シリア・アサド政権とイラン 2012.8.5

シリアでは、3000人のイラン革命軍兵士が、アサド政権を支えていることがわかった。アサド大統領は、イスラム教シーア派に近い少数派のアラウィー派。これに対し、大多数のシリア国民は、シーア派とは絶えず敵対するスンニ派である。追いつめられたアサド大統領が、離反者相次ぐシリア軍よりも、シーア派国家イランの方を信頼しはじめているのではないかと分析されている。

<自由シリア軍(スンニ派)がイラン人巡礼者48人を拉致>

昨日、ダマスカス近郊で、巡礼のバスが来ていたイラン人48人をシリア軍が襲撃48人を拉致した。誘拐されたイラン人の消息は不明。イラン人の拉致はこれが初めてではなく、1月にも発生している。

シリア内戦に、イスラムのシーア派対スンニ派の戦いという要素もあるということである。

パレスチナ国連問題再び 2012.8.5

昨年9月、パレスチナ自治政府は、国連安保理に対し、PLO(パレスチナ解放機構)の名目による国連の団体オブザーバーの立場から、パレスチナという国名による加盟国として、国連に加えられるよう安保理に要請を出した。

これについて安保理は、地域の安定化につながらないとして、採択せず保留にしたままである。これに対し、パレスチナ自治政府は、今年9月、別の切り口から再び国連にチャレンジする方針を明らかにした。

今年は、国連に対して、”国連の団体オブザーバー”から”国連の非加盟国オブザーバー”にアップグレードするよう、国連総会に要請する。同じオブザーバーでも、”団体”から”国”としての国際的な認識を得ることになる。

実際には、事務総会で何が決まっても実行力はないのだが、パレスチナが”国”であるとの認識が定着してくれば、安保理もパレスチナを加盟国として認めざるを得ない状況が生まれるとのねらいがある。

ゴラン高原にシリア人1人侵入 2012.8.5

4日、ゴラン高原で、鉄条網を断ち切ってイスラエルへ侵入しようとしたシリア人1人がいた。イスラエル軍が発砲し、負傷している。

シリアではアレッポでの激しい戦闘で、町の60%を反政府勢力が制圧していると言われていたが、現在、2万人の政府軍がアレッポを包囲しているもようで、今後、ゴラン高原へのシリア人侵入もさらに増えるとみられる。

イスラエルが恐れるのは、南部シナイ半島からジハーディストが侵入してきたように、北部ゴラン高原からも、シリア内戦の混乱に乗じて、テロリストが侵入してくるのではないかということである。

<ゴラン高原のシリア側がシナイ半島と同様の無法地帯になりつつある>

今回、シナイ半島からジハーディストが侵入してきたが、これは、シナイ半島が、ムバラク政権が倒れた後、無法地帯と化し、今やアルカイダなどあらゆるイスラム過激派の潜伏地帯となった結果である。

シリアについても、アサド政権が倒れた後、ゴラン高原に接する地域が無法地帯となり、イスラム過激派のイスラエル攻撃の拠点になるのではないかとイスラエルは警戒を強めている。

シリアとレバノン(ヒズボラ) 2012.8.4

シリアでは、アレッポとダマスカスでひっきりなしに爆音が聞こえ、激しい戦闘が続いている。ダマスカスでは、パレスチナ人難民キャンプが爆撃され、21人が死亡した。

反政府軍も本格的な武器で応戦しており、3日だけで死者は120人に上る。数ヶ月前からアメリカが、自由シリア軍(反政府勢力の一派)を軍事的に支援しているもよう。

<シリアがレバノン国境に地対空ミサイル配備>

戦闘が激しくなる中、3日、シリアがレバノンとの国境付近に、地対空ミサイルを新たに設営していることがわかった。

レバノン国境にミサイル基地があるということは、万が一ヒズボラとイスラエルが交戦状態に陥った場合、化学兵器を含むシリアの武器が簡単にヒズボラの手に渡ることを意味する。

この情報を伝えたのはヒズボラ関係の情報筋であったため、シリアとレバノン(ヒズボラ)の間になんらかの軍事的な合意があるのではないかと懸念されている。

イスラエルの国連大使は、国連総会において「世界はシリア、ヒズボラ、イラン三者協力の危険性に気づくべきだ」と訴えた。

<アナン特使辞任>

シリア問題の特使として尽力していたアナン元国連総長が、8月31日をもって働きから解かれることになった。シリア情勢が悪化の一途をたどり、もはや仲介ができる様相ではなくなってきたためである。

<国連総会による決議>

アナン氏辞任の翌日、国連では事務総会が開かれ、加盟193カ国が、殺戮続くシリアへの非難と、何の介入もできていない国連安保理への非難、また先月アラブ同盟が出した停戦案に関する決議を行った。

結果、賛成133、反対12、棄権31の圧倒的多数で可決。バン・キ・ムーン事務総長が、シリア政府と安保理に対する非難声明を出すとともに、シリアには、政権移行を強く訴えた。*安保理と違って、事務総会決議に実効力はない。

この決議に反対したのは、ロシア、中国、シリア、イラン、北朝鮮など。ロシアは、反政府勢力だけを支援するのは、一方的で和平につながらないとして、この総会決議を批判した。

<ロシアのアサド政権支援>

そのロシアだが、4日、アサド政権からモスクワに派遣された使節団の要請に応じ、シリアから原油を購入、代わりにガソリンなど石油製品をシリアに輸出することを決めた。実質シリアへの経済支援ということになる。シリアは、昨年、混乱が続く中で、ロシアから10億ドルにも及ぶ武器を購入している。ロシアとシリアの関係は深い。

イラン問題再燃-イランを攻撃するのはアメリカか!? 2012.8.4

イランの核兵器配備に関する情勢が再燃しはじめ、イスラエルが9月、10月にも攻撃するのではといった記事が出回っている。

しかしアメリカのパネッタ国防秘書が先週、イスラエルを訪問。改めて、「アメリカはイランに核を保有させない。」と、アメリカの対イラン政策の確実性を明らかにした。実際、アメリカは先週、イランに対する経済制裁を開始している。

現在、湾岸地域には、アメリカをはじめ、イギリス、フランスも戦艦を配備しており、海空双方からイランの動きを権勢中。西側諸国が対イラン体制を本格的に固めている。

こうした世界情勢から、イランをイスラエルがあえて単独攻撃するよりもむしろ、アメリカに攻撃してもらう方が賢明だと考えるのが自然である。今後ネタニヤフ首相とバラク国防相が、どこまでアメリカを信頼し、どう決断するのか、注目されるところである。

エジプト新内閣発足 2012.8.2

2日、エジプトでムルシ大統領が選出されてから、1ヶ月。ようやく大臣35人からなる新内閣が発足した。対立が懸念されていたエジプト軍のタンタウィ長官は国防相に就任。経済相を含む7人が前暫定政権からそのまま留任している。

ムスリム同胞団には5つの大臣職が割り当てられた。女性は2人で、一人はキリスト教徒。注目されていた首相にはイスラム主義者のカンディル氏。

カンディル氏には、政治経験があまりないことと、イスラム主義者であるころから、世俗派には不評だったが、ムルシ大統領は、能力を見て指名したと主張する。

タル法、期限切れ 2012.8.2

ユダヤ教超正統派神学校の学生の徴兵を免除してきた法律・タル法が、7月31日をもって期限切れとなった。政府がまだタル法に代わる新しい法律を打ち出せていないため、現行では、超正統派髪学校生にも徴兵が課されることになる。

バラク国防相は、8月1日、イスラエル軍に対し、タル法が制定される以前の法律(1968年の時点)に基づいて、超正統派の徴兵に関するマニュアルを提出するよう命じた。これは、政府がタル法に変わる法律を制定するまでの暫定処置となる。

法律としては打ち出せていないがネタニヤフ首相は先月、「国民一律、平等な徴兵制を」との訴えを退け、超正統派の要求をほぼ飲んだ形での徴兵制の方針を固めている。

当の超正統派神学生だが、大部分は従軍を拒否している。しかし中には「従軍中にも祈れる。」として戦闘部隊に志願する超正統派の若者もいる。

エルサレムでもゲイ・パレード 2012.8.2

先月テルアビブでゲイ・パレードが行われたが、2日、エルサレムのゲイ・パレードが行われた。参加は4000人。経路には、キング・ジョージストリートが使われた。

同時に正統派居住区のメア・シャリームでは、数百人が集まって「イスラエルはHOLYランドであって、HOMOランドではない。」と叫んだ。虹色の旗を掲げるカラフルなゲイたちと、白黒に身を包んだ正統派たちとで、対照的な一日になった。

アメリカのユダヤ・パワー 2012.7.31

アメリカの大統領選挙を控えたオバマ現大統領とロムニー候補。先週、ユダヤ教とキリスト教右派の票獲得に向けて、イスラエルへの支援合戦となった。

<ロムニー候補>

ロムニー候補は29日、イスラエルを訪問。ネタニヤフ首相やペレス大統領に面会。「エルサレムはイスラエルの首都である」「アメリカの大使館をテルアビブからエルサレムに移す」「イランには強力に対処すべき」などと、かなり過激なイスラエルよりの発言を行った。無論、パレスチナ自治政府からは、激しいブーイング。

しかし、ロムニー候補は、この訪問の後、アメリカで100万ドルもの政治献金を集めたと報告されている。

<オバマ大統領>

オバマ大統領は、ロムニー候補のイスラエル訪問に日程をあわせて、イスラエルに対し不動の軍事支援を約束する契約書にサイン。ミサイル迎撃システム配備のための7000万ドル支援を決めている。さらに今回、初めて空中燃料補給機(空中で戦闘機に給油する飛行機)を譲渡というニュースも流れた。

イスラエルからイランまで戦闘機を飛ばす場合は、途中で必ず一回は空中給油が必要になる。今回の補給機の譲渡が真実ならば、イランへの空爆が現実に可能になったことになる。

ただしこの記事は翌日には消えており、アメリカは、イスラエルに協力してイランを攻撃する計画があるのではないかとの噂を否定した。

シリア情勢:トルコとアメリカが協力体制を約束 2012.7.31

シリア情勢/ 政府軍がアレッポに総攻撃を開始してから今日で4日目になる。死者も日々80-100人は出ているもよう。どちらがどの程度優勢であるのかは不明だが、反政府軍も応戦しており、戦闘は激しくなるばかりである。

周辺諸国への難民は週末だけで20万人。各国国境に巨大なテント村が設営されている。国連関係団体が、テントなどの支援を行っているが、係官によるとホスト国からの資金援助も限界に来ており、国連の予算にも限りがあると語っている。

<トルコとアメリカの協力体制:イランとの対立も見え隠れ>

シリアと国境を大きく接するトルコ。トルコへのシリア難民の数は44000人にのぼる。先月にはシリアに戦闘機を撃ち落とされたり、北部クルド人問題への懸念など、トルコは、シリア内戦のとばっちりを最も多く被っている国と言える。

そのトルコが今後、アメリカと協力し、シリアの民主主義的な新政権への移行にむけて協力していくことが発表された。その中にはアサド大統領の辞任も含まれている。

イランは、アサド政権を支持しており、トルコに対し、「間違ってもシリアに軍事介入しないよう」との警告を発している。イランと対立の続くアメリカとトルコが協力することで、今後イランがどう関わってくるのか、注目されるところである。

複雑なゴラン高原のドルーズ族 2012.7.31

イスラエルのゴラン高原には多数の元シリア国籍のドルーズ族が住んでいる。彼らは、六日戦争でイスラエルがゴラン高原の主権を取ったとき、シリア側とイスラエル側に分断された民族である。

したがって彼らの多くは、親アサド派で、イスラエル国籍を持ちながらも、静かにイスラエルに対し反抗してきたのであった。昨日も、イスラエル軍のゴラン高原での情報を、シリアに流していたドルーズ族の男が逮捕された。

しかし、アサド政権が、風前の灯火となっているのを受けて、ゴラン高原のドルーズ族たちの立場が複雑になってきている。

<イスラエルに”帰国”できないシリアのドルーズ族留学生>

ゴラン高原のドルーズ族は、イスラエルのハイファ大学で学ぶことができるが、シリアのダマスカス大学でも学ぶという特権を持っている。そうした学生が、今もダマスカスに100人取り残されているという。

学生の家族たちは、なんとか学生をイスラエルに呼び戻してほしいと、イスラエルとシリアの国境通過地点である「クネイトラ」を管理する赤十字に陳情を出している。しかしダマスカスから、クネイトラへの道が遮断されており、学生たちのイスラエルへの”帰国”はまだ実現していない。

イスラエルにも出会い系サイト 2012.7.31

今朝、イスラエルの出会い系サイトを利用して、10代の少年少女を性の対象にしていたペドフィリア(児童性愛者)サークルの30人が、全国でいっせいに摘発された。逮捕されたのは、犯罪記録のない、ごく普通の家庭も仕事もある男性たちで、イスラエル社会は衝撃を受けている。

12才の少女を装ってサイトに入り、おとり捜査を行った警察官は、あまりの露骨さに衝撃を受けたと語っている。警察は、子どもたちがネットからいかに悪いものを受けているのか親は知る必要があると警告している。