仮庵の祭りの話題2つ 2012.10.4

仮庵の祭りを迎え、エルサレムは観光客でごったがえしている。3日には、嘆きの壁で祭司の祈り行われ、嘆きの壁広場は文字通り、祈りに来た人々で埋め尽くされた。

その他の日でも、嘆きの壁は、早朝は6時の時点ですでに満員。夜にもユダヤ人が祈りに来ている。例祭は8日まで続く。http://english.thekotel.org/cameras.asp(嘆きの壁ライブ映像)

旧市街は、普段より多くの兵士たちが警備に立っている。新市街では、多くのレストランが屋外に仮庵を作り、家族連れが食事を楽しんでいる。

仮庵2

仮庵1

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<シリアとイランのユダヤ人に仮庵の祭り(Yネットニュース)>

危険が日々高まっているシリアとイランだが、まだユダヤ人がいる。彼らが仮庵の祭りを祝うことができるよう、聖書(レビ記23:40)で定められた3種の植物と柑橘(エトログ)が、ラビ・AHによって届けられていたことがわかった。

シリアは内戦が激化をたどっているため基本的には入国はできない。仮庵の必要品は、諜報機関のような動きで連絡をとりながら、命がけで運ばれたという。

イランは「シオニストには反対するがユダヤ教には反対しない」との立場をとっている。しかし、仮庵の物品を普通に送付すると、エトログが穴だらけにされて届けられた。そのため、イランでもシリアと同様、密かに運び込まれたという。

<今年もクリスチャンの仮庵>

恒例の「Feast of Terbanercle」(国際クリスチャン・エンバシー主催)が今年も開催されている。毎夜開かれるカンファレンスには、世界中から来たクリスチャン5000人が参加。今年もエルサレムの通りをパレードする。イスラエルでは最大の観光イベントで、ホテルやおみやげビジネスなどの大きな収入源となっている。

2012 国連総会 これまでのまとめ 2012.10.2

先月25日に始まった国連総会。日本も尖閣諸島をめぐる問題で注目されたが、今回は、アメリカのオバマ大統領、イランのアフマディネジャド大統領、イスラエルのネタニヤフ首相なども注目の演説を終えた。

1.アメリカ:オバマ大統領

アメリカのオバマ大統領は、ネタニヤフ首相の「イラン攻撃に踏み切る限界線」の設定要求に手を焼き、「アメリカは、あくまでもアメリカ国民の利益になることだけと行う。外からのどんな”ノイズ(ネタニヤフ首相の要求)”にも応じない。」と語り、イスラエルとの関係の冷えを露呈した。

しかし総会演説の中では、イランの核化はなんとしても防ぐべきだとの方針を示し、イスラエルとの基本的な協調路線を語った。

2.イスラエル:ネタニヤフ首相 
www.mfa.gov.il/MFA/Government/Speeches+by+Israeli+leaders/2012/PM-Netanyahu-addresses-UN-27-Sep-2012.htm

イスラエルのネタニヤフ首相は、演説の中でイランへの経済制裁が大きな効果をあげていないと指摘。イランの核兵器への道のりを図で解説し、IAEA(国際原子力機関)のデータによれば、イランは核爆弾への第二段階の70%程度にまで至っていると語った。

第二段階とは、爆弾に必要な高濃度のウランを備えた段階のことで、ネタニヤフ首相は、この時点を超えた時が、軍事攻撃に踏み切る赤線にすべきだと提示。もしイランがこの警告を無視して開発を続けるなら、来年春頃、少なくとも夏までにはこの赤線を越えるだろうとの見込みも語った。

ネタニヤフ首相は、この赤線は、軍事行動に踏み切る事を目的として設定するのではなく、むしろ、イランの核開発自制に導くことが目的であると説明した。

これに対し、イランの革命軍総司令官は「イランは強い。イスラエルのいかなる攻撃にも対処できる。」と語った。

3.イラン:アフマディネジャド大統領

アフマディネジャド大統領は、国連本部到着時に「シオニスト国家(イスラエル)はパレスチナに何の根もない。」と豪語していたが、総会演説の内容は、昨年に比べ、意外におとなしめだったとBBC。同大統領は2013年には任期が切れて、大統領を退く見込み。

<イラン国内の様子:経済制裁でイランのリアル最安値を記録>

イランでは、相次ぐ厳しい経済制裁で原油輸出が通常の半分にまで落ち込んでいる。さらに今週、イランの通貨リアルがアメリカドルに対し急に18%も下がり、過去最安値となった。

イランでは、ダムの作りすぎで、世界有数だった塩の湖ウルミエ湖が干上がっている。2年以内湖は消失する見込み。蒸発した塩分で、すでに周辺地域に塩害が広がっているが、完全に干上がれば、からテヘランにいたるほどの広範囲で農業に深刻な塩害になると懸念されている。

Yネットニュースによると、こうした厳しい状況下で、イランはこれまでにシリアのアサド政権に対し、100億ドル(8000億円)の軍事支援を行ったもよう。

<イランでも反政府デモの気配?>

リラの急落をうけて、イランでは労働階級の人々が労働省に、抗議の手紙を提出。水面下で集められた署名の数は10000程になっているという(ハアレツ紙)

4.エジプトのムルシ大統領

ムルシ大統領はシリアのアサド大統領は退くべきとの考えを明らかにし、アサド大統領を支援するイランとは別路線であることを明らかにした。同時にパレスチナ問題を優先的に取り組む方針を明らかにした。

5.パレスチナ自治政府のアッバス議長

昨年国連加盟要請で注目をあびたアッバス議長。総会で国としてのオブザーバーの地位を要請するのではないかといわれていたが、実現しなかった。経済が危機的であるためか、影のうすい演説だった。

最新シリア情勢 2012.10.2

シリアではダマスカス、アレッポで壊滅的な爆発が起こり一日で300人以上が死亡するなど、事態は悪化を続けてている。
これまでの死者は28000人。CNNによると、8月の死者は5091人、9月は4071人が死亡した。国連によると、難民指定を受けたか、指定待ちのシリア難民は294000人。今年末までにその数は70万人に達すると予測されている。

アサド政府軍をイラン、ロシア、中国が支援、反政府軍をアメリカとトルコなどが支援している。

<国連で演説:シリアのアル・モーレン外相>

シリアのアル・モーレン外相は、2日、世界中がアサド大統領の退陣を求める中、カタール、サウジアラビア、トルコ、アメリカ、フランスがシリア国内の”テロ(反政府軍のこと)”を支援していると非難した。

トルコとエジプトとハマスが一致 2012.10.2

イランに背を向けたムルシ大統領だが、9月30日、トルコのエルドアン大統領を訪問。内戦続くシリアについて、アサド大統領は退陣すべきであり、ロシア、中国、イランはシリアへの軍事支援を辞めるよう共同声明を出した。

今回注目されたのは、ムルシ大統領とエルドアン大統領の会見の席に、ハマスの指導者マシャアルが同席していたことである。トルコは昨年、ガザにむけて支援船を派遣し、海上封鎖していたイスラエル海軍と衝突。トルコの活動家ら9人が死亡して以来、イスラエルに非常に厳しい態度になっていた。

エルドアン大統領は、これからもガザの支援を続けるとハマスのマシャアルに伝えた。3者は、パレスチナ国家設立に向けて、イスラエルに圧力をかけることでも合意した。

停電で始まった仮庵の祭り 2012.10.2

荒れ模様の中東だが、イスラエルでは1日日没から、仮庵の祭りが始まった。仮庵とは、イスラエル人が荒野をさまよっていた時代のテントをさしており、昼は主の雲の柱、夜は火の柱で守り導かれたことを覚える。また収穫を感謝する時でもある。(レビ記23:34-36)

多くのユダヤ人家庭では、庭やベランダにスッカと呼ばれる小屋を建て、親子で収穫の果物や飾りをし、その中で食事をするなどして1週間楽しむ。省庁や大学は休み。半ドンの会社も多い。交通機関は動いているが、本数は通常より少ない。

このスッカ、結婚式に新郎新婦がタリートの下で愛を誓い合うのにたとえられることがある。将来、ユダヤ民族と主が真に結ばれる日をも覚える日とも言われる。新約聖書の視点でみれば、これは再臨の後に来る千年王国を示唆していると考えられる。まさしく「喜び」の祭りである。

しかしながら、今年の仮庵、初日から突風と雨で、テルアビブやラマット・ガンで数分から数時間の停電。数千人が影響を受けた。

イランとの戦争は時間の問題か-イランが先制攻撃の先制攻撃を示唆 2012.9.24

26日からニューヨークで国連総会が開かれる。総会では、シリア問題に加えて、イランにどう対応するのかが焦点になるもよう。昨日、イランのアフマディネジャド大統領もニューヨーク入りした。

イラン革命軍総司令官は、イラン国内のテレビにおいて「イスラエルとの戦争は避けられない。イランが戦争を始めることはないが、もしイスラエルがイランの核施設を攻撃する兆候があれば、イランが先に攻撃する。中東のアメリカ軍拠点もターゲットになる。」と語った。

つまりイスラエルの先制攻撃に対するイランの先制攻撃がありうるというわけである。

<緊張するホルムズ海峡> 

イランとイスラエル、アメリカが戦闘状態になった場合、イランはホルムズ海峡を閉鎖すると言っている。イランは近年、ホルムズ海峡の島々から住民を追い出し、軍事拠点に変えているという。またこの1年ですでに2回、ホルムズ海峡閉鎖の訓練も行った。

海峡を封鎖する場合は、海上に多数の機雷を設置することになる。これに対し、ホルムズ海峡に近いペルシャ湾では、日本の自衛隊を含む30カ国が集まり、今月16日から27日までの予定で、大規模な国際機雷掃討戦の訓練を行っている。

機雷の除去は、位置を確認後、爆弾を投下して前もって爆破するというもの。訓練中、イランの戦闘機が飛来して緊張が走ったという(読売新聞)

なお、昨年12月にイランがホルムズ海峡の閉鎖を示唆して以来、アメリカ軍はペルシャ湾に空母2隻、掃海艦船8隻、特殊部隊の出撃拠点になる機能を持つ指令艦船も配備している。

<戦争準備合戦!?>

イランは、上記の世界各国がペルシャ湾で軍事演習を行うのにあわせて21日、テヘランで軍事パレードを行った。2000キロ先のイスラエルを射程に入れるミサイルや、22キロ先の戦闘機をも撃ち落とす地対空ミサイル防衛システムを導入していることを明らかにした。

パレスチナ自治政府破算の可能性にあわてるイスラエル 2012.9.24

パレスチナ自治政府(西岸地区)が破算に近づきつつあるが、もしそうなった場合は、大規模なデモが発生し、西岸地区に駐留中のイスラエル軍に怒りの矛先がむくとして、イスラエルが対処に追われている。

この夏、イスラエルは前倒しで代理で徴収している税金をパレスチナ自治政府に送金。インフラ整備や、イスラエルで働くためのビザ5000人分増やすなどの処置がすすめられている。

現時点で直接イスラエルから収入を得ているパレスチナ人は10万人。イスラエルは、西岸地区への支援を停止したヨーロッパ諸国に支援再開の呼びかけも行っている。

大贖罪日(ヨム・キプール)、世界のユダヤ人が同刻祈祷 2012.9.24

イスラエルでは、先の新年(らっぱの日)に続いて、明日25日の日没から26日日没まで、神の前に贖いを求めるとされる大贖罪日(ヨム・キプール)となる。

この日、イスラエルでは、世俗派とされる人も含めて90%近くのユダヤ人たちが断食し、シナゴグに行くといわれる。エルサレムの嘆きの壁は、祈りに来る人々で埋め尽くされる。

学校、ビジネスは閉鎖され、道路を走る車もなく、歩行者天国のような状態となる。子どもたちが自転車を乗り回すというのが伝統的な光景である。

<ユダヤ人のメシアを待ち望む同刻祈祷> http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/160218

アルーツ7(イスラエルの宗教右派メディア)によると、ヨム・キプールに先立ち、世界中のユダヤ人に対し、メシアを待ち望む祈りを世界で同時にいっせいにささげようという呼びかけがなされた。

イスラエル時間で23日午後5時、世界中のユダヤ教徒が、「ツダカ」と呼ばれる短い祈り(15-20秒で言い終わる)の言葉を神に向かって言うというもの。注)ユダヤ教のプロジェクトであり、メシアニック・ジューによるものではありません。

プロモーションビデオの中で、ラビが第三神殿について語っている。また「メシアはいきなり来るのではなく、ユダヤ人が招くときに来る」とも教えている。

シナイ半島国境でイスラエル兵1人死亡 2012.9.22

昨日、シナイ半島とイスラエルの国境付近で、グローバル・ジハーディスト(イスラムの国際武装組織)3人が、イスラエル軍に発砲。イスラエル兵1人が死亡、1人が負傷した。

衝突が起こったのは、イスラエルが建設中の防護壁建設現場近くで、壁がまだ完成していない部分。兵士らは、近づいてきた15人のアフリカ難民に水を提供しようとして持ち場を離れたすきに攻撃されたという。

テロリスト3人のうち1人は自爆して付近にいたイスラエル兵を負傷させた。あとの2人はイスラエル軍に射殺された。
3人が多量の武器を所持していたことから、イスラエル国内で大がかりなテロを計画していたとみられる。ここで防がれたのは幸いだったとイスラエル軍は報告している。

死亡したネタニエル・ヤハロミさん(20)は、イシバ(ユダヤ教神学校)で学ぶ学生だった。基本的には従軍を免除されている身分だが、戦闘部隊で戦うことを自ら志願し、従軍していた。家族が心配しないよう任地は告げていなかった。来月初頭の、仮庵の祭りには休暇で実家に戻る予定だったという。

<武装組織とギャングの巣窟:シナイ半島>

エジプトのムバラク大統領が失脚し、現在のムルシ大統領に移行するまでの間に、シナイ半島はすっかり無法地帯と化した。ムルシ大統領は、本格的にエジプト軍をシナイ半島に派遣してとりしまっているが、すでに無法化した場所をもとに戻すのは困難である。

シナイ半島には、武装組織だけでなく、ベドウインのギャングもいる。アフリカからイスラエルへ逃れようとするアフリカ難民をとらえて、祖国の家族に高額の保釈金を要求。その間に拷問したり、レイプしたあげくに売り飛ばすという非道がなされている。レイプで妊娠した女性はシナイ半島にいるまま子どもを産むことがある。すると「2人になった」ということで、保釈金は2倍になるという。(BBC)

数週間前、アフリカ難民らがイスラエルの国境にたどりつき、フェンス近くにとどまって入国を要請したが、イスラエル政府は一部を除いて、これを拒否している。イスラエル国内でもアフリカ難民がらみのの犯罪が問題となっているため。

<今イスラエル軍で最も危険な任地>

シナイ半島との国境では、6月にも自爆したテロリストの巻き添えで防護壁建設の作業員が死亡。7月には、イスラエルに侵入しようとしたテロリストがイスラエル軍によって射殺されている。

先月8月、シナイ半島に駐留していた治安部隊が武装組織に襲撃されエジプト人16人が死亡。この後、武装組織がイスラエルへ侵入しようとして阻止されている。

反イスラム映画での反米運動、その後 2012.9.22

今週初頭、アメリカ国籍の人物が作成した反イスラム的映画がユーチューブで出回った件で、中東、北アフリカからインドネシアにいたる22カ国でアメリカの旗を燃やすなどの反米デモが発生。22日金曜、パキスタンでは「ムハンマドを愛する日」が宣言されてデモが行われ15人が死亡した。

昨日はアフガニスタン、マレーシアなどでも再燃の兆しがあり、アメリカの領事館周辺で警戒態勢となっていたが、なんとか平和なデモで終わったもよう。エジプトはじめ、各国政府はイスラムの過激化をおさえるのに苦心している。

<火に油そそぐフランス>

この時勢に先週、フランスでもイスラム教預言者のモハンマドを愚弄するようなイラストが発表された。フランス政府は、関係施設への襲撃に備え、金曜から中東北アフリカ諸国のフランス大使館などを閉鎖している。

こうした現状だが、アメリカ、フランスともに言論の自由をもって、問題のビデオやイラストを取り下げない方向だ。言論の自由を宗教より上に置いているのが西側で、イスラムとの文化の争いとも言われている。

アメリカでは「反聖戦(ジハード)」のちらしが掲げられ、アメリカとイスラムの反目は広がる一方である。

<ハマスの息子モサブ・ハッサン・ユーセフ氏コメント> http://sonofhamas.wordpress.com/

元ハマス指導者の息子で、キリスト教徒に改宗し、アメリカに亡命しているモサブ・ハッサン・ユーセフ氏。ユーセフ氏も以前からモハンマドの生涯に関する映画を作成することを発表している。中東の一部のメディアは、ユーセフ氏が今回の映画にかかわりがあるのではないかと言っている。

これについてユーセフ氏は、激しく否定。「目があるなら明らかにわかることだが、全く不当なうそである。これは私自身に対するテロだ。この映画は、イスラム教徒だけでなく非イスラム教徒にとっても非難すべきもの。悪いことに、この騒乱を利用してテロを正当化しようとする政治的な動きがある。自由を暴力にすりかえられてはならない。」と語った。

限りなく戦争に近い?新年(ラッパ)の日 2012.9.18

イスラエルは日曜、新年(ラッパ)の日を迎えた。この日は、新年を祝うとともに、ユダヤ教シナゴーグでは一斉にらっぱ(角笛)をふきならす日である。終末論の視点では、この例祭が、将来おこるとされる携挙(第一テサロニケ4:16-17)に関連があるのではないかと考えられている。

*増え続けるイスラエルの人口

新年には毎年、統計データが発表される。今年、イスラエルの総人口は783万6000人(昨年より14万1000人増)と900万人に近づいた。このうちユダヤ人は590万人(75.3%)、アラブ人は161万人(20.5%)それ以外の人々は32万5000人(1.8%)。昨年度、イスラエルで生まれた新生児は16万6000人、移民者は17万5000人だった。

<ネタニヤフ首相、アメリカ国民にイラン攻撃をアピール>

イラン攻撃の可能性で緊張するイスラエルとイラン。ネタニヤフ首相はアメリカに対し、イランの核開発レベルの”赤線”(これを過ぎたら軍事攻撃に出るという数値的限界線)を明確にするべきとの要請を行っているが、アメリカはこれに応じていない。

ネタニヤフ首相は、CNNなどアメリカの有力な3テレビ局に出演。「イランが核兵器を持ったら中東の均衡が保たれると考えている人がいるが、それは間違いだ。」などと語り、イランの核兵器開発を阻止する必要性を訴えた。

<もしイスラエルが本当に攻撃したらイランはどう出るのか>

イランのジャファリ革命軍最高司令官は、もしイスラエルが攻撃してくれば、”(イランのミサイル攻撃により)イスラエルには何も残らない”状態になると豪語した。その際には、イスラエルは、イランと関係の深いレバノンのヒズボラ、ガザなど近距離からの攻撃も受けると具体的な状況まで語っている。

また、そうした事態になれば、ホルムズ海峡を閉鎖する可能性も示唆している。こうした事態に備え、アメリカはこの地域の海上に軍備を増強して警戒にあたっている。

<イランで電気系統爆破テロか>

イランの核濃縮施設で最も注目されているのがファルドの施設。8月中旬、この施設付近で不審な爆発があり、電気系統がダメージを受けて施設にも影響が出た。それがちょうどIAEAの予告なし査察の翌日だったため、イランは、この爆発がIAEAとなんらかの関わりがあるのではないかとの疑念を訴えている。

イスラム世界の反米デモ広がる 2012.9.18

先週、リビアでアメリカ領事館が襲撃され、スティーブン大使が殺害された件。リビア政府は現時点で50人のアルカイダ系犯行グループを逮捕した。

これとほぼ同時に、エジプトのカイロでもアメリカ大使館が襲撃され、星条旗が燃やされた。これについては、アメリカ国籍の人物が作成したイスラムの預言者ムハンマドの映画(予告編としてユーチューブに流されたもの)に反発したもので、その後、数千人の群衆のデモに発展している。

この映画をめぐるイスラム教徒の反米デモは、エジプト続いて、スーダン、チュニジア、イエメンなど、中東全域、北アフリカ、フィリピン、インドネシアなど20カ国に広がっている。

いずれも数百人から数千人規模の群衆で「アメリカに死を」などと叫びながらアメリカとイスラエルの旗を燃やしたりしている。ケンタッキーフライドチキンやマクドナルド(アメリカの象徴とされる)が襲撃されたという報告もある(インドネシア)。

<イスラエル>

金曜にはイスラエルにもこの波が上陸。東エルサレム、アッコで反米デモが行われ、治安部隊と衝突したが死者負傷者はなし。パレスチナでは、ラマラとガザでデモが行われた。

今週に入ってもこの波は収まらず、昨日パキスタン、アフガニスタンでは死者も出ている。ヒズボラのナスララ党首は、レバノンで3年ぶりに群衆の前に現れ、数万人とも見えるイスラムの群衆にむかって「世界はこの映画がいかにイスラムを侮辱しているのかみえていない。」と全世界的に反米行動をおこすよう呼びかけた。
*BBC www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-19623999

イランの最高指導者ハメネイ師は、この反イスラム的とされるビデオクリップについて、西側諸国指導者に対し、「西側は、イスラムに対する敬意を現すべき」とのコメントを出した。イランはこの映画について国連に陳情書を出すもよう。

*映画の作成者は誰?
問題の映画だが、誰が作成したかは不明。当初イスラエル系ユダヤ人でアメリカ国籍の人物と伝えられたが、後にエジプト系コプト教徒(キリスト教の一派)でアメリカ国籍と伝えられた。別の人物の名も上がっているが、いずれにしても明確ではない。

<アメリカの反応>

アメリカのクリントン国務長官は先週、「この映画とアメリカはなんの関係もない」と反発。グーグルにこの映画の予告編の取り下げを申請したが、グーグルはこれを受け入れなかった。イスラエルでは「アメリカは、これまでイスラム世界の過激化についてのイスラエルからの警告を軽んじてきた。大使館が襲われて初めて気がついている。」との冷ややかな反応である。