元人質エリ・シャラビさんが語る創世記12章:人の祝福になるということ 2025.11.13

2023年10月7日に、キブツ・べエリの自宅からハマスに拉致され、約1年4ヶ月、491日後の2025年2月8日に解放されたエリ・シャラビさん(53)。

その回顧録をまとめた「人質」という本が、イスラエルで10万部売れるベストセラーとなり、その後、アメリカのタイム誌が選ぶ2025年に読むべき100歳冊の中にも選ばれた。

www.ynetnews.com/culture/article/rjnyfwgx11e

地下トンネルで自分は何なのか?と問う日々

The heavily rehearsed handover from Hamas to the Red Cross on Feb. 8, 2025. Abdel Kareem Hana—AP

エリさんは、拉致されたあと、52日間は、ガザの家に拘束されていた。その間、他の人質と手足を縛られ、トイレに行くときも一緒に行かなければならなかった。

定期的に服を全部脱がされて、何も危険がないことを確認されるなど、人としての尊厳はまったくない状態だったという。

その後、モスクを通り過ぎて、地下50メートルのトンネルに連れて行かれた。地下トンネルは、暗闇で、虫やネズミが這うような場所で、非常に少ない食料で、空腹と戦わなければならなかった。まさに地獄に下る様相だった。

暴力を振るわれ、肋骨が折れて、2ヶ月に間、助けがなければ立てない時期もあった。地下では、後にハマスに殺されることになる、ハーシュ・ゴールドバーグさんなど数人の人質と一緒だったという。

この1年半近くの間、地下の暗闇で、自分は一体なんなのかと問う日々だったという。何もない。全く何もない。ただ生きているだけなのである。自分とはなんなのかと、問う毎日だった。

家族もいない。もはや、家族があっての自分ではない。ただ自分がいるということなのである。自分は何なのか。

エリさんは、そこで、まず、自分が生きているということを見出したという。だれかで定義する自分ではなく、自分がいるということ、そのものに意味があるということである。そこにいるというだけで祝福なのだということである。

ユダヤ教の土台である聖書の創世記12:2には、神がアブラムに約束した次のようなことが書かれている。

主はアブラムに仰せられた。「あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、わたしが示す地へ行きなさい。そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福となる。(創世記12:1、2)

しかし、この状態でいったいどのようにして、祝福となることができるのか?この問いに対し、エリさんは、まず自分が存在しているということの祝福を自覚することが、他者への祝福のスタートラインになるとわかったと語っている。

絶望しかない地下トンネルでは、仲間とともに、なんでもいいから、感謝することを語り合ったという。過去を思い出しての感謝。小さなことを思い出して語り合う。互いの存在が、互いの祝福になったことを実感したという。

解放される前は、アロン・オヘルさんと一緒になり、父親のような存在となっていた。今年2月8日にエリさんが解放されると言われた際、そのリストにアロンさんの名前はなかった。

アロンさんは、パニックになり、泣き崩れたという。解放の喜びより、アロンさんのことが心配でならなかったと語る。*アロンさんは、最後に解放された20人の1人として解放されている。

そうして、エリさんは、解放された時に、妻のリアンさん(48)と、2人の娘、ノヤさん(16)と、ヤヘルさん(13)が、10月7日の時点でハマスに殺害されたこと、兄弟のヨッシさんは、拉致された後に殺害されたことを知ることになったのである。

しかし、エリさんが、そのことで、崩れてしまうことはなかった。

悩んでももう彼らは帰ってこない。ならば、自分が与えられた人生を精一杯生きていくことこそが、死んでしまった家族にとって最善だと考えている。

March 5, 2025. (White House/X)

エリさんは、解放後、ひと月にもならない3月5日、トランプ大統領に会った。その後、国連などさまざまなところで、証言し、残された人質が解放されるよう訴え続け、

人質の家族にとっての希望になった。回顧録も書いた。

 

そうした中、今、知り合った、セラピストのヤアラ・クリスピルさんと今はパートナーとなり、新たな関係に生きようとしている。2年前には、考えもしなかった新しい人生を歩み始めているということである。

www.cbsnews.com/news/freed-hamas-hostage-eli-sharabi-on-rebuilding-his-life-after-491-days-in-captivity/

www.jpost.com/israel-news/article-872114

www.ynetnews.com/article/h1sir00caeg

石のひとりごと

自分がいるということの意味、それだけでまずは祝福であることを自覚するという点に、感動を覚えた。

私たちはとかく、自分の価値を他者の中でどれだけ愛されているのか、どれだけ貢献しているのかなどで決めがちである。海外で多くを過ごした経験からすると、日本文化は特にその傾向が強いように思う。

人にどうみられるかが、非常に重要な文化である中、高齢者はできるだけ若見えを目指し、役に立たなくなるともはや不要な者になったような気がする。人の世話になることを、極端に恐れるのはそのせいかもしれない。

しかし、私たちは、創造主によって創造された。自分で生きているのではない。存在そのものがすでに祝福であるということなのである。

人の役に立っている、何か功績をあげてはじめて祝福になっていると自覚している限り、他者もそう見ていることになる。役に立たない人は祝福とはみなさなくなってしまう。

エリさんが言うように、自分がいるということの祝福を自覚することが、他者にとって祝福になる原点になるということなのである。その原点は、やはり創造主を知っていること、その救い主を知っていることによるのかもしれない。

またエリさんが、全てを失った後、後ろを見るのではなく、前を見ていくことこそが、失われた家族にとって一番良いことだと言っていることから、ダビデ王を思い出した。

ダビデ王は、人妻であるバテ・シェバとの関係、明確に罪と示された関係で生まれた子が病気になったとき、神に遠慮することなく、断食をして癒しを祈った。しかし、7日目にその子は死んでしまう。

するとダビデ王はさっさと断食をやめて、食事をとるのである。さすがに周囲は驚いたが、ダビデは次のように言った。

「子どもがまだ生きている時に私が断食をして泣いたのは、もしかすると、主が私をあわれみ、子どもが生きるかもしれない、と思ったからだ。

しかし今、子どもは死んでしまった。私はなぜ、断食をしなければならないのか。あの子をもう一度、呼び戻せるであろうか。私はあの子のところに行くだろうが、あの子は私のところに戻っては来ない。」第二サムエル12:22-23

こうした発想は、ホロコーストを経験したユダヤ人サバイバーの中にもみられる。ホロコーストサバイバーや、エリさんほどの大災難を受けた人がこの考え方で立ち上がっているということである。

無論、イスラエル人すべてがこんな考え方ができるわけもなく、苦しんでいる人は決して少なくない。しかし、エリさんの本がベストセラーになっていることからも、この生き方に感動する人も少なくないのだろう。私たちにとっても、将来の備えになるのではないかと思う。

エリさんのために、遺体で戻ってきた人質の家族たち、戦争で心身に障害を負ったイスラエル人たち、その家族たち。

深すぎる喪失の苦しみに苦しんでいるイスラエル人々のために、主にある自分の存在の祝福を発見して立ち上がっていけるようにと祈る。

アメリカ訪問のシリアのアル・シャラア大統領:アブラハム合意交渉はまだ時でない 2025.11.12

11月10日(月)、シリア暫定政権のシャラア大統領が、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談した。

これまで長きにわたって、アメリカに敵対してきたシリアの大統領というだけでなく、少し前まで、元アルカイダ関係者で、国際テロリストとして、1000万ドル(15億円)の懸賞付き指名手配であったアフマド・アル・シャラア氏である。

それがホワイトハウスで、トランプ大統領と握手する姿は、まったく予想だにされない光景であった。

昨年、シリアでアル・シャラア大統領が、アサド政権を打倒すると、12月、トランプ大統領は、アル・シャラア大統領にかけられていた指名手配と、懸賞金を解除した。

アル・シャラア大統領は、今年、9月、60年ぶりに、シリア首脳として国連総会で演説。10月には、モスクワのクレムリンでプーチン大統領と会談した。

www.nytimes.com/2025/11/10/world/middleeast/syria-president-al-shara-trump-washington.html

この間に、トランプ大統領は、サウジアラビアで、アル・シャラア大統領と面会。シリアはもはや脅威ではなく、中東における同盟国になったと言っていた。また、先週には、シリアの首都ダマスカスに米軍を置くことをも示唆していた。アル・シャラア大統領は、シリアにおけるアメリカのIS掃討に参加すると表明したと伝えられている。

こうした流れの中、トランプ大統領は、アル・シャラア大統領をホワイトハウスに招くにあたり、シリアとイスラエルが、安全保障協定に合意すること、またその先には、シリアがアブラハム合意に加盟することも目標としていたと言われている。

しかし、昨年シリアが内戦になった時、イスラエルは、ヘルモン山やゴラン高原のシリア側領域に進軍してそのまま駐留を続けている。これらの地域は、シリアを見渡す地域である。アル・シャラア大統領は、この地域を返還するよう求めており、イスラエルとはまだ対立する立場である。

またシリアが関係を深めているトルコは、ネタニヤフ首相含むイスラエル人36人をジェノサイドの罪で指名手配するなど、イスラエルとの関係は最悪の状態にある。

www.timesofisrael.com/turkey-issues-arrest-warrants-for-netanyahu-other-israeli-leaders-over-genocide-in-gaza/

アル・シャラア大統領は、今はまだイスラエルと直接交渉する時期ではないとし、アブラハム合意への加盟についても否定した。しかし、水面下では、アメリカが今後も交渉を続けると伝えられている。

www.timesofisrael.com/after-landmark-meeting-trump-says-syria-will-be-very-successful-country-under-sharaa/

ネタニヤフ首相最側近ロン・ダーマー戦略大臣(54)辞任:与野党から称賛と感謝 2025.11.12

11月11日、2022年末に発足した、今のネタニヤフ政権で、戦略大臣として、ネタニヤフ首相の最側近とも言われてきた、ロン・ダーマー戦略大臣(54)が辞任を表明した。

今後は、ちょうどトランプ大統領にとっての義理の息子クシュナー氏のように、特使としての働きに移行する。ダーマー氏の後任的な働きは、現在ワシントンに駐留する、在米イスラエル大使のイェヒエル・ライター氏が引き継ぐことになる。

ダーマー氏が、今、辞任を決めたのは、ガザでの停戦が継続しており、イラン始めとする7つの戦線においても、それなりの平穏が続いているからである。

ダーマー氏は、政権発足時、2年の約束で閣僚入りしたが、その後、2023年10月7日に始まり、2年続いた危機的状況に対応して2回延長してきたとのこと。

辞任にあたり、ダーマー氏は、10月7日は、イスラエル史上最も暗い日だったと述べ、当時の政府の失策を認めたが、同時にその後の対応に始まり、7つの戦線(ガザ、西岸地区、ヒズボラ、イラク、シリア、イラク、イエメン)すべてと直面してきた2年の間、指導力を発揮したネタニヤフ首相を称賛。10月7日のことと共に、ネタニヤフ首相とその政府は、歴史に覚えられるだろうと語った。

ダーマー氏と協力してきたカッツ国防相は、同氏の貢献に感謝を表明。「ダーマー氏は、真のシオニストとして、国への深い愛と献身で働いてきたと称賛と感謝を表明した。強硬右派のベングヴィル氏、スモトリッチ氏も同様のコメントを出した。

野党代表のラピード氏は、保守的なダーマー氏との相違点はあるとしながらも、「彼がシオニストであり、愛国者であることを疑ったことはない。これまでの働きに感謝し、これからの歩みの祝福を祈る」と表明した。

多様なイスラエルの中で、与野党あらゆる方向から敬意を受けたダーマー氏。イスラエルの政治家たちに、最終的な一致点、何が大切なのかと示すことになったようである。

www.timesofisrael.com/resigning-as-minister-dermer-says-govt-will-be-remembered-for-both-oct-7-and-its-response/

ラファ地下トンネルのハマス200人追放で合意か:しかし受け入れる国なし 2025.11.12

ガザのイエローラインからイスラエル側の地下トンネルで足止めになっているハマス戦闘員など約200人について、アメリカとイスラエルの間で交渉が続けられている。

11月10日、トランプ大統領の義理の息子であり最側近の1人であるクシュナー氏が、イスラエルに来て、この問題を含め、今後のハマスの武装解除、ガザの非武装化などについて、話し合いが行われた。

エルサレムポストによると、結局、ガザからハマスを一掃するという根本的な課題の一部として、イスラエルがかなり妥協する形で、200人を解放することでアメリカと合意したとのこと。

しかし、問題は、その200人を受け入れる国が今のところ、一つもないことである。

www.jpost.com/israel-news/article-873518

石のひとりごと

今現在もなお、イスラエル軍が駐留する、まさにその足下深いトンネルで立ち往生の、おそらくは若者の200人。脱出しても、受け入れてくれる国がないという。

この中で、ハマスに従うことに疑問を持つ者はいないだろうか。暗闇の中で目が開かれるように。また、彼ら美限界がきて、逆にまたイスラエルが非難されることがないよう、早く最善の解決が見出せるようにと思う。

ガリラヤ湖水位危機的低下:世界初・淡水のガリラヤ湖に淡水化した海水の注入開始 2025.11.12

ガリラヤ湖の水位は、現在、海面下213.33メートルで、危険レベルからわずか13センチ上という危機的水位になっている。

少し前になるが、10月23日、イスラエルの水道局は、水不足傾向が続くガリラヤ湖に、静かに淡水化した海水の注入を開始していた。

これにより、水位は、0.5センチ上昇した。今後毎月0.5センチ上昇させる計画とのこと。

淡水化した水は、ツァルモン川から注入され、ガリラヤ湖から北西4キロ地点にある、干上がっていた、エイン・ラピードの湧水に流し込んで、湧水を復活させて、ガリラヤ湖に流れ込むようになっている。

注入パイプは2本あるところ、現時点はまだ1本しか使われていない。必要に応じて注入量を増やせる形になっている。

しかし、淡水化したとはいえ、淡水湖に海水を注入するのは、文字通り世界で最初である。このことで、ガリラヤ湖の塩分量が減り、そこから死海へ流れる水の変化により、生態系に影響を与えるのではないかとの懸念もあった。しかし、科学者の実験により、その心配はないとの判断になったとのこと。

このプロジェクトは、2013年と2018年に、ガリラヤ湖が深刻な水不足に陥ったことで、飲料水にも危機が及んだため、開発が急がれた。

イスラエルではすでに、人が飲料水として利用できるまで、海水を淡水化することに成功している。空気から水を生成するスタートアップ社も登場している。

なお、イスラエルでは、来年の降水量は、通年に80%と推測しており、2万ドュナムの農業地で水が不足すると予想されている。こうした技術が活躍することになる。

www.timesofisrael.com/in-world-first-israel-begins-pumping-desalinated-water-into-depleted-sea-of-galilee/

イランでこれまでにない深刻な旱魃:現政権存続の危機か 2025.11.12

イランの危機的旱魃

イランは数十年前から警告されてきたが、ここ6年はずっと深刻な水不足が続いていた。BBCによると、この秋は、前例にないほどの旱魃(降雨量が昨年から92%減)に見舞われている。

特に首都テヘラン(人口約1400万人)では、ダムの貯水量が3%以下にまで干上がって、貯水池がほぼ空となっており、政府は、市民に節水を呼びかけている。まもなく、夜から始まって断水を余儀なくされるとみられる。

ペゼシュキアン大統領は、もし今後も雨が降らなかったら、水を配給制にしなければならなくなるが、それすらできなくなったら、市民はテヘランから避難を余儀なくされるかもしれないとまで述べた。

しかし、イランの旱魃には、インフラの古さ(100年前製造)と、今年6月のイスラエルを攻撃した際、その反撃で攻撃されたテヘラン北部では、洪水になっており、重要な水インフラが破壊された可能性もある。

www.bbc.com/news/articles/cy4p2yzmem0o

イランの現政権を支持する市民は少ないと言われているが、この旱魃でいよいよ政権崩壊になる可能性もある。

しかし、それでもイランは、今もイスラエルとの対立姿勢を崩していない。11月4日、テヘランでは、1979年にイランがアメリカ大使館を占拠し、400日間人質をとった事件から46年を記念する集会が行われ、市民たちが旧アメリカ大使館前に集まって、反米を叫んでいた。

www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/20251104_18/

また青い服の人形2体を首からぶら下げて、「Down with Israel(イスラエルと共に滅びよ)」と書いた掲示板を掲げていた。

さらに、Times of Israelによると、イランは、高度なミサイルの備蓄回復を図っていると発表した。いかに危機的旱魃でも、イランの姿勢に変わりはないということである。

現政権打倒なるか?2ヶ月前に政権打倒と引き換えに水支援を呼びかけたネタニヤフ首相

ネタニヤフ首相は、この夏、イラン国民に対し、10月、11月には、イランで旱魃が危機的になると警告し、現政権を打倒するなら、水不足への解決を提供すると呼びかけていた。

Times of Israelが、イスラエル当局の情報として、伝えたところによると、イスラエルは、トランプ大統領の任期が終前に、現政権を転覆させることを目標にしているとのこと。

石のひとりごと

イランで大旱魃になる中、イスラエルは淡水化技術に成功するという、なんとも皮肉な状況である。

思うに、イスラエルに敵対することでは苦難がくるが、イスラエルと和平を結べば、問題の解決がすぐにも与えられるという状況が、まるで絵に描いたように示されている。

イラン人の中には優れた人も多く、現政権に反発する人の方が多いと聞く。イランの回復のためにも、シリアのように、今の強硬なイスラム政権からより寛大な政権に変化が起こることを祈る。

www.timesofisrael.com/report-senior-official-says-israel-aims-to-topple-iranian-regime-by-end-of-trumps-term/

第39回世界シオニスト機構(WZO)会議:日本からユダヤ機関に貢献の道も 2025.11.12

第39回 WZO(世界シオニスト機構)会議がエルサレムで開催

少し前になるが、エルサレムでは、10月28日(火)から30日(木)まで、第39回目になるWorld Zionist Organization(WZO世界シオニスト機構)のCongress(会議)が行われた。

WZOは、1897年にイスラエル建国の父、テオドール・ヘルツェルが設立したもので、世界最大のユダヤ人団体である。シオニズムとは何かなど、基本的なことが話し合われる他、各地での現状も報告される。

また、WZOの運営機関であるユダヤ機関、ケレン・ハヤソッドといった、世界的なユダヤ人組織の新たな指導者が決まり、WZOを通じて配分される10億ドルの分配や、新しい人事も決められる。

参加者は42カ国からだったが、今年は特にアメリカから155団体の代表者たちが集まり、アメリカからの参加はこれまでで最大を記録した。

www.wzo.org.il/sub/39th-zionist-congress/home/en

この他、ユダヤ人の次世代若者2500人が集まった。海外で暮らすユダヤ人たちが、エルサレムに集まることで、自分のアイデンティティや、ユダヤ人国家の将来などへの確信を持つ時となった。

しかし、ディアスポラ(イスラエルではない世界各地に住むユダヤ人)の間では、今のネタニヤフ政権が、右傾化していることで批判的な人も少なくないことから、今回、ネタニヤフ首相は、初日演説を辞退したとのこと。

また今年は、WZOの代表候補に、問題の多い、ネタニヤフ首相の息子のヤイール・ネタニヤフ氏の名前が上がり、大炎上となった。最終的に、ヤイール・ネタニヤフ氏を候補から外す形で候補者名を発表するという内輪揉めもあった。

www.timesofisrael.com/delegates-descend-on-world-zionist-congress-for-largest-ever-plenum-on-jewish-future/?utm_campaign=most_popular&utm_source=website&utm_medium=article_end&utm_content=7

One New Man Family・日本からユダヤ機関に貢献の道も

WZOの重要な組織であるユダヤ機関がある。1929年に、世界各地に散らばっているディアスポラのユダヤ人を、助けるために立ち上げられた。

ユダヤ機関は、ホロコースト時代、多くのユダヤ人を助けた。1935年からの執行委員長は、ベン・グリオンである。後にイスラエルになるパレスチナ地域に移住しようとするユダヤ人を支援した。

The Jewish Agency building in Jerusalem. Photo credit: Jason

1948年にイスラエルが独立すると、アラブ諸国やヨーロッパなどからイスラエルへ移住するユダヤ人を支援した。このうち400万人は、ユダヤ機関を介しての移住であったと言われている。

エルサレム日本部があり、世界各地にオフィスが置かれている。

ユダヤ機関の活動は、各地にいるユダヤ人たちの献金が支えていた。どの家庭にもユダヤ機関のための貯金箱があり、子供の頃から、ユダヤ人同士で助け合うこの組織に献金をすることが習慣のようになっていたという。

イスラエルが建国した後、ユダヤ機関は、イスラエルの純国家組織になったが、政府からの経済的な支援は、受けていないという。今もWZOの部門であるケレン・カヤソッドや、IFNA(北米ユダヤ人連盟)などを通じて送られてくる献金で、活動が行われている。

しかし、近年では、ウクライナやロシアなどからの移住はじめ、欧米からも移住者が増えていることから、経済的にも回らなくなっているという。こうした中、福音派クリスチャンによる支援が信頼を得る時代に入り、ユダヤ機関が、クリスチャンからの支援も受け入れるようになっている。

アジアでは、韓国のソル・ウンス牧師(写真HPより)が、ユダヤ機関のデボラ・ガナーニ氏との出会いから、2018年にOne New Man Familyという組織を立ち上げ、アジア在住のクリスチャンからの献金を、ユダヤ機関に送ることが可能となった。

デボラ・ガナーニ氏は、ユダヤ機関クリスチャン親善大使である。

One New Man Family は、ユダヤ人とクリスチャンが一つになるというエペソ書2:15-16を元に活動している。

onmfj.com

活動のすべては、公式のユダヤ機関の働きを支援する形で、行われている。これまでに、ユダヤ人のイスラエル移住(アリヤ)を実現し、同行もしている。

最近では、ロシア、キューバ、南アフリカ、オーストラリアからの移住を支援している。

この他、移住後の定着、また戦争被害者やテロ被害者への支援も行っている。特にこの2年ガザでの戦争で、負傷し、PTSDなどで心に傷を負った兵士やその家族の支援も行っている。またメシアニック・ジューへの支援も挙げられている。

One New Man Familyは、ソル牧師の関係などから、韓国支部、アメリカ支部に続いて、日本支部も立ち上がった。日本から、日本円のままで献金が可能となっている。

日本のクリスチャンも活動に参加している。以下はその様子。

*献金は以下より 送金すると、どの分野に献金したいかとの返事が来るので指定可能。献金すると日本語によるニュースレター、祈りの課題が届くようになる。

三井住友銀行
【店名】 明石支店 (アカシ)
【店番号】 425
【預金種目】 普通預金
【口座番号】 7362823
【口座名】 ワンニユーマンフアミリージヤパン

ゆうちょ銀行(郵便局以外の銀行から送金する場合)
【店名】 〇一八(読みゼロイチハチ)
【店番】 018
【預金種目】 普通預金
【口座番号】 8862565
【口座名】 ワンニユーマンフアミリージヤパン

ゆうちょ銀行から送金する場合
【記号】 10150
【番号】 88625651
【口座名】 ワンニユーマンフアミリージヤパン

石のひとりごと

私ごとになるが、筆者は、1989年に、イスラエルの友人を通じて、ユダヤ機関と、カレン・ハヤソッドが協力?して行っていた移住プログラムに特別中の特別で入れてもらって、イスラエル入りを果たした。

その間に、イスラエルで救われたのだが、そのころの生活はユダヤ機関に支えられていたということなのである。そうして、すべてはそこから始まった。個人的には、本当に深い恩義を感じている。

それから35年以上を経た数年前、このWZOのエルサレムでの年次集会を取材し、イスラエルという国がいかに世界中に波及する巨大な国であるかを、改めて実感させられた。

主の目に、イスラエルは、やはり大きいと実感した。この国の背後には主がおられるのだが、それだけでなく、その実際の大きさからも、この国に逆らうことは懸命ではないと言わざるを得ない。

そこに今、アジアからも関与する道ができたという。教会が反ユダヤ主義に関わってきた経過もあり、クリスチャンを敵視してきたであろう、ユダヤ機関にとって、これは、非常に大きな転換で、時代の変化を実感する。

しかし、これに先立ち、日本にも支部があるBFP(ブリッジスフォーピース)などの先駆的クリスチャン団体の忍耐ある、イスラエル支援の下積み時代があったことを忘れてはならない。

BFPも続けて、イスラエルでの働きを続けているので、主の導きに従い、それぞれの働きを支えていただければと思う。

www.bfpj.org

ハダル・ゴールディン中尉遺体11年目に帰国:トルコが地下立ち往生ハマス200人救出で交渉か 2025.11.10

ハダル・ゴールディン中尉の遺体が11年目についに帰国

11月9日(日)夜、2014年のガザでの戦争の際に殺害され、それから11年もの間、遺体がガザへ拉致されたままになっていたハダール・ゴールディン中尉(当時23)の遺体が返還された。

この11年の間、両親とその家族、サポーターたちは、決して諦めることなく、ずっと、政府に遺体を取り戻すよう、求める運動を続けてきたのであった。

イスラエルでは、まずハマスは、ハダルさんとみられる遺体を返還すると表明。続いて11月9日午後8時に返還すると表明したが、その度にイスラエルのメディアが報道し、いかに国民的関心事であったかを表していた。以下は、ハマスが、洞穴からハダルさんの遺体を掘り出す様子。

ハダルさんとみられる遺体は、午後8時に赤十字を通じて引き渡され、まもなくハダルさんであることが確認された。実に11年の歳月を経て、ハダルさんは、両親の元、祖国に帰り着いたことになる。

ハダルさんの遺体は、現在、イスラエル軍駐留地になっているラファの地下トンネルから運び出されていた。この地域は、イスラエル軍も遺体捜索を行っていたが、ハダルさんを発見できていなかった。

*ハダル・ゴールディン中尉の拉致の経過(IDF)

www.idf.il/en/mini-sites/wars-and-operations/operation-protective-edge/operation-protective-edge/

イスラエルは2014年6月、西岸地区から3人のティーンエイジャーが、ハマスに拉致され、殺害されたことから、イスラエル軍が大規模に西岸地区に捜索に入り戦闘になった。

すると、ガザのハマスは、イスラエルにロケット弾250発を発射し、イスラエル人に負傷者も出た。このため、7月7日から、イスラエル軍はガザへの空爆。続いて17日からは地上軍も入って、ロケット発射地などを破壊した。この間、イスラエルに発射されたロケット弾は3000発とも言われている。

この時、イスラエル軍の戦車が対戦車砲の攻撃を受け、イスラエル兵6人が死亡。このうちの1人、オロン・サウル兵士の遺体が拉致された。オロン兵士の遺体は、やはり11年経った今年1月に返還されている。

この戦争では、イスラエルとハマスの間で、停戦が5回も宣言されたが、毎回ハマスが違反。8月1日に5回目の停戦となった数時間後、ハマスは、ラファの地下トンネルから出てきて、イスラエル兵3人を引き摺り込み、2人を殺害。1人を拉致した。それが、ゴールティン中尉である。

ゴールディン中尉は、その後、イスラエル軍によって死亡しているとの確認がとれたことから、家族に連絡
され、遺体がないまま、葬儀も行われていた。ハダルさんは、殺害される数ヶ月前に、フィアンセのエドナさんと結婚の約束をして、その準備もはじめていたという。

その後72時間後の8月5日の停戦もハマスが違反。最終的に、停戦になったのは、戦争開始から50日目の8月21日だった。この戦争で戦死した兵士は68人。イスラエルへ発射されたロケット弾は、4500発以上。イスラエル軍が、破壊したトンネルは32本で、このうち14本は、イスラエル領内に到達していたとのこと。

しかし、この戦争で死亡したパレスチナ人は2000人以上、10万人がガザ内難民になったことから、国際社会は、ハマスではなく、イスラエルを激しく非難した。

www.timesofisrael.com/hamas-said-to-recover-body-of-hadar-goldin-killed-and-abducted-in-2014-war/

地下トンネルに立ち往生のハマス200人と交換!?:トルコが介入を表明

Times of Israelによると、ハダルさんの遺体がイスラエルに引き渡された後、トルコが、これに貢献したことを自ら表明した。

また、パレスチナ側情報筋が、イスラエルのテレビ局カンに伝えたところによると、トルコが、イスラエル軍支配領域地下で立ち往生になっているハマスメンバー約200人の救出にも取り組んでいるとのこと。

そういえば、この200人に対する最後通告の時間はもうすぎているが、その後の情報は出ていない。トルコが、ハダルさんの帰国と、ハマスとイスラエルの間で交渉を進めた可能性がある。

トルコは、今、アメリカとともに、あと残っている4人の遺体を引き渡すよう、ハマスと交渉中とのこと。

なお、イスラエルは、ガザの戦後に、ハマス支援者であるトルコが関わることは、受け入れていない。

www.timesofisrael.com/hero-of-israel-after-11-years-in-hamas-captivity-lt-hadar-goldins-body-brought-home/

ハダル・ゴールディン中尉遺体返還が象徴するイスラエル社会が共有する価値観 2025.11.10

ハダル少佐の遺体の帰国は、イスラエル全体を揺るがした。イスラエル軍は、たとえ遺体になっても、兵士を1人も見捨てることはないという倫理、価値観を皆が、改めて共有する時となっている。

Photo: Courtesy of the families

ハダル・ゴールディン中尉(当時23歳)は、クファル・サバで双子の兄弟として生まれた。兄弟はツールさんである。仲の良い兄弟で、一緒にシオニズムのユースムーブメントで過ごし、共に、西岸地区入植地、エリで従軍前訓練を受けた。

その後、ゴールディン中尉は、優れた軍司令官となり、エリートのギバティ旅団の偵察隊小隊長になった。

部下達に人気の司令官だった。2014年8月にラファで、トンネルから出てきたハマスに、一緒にいた兵士3人とともに殺害され、ゴールディン中尉の遺体だけが、拉致されていた。

イスラエル人として、理想的な歩みでもあったことから、殺害された後は、従軍前アカデミーはじめ、宗教的、世俗的に関わらず、さまざまな教育機関で、その生き方が教材としても用いられていた。

しかし、いくら英雄しされたとしても、ハダル少佐の両親、またその支援者たちは、政府が、11年もの間に、ハマスに十分な圧力をかけなかったことや、チャンスを生かしてこなかったことに対し、非難する声も上げるようになっていた。以下はその特設のページ。

www.hadargoldinfoundation.org/

Comrades of Lt. Hadar Goldin escort a casket containing his remains out of the Gaza Strip after they were returned by Hamas on November 9, 2025. (Israel Defense Forces)

今11年経って、ハダル少佐が帰国を果たすと、ネタニヤフ首相、ヘルツォグ大統領も、英雄として迎える声明を出した。

ネタニヤフ首相府は、「ゴールディン家族、すべての失われた人質家族との深い悲しみを共有する。政府はまだガザに残されている4人の人質遺体を取り戻すことに全力を尽くす」との声明を出した。

まだ残されている遺体になっている人質は、メニー・ゴダードさん(73)、ラン・ギヴリ軍曹(24)、ドロール・オールさん(48)、タイ人のスダティサク・リンサラクさん(43)である。

ベネット元首相は、「ハダル少佐は、イスラエルの基本的な価値観であるモラルのシンボルのような存在になった。私たちの国では、誰1人取り残すことはない。」と語っている。

www.timesofisrael.com/hero-of-israel-after-11-years-in-hamas-captivity-lt-hadar-goldins-body-brought-home/

石のひとりごと

生存する人質だけでなく、もう遺体になっているだけでなく、骨があるかどうかもわからないような年月がたっていても、なお、国は、見捨てることなく、忘れず、救出する国、イスラエル。

イスラエル人の幸せ度は、戦争2年目の今年は、さすがに8位だったが、それまでの最高では4位と、穏便平和な北欧に続く高位であった。その背景にあるのが、家族関係の良さ、友人が多いことに加え、国における自分の価値を自覚していることが挙げられていた。

イスラエルでは、祖国はここしかないということ、国民が基本的には全員が従軍すること、またまだ高校卒業したばかりの若者に、国の軍服と本格的なライフルを渡すことで、国からの信頼も感じると聞いた。

イスラエル軍では、最初に部隊で一緒になったチームは、延々と同じ顔ぶれで、招集も常に一緒になるという。苦難、また特に戦闘を共にする中で、戦友を通り越して兄弟そのものになると聞いた。

あるメシアニックの兄弟は、従軍している間は、メシアニックかそうでないかを考える前に、みながまずは兄弟だと言っていた。このように、それぞれが、自然に、国の中で、自分の価値を確信できるようになるのだろう。

今回の人質問題は、本当に大きな痛みだが、それを国民全体が、自分ごととして共有したと思う。イスラエル人はまた一歩、一致へと進んだのではないだろうか。こんな国は、まさに他にない。ここにも主の民であるしるしを思わらせられるところである。

ガザからリオール・ルダエフさん遺体帰国:全員帰国訴えで一致するテルアビブ人質広場ラリー 2025.11.10

11月8日(土)朝、7日(金)にガザから引き渡された人質遺体が、リオール・ルダエフさん(61)であることが判明。家族に通知された。遺族は妻のヤッファさんと、子供四人と数人の孫たち。父親と兄弟二人である。

in Tel Aviv on March 11, 2025. (Avishag Shaar-Yashuv/IDFWO)

写真は、今年3月の時点で、遺体でガザにとりのこされている夫の未亡人たち。ヤッファさんは右から2人目。

リオールさんは、キブツ・ニール・イツハクの副治安コーディネーターだった。2023年10月7日に、侵入してきたハマスとの戦闘に中で負傷。その後死亡して、遺体はガザへ拉致されていた。

リオールさんは負傷した時点で、家族にそのことを伝え、その後、連絡は途絶えたという。

従軍中は、対空戦車部隊隊員で、今回は、民間防衛隊として死亡ことから、予備役准尉の称号を受けた。

www.timesofisrael.com/body-of-hostage-returned-from-gaza-identified-as-lior-rudaeff/

Hostages Square in Tel Aviv, November 8, 2025. (Alon Gilboa/Hostages and Missing Families Forum)

リオールさんの遺体が戻ってきた11月8日(土)、安息日明け恒例の人質広場でのデモでは、元人質たちも参加し、ガザでの人質であった日々を証言。

10月13日に戻ってきて、性的暴行を受けていたと証言したロム・ブラスラフスキーさんも参加した。

ガザで、このテルアビブでのデモの様子を見ていたと語り、そこに今自分がいることに心臓がドキドキしていると語った。

ロムさんは、集まった人々の感謝し、自分を救出するために、死をも覚悟でガザに入ったイスラエル兵たちに敬意を表明した。

また「ガザに取り残されている人はすべて、取り返す時が来た」と訴えた。

www.timesofisrael.com/emotional-rollercoaster-at-rally-dead-hostages-brother-laments-month-long-wait-for-body/

パリでイスラエル交響楽団演奏中に親パレスチナデモ:水晶の夜再来を警告するサバイバーたち 2025.11.10

パリでイスラエルフィルハーモニーが演奏中に妨害テロ

11月6日(木)夜、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団が、パリのフィルハーモニーホールでコンサートをしている最中に、親パレスチナ、反イスラエルデモ隊が、会場で客席に火をつけて炎上させたため、コンサートは中止を余儀なくされた。

男性3人と女性1人が逮捕され、その後の裁判で、4人全員が正式に起訴された。

イスラエルの管弦楽団が、パリのこのホールで演奏することについては、複数の団体から反対が出でいた。しかし、フランスの文化省は、文化活動の分かち合いにおいては、いかなるボイコットも正当化するべきではないとして、イスラエル管弦楽団の演奏会を認めたとの経過があった。パリ・フィルハーモニーホールも、演奏の妨害を非難する声明を出した。

しかし、先の9月、ベルギーは、指揮者が、著名なイスラエル人指揮者ラハブ・シャニ氏であったことから、ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団の演奏を、キャンセルさせて、物議となっていた。理由として、当時のイスラエル政府のガザ戦争への態度が明らかでないということを挙げていた。

www.timesofisrael.com/four-charged-over-disruptions-of-israel-philharmonic-concert-in-france/

ナチスの水晶の夜から87年:サバイバーたちが警鐘

今から87年前の1938年11月9日、ドイツでは、水晶の夜(クリスタル・ナハト)が起こった。ベルリンはじめ、ドイツ各地で、ナチスと暴徒たちがユダヤ人のシナゴーグはじめ、ビジネスや家屋を襲撃し、ガラスを破り、放火した夜のことである。

イスラエルのホロコースト記念館によると、この夜だけで、ユダヤ人が少なくとも91人殺害され、(被害者であるにもかかわらず)3万人が逮捕された。放火されたシナゴーグは1400件、店舗など破壊されたビジネスは、7500と推測されている。

Jerusalem, Nov. 5, 2025, ahead the 87th anniversary of Kristallnacht (AP Photo/Leo Correa)

101歳で今も健在のウォルター・ビンガムさんは、14歳の時に、フランクフルトで、この夜を体験した1人である。この夜のことは細部に至るまで、覚えていると語っている。この日、消防車は、炎上するシナゴーグは放置し、その隣に延焼しないようにだけしていたと語る。

ジョージ・ジェフィさん(94)は、当時7歳。水晶の夜の後、3日間、家から出られなかったと語る。ウォルターさんとジョージさんは、どちらも、この後、キンダートランスポートというユダヤ機関の子供を助けるプロジェクトで、両親と離れ、1人イギリスへと避難した。

ポール・アレクサンダーさん(87)は当時1歳未満だった。数週間後、両親は、まだ1歳にも満たないポールさんを必死の思いでキンダートランスポートに委ねた。イギリスでこれらの子供たちは、ユダヤ機関に保護され、終戦までを過ごした。ウオルターさんは、青年となり、イギリス軍に従軍していた。

水晶の夜から87年目にあたり、3人のサバイバーたちは、今の世界の状況が、1930年代と同じだと警告を発した。

ウォルターさんは、反ユダヤ主義は、あらゆる困難の万能役(逃げ場)になるので、なくなることはないとしながらも、次世代への教育がそれとの戦いに役立つと語っている。

ウォルターさんは、101歳ながら、現役ジャーナリストとして、証言や記事も発信し続けており、2021年から、世界最年長のジャーナリストとして、ギネスに登録されている。

西岸地区で過激右派入植者のパレスチナ人攻撃回数増加;徐々に進むユダヤ人の入植 2025.11.10

イスラエルは多様な国であり、今は強硬右派政治家たちによる政権になっている。その中でも特に、警察を管轄するベングヴィル氏は強硬右派であり、と西岸地区の入植地を扱う官僚は、強硬な宗教シオニストのスモトリッチ氏となっている。

強硬右派たちは、今のイスラエル国土だけでなく、東エルサレム、西岸地区すべても神が、ユダヤ人に与えた地だと信じているため、それらの地域に住むパレスチナ人は、排斥すべきだと考えている。

このためか、この政権になってから、西岸地区におけるパレスチナ人への暴力と追放行為の放置、またユダヤ人の入植活動が進む傾向にある。

またイスラエル国内では、アラブ人社会での殺人事件が、ほぼ野放し状態で、自滅を黙認するかの動きにあり、イスラエル国内のアラブ系市民たちが、首相官邸前でデモをするまでになっている。

西岸地区で進むパレスチナ人への暴力とユダヤ人入植活動

西岸地区では、10月初旬からオリーブの収穫に入っているが、この間に、入植者(セトラー)と呼ばれる強硬過激右派ユダヤ人の若者たちによるパレスチナ人たちへの攻撃や放火が続いている。

パレスチナ側の情報ではあるが、11月8日(土)、ナブルス近くの村など複数の地域で入植者たちの攻撃があり、15人が負傷。9日(日)にもマスクをした数十人が、西岸地区のジャバと、ベドウィンの村に来て衝突し、7人が負傷した。オリーブの収穫にも支障が出ているとのこと。

www.timesofisrael.com/15-hurt-in-w-bank-settler-attacks-including-palestinian-farmer-recently-interviewed-by-toi/

www.timesofisrael.com/seven-injured-as-settlers-allegedly-set-fire-to-palestinian-buildings-in-west-bank/

また西岸地区では、ユダヤ人の家屋建設も急増している。今年に入ってから販売に出された家の数は5667棟と、年間数ではこれまでの最高を記録した。これまでの最高は2018年の3808棟であったことから、相当な増加数であることがわかる。

新たな住居が建てられている地域は、主に、エルサレムに近いマアレイ・アドミムと、西岸地区では最大のユダヤ人入植地で、すでに市扱いでもあるアリエル周辺である。これらすべてにユダヤ人が入居した場合、西岸地区入植者が2万5000人増えることになる。

マアレイ・アドミムとエルサレムの間には、物議となっているE1地区があり、今年ここにも3400棟の建設が許可された。E1にユダヤ人が住むようになれば、将来的には、エルサレムがマアレイ・アドミムとつながって、西岸地区を分断することになる。

パレスチナ人たち、特に今、その国家承認の問題が国際社会で出ている中、イスラエルの入植地拡大の動きは、繊細な問題になりうる。しかし、そうこうしているうちに、入植地の拡大は進んでいるようである。

www.timesofisrael.com/tenders-for-record-number-of-west-bank-settlement-housing-units-published-in-2025/

イスラエル国内アラブ系住民殺人事件1日で7人死亡:今年の犠牲者233人と急増

イスラエルでは、アラブ系市民が住む地域で、アラブ人どうしの殺人事件がほぼ野放し状態になっていることが問題になっている。そうした中、11月7日(金)の夜だけで、テルアビブなど、全国のアラブ人地域で、7人が銃殺される事態になった。

同様に殺人事件で死亡したアラブ人は、今年に入ってからだけで、223人である。このうち189人は互いの銃殺で、11人は警察官による銃殺となっている。うち112人が30歳以下で、18歳未満の未成年も5人。20人は女性であった。昨年の同時期と比べて、9%の増加となっている。

アラブ人社会では、各種犯罪事件の他、姦淫時などでの家族間の殺人の他、部族闘争からの殺人も発生している。

本来、イスラエルの警察が取り締まるところだが、これらの殺人事件をほとんど解決していないという。警察を管轄するのが、イスラエルはユダヤ人の国と主張するベングヴィル氏なので、アラブ系住民は、あえて、アラブ人の殺人犯罪を無視していると訴えている。

ベングヴィル氏が、警察閣僚に就任したのは、2023年である。Times of Israelによると、ベングヴィル氏は、就任した際、前任者が実施していたアラブ系社会の犯罪防止対策をすべて解除した。そのせいか、2023年のアラブ系社会での犯罪は、前年の2倍になっていたとのこと。

11月9日(日)、エルサレム首相官邸前では、アラブ系住民たちが、この件を改善するよう訴えるデモを行った。

www.timesofisrael.com/after-7-arabs-shot-and-killed-over-weekend-hundreds-rally-outside-pms-office/

石のひとりごと

この地域には、確かに、聖書時代から1000年以上にわたってユダヤ人とその国が、存在していたのであり、いったん消え去ったのではあるが、1900年以上経って、今、その元の地に、ユダヤ人が帰ってきたということに間違いはない。また、ユダヤ人生き残りのために、イスラエルという国は、唯一であり、必要不可欠である。

しかし、西暦70年以降、1948年にイスラエルが戻ってくるまでの間に、アラブ人が1000年以上も住んでいたことも確かなことである。非常に難しい問題である。