総選挙・驚きの出口調査結果 2013.1.23

<テルアビブに設置された選挙センターより速報>*出口調査であり、最終結果ではないことに注意

1.右派と左派が半々

イスラエルで22日行われた国会総選挙。投票締め切りの22時に近づくに連れて、予想以上の投票率となり、最終的に66.6%となった。その結果、出口調査によると、右派に傾くとの予想を大きく覆し、右派政党が61、左派政党(中道を含む)が59とほぼ半々のバランスのとれた国会になるみこみとなった。

2.右派のびなやみ-ネタニヤフ首相に苦しい結果

22:00の時点で、最大議席を獲得したのはネタニヤフ首相のリクード・ベイテイヌ合併党だが、獲得した議席は予想を大幅に下回る31議席。同じく得票を伸ばしていると思われた極右の「ユダヤの家」党も17席との予想を大幅に下回る12席にとどまった。

3.中道左派躍進

右派に変わって予想以上に得票をのばしたのが中道政党の「未来がある党」(ラピード党首)である。2位になると思われた労働党(左派)を抜いて2位となった。3位となった労働党(中道)は17席。

宗教政党シャスは、予想通りの12席。かつての女性首相候補だったツィッピー・リブニ氏の党は7席だった。

<国内問題解決を望むイスラエル市民>

今回、大きく議席を伸ばした新党「未来がある党」は、社会構造の変革を訴える党で、指示基盤は、世俗派からユダヤ教正統派までと幅広い。今回の結果は、イスラエル市民が、より平等な徴兵制など、国内に山積みとなっている社会問題の是正を第一に望んでいることを示している。

しかし、「ユダヤの家」党も、予想を下回ったとはいえ、解散前の国会では3議席であったのが12議席へと躍進している。「ユダヤの家」党は2国家2民族(国をイスラエル人とパレスチナ人で分け合うという考え)を支持していない。
したがってパレスチナとの土地問題に関していうならば、イスラエル市民が右寄りに傾いてきていることも確かなようである。

<今後の動き>

最大議席をを獲得した党の党首として、時期政権でもネタニヤフ首相が続投となる。

首相は今後42日以内に連立政権を立ち上げなければならない。右派だけで政権を形成することは難しいため、中道の「未来がある」党に、極右の「ユダヤの家」党を含める可能性があるが、難しい交渉になりそうである。

明日、第19代国会・総選挙 2013.1.21

イスラエルでは明日、総選挙が行われる。イスラエルで投票できるのは18才以上で,今回の有権者数は566万人。投票率はこれまでの平均からすると70%と予想されている。明日は、バスは動くが全国で休日となる。

選挙会場は、全国に10235カ所。障害者のための会場は1552カ所。病院に94カ所。刑務所にも57カ所となっている。
朝8時から夜10時まで(日本時間22日午後3時から23日朝4時)投票が受け付けられ、即時開票される。日本と同様、11時ごろには、出口調査ですでに結果がわかるようになっている。

<選挙のしくみ>

イスラエルは小さな国なので、選挙区は一つである。有権者は、登録された34党の中から一つ選んで党名で投票する。獲得票の割合にしたがって、各党に議席数が割り当てられる「選挙名簿」式である。

イスラエルの国会の総議席は120。イスラエルでは建国以来、単独政党が政権をもったことがなく、必ず連立政権になる。最大議席を獲得した党の党首は、42日以内に連立政権を確立することになる。

<選挙運動>

イスラエルでは街頭演説や、選挙カーによる宣伝はない。党首の顔をあしらった大きなポスターは電車の駅などにあるが、町中にはみあたらない。バスの中に、党名をアピールした小さなステッカーが数枚はってあったが、男性がそれをはがしてまわっていた。

イスラエルでは、テレビでの討論がさかんで、党首への直接インタビューはもちろん、それぞれの党が代表を出して、けたたましく論争している。お互いを非難するタイプのアピールも結構あり、醜い争いとなっている。

現時点で、まだどの党に投票するか決めていない人は18%。市民の反応は、おおむね「政府が変わってもどうせなにもかわらないだろう」というもの。特にアラブ系市民にとっては何も期待するものがないため、アラブ人の投票率はこれまでで最低と予測されている。

<史上最も右よりになると予想>

今回の選挙では、すでにネタニヤフ首相のリクード・ベイテイヌ合併党が最多議席を獲得するのはすでに予想ずみである。しかし、最多といっても予想は32議席。したがって、選挙後にどんな党と連立を組むかが時期政府の特徴となる。

今回の特徴としては、宗教シオニストの「ユダヤの家」党が獲得票を増やしていることがあげられる。ネタニヤフ首相と「ユダヤの家」党のベネット党首は犬猿の仲と言われているが、彼らを含めないわけにはいかないと思われる。BBCは史上最も右よりになるとの予想(懸念)を報道している。

北西アフリカで勢力を伸ばすイスラム勢力 2013.1.20

アルジェリアのガス油田人質事件について、アルジェリア軍の4日にわたる強行突入で、人質23人、テロリスト32人が死亡。死亡が確定した外国人は現時点で7人。この中に日本人は含まれていないが、10人の安否がまだわかっておらず、緊張が続く。

<フランスのユダヤ共同体が警戒態勢>

今回のアルジェリア人質事件では、背景に隣国マリでフランス軍が行っているアルカイダ系イスラム勢力への攻撃が関わっていることは前回報告した通り。今回の犯行はフランス軍に領空を使用させているアルジェリアに報復するためという動機もあった。

これを受けて、すでに反イスラエル思想からの反ユダヤ行為が頻発しているフランスではイスラム主義過激派がユダヤ人への反ユダヤ行為を激化する可能性が高いとして警戒態勢に入っている。

イスラム主義者らは、アメリカとイスラエルを敵視しているため、対イスラム行為であれば何であっても最終的には反イスラエル、反ユダヤ行為へと発展させるのである。

<サハラ砂漠のアルカイダとフランス軍>

この事件で明らかになったのが、北西アフリカ、サハラ砂漠で勢力を強めるアルカイダ系のイスラム武装勢力である。
アルカイダは、2011年、ウサマ・ビン・ラディンが米国特殊部隊に殺害されてから、勢力が落ちたと伝えられていた。しかし、欧米の目にとまりにくく、干ばつの他、麻薬売買などの犯罪組織により、北西アフリカ諸国では、アルカイダの流れを受け継ぐ武装勢力が国境を越えて勢力をのばしていたのである。

彼らが特に勢力を伸ばしているのが、チュニジア、アルジェリア、リビアなどをマグレブ諸国と呼ばれる国々。この地域に隣接するマリ共和国では、すでに3分の2がイスラム武装勢力に乗っ取られ、首都バマコにせまる勢いとなっていた。

このため、かつてこの地域を支配し、今も影響力のあるフランスがマリへ軍事介入を開始。地上軍まで投入したのが先週16日である。現在マリにいるフランス軍兵士は2500人と報じられている。フランス軍は首都バマコ付近からイスラム勢力を押し戻したもようである。

フランス政府は、アフリカのことなので、アフリカ人で対処してほしいと考えている。そのためアルジェリア軍など正規軍の訓練にあたっているほか現在、アフリカ全土の国々に、イスラム勢力の制圧のための軍を派遣するよう要請しているもよう。これにナイジェリア軍などが応じているという。

イランで拘束されている牧師処刑の危険性 2013.1.20

昨年9月にイランで拘束されたイラン系アメリカ人のサイード・アベディニ牧師(32)が、最も残酷といわれる裁判官に引き渡されたことが明らかとなった。絞首刑になる可能性が高まったため18日、アメリカ政府が即刻釈放をイラン政府に対して求めた。

サイード牧師からの手紙によると、拘束されて以来、拷問されているもよう。拘束の理由は、キリストへの信仰である。最近イラン国内でイスラム以外を信仰する人々が増えてきたことによるものと思われる。

アルジェリアで邦人ら拘束の背景と今後 2013.1.17

16日現地時間早朝5時、地中海に面する北アフリカのアルジェリアで、イギリスなどが運営するガス油田が、アルカイダ系のイスラム武装組織に襲撃された事件。

これまでにイギリス人1人、フランス人1人、アルジェリア人1人が死亡、外国人を含む20人(犯行側は41人と発表)が、同油田敷地内で人質となっている。

人質となっているのは日本人3人(この他に10人不明で調査中)の他、アメリカ人、ノルウェー人。アルカイダ系のテログループAQMI(イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ)の分派が犯行声明を出している。

現在、アルジェリア政府軍が敷地周辺を包囲。一時軍事介入も試みられたが、犯人らに撃退された。犯人らは、「もし軍事的に人質を解放しようとするなら、その場で殺害する」と警告している。これらイスラム主義勢力は、残酷になりうるため、非常に危険である。

<何が目的か?-北・西アフリカでイスラム武装勢力拡大深刻>

アルジェリアが位置する北および西アフリカ一帯は1990から2000年代にかけて、イスラム原理主義武装勢力の台頭が目立つ。アルジェリアでも、1990年代、政府と反政府イスラム武装勢力との闘争で15万人が死亡した経過がある。

イラクやシリアなど中東では活動しにくくなったイスラム武装勢力が、北・西アフリカへ拠点を移しているとの指摘もある。この地域では、外国人拉致事件やテロも多数発生するようになっていた。

今回の犯行グループAQMIの要求は、アルジェリアの南の隣国マリ共和国で、フランスが行っている反政府イスラム武装勢力への攻撃停止、及び、アルジェリア政府に拘束されているアルカイダ系の武装勢力1000人の解放などである。

<マリ共和国で何が起こっているか?>

政府が脆弱なマリ共和国では、特にイスラム武装勢力が活発になっている。すでに国の3分の2を武装勢力が制圧するまでの状況となった。このため、元宗主国だったフランスが、今月11日、単独で軍事介入。

13日にはフランスの空爆で100人以上が死亡し、AQMIが報復を宣言していた。フランス軍はマリで16日から地上戦に入ったところである。

<アルカイダ勢力の一致?>

今回、AQMIが国際的な要求していることからみても、北・西アフリカのイスラム武装勢力が、アルカイダの元に結集を始めたのではないかと懸念されている。

こうした武装勢力は、「アラブの春」でリビアのカダフィ政権が崩壊した内乱に参戦しており、この時にリビアから最新式の危険な武器をそれぞれ持ち帰ったといわれている。

十数年ぶり冬の大嵐到来 2013.1.9

イスラエルでは6日から十数年ぶりといわれる冬の大嵐が上陸。これまでに、強風(80K/h)と大雨による洪水で全国的に甚大な被害をもたらしている。死者は3名。

洪水で車の中で立ち往生になった人々は、空軍のヘリコプターや、ゴムボートが出て救出している。ハイファ近郊ではビルの屋上にいた15人を救出。ベト・シャン南部では、ヨルダン川から噴出した水で車ごと流された3人が救出された。

イスラエル中央では、通常は乾いているアヤロン川が氾濫し、テルアビブとエルサレムを結ぶ中央幹線道路が冠水。数時間閉鎖になった。死海、エンゲディを結ぶ90号線も洪水で一時閉鎖した。ショッピングセンターでは、洪水で一階部分が全部浸水したところもある。

4日めの今日は、強い寒気で北のヘルモン山で大雪になったのをはじめ、ガリラヤ、ハイファ、エルサレム、西岸地区各地でも雪が降っている。

<イスラエル軍とパレスチナ警察が協力>

この嵐は、イスラエルだけでなく、西岸地区やガザ地区にも及んでおり、西岸地区でも洪水にまきこまれたパレスチナ人の女性が2名死亡した。

イスラエル軍はパレスチナ警察に救出のための機材を提供するなどして双方が協力活動を行い、これまでに洪水で立ち往生になっていたバスの乗客30名を救出している。

ガザ地区でもこの嵐で20本以上の木が倒れ、多くの家庭が停電。ガザでも被害にあった数十人を救出したもよう。

イスラエル軍は怖くない!? 2013.1.4

最近、西岸地区でパレスチナ人とイスラエル軍との衝突が増えてきている。

これは、昨年11月、イスラエルがガザで地上戦を行わないで、ハマスとの停戦に合意、また12月には、投石を受けたイスラエル軍兵士らが背を向けて逃げる姿がネットで流されたことも追い風となって、若いパレスチナ人の間で、「イスラエル軍は怖くない。勝てる。」的な感情が高まっていることが原因と言われている。

この風潮に乗って、第三インティファーダ(投石民衆蜂起から自爆テロ)へと発展することが懸念されるため、イスラエル軍は現在、積極的にA地域(パレスチナ自治政府直轄地でイスラエル人は通常立ち入り禁止)に入って、指導者らの摘発逮捕を行っている。

しかし、国際社会からの批判や、法的なしばりが足かせとなり、逆に兵士たちが武器を使用しないまま退却するというケースが増えて、さらにパレスチナ人のイスラエル軍への恐れを低下させる繰り返しとなっている。

<ジェニンで衝突>

1日、ジェニン近郊の村で、野菜売りに変装してイスラム聖戦のグループを逮捕しようとしたイスラエル軍の試みがばれて、パレスチナ人が暴徒化し、イスラエル軍と衝突。双方に負傷者が出た。

さらに3日、ジェニンで再びイスラエル軍がパレスチナ人らの投石にあい、目的の人物を逮捕できないまま、別の人物を逮捕して退却したとの報道がなされた。(後にイスラエル軍はこれを否定)

この時、走り去るイスラエル軍の車両3台のうち1台に、4人のパレスチナ人の若者がよじ登っているところがネットで流された。こうした行為は、これまでになかったことで、パレスチナ人の間で、イスラエル軍に対する恐れが低下していることを現している。http://youtu.be/n-dbyaGn0Dw

退却についてイスラエル軍は、「車両は防弾されている。投石で中の兵士が傷つくことはない。車両を停止して反撃すれば、パレスチナ人が死亡し、地域全体が混乱に陥る。かっこうは悪いが、そうなるよりはましだと判断した。」と説明している。今後、実弾の武器で身を固めるイスラエル軍が、投石のデモ隊にどう対処していくのかが課題となっている。

<自発的行為>

西岸地区のビルゼイト大学カチーブ教授(第一インティファーダを経験)によると、こうしたパレスチナの若者たちの行為は、特定のテロ組織に指示されたものではなく、自発的なものと分析されている。将来への希望が見えず、自治政府経済の悪化で失業率が高まっていることが原因とされる。

イスラエル総選挙アップデート-右よりに向かっているイスラエル政府 2013.1.4

イスラエルでは22日に、国会の総選挙が行われる。議席は120議席。現在、毎日のように、獲得議席数の予測がなされている。

今回の選挙では、ネタニヤフ首相のリクードとイスラエル・ベイテイヌ(イスラエル我が家)の合併党が政権を取ることは間違いない。しかし、選挙日が近づくにつれて、この合併党の予想獲得議席数が、確実に低下している。

かわりに伸びているのが、「ユダヤ人の家」党。これは宗教シオニストの党で、エルサレムはもちろん、西岸地区も全部、神がユダヤ人に与えたものだとの理念を基本姿勢にしており、二国家二民族として土地を分け合う意思はない。

時期政権の右派色が濃くなるにつれて、左派政党や、最大野党の労働党をはじめ、歩み寄りをみせていた「未来がある党」や「ツィッピー・リブニ党」なども、連立には加わらないとの意思表示をしはじめている。

ネタニヤフ首相は、ユダヤ教政党や右派政党だけでなく、極右などとも連立を組まなければならなくなると予測されている。つまり、イスラエルはますます右派となり、和平の希望はさらに遠のきつつあるということである。

アメリカ財政の壁・回避へ 2013.1.1

1月1日にアメリカで減税政策の期限切れによる減税失効と、国家債務(国の借金)が法律で定められた上限に達したために、歳出の強制削減に突入し、景気が失速すると懸念されていた「財政の壁」。

期限ぎりぎりの31日になって、上院において、民主・共和両党が、オバマ政権の対策案への合意に達し、回避されるみこみとなった。合意したのは、年収45万ドル以下の世帯に関しては減税を延長すること、歳出の強制削減を2ヶ月延長するという点。年越しとなった下院での協議も合意に至る見通しだ。

しかしお金がないことには変わりはないので、高所得者は増税となる他、この2ヶ月の間に予算案の徹底見直しがなされることになる。

100才でイスラエルへ移住-2012年移民事情 2013.1.1

2012年、これまでの最年長、100才でイスラエルへ移住した人がいた。元はポーランド生まれで18才でブラジルに移住したモシェ・レダーマンさんだ。3人の子供たちと6人の孫、6人のひ孫は皆すべて先にイスラエルへ移住していた。

モシェさんはイスラエルでも元気。イスラエルで守られている安息日が特に気に入っているとのこと。

<2012年新移民事情>

2012年、イスラエルへ移民したユダヤ人は、昨年とほぼ同数の約18000人。出身国は3451人(20%)がロシア、2952人(17%)がアメリカ、2952人(17%)はエチオピア、2030人(14%)がウクライナ、1853人がフランス、となっている。

新移民のうち5274人が19才以下の子供たち。4890人は20才代だった。移民者の半数以上が若者だったことになる。さらに昨年末、マナセ族の末裔とされるインド系ユダヤ人750人も到着している。

2013 良いニュースでスタート 2013.1.1

<天然ガスの掘削始まる>

2010年にイスラエル(ハイファから130キロ沖)で発見された含有量世界一と推測されるタマール天然ガス油田。12月30日、掘削のための拠点がアシュケロン沖に完成した。ガスは海底深くにあるが、作業がスムースにすすめば、4月には天然ガスを採取できるみこみ。

もし成功すればイスラエルはエネルギー自給国となり、もはやアラブ諸国の原油に頼る必要がなくなる。そればかりか、天然ガスを販売することも可能となり、その収入は年間30億ドルと予測されている。この新事業で新しい雇用も期待できる。

タマール油田は2010年に発見されて以来、所有権をめぐって、隣国レバノンと争った経過がある。現在、油田はイスラエル海軍が厳重に警護している。

*イスラエルは食料自給率100%。エネルギーむ自給率100%となれば、将来、世界の大艱難時代に避けどころになる可能性も。

<世界で唯一!?失業率が下降>

イスラエルの失業率は2012年末で6.7%と昨年よりも下降。昨年だけで35万の新しい雇用を実現していた。ネタニヤフ首相はステイニッツ経済相、フィッシャー・イスラエル銀行総裁に感謝を述べた。

エジプト新憲法施行 2012.12.27

懸案になっていたエジプトの新憲法。イスラム主義に傾きすぎだとして反対する勢力と、憲法制定を急ぐムルシ大統領(イスラム主義団体・ムスリム同胞団)が激しく対立していたが、2回目の国民投票を経て承認され、26日、正式にエジプトの新憲法として施行されるに至った。

新憲法への賛成票は63.8%、反対は36.2%だった。ムルシ大統領は、「エジプトは新時代を迎えた。」と語り、これからは落ち込んでいる経済改善政策を第一にすることを明らかにした。

大統領は、反対勢力に対し、和解して共に前進するよう呼びかけてているが、反ムルシ派は、国民投票に不正があったとしてあくまでも対立していく姿勢である。また今後、新憲法下のエジプトが本当に民主国家になるのか、独裁的なイスラム主義国になっていくのかどうか注目されるところだ。

憲法制定を受けて、エジプトでは2ヶ月以内に下院の選挙が行われ、議会政治の再開となる予定である。

<エジプト人活動家がイスラエルで講演>

エジプトで民主化デモを行った指導者の1人で、ブロガーとしても知られるマイケル・ナビール・サナードさん(27才・写真)が、苦労の末、国連の人権保護団体の支援を受けてイスラエルのビザを取得、ヘブライ大学で講演を行った。

サナードさんは、かつては民主国家として反映していたエジプトが、ナセル大統領の時代から独裁になり、同時に経済力も落ちていったという歴史を語った。

これに反対して立ち上がったエジプトでのアラブの春で、最初は純粋な民主化運動だったが、第二段階では、軍暫定政権に支配され、そして現在の第三段階は、イスラム主義の台頭だと語った。この間、民主主義の実現に奔走してきたサナードさんは、軍に何度も逮捕され、302日間刑務所に拘束されて拷問も受けたという。

アラブ民族主義が架空であると語り、「アラブ民族主義とシオニズムは互いに依存している。中東では共存するしか道はない。」と大胆に発言。次にイスラエルが民主国家であることを高く評価する発言をすると、前列に座っていた親パレスチナの女子学生らが立ち上がって激しく非難をしはじめ、20人くらいが退席していった。

サナードさんは、無神論者だと言っていたが、ハマスの息子のモサブ・ハッサン・ユーセフさんと同様に、内側から事実を摘発する若者はエジプトにもいるということである。なお、サナードさんは現在ドイツに在住している。