冬の嵐到来 2015.1.7

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4612284,00.html

イスラエルでは6日夜、北部からはじまり、全国的に強風と雷雨、または雪を伴う冬の嵐が到来している。

ゴラン高原では20センチ、ツファットでも積雪、ガリラヤ地方はひょう。ハイファでは、強風と豪雨で木々が倒されたり、大きな看板が倒れたりしている。ツファットでは17000世帯が停電するなど、各地で停電が報告されている。鉄砲水による洪水の報告もある。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/189619#.VK0oSaW9BCs (北部の様子ビデオ)

ベン・グリオン空港では、7日朝、一時的に雪で白くなったが、今のところ国際線の発着に影響は出ていない。

エルサレムでは、昨夜から強風が吹いていたが、7日午後1時すぎから、ひょうに近い堅い雪の小さな玉が、ばらばらと音をたてながら降ったりやんだりしている。

学校は、7日朝から全国的に休校になっている。ヘブライ大学も7、8日は閉鎖すると発表。バスも朝から停止。エルサレムに続く国道1号線と443号線が、7日午後から遮断されている。

さらに、エルサレム市では、7日午前中に、緊急対策室が設置され、ネタニヤフ首相とバルカット市長が打ち合わせ、海外メディアを招いて取材させる対処ぶりである。

2013年末の大雪では、厳しい寒波の中でエルサレムの広い地域が停電し、インターネットも遮断されるなど被害が大きかったせいか、ヒステリックなほどに大騒ぎしている感じだが、備えるに超したことはない。

国をあげての対策にあわせ、ほとんどの市民は6日のうちに食料を買い占め、本日7日からは、家族で家にこもっているとみられる。イスラエルには石油ヒーターがないため、今後、各家庭が一斉に電気ストーブを使うことで、停電にならなければよいがと思う。また一番困るのはインターネットが止まることである。

寒波は、今週末にかけて続くみこみ。この寒波は、ゴラン高原のシリア側も同じである。雪はシリア難民の上にも降っているはずである。

また、家が破壊され、ろくな防寒具もなく、電気も不足するガザ市民の上にも到来している。十分な防寒着すらないこれらの人々を覚えてとりなしをお願いしたい。

フランスでテロ:12人死亡 2015.1.7

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/189620#.VK0mKqW9BCs

日本でも報じられていることと思うが、パリで、イスラム教の預言者モハンマドを風刺した絵などを発信している出版社Charlie Hebdoが、少なくとも2人以上の覆面した男たちに銃撃され、これまでに12人が死亡したと伝えられている。犯人は逃走中。

BBCによると、Charlie Hebdoの最新の風刺画は、イスラム国のアブ・バクル・バグダディを風刺したものだった。
エルサレムでも雪のニュースを押さえて、フランスでの銃撃テロ事件がニュースのトップとなっている。

パレスチナ国家案否決:国連安保理 2015.1.1

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4609565,00.html

12月、アッバス議長が、国連安保理に要請した、イスラエルの西岸地区からの1年以内撤退を含むパレスチナ国家を推進する和平案について。

当初、この件に関する安保理での採択は、イスラエルの総選挙の結果が出る3月まで棚上げと報じられていたが、アッバス議長が正式に要請を出したため、安保理は30日、採択を行った。

結果、賛成8カ国、反対2カ国、棄権5カ国と、可決に最低必要な賛成9カ国に1カ国足りず、アメリカが拒否権を発動するまでもなく、否決となった。

<賛成>:ロシア、中国、フランス、ルクセンブルク、ヨルダン、アルゼンチン、チリ、チャド

<反対>:アメリカ、オーストラリア

<棄権>:イギリス、ルワンダ、ナイジェリア、リトアニア、韓国

反対票を投じたアメリカはじめ、イギリスも、「アッバス議長の案は一方的で、イスラエルの治安に関する項目が欠如している。この案は建設的ではない。」と語っている。

<功を奏した?イスラエルのアフリカ支援>

今回、アッバス議長の提出した和平案が、広くアラブ同盟に支持されたいたにもかかわらず否決となった背景には、アメリカ外交筋の、相当な水面下での根回しがあったと伝えられている。

また、今回、否決への鍵を握っていたのはナイジェリアの票だった。ナイジェリアは伝統的に反イスラエルの立場をとって来た国だった。それが予想外の方針転換を行い、棄権にまわったことで、今回の否決が決まったのである。

ナイジェリアなどアフリカ諸国では、近年、イスラム過激派によるテロが頻発し、死者も多数出ている。そうした中、イスラエルが、武器を調達するなどして治安維持支援を行って来た。

また、イスラエルのリーバーマン外相は昨年あたりから、アフリカ諸国を訪問。治安維持支援の他、様々な支援やビジネス強化を通じてアフリカ諸国を味方につける方針で働きかけていたのである。

特にナイジェリアは、毎年政府支援で毎年30000人ほどのキリスト教徒をイスラエル旅行に派遣していることもあり、両者の関係は良好になりつつあった。これが、ナイジェリアが方針を180度転換し、イスラエルの側に立つ票を投じた背景である。

<今日から安保理のメンバー一部交代>

安保理は、本日1日から、非常任理事国の1部が入れ替わる。イスラエルに友好的なオーストラリアとルワンダが出て、変わりにマレーシアとベネズエラが入る。両国とも、反イスラエルの国々である。

つまり、アッバス議長は、もし、あと数日待って、新メンバーになってから採択を要請していれば、おそらく賛成票9票を難なくクリアし、アメリカは拒否権を発動せざるを得なかったと考えられる。

なぜアッバス議長があえて、旧メンバーの時に採択を要請したのかについては、アメリカに拒否権を発動させて怒りを買い、今後のアメリカとの関係が悪くなるという事態を避けたかったのではないかと考えられている。

<アッバス議長:国際刑事裁判所加盟へ申請>

安保理で国家承認案を拒否されたアッバス議長は、ラマラの閣議で、「これが終わりではない。」と語り、この直後に、国際刑事裁判所への加盟を申請した。

*国際刑事裁判所(International Criminal court)

国際刑事裁判所は、国際法廷とは別の機関。後者が国家間の紛争を扱うのに対し、前者は、集団殺害犯罪などの戦犯を取り扱う。署名国139。

これについて、ネタニヤフ首相もリーバーマン外相も、「もしパレスチナ自治政府が訴えた場合、困るのはパレスチナ自身だ。」として一笑に付すコメントを発している。

ハマスは、アッバス議長の国連への要請自体を「無駄」と非難していたが、「安保理での否決は、妥協の失敗に失敗を加えたようなものだ。」と厳しく批判した。

ネタニヤフ首相圧勝:リクード党内選挙 2015.1.1 

www.jpost.com/Israel-Elections/Netanyahu-crushes-Danon-to-retain-Likud-chairmanship-Erdan-in-lead-for-No-2-slot-386332

31日、時期選挙での選挙名簿を決めるリクードの党内選挙が行われた。結果はネタニヤフ首相が75%を得票し、余裕で党首続投が決まった。

大物を次々に取り込んでいる他党に比べ、リクードでは、ネタニヤフ首相を超える人物がいなかった。予想されていた結果ともいえる。

イスラエル南部に迎撃ミサイル配備 2014.12.26

www.jpost.com/Israel-News/IDF-deploys-Iron-Dome-near-Netivot-Beersheba-in-wake-of-rising-Gaza-tensions-385834

ガザを支配するハマスは、地下トンネルを復活させ、表面的にもイスラエルに対する敵意をエスカレートさせている。

国境には、バンカーらしきものができ始めて、南部住民を不安にさせているとのニュースが流れていたが、水曜朝、ガザとイスラエルの間の防護壁で、メンテナンス作業をしていたイスラエル軍兵士が防弾服を外したところを射撃された。兵士は重傷となっている。

イスラエル軍は直ちに激しい砲撃で反撃。ハマスの司令官1人が死亡した。ヤアロン国防相は、「ガザの復興を妨害したくはないが、やられたらやりかえす方針は変わらない。」とコメントしている。

一方、ハマスは、撃ったのはハマスではないと主張。あたかもイスラエルが挑発していると言わんばかりに、「イスラエルは危険な火遊びをしている。」と言っている。これについて、ネタニヤフ首相は、ガザからの攻撃の責任はハマスにあるとの認識を改めて語っている。

ガザからは先週にもイスラエル南部にロケット弾が着弾し、イスラエルは夏の戦争以来初めてとなる空爆を行った。ガザとの戦争は時間の問題との見方が広がる中、イスラエル軍は万が一に備えて、ベエルシェバとネティボットにアイアンドーム(迎撃ミサイル)を配備した。

エルサレム周辺:パレスチナ人のテロ 2014.12.26

1)国境警備隊兵士ら刺傷

エルサレムを中心にパレスチナ人のテロが相変わらず発生している。イスラム教徒の礼拝日にあたる金曜、神殿の丘に最も近いライオン門で警備にあたっていた国境警備隊の兵士2人(19才、35才)が、パレスチナ人にナイフで刺された。

2人とも軽傷だったが、ライオン門は一時的に閉鎖され、犯人追跡が行われているが、まだ捕まっていないもようである。

2)走行車両への火炎瓶:11才少女30-40%火傷で重傷 http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4608030,00.html

昨日、西岸地区入植地エル・マタンに向かっていたイスラエル人の車両にパレスチナ人が火炎瓶を投げつけた。これにより、父親の運転する車に乗っていたアヤラちゃん(11)が顔や上半身に30-40%火傷の重傷で、生死をさまよっている。父親は軽傷。

アヤラちゃんは先月、同じ道路で母親の運転する車に乗っていてパレスチナ人の投石の被害にあっていた。この時は無事だったのだが、今回は被害に会ってしまった事になる。

アヤラちゃんの母親によると、アヤラちゃんは、バルイラン大学で、特に頭脳明晰な子供たちのプログラムで学んで自宅に帰る途中だったという。

事件は、パレスチナ人の町カルキリヤの近くで発生したが、この前日、イスラエル軍がカルキリヤでパレスチナ人12人を逮捕したところだった。

<パレスチナ自治政府と国連安保理>

パレスチナ自治政府のアッバス議長は、先週、国連安保理に2年以内にイスラエルが西岸地区から完全撤退する案を含む独立案を提出したが、採択については、来年3月のイスラエル政府の総選挙が終わるまでは棚上げされることになった。

いずれにしても、アメリカが拒否権を発動するので、この案が通る可能性は0に近いという。しかし、アッバス議長はロシアのプーチン大統領に近づくなどして、ニュースに種になった。プーチン大統領は、「一方的な独立ではなく、イスラエルとの対話を通さなければならない。」とする手紙をアッバス議長に送っている。

クリスマスで観光客7万人 2014.12.26

イスラエルは微妙な治安状況だが、今年もクリスマスシーズンだけでイスラエルを訪問する観光客は7万人と推測されている。

クリスマスイベントを行うのは、主にベツレヘムとナザレで、24日には、クリスマスイブのイベントが行われた。

両市とも、住民の大多数はイスラム教徒なのだが、クリスマスは言うまでもなく年間で最大の観光イベントである。ベツレヘムもナザレも、市のイベントとして、ツリーの点灯式や、クリスマス・バザールなどのイベントが12月初頭から行われた。

イスラエル側でも、観光省が、24日の正午から24時間、ベツレヘムの検問所までのシャトルバスを走らせ、(パレスチナ側との強調はない)利用客には小さなギフトを渡すなど、双方ともサービス合戦である。

しかし、パレスチナ人の福音派のスティーブ・コーリー牧師は、ベツレヘムでもナザレでもクリスチャンは減る一方で、イスラム教徒によるクリスマスイベントは、年々商業的になっているとの現状を訴えている。

<イスラエルの観光の現状>

2014年にはガザとの戦争の影響で、昨年より観光客は7%減少するとみられている。とはいえ、昨年の観光客は記録的な数字で、354万人だった。

このうち、53%と半数以上はクリスチャン。そのうちの約半数の49%はカトリックとなっている。プロテスタント(主に福音派)は、28%。

国別にみると、1位はアメリカ、2位はロシア、3位はイタリア。アジアでは、インドネシアがトップで12位。次が韓国で15位。中国からの観光客が急増しているが、まだリストには現れていない。

*ロシアのルーブル安について

イスラエルに来る観光客の第二位はロシアからだが、ロシアの通過ルーブルがこの5ヶ月ほどの間に半値になったことは日本でもニュースになっている通りである。今後、ロシアからの観光客が減る可能性がある。

ロシアのルーブルの価値が急に下がったのは原油の値段が急落したからだが、ひょっとしてISISが、原油を安く売りさばいているせいもあるのではないかとは、筆者の勝手な想像・・。いずれにしても世界経済に大きな影響を及ぼす可能性があるので、注目されるところである。
news.mynavi.jp/column/economytsubo/007/ (ルーブル安について/日本語・わかりやすい)

中東のクリスマス 2014.12.26

中東のクリスチャンたちは、今年、ISISの出現で、初代教会以上の試練とも言われる残虐な道を通って来た。法王フランシスは、クリスマスの挨拶の中で、シリア、イラクなど中東のクリスチャンを覚え、「皆様の今年のクリスマスは痛みと涙の中にあることでしょう。」と語っている。

法王は、クリスマス直前に、イラクのクリスチャンたちに手紙も出している。BBCは、モスルからヨルダンに逃れたイラク人クリスチャンの礼拝の様子を報じていた。

<シリア・イラクは今どうなっているのか> 

アメリカを筆頭とする連合軍が空爆を行い、地上では、クルド人勢力が戦っている。一部の地域で、クルド人勢力が町を解放したというニュースもあるが、ISISは着々と国作りをすすめているようである。

厳しい冬になり、外国から加わったものの、戦いに耐えられなくなって帰国しようとした外国人100人を殺害したなど、残虐なニュースは相変わらずである。

昨日は、ヨルダン軍機がなんらかの原因で墜落(ISISは撃墜を主張)し、ヨルダン人パイロットが捕虜になった。家族は、「同じイスラム教徒なのだから、あわれんで助けてほしい。」と訴えている。

エルサレムポストによると、イスラム国は、考古学的に貴重なモスルの教会などを破壊するとともに、教会内にある重要な考古学的遺産を、コレクターに販売。これまでに2300万ポンド(4306億円)の収入を得たとみられる。

さらに教会を支配して、クリスチャンを拷問する場にしているという。

www.jpost.com/Christian-News/ISIS-is-turning-churches-into-torture-chambers-in-Iraq-and-Syria-385511

ガザからロケット弾:イスラエル軍反撃 2014.12.20

EUがハマスをテロ組織リストから削除したばかりだが、19日正午頃、イスラエル南部エシュコル地方でサイレンが響き、ガザからのロケット弾が着弾した。http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4605646,00.html

空き地だったため、被害はなかったが、イスラエル軍は、20日深夜0時すぎ、ガザのカン・ユニス難民キャンプにあるハマス訓練地域を空爆した。今のところ、負傷者の報告はない。

ガザからのロケット攻撃は、夏の戦争以来、これで3度目。イスラエルの反撃はこれが初めてである。イスラエル軍のラーナー報道官 は、「イスラエルは市民を脅かすものを放置しない。責任はハマスだ。」と正式のコメントを出した。

Yネットによると、ハマスはイスラエルに続くトンネルを再建しており、イスラエルへ侵入した上でのテロ攻撃に備えているとの懸念もある。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4605504,00.html

ガザとイスラエル南部の国境付近では、ハマスが戦闘員を訓練する砲撃音、イスラエルへの侵入の試みなどが散発しており、南部住民らは、「ガザとの戦争は時間の問題。政府は何もしていない。」と政府のガザ対策に不満を訴えている。

ビデオ報道「The war next door(隣の戦争)/VICE News」2014.12.20

ISISに関する内部からの生々しい情報を映像で報道しているVICE Newsが、ゴラン高原で、シリア人負傷者の救出を行っているイスラエル軍の様子を取材、ネットに流している。こうしたイスラエル軍の映像が、イスラエル以外のメディアによってネット上に流されるのは初めて。

ゴラン高原で救出の後、病院において治療を受けている兵士らにインタビューも行っている。イスラエルで治療を受けたシリア人は、その事実がばれると、シリアに帰ったときに殺されるので通常は隠されるのだが、ここでは、顔まではっきりと映されている。

VICE Newsは、イスラエルが助けたシリア人戦闘員は約1300人で、その90%は男性であると伝えている。イスラエルが助けているのは政府側か、反政府勢力を助けているのか、イスラエルは、特定の反政府勢力と契約しているのではないか、もしそうなら、イスラエルの益は何かと、問題視しているようである。

救出しているのが90%男性という情報については事実かどうかは不明。ビデオの中でイスラエル人医師が、今は市民のみを対象にしていると言っているが、今年4月にCGNTVオリーブ山便りでとりあげた時の取材でも、救出されているシリア人負傷者の多くが子供たちだと聞いた。

実際のところは不明だが、イスラエルは、ユダヤ教の影響から、敵味方関係なく、命を何よりも優先する国である。誰であろうが死のうとしている負傷者は、とりあえず助ける。それが政治的にややこしい者であってもである。(ハマスのハニエ首相の親族もイスラエルで治療を受けた)

もしそれでイスラエルが見返りを期待していることがあるとすれば、イスラエルを憎むよう教えられて来たシリア人たちの意識が変わることぐらいだろう。ちなみに、イスラエルはそれを期待するだけで、無理矢理変えようとする動きは一切ない。

オリーブ山便りの取材では、最初は怖がっていた負傷者も、退院のころにはすっかりイスラエル人たちにうちとけ、むしろ退院したくないと言うと医師たちは語っていた。同じ中東でも、ここがアラブとイスラエルの大きな違いである。

●VICE News : 今はパート2までだが、5まで続く予定 www.youtube.com/watch?v=G785kB8OKcU

●CGNTV オリーブ山便り #47 2014/4/11(後半部分) シリア難民とイスラエルの病院:医師らの証言あり
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*CGNTV最新版では、総選挙情報とともに、ネタニヤフ首相のフルコメントを含むユダヤ基本法をとりあげています。ぜひごらんください。
japan.cgntv.net/newsub.asp?pid=2751&gubun=0309

反イスラエルに傾くヨーロッパ 2014.12.19

<EU : ハマスをテロ組織リストから削除> www.bbc.com/news/world-middle-east-30511569

EUの司法裁判所は、17日、ハマスをテロ組織リストから削除すると発表した。理由は、リストアップしたときに、ハマス自体を十分調査せず、国際世論やインターネット情報に流されての決定だったからと説明している。

ただし、今すぐリストから削除するのではなく、3ヶ月は保留期間とし、ハマス資金の凍結などは継続する。3ヶ月以内に不服申し立てがない場合、EUはハマスをテロ組織リストから削除することになる。ハマスはこの動きを歓迎するとの声明を出した。

*ハマスはテロ組織ではないのか!?

EUがテロ組織リストから削除を決めたハマスだが、実際には、イスラエルへのテロ活動を強化する動きが明白だ。

最近、新しいミサイルの発射実験を複数回行っている。また、先週、組織27周年を記念する軍事パレードを行い、ミサイルなどを並べ、子供たちにも軍服を着せて、その戦力を誇っている。どれもイスラエルとの戦いを誇示するものである。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4603331,00.html (写真多数、宣伝ビデオあり)

一方、ハマスは、ガザ地区の復興については何もしていない。ガザの難民たちはがれきの中で寒さに震え、学校建物に避難している人は、まだそのまま避難生活を続けている。

ハマスが、国際社会の要請に従って国境の警備と管理をパレスチナ自治政府に明け渡そうとしないため、約束された復興資金が、まだほとんど送金されていないのである。

パレスチナ人で自らも難民キャンプ出身の、人権保護運動家エイド・バッサム氏によると、建物の復興に使われるはずのセメントの一部は、イスラエルからガザに運び込まれたのだが、そこから先の行き先は不明だという。

セメントは、復興に使われず、地下トンネルになっているとバッサム氏は指摘する。バッサム氏は、ハマスの関心はイスラエル打倒だけで市民は眼中にないと怒りを訴えている。http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4557777,00.html

また、「今のままでは、資金の多くは、UNRWA(国連パレスチナ難民保護機関)を経由してハマスに流れ、市民には十分届かない。UNRWAの改革が必須だ。」とも訴えている。

こうしたハマスの実情について、ネタニヤフ首相は、ハマスは、イスラエル市民を攻撃するだけでなく、パレスチナ市民にも被害を与えるダブル犯罪だと訴えている。なぜEUが、今、テロ組織リストからハマスを削除したのか、理解に苦しむところである。

<EU議会:基本方針としてパレスチナ国家承認> www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/188767

ヨーロッパでは、議会が国に対してパレスチナを国と認めるようすすめる決議をとる国が相次いでいるが、17日、EU(ヨーロッパ連合)の議会でもパレスチナ国家を認めるかどうかの採択が行われた。

結果、賛成498、反対88という大差で、承認することが決まった。ただし、左派陣営が主張していた「直ちに無条件でパレスチナ国家を認める」ではなく、「基本方針としてパレスチナ国家を認める。」という妥協型承認である。

この決議に直接の実効力はないものの、ヨーロッパのパレスチナ国家承認への世論が高まりつつあることを現しており、国家承認をめざすパレスチナ自治政府にとっては大きな支持基盤になりうる。

問題は、こうしたヨーロッパでのパレスチナ国家支持決議が、当事国であるイスラエルには何の連絡もないまま行われているという点である。パレスチナ国家承認という”概念”だけが、現状をかけはなれたところで、一方的に、国際社会の風潮になりつつある。

実際に、パレスチナが国家として独立するにはまずは隣国イスラエルも同意する国境線をひいて、土地を2つに分けなければならない。しかし、現地に立てば一目瞭然だが、実際には、国境線を引きようもないほど、両者は入り組むように隣り合って住んでいる。

国境線をひいて2つに分けることなど、不可能といってもよいほど、事は複雑なのである。アッバス議長はそれがわかっているからこそ、もはや当事者同士の話し合いに見切りをつけ、国際社会の圧力で、一方的にイスラエルを排除しようとしているのである。

ヨーロッパ諸国は、実際の現場を見る事もなく、遠くから、机上の判断や独自の倫理観だけで、単純にパレスチナ国家承認と言っているということである。

<イスラエルの反応>

イスラエル外務省は、「パレスチナ国家設立については、イスラエルとパレスチナが直接交渉してはじめて成立する事であり、第三者が認めるかどうかといった問題ではない。」とのコメントを出している。

ネタニヤフ首相は、海外からの報道陣に対して、「ヨーロッパはなんと偽善的か」と非難。「ヨーロッパには600万人のユダヤ人の犠牲というホロコーストの歴史がある。しかし、そこから何も学んでいなかったようだ。」とのコメントを出した。

パレスチナ:国連安保理にイスラエル撤退決議要請 2014.12.19

www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Jordan-presents-draft-of-resolution-on-Palestinian-state-to-UN-385006

EU議会がパレスチナ国家承認の決議を出した17日、あくまでもイスラエルとの交渉なしで国家設立をめざすパレスチナ自治政府は、一方的に国境線を決めて、国連安保理に承認の採択を要請する手続きに踏み切った。

それによると、イスラエルは2年以内に、1967年の軍事境界線まで撤退することとなっている。つまり、2017年までに東エルサレムを含めて西岸地区全体から、イスラエルは完全に撤退せよということである。

この案は、ヨルダンが支持し、アラブ同盟も、賛同するものである。アメリカが拒否権を発動するとみられるが、アメリカはすでに拒否権を使いすぎており、これ以上の行使は遠慮したいところ。

そこで、パレスチナが安保理に要請を提出するのに先立ち、先週、ケリー米国務長官が中東巡回を行い、ローマでネタニヤフ首相と会見した他、アラブ同盟代表、パレスチナ自治政府のエレカット代表などと交渉を行った。

しかし結果的に、アメリカの意向に反して、パレスチナ自治政府は、国連安保理への訴えを実行したということである。

実際には、結局アメリカが拒否権を行使すると予想されるため、決議は今回も保留、棚上げになる可能性が高い。いずれにしても、国際世論が、さらに反米的、反イスラエル的に傾くことは避けられない。

また、16日、パレスチナ自治政府特使のリヤド・マンスーラ氏は、ジュネーブの国連国際法廷122加盟国の前で、非加盟オブザーバー国として認定されて以来初めてとなる短いスピーチを行った。「将来、加盟国になればイスラエルを戦犯として国際法廷に訴える。」と発言した。