒズボラ関係者2人が死亡したと伝えた。

S-300は、ロシア製で、もしヒズボラの手にわたれば、イスラエルとヒズボラの力関係を”逆転”させる可能性があるとして、数年前から問題になっている武器。すでにロシアからシリア(アサド政権)へ一部は搬入されたとみられている。

イスラエルはこの武器が、ヒズボラの手にわたるのを防ぐため、諜報機関を最大限働かせて破壊工作を行っている。これまでにすでに複数回、シリア内外での空爆を実施している。ただし、イスラエルは肯定も否定もしていない。

今回も、イスラエルのステイニッツ情報相は「危険は国外にあるうちに対処するという原則は変わらない。」とコメントしながら、攻撃を否定も肯定もしなかった。
<混乱極めるシリアの力関係>

シリア・イラクでは、ISISに対し、アメリカと有志国が、空爆を続けているが、先週イランが、アメリカに相談もなく、イラク領内のISISを空爆したと確認されている。

一方、今回、イスラエルが、攻撃したといわれているのは、ISISに敵対するシリア、アサド政権の陣営。イランは「イスラエルが、ISISを支援している証拠だ。イスラエルは事情を説明せよ。」と訴えている。

なお、イスラエルはシリアの内戦やISISの問題には、関わらないという方針を続けている。今回、もしイスラエルがシリアを攻撃したとすれば、言うまでもなく、ただ自国の治安を守るという目的のためだけである。

国会解散・総選挙続報 2014.12.9

先週、ネタニヤフ政権が崩壊し、国会も今日の採択で正式に解散が決まった。総選挙は来年3月17日。すでに、それぞの政党が、だれを党首にするのか、またどの党と組んで、どんな選挙名簿を作成するのか、様々な策略を展開しはじめている。

ネタニヤフ首相は、国会で過半数の支持を得て、時期政権でも続投できるよう、ユダヤの家などの右派系政党と、ユダヤ教政党シャスに味方につくようアプローチしている。

今回、ネタニヤフ首相に解任されたラピード財務省は、「ネタニヤフ首相は国民と遮断されている。水族館に住んでいるのではないか。」とかなり辛辣に非難。次期選挙では、ネタニヤフ首相は必ず失脚すると宣言している。

現在、ネタニヤフ首相の右傾化に対し、中道左派とよばれるグループができ始めている。左派の労働党ヘルツォグ党首が、今回法務相から解任されたリブニ氏をとりこみ、中道左派グループを成立させようとしているのだが、もしこれが軌道にのれば、この党が議席数23を獲得し、ネタニヤフ首相を破る可能性があるという。

また、以前リクードにいたが、今は脱退し、独自の新党を立ち上げたカフロン氏がいる。カフロン氏は、電話代を大幅に引き下げるなど、国民からは、「やり手」として大きな支持を受けている。この新党がどこへどうころぶのかも注目されている。

来年、イスラエルがさらに右傾化するのか、中道左派になるのかで、パレスチナ交渉から、周囲国や、世界との関係にも大きな違いが出て来る。総選挙まで、激しい論議になると思われる。

ガブリエル・ナダフ神父の息子イスラエル軍へ入隊 2014.12.9 

www.jpost.com/Christian-News/Father-Nadafs-son-joins-IDF-383653

次回の総選挙で大きな変化に直面しているのは、イスラエル在住アラブ人たちを代表する(はずの)アラブ系政党である。

ネタニヤフ政権は、総選挙について新しいルールの法案化に成功していた。それによると、最低3.5%を得票していない党は、議員を出すことができなくなったのである。

現在、アラブ系政党は、反イスラエルのものと、イスラエルを認める党まで、小さな党が乱立している。これらが、全部一つにならない限り、3.5%の得票は難しい。つまり、議員を一人も出せない可能性がなきにしもあらずなのである。

ネタニヤフ首相が、先月、「イスラエルはユダヤ人の国」と定義する法整備をすすめると提唱すると、イスラエルの人口20%のアラブ人社会からは、「民主主義に反する」として、激しい反発が出ている。

そんな中、数年前から、イスラエルがユダヤ人の国であることをはっきりと認めた上で、イスラエルで生まれ育ったアラブ人クリスチャンの若者にイスラエル軍への従軍の機会を与えてほしいと訴えてきたのが、ナザレのギリシャ正教・ガブリエル・ナダフ神父である。

ナダフ神父の運動で、年間30人だったアラブ人クリスチャンのイスラエル軍への従軍は、150人にはねあがった。この12月4日には、ナダフ神父の息子のジュブランさんが、イスラエル軍に入隊した。ジュブランさんは戦闘部隊配属を希望している。

ナダフ神父は、「ユダヤ人の国、イスラエルが私の国。中東で信仰を自由に守ることができるのはイスラエルだけだ。国のために働くのは当たり前だ。」と、息子の入隊を心から喜んでいる。

しかし、こうした考えから、ナダフ神父もジュブランさんも、アラブ人からの暴力を受けるなどの反発を受けていることはお伝えして来た通り。

共存を守れるか:スーパー・ラミ・レビ 2014.12.5

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4599791,00.html

エルサレムから車で8分の入植地・マアレイ・アドミムに隣接する産業地域ミショール・アドミム。パレスチナ人を数百人雇用するユダヤ人企業ソーダストリームがあるなど、ユダヤ人とパレスチナ人が、共に働く町である。

その町のスーパーマーケット・ラミ・レビで、買い物に来ていたユダヤ人男性2人が、パレスチナ人テロリストにナイフで切られるというテロが発生した。

テロリストは、16才の少年1人だった。事件発生とともに、店員たちと、たまたま居合わせた非番の首相府警備員が、銃で犯人の足を撃ち、すみやかに逮捕となった。

被害にあった男性2人は頭を切られるなど中等度の負傷。現場には血が飛び散っていたが、さすがはイスラエル。すみやかに清掃し、2時間後には、すでに大勢の客でにぎわう、いつもと変わらぬラミレビに戻っていた。

なお、エルサレム周辺では、この他にも、グッシュ・エチオンで、パレスチナ人女性(22)が、ユダヤ人男性を刺して逮捕され、今日は、検問所にナイフをもって近づいて来たパレスチナ人女性(16)が逮捕された。「ユダヤ人を殺そうと思った。」と自供している。

<ラミ・レビ社長:共存は守る>

パレスチナ人によるテロが頻発する中、エルサレムでは、アラブ人を解雇したり雇わなくなる傾向が始まっている。

数週間前にシナゴグを襲ったテロリストの出身地ジャベル・ムカバに隣接する地域では、新しいタクシー会社が立ち上がった。ちらしに「安息日休業。運転手は全員軍隊上がり」と書かれている。つまり、ユダヤ人運転手のみで安心という意味である。

今回被害にあったスーパーラミ・レビ(ユダヤ人経営)は、日本で言えば、マルアイとかマルナカ(関西四国地方・食品中心の大手格安スーパー)で、エルサレムを中心に各地に店舗がある。安いので人気のスーパーである。

ラミレビは、ユダヤ人従業員とともに、多数のアラブ人従業員を雇用している。特にミショール・アドミム店舗は西岸地区にあるため、従業員にも買い物客にもパレスチナ人が多数いる。従業員は毎日顔を合わせ、来る客もだいたい決まっているので、家族のようなものだとラミレビ社長は語る。

ラミ・レビでも、最近のテロの増加で、アラブ人従業員の雇用の見直しへの圧力がかかっているという。しかし、社長は、「共存は守る。人種に関わらず雇用する。フランスやヨーロッパでユダヤ人を拒絶されたくないのと同様、私はパレスチナ人を拒否したくない。」と決意を語っている。

<ユダヤ人負傷者を助けたパレスチナ人> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4599639,00.html

今回のテロでは、ラミ・レビで働いているパレスチナ人も、負傷したユダヤ人の救出を手伝っていた。そのうちの一人は、暴動スポットの一つ、東エルサレムのシュアハット在住で、なんと6月にユダヤ人過激派に殺されたアラブ人少年の従兄弟だった。

「私は戦争をしているわけではない。傷ついた人を助けるのは当たり前だ。私の家族はみなそういう教育を受けている。暴力は暴力をうみ、平和は平和を生む。将来、状況が変わり、こうした事件がなくなることを願っている。」と語った。

読者には、こうしたテロで、恐れを感じているのはユダヤ人だけではないということをお伝えしたい。一般のパレスチナ人たちは、ユダヤ人からの報復や、仕事を失うことを恐れて生活している。

ユダヤ人もパレスチナ人も、大部分のごく普通の一般庶民たちは、テロに関わっておらず、日々の平穏を願っているだけである。なんとか、共存が成立している町に、テロという水を差してもらいたくないものである。

エイラット北部パイプライン破損:大量の重油流出 2014.12.5

水曜夜、アシュケロンとエイラットを結ぶ石油のパイプラインが、自動車がぶつかったと見られる事故で損傷し、大量の重油が、イスラエル南部、エブロナ自然保護区(エイラット北部20キロ)砂漠に流出した。

数時間で損傷は修復したものの、数百万リットル(大型タンカー40台分)の重油が砂漠の中に黒い川のように流出している。ハアレツ紙によると、その長さは7キロに及ぶ。

激しい原油のにおいはヨルダンにまで広がった。ヨルダン政府によると、アカバ(エイラットの隣)では80人が呼吸困難で病院へ搬送されたという。イスラエルでは国道90号線が、50キロ手前で、通行止めとなった。

今後まずは、原油に引火するなどの危険性を排除し、燃やすか、化学反応による中和、物質の除去と除染をしなければならない。しかし、あまりにも広範囲に重油が流出しているため、元の自然に戻すには年単位の時間がかかるとみられる。

また、汚染された地域は、自然保護区で、珍しい植物やは虫類、鹿、鳥類が生息する地域だった。これらの生物が影響を受けることは避けられず、重油除去作業で地形も変わってしまうことになる。イスラエル史上最悪の自然破壊になった。

アルーツ7によると、こうした自然への損失とともに、流出した原油の損害は、600-700万シェケル(約2億円)、その後の重油撤去、自然のリハビリテーションも含めると、損害額は、3000万シェケル(約9億円)とみられている。

なお、このパイプラインは1957年にイランからヨーロッパへ原油を送るパイプラインとして作られたが、近年、アシュケロンとエイラットを結ぶパイプラインとして使われていた。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/188270#.VIFbPKW9DCs (写真あり)

第33代ネタニヤフ政権崩壊・国会解散・総選挙へ 2014.12.3

発足当時からやや不安定だった現ネタニヤフ政権だが、最近になって、治安問題や、2015年度予算、ユダヤ国家法案など様々な課題が山積みとなり、連立政府内部での対立が激しくなっていた。

先週くらいから、連立政権が崩壊するのではないかと懸念されていたが、ネタニヤフ首相がついにキレて、2日、特に批判的な態度をとってきたヤイル・ラピード財務相と、ツッピー・リブニ法務相を解任するに至った。

2人と同時にラピード氏の「未来がある党」に所属するパイロン教育相、ギルマン健康相など5人の閣僚も退任することになる。これにより、第33代ネタニヤフ政権は崩壊となった。

ネタニヤフ首相は2日夜、「連立政権なのに、常に合意できないようでは国を導くことはできない。政府を一新する。」と国民に説明した。

これを受けて3日、各党指導者と国会議長が国会の解散・総選挙について採決をとった結果、第19代国会の解散も決まった。総選挙は来年3月17日の予定。

今回の政権が成立したのは、2013年3月。わずか2年足らず、イスラエル史上2番目に短い政権となった。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4599094,00.html 

<今後の動き>

現在、国会120議席中、最大与党はネタニヤフ首相のリクード(20議席)で、その次が今回、解雇されたラピード党首の未来がある党(19)だった。

ラピード氏と未来がある党は、大幅に議席を失い、現在3位のナフタリ・ベネット経財相のユダヤの家党(12議席)が議席を伸ばすと予測されている。リクードとユダヤの家党の2党は1月初頭に党首党内選挙を行うことになっている。

これらの党の党首のいずれかが、時期首相になる可能性が高いため、イスラエルでは注目されることになる。その後、各党が国民に対してキャンペーンを展開する。

3月17日の総選挙で最大議席をとった党の党首に対し、リブリン大統領が時期内閣政府を構成するよう指名する。その党首は、各党と交渉し、3ヶ月以内に、国会120議席中過半数を占める連立政権を立ち上げる。

議席の割合に応じて、時期政権のポストが決まり、大統領の承認を得て正式発足ということになる。つまり、3月17日に総選挙が行われたとしても、正式に次期政権が立ち上がるのは、最悪来年6月になる。

<次期政権予想> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4599139,00.html

時期政権がどんな政権になるかの予想だが、Yネットによると、ネタニヤフ首相は首相のまま残留。

今回、解雇されたラピード財務相とリブニ法務相はそれぞれ内閣ポストを失い、その分、右派のユダヤの家党ベネット氏、同じく右派のイスラエル・我が家党のリーバーマン氏が、それぞれ外務相や、財務相といった重要ポストに収まる。

前回、野党になったユダヤ教政党シャスが与党に返り咲く。というわけで、時期政権は、今より右となり、世俗からユダヤ教強調路線になる。いいかえれば、ネタニヤフ首相は、扱いにくい非右派系の閣僚を首尾よく排除したということである。

次期政権では、おそらく入植地政策がさらに進められるだろう。「イスラエルはユダヤの国」という法案も今より通りやすくなる。そうなると国内のアラブ人、パレスチナ人との確執はさらに深まることになる。

というわけで、Yネットは、次期政権で、イスラエルの情勢がよくなるとは考えにくいと批判的である。

<政府・国会解散の影響> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4598771,00.html

イスラエルは、今は選挙をやっている場合ではない。第三インティファーダもささやかれるほど、テロや暴動が発生している。

ネタニヤフ首相が、Jewish National Bill (イスラエルはユダヤ人国家と基本法にもりこむ法案)の審議を提唱してから、アラブ人の怒りが沸騰しはじめている。

またなによりも、2015年度の予算案が承認されていないままである。本来は年末までに承認を得て、2015年が始まるはずだったのだが、国会が来年6月になって発足した場合は、予算案も最悪来年7月か8月まで承認されないことになる。

1年の半分以上が終わったところで予算承認というのもおかしな話。これは、ラピード経財相が、ミドルクラスの人々を支援するとして必死に立ち上げた経済改革案が、事実上、水に流れたということである。

なお、予算が承認されないまま2015年が始まった場合、今年の出納に応じて、各省に月ごとに必要資金が分配されることになる。実質入金が減るため、新しいプロジェクトがすべて保留になる。

特に若い夫婦が家を購入する場合、付加価値税を免除するという計画があと一歩のところまでになっていたのだが、これもしばらく保留となり、多くの若い夫婦が、家探しをまたやり直すということになる。

総選挙では15億シェケル(約450億円)の費用がかかると予想されている。このような資金を費やして今総選挙にする事に対し、疑問視する記事が少なくない。

パレスチナ国家承認へ向かうヨーロッパ 2014.12.3

ヨーロッパがじわじわとパレスチナ国家の承認に向かい始めている。スエーデンはすでに正式にパレスチナ国家を承認。

イギリス、スペインの議会もそれぞれ、”象徴的”とする投票を行い、どちらもパレスチナ人の国家を承認することで過半数を超える合意となっている。

続いて、フランス議会も同様の投票を行った。結果は、賛成339、反対151でパレスチナ国家を承認するべきとの結果になった。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4598862,00.html

こうしたヨーロッパ各国の議会での”象徴的”承認は、いずれもまだ実行力はないが、アッバス議長が国連で国家承認を訴えた場合に大きな支持基盤になると考えられる。

INSS(国家治安研究所)の中東問題主任ウディ・デケル氏は、イスラエル政府がこうかつにすすめている入植地拡張政策を、一旦停止し、パレスチナとの和平交渉に少しでも前進を見せるべきだと主張する。

今のまま西岸地区の入植地を拡大した場合、テロに理由を与えることになり、世界もパレスチナ国家承認へすすみ、イスラエルは孤立すると警告している。

デケル氏は、先月末、もしネタニヤフ首相が国会を解散し、来年総選挙になれば、パレスチナとの交渉というエネルギーも集中力も要する対策は、とれなくなると懸念していた。残念ながら、イスラエルは、デケル氏が懸念する道へと進んでいるようである。

<フランスの反ユダヤ主義>

フランスでは反ユダヤ主義暴力が悪化しているが、今週、パリのユダヤ人居住区の家に3人の強盗が入り、19才、21才のユダヤ人カップルが襲われて、縛り上げられ、金品が奪われ、女性は暴行された。

犯人は、「お前がユダヤ人だからだ」といって犯行に及んだという。家にいるのに襲われたことで、ヨーロッパのユダヤ人たちはショックを受けている。

今年、イスラエルへの移住した人々の最大出身国はフランスである。まだフランスにいるユダヤ人は、早くイスラエルへの移住を決断した方がよさそうである。

活躍する治安部隊:テロリスト30人以上逮捕 2014.11.29

シナゴーグ・テロから10日以上になった。イスラエルでは今週、過去20年以来最大となる冬の嵐が到来。エルサレムでもほぼ丸3日、強風を伴う雨が降り続けた。気温も10度前後まで下がり、金曜になって、ようやく少し日がでてきたところである。

この雨で、全国的に広がりつつあったアラブ人の暴動は一応のおさまりをみせている。しかし、テロが落ち着いている背景は悪天候だけではない。水面下で治安部隊が暗躍し、数々のテロ計画を未然に防いでいたことが明らかになった。

その一つがエルサレムのテディー・スタジアムを狙ったテロ。サッカーの試合などで満員になれば21000人が集まる。もしテロが実行されていれば、大惨事になるところだった。

この他にも誘拐など様々なテロの計画していたハマス30人以上を、イスラエル軍と協力して逮捕したと諜報機関が発表した。治安部隊は、テロリスト逮捕と同時に、爆発物やライフルなど多数の武器も押収している。

グループはトルコのハマス司令部の指示で動いていたと諜報機関シン・ベトは報告している。

今回、逮捕された30人は、多数が西岸地区在住パレスチナ人で、ヨルダン人、クウェート人など外国人も含まれていた。こうした外国人ハマスの訓練はトルコで行われていたとみられる。トルコはこれについては否定している。

<シナゴーグ・テロ犯の妻・イスラエルから追放へ>

シナゴーグでテロを行ったパレスチナ人2人は、エルサレム南東部のアラブ人地区・ジャベル・ムカバ出身だった。ジャベル・ムカバは、東エルサレムであるため、住民はイスラエルの永住権を持っている。

イスラエル政府は、今週、犯人の妻ナディアさん(幼児の息子がある)に家屋を破壊するとともに、イスラエルの永住権を剥奪すると通告した。ナディアさんは、「子供たちは父(犯人)を失ったのに、家まで奪うのか」と、永住権を剥奪しないよう懇願している。

こうしたテロリストの家族への罰則には賛否両論である。しかし、イスラエル政府は、テロの結果として、自分の家族が苦しむということが、テロの抑止力になると考えている。イスラエル政府は、今後、早急にテロリストの家族への罰則に関する法案を成立させる方針。

<イスラエル在住の穏健派ムスリムからの反応>

シナゴーグのテロが発生した後から、イスラエル国内の穏健派イスラム教指導者たちが、「これはイスラムの教えではない。」とするコメントを出している。

北部アッコにある大きなイスラム教アル・ジャザール・モスクの指導者は、ユダヤ教、キリスト教の指導者とともに、事件翌日、被害にあったシナゴーグを訪れ、「これはイスラムの教えに反する。」と表明している。 

またアフマディヤとよばれるイスラム教のグループの指導者も先週、シナゴーグを訪れ、「怒りを覚える。このような行為はイスラムを現すものではない。」と訴えている。 
ahmadiyyatimes.blogspot.co.il/2014/11/israel-ahmadi-muslim-leader-says.html

ISISに加わるイスラム過激派たち 2014.11.29

イスラエルの穏健派イスラムたちはテロや虐殺はイスラムではないと言っているが、世界的にみると、ISISこそ真のイスラムだとして、ISISに加わり、より残虐になるイスラム過激派グループが増えている。

ナイジェリアのボコ・ハラムというイスラム過激派グループは、先頃200人の女子中学生を誘拐したことで世界にその悪名を轟かせたが、最近、ISISに加わったと表明。その後、誘拐や、キリスト教会の爆破など、暴虐の限りを続けている。

27日には同じイスラム教徒が礼拝するモスクを爆破。120人が死亡したと伝えられている。犯行声明は出ていないが、手口はボコ・ハラムだという。爆破されたモスクは,ボコ・ハラムが、甘いイスラムだとして軽蔑していたモスクだった。

イスラエルに近いところでは、シナイ半島のテロ組織アンサル・ベイト・アル・マクディスもISISに加わったと表明している。

この組織は先月、エジプト軍兵士30人を殺害したグループで、エジプトは、現在もこのシナイ半島のテログループとの戦いを強化している。http://www.haaretz.com/news/middle-east/1.626539

法王フランシス:中東・宗教間対話への試み 2014.11.29

中東情勢が悪化している中、法王フランシスが、トルコを訪問した。トルコは、政治的には世俗派だが、99%イスラムの国。最近、エルドアン大統領が、めだってイスラム化を進めているところである。トルコはカタールとともにハマスを支援している。

法王は、キリスト教を含むすべての宗教に過激派がいることを認め、それらと戦うために、中東において、宗教間対話を進めることが大事だと考えている。トルコを訪問したのもその目的の一環。

法王フランシスは、イラクに行くことも希望しているが、ISISが法王の暗殺を計画しているという情報もあり、バチカンが、それを許さないという。

法王は、「私の命がねらわれていることは知っている。すべては神の御手にある。」と語っている。

法王フランシスは、バチカンにおいて、イスラエル・メディアのインタビューを受けた。フランシスは、中東のキリスト教会は、いまや初代教会の迫害よりも激しい迫害にあっているとの認識を語った。

エルサレムのシナゴーグでのテロについては、宗教を利用しているとして厳しく批判した。また、キリスト教はユダヤ教に基づくものであるという認識も改めて語っている。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4597267,00.html 

ラビ・グリック奇跡の退院 2014.11.25 

10月末、エルサレム市内で、東エルサレム在住のアラブ人に至近距離で4発撃たれ、重傷となっていた右派のラビ・ユダ・グリック(49)が24日、退院した。

退院の際の記者会見においてラビ・グリックは、「脊椎を撃たれたのに神経をはずし、首を撃たれたのに、大動脈は外れていた。神の奇跡だった。」と語り、神と支えてくれた人々に感謝を述べた。

病院の外傷担当医師も、「搬送されてきた時の傷の深さを考えると、ここまですみやかに、後遺症も残さずに回復できたことに感動している。」と語っている。

ラビによると、撃たれた当時、犯人は「悪いが、あなたはアルアクサモスクの敵なので撃つ。」と言われたという。ラビは「宗教の名によって、人を殺そうとするものは、その宗教をおとしめる者だ。」と語った。

また逆に、病院でラビの手術、治療にあたった医師や看護師の中にイスラム教徒たちがいたことをあげ、「人を救うこのような行為こそ、その宗教に栄光をもたらすものだ。」と語った。

www.jpost.com/Israel-News/Yehuda-Glick-set-to-leave-hospital-Monday-nearly-a-month-after-terror-shooting-382668

<ヤッフォ門でテロか>

ラビ・グリックが退院した24日、エルサレムの旧市街では、ユダヤ教神学校の教師ら2人が刺されて、1人が重傷、1人も軽傷を負った。2人の訴えによると、複数のアラブ人に囲まれ、刺されたという。

旧市街では、犯人の追跡が行われ、これまでに容疑者3人(東エルサレムのアラブ人)が連行されている。警察スポークスマンのミッキー・ローゼンフェルド氏は、警察は事件をテロであるとの疑いを強く持っていると報告している。

なお、お知らせしてきたジャベル・ムカバ(記者宅付近)のアラブ人の治安部隊に対する日々の暴動は、昨日あたりより、停止している。