連立交渉成立 2013.3.14

さんざすったもんだしたあげく、最後には、総選挙やりなおしかとまで言われた代33代政権の連立交渉。14日午後、ようやく最終合意に至ることができた。来週早々にも国会で宣誓式が行われる。オバマ大統領訪問ぎりぎりとなった。

有力3党、リクード・ベイテイヌ党(ネタニヤフ首相)、未来がある党(ラピード党首)、ユダヤの家党(ベネット党首)が獲得した主な閣僚のポジションは以下の通り。

1.<リクード・ベイテイヌ党>・・・ネタニヤフ首相、外務相(現職リーバーマン氏留任)、
                  国防相(元国防軍参謀総長モシェ・ヤアロン氏)、
                  内務相(現教育相ギドン・サル氏)

                  *「最重要ポストは保持」外交防衛関係に影響力

2.<未来がある党>・・・ラピード財務相、教育相、厚生労働相 *内政関係に影響力

3.<ユダヤの家党>・・・ベネット通産相(兼副首相)、住宅相、宗教相、ディアスポラ関係省庁 
             国会経済委員会主事(仮約)*正統派の社会参画、入植地関係に影響力

*ツィッピー・リブニ党・・・法務相兼パレスチナ交渉担当、環境相

<今回の人事で、予想される主な変化>

1.ユダヤ教超正統派の優遇が削減される(超正統派も徴兵・社会奉仕、正統派への社会保障削減と労働による社会参画)

2.パレスチナ人との対話がはじまる

3.西岸地区でのユダヤ人の入植活動がすすむ(ベネット氏の圧力によるが、連立内で激しい対立が予想される) 

4.イラン攻撃にむかう?*ヤアロン新国防相は、タカ派傾向

日本ではこれほどもめた場合、あとの人間関係にも大きくひびが入ってしまうが、イスラエル人の場合、意見を出し合ってもめたとしても、それは交渉であってけんかではない。いったん合意した以上、ここからよい政府にしていくものと期待する。

新しい法王フランシス1世就任 2013.3.14

バチカンで新しい法王が就任した。アルゼンチンのイエズス会出身でフランシス1世(76)と名乗る。ヨーロッパ以外から法王が就任するのは1300年以上ぶり。

フランシス1世は、自分で料理したり、自分で電話もとるという。「私に会いにくるぐらいなら、その費用を貧しい人に。」と言うなど、謙遜と質素、暖かい人格だと評されている。

世界のローマ・カトリックは12億人。今後、カトリック教会だけでなく、世界情勢にも影響力を持つことになる。

<ユダヤ人にも受け入れ良好>

フランシス1世は、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで枢機卿だった。その間、地元のカトリックとユダヤ人コミュニティのよい関係に貢献していたという。アメリカのラビたちもフランシス1世を歓迎している。

ヨーロッパ歴訪を終えたばかりのペレス大統領も新しい法王を歓迎するとのコメントを発表した。

連立期限ぎりぎりで再び混迷か 2013.3.13

前回配信分にて、連立政権の交渉がだいたい調ったとのニュースを配信したが、結局まだ最終合意には至っていない。現在、課題となっているのは、教育相のスポット。

ネタニヤフ首相は現職教育相のギドン・サル氏の留任を強く望んでいるのだが、未来がある党のラピード党首は、公約に教育システムの改革をあげているため、このスポットをあきらめることができない。

ネタニヤフ首相は、最終的に、サル氏と未来がある党で教育相の任期4年を2年ずつ分けて担当するという妥協案を提示した。しかしラピード党首はこれを拒否している。

この他、未来がある党と、ユダヤの家党はどちらもが経済委員会のトップを要求するなどの点でも不一致がある。

<切れ始めた?ネタニヤフ首相>

ネタニヤフ首相は、ラピード氏の要求を受けて、閣僚の数を現在の30から21にまで削減。これで自らの党からもうらみを買った。

さらにラピード氏らの要求により、断腸の思いでユダヤ教政党シャスを連立から切り捨てた。チーフラビからは、「歴史はこれを赦さないだろう。」という厳しいことばもあびた。

それでも最終的に妥協しないラピード氏に対しネタニヤフ首相が切れ始めている。

もし13日中(日本時間明日夜中)に、ラピード党首が、教育相に関する妥協案を受け入れない場合、未来がある党を切り捨て、先に切り捨てたユダヤ教正統派政党シャスなど宗教右派政党を連立に戻す可能性も出てきているという。

連立政権設立期限は15日。どの党が連立に入るかで、政府、ひいては国の体質も変わってくる。連日続く責任の重い交渉で、ネタニヤフ首相にも疲れが出てきているようである。

オバマ大統領来訪でテロ、紛争を懸念 2013.3.13

オバマ大統領の訪問は来週20-22日。エルサレムに48時間滞在し、西岸地区のアッバス議長、ヨルダンのアブドラ国王も訪問する。この他、観光としてイスラエル博物館、ベツレヘムなどを訪問、学生との対話も予定されている。

これに会わせて、世界中のテレビ局、ジャーナリストらがイスラエル入りを始めている。政府プレスオフィスによると、この時期に取材に来るメディア関係者は約500人。うち200人はホワイトハウス関係のメディアである。

<イスラエルとパレスチナ、メディアのとりこみ合戦?>

イスラエル政府はこれらの海外メディアにイスラエルのよいイメージを体験してもらうため、無料のメディアセンターを設立、専用アプリ開始、各種取材ツアーを催すなど、接待に追われている。

これとは反対に、パレスチナのデモ隊にとっては、イスラエル軍との衝突を世界のメディアに報道してもらうこれほどよい機会はない。オバマ大統領来訪に会わせて、テロ・紛争が起こると懸念する専門家もいる。

すでに2月に入ってから、西岸地区ではパレスチナの若者とイスラエル軍の衝突が70%も増加。ほぼ毎週金曜、パレスチナ人とイスラエル軍の暴力的な衝突が発生しており、これまでにパレスチナ人8人が死亡している。

オバマ大統領来訪に備えた治安要員は、軍、警察など、現時点では10000人が予定されている。準備のための部分的道路封鎖は17日(日)から。

24日(オバマ大統領が帰るのは22日)に始まる過ぎ越しの準備で忙しいエルサレム市民にとっては大迷惑ということになりそうである。

ゴラン高原に近づくシリア反政府勢力 2013.3.10

シリアとイスラエルの国境が危険になりつつあるため、日本の自衛隊はすでに撤退しているが、クロアチア軍も撤退をはじめるなどUNDOFが徐々に手薄になりつつあるようである。

10日、シリア政府が流した映像によると、反政府勢力が、イスラエルとシリアの間の非武装地帯南部(地図参照)に入っていることがわかった。反政府勢力は、非武装地帯付近シリア側の村80%は制覇したと主張している。

<イスラエルに占領されているゴラン高原を攻撃する?>

映像に映っている反政府勢力は、UNと書かれた非武装地帯標識の前で、「我々は今、占領されているゴラン高原の前に立っている。ハーフェズ・アサド(現アサド大統領の父)によって売り渡された地だ。

この40年、シリアは一度もイスラエルを攻撃しなかった。しかし、これからは我々は攻撃する。ゴラン高原はシリア人の手に帰る」と叫んだ。

今回の誘拐事件をうけて、もしUNDOFがまるまる撤退するようなことになれば、非武装地帯をアルカイダ系武装勢力が支配する可能性があるという。9日、イスラエルは、UNDOFに対し、撤退しないよう要請を出した。

<イスラエル軍シリア国境で警備強化>

イスラエルは、アサド政権が崩壊した後、この地域がシナイ半島のような無法地帯になることを想定し、現在テロリストよけの防護壁を建設中である。その作業員らが射殺されるなどの危険が予想されるため、イスラエル軍はシリアとの国境の警備を強化した。

連立政権確定方向 2013.3.10

難航していたネタニヤフ首相の連立交渉だが、9日夜徹夜の交渉が行われた。現在、主要2党である未来がある党(ラピード党首)、ユダヤの家党(ベネット党首)それぞれと妥協が成立し、今週早々にも新連立政権が立ち上がる見通しとなった。

ユダヤ教政党シャスは、連立からははずれることになる。シャスがはずれた場合、有力2党は、ユダヤ教超正統派の徴兵をはじめ、安息日にバスを走らせたり、市民レベル結婚(ラビを通さない結婚)を認めるなどを提案しており、今後社会変革を実現するのかどうか注目される。

ゴラン高原で、国連スタッフ人質 2013.3.7

6日、シリア反政府勢力の「ヤルムク殉教団」と名乗る一派30人ほどが、ゴラン高原のイスラエルとシリアの間で、UNDOF(国連兵力引き渡し軍)の車両隊とそのフィリピン人隊員約20人を人質にとり、ユーチューブで要求を流した。

要求は24時間以内にシリア政府軍が、アル・ジャムラ(写真:ガリラヤ湖に近い)から撤退すること。もし撤退しない場合は、人質20人は囚人扱いすると訴えている。

国連安保理はこの行為を非難、ただちに無条件に人質を解放するよう要求。現在交渉が行われているもよう。

*UNDOF(国連兵力引き離し軍)

UNDOFとは、ヨム・キプール戦争の後、シリアとイスラエルが衝突しないようゴラン高原に設けられた緩衝地帯で、両者の間に立って監視する国連平和維持軍の一つである。

クロアチア、フィリピン、インドなど複数の国々が軍隊を派遣。日本の自衛隊も昨年までUNDOFに参加していたが、今回のような事態が懸念されたため、昨年中に撤退している。

UNDOFの仕事は基本的に、監視であり非武装である。そのため、軍隊と言っても実際には”なにもしない”軍隊と言われている。

<イスラエルとの関連は?>

今回の事件はイスラエルがかねてより、シリアが崩壊したら無法地帯になり、聖戦主義者などが入り込むだろうと警戒している地域で発生している。現時点では、今回の件にイスラエルはまだ何も関わっていない。警戒態勢も変わりなし。

シリア難民100万人突破:地域で難民なしはイスラエルのみ 2013.3.7

周辺諸国に非難するシリア難民は、一日平均7000-8000人となり、とうとう100万人を超えた。国連によると、難民の半数は11才以下の子供だという。(データ:ニューヨークタイムス)

避難先は最大がレバノンで33万人(人口が10%増加)。ヨルダン32万人。トルコは、難民キャンプ17カ所を設立するなど、すでに558億円相当を出費している。

トルコ18万5000人、イラク10万5000人人。エジプトにも4万3500人、北アフリカ諸国に8000人となった。周辺諸国で難民が流れ込んでいないのはイスラエルのみとなった。

国連が世界諸国に難民資金援助を呼びかけたが、目標額15億ドル(約1400億円)のまだ20%程度だという。

<シリアにどんな解決がありうるか-イスラエルの元米イスラエル大使ダニーアヤロン氏>

もし国際社会が初期段階で効果的に介入していれば、解決の道があったかもしれない。しかし、今ではあまりにも複雑化してしまい、文字通り手がつけられない状態になってしまった。

シリアの混乱が解決するとすれば、アラブ諸国が介入し、アラブ諸国による平和維持軍が駐留するしかないだろうと元米イスラエル大使のダニー・アヤロン氏は語る。

反ユダヤ・反イスラエル主義 チャベズ大統領死去 2013.3.7

ベネズエラのカリスマ指導者だったチャベズ大統領が癌のため死去した。チャベズ大統領は、イスラエルに敵対し、イランやリビアなどのアラブ諸国、ロシアと関係の深かった大統領。彼の存命中、ベネズエラ国内のユダヤ人たちは常に迫害の対象になっていた。

チャベズ大統領は2008年、イスラエルのガザ侵攻の時にベネズエラにあったイスラエル大使館を閉鎖。以後迫害がさらに激しくなったため、1998年の時点で25000人いたユダヤ人は海外へ脱出(イスラエルへは1500人)。現在8000人が残るのみとなっている。

チャベズ大統領の死去により、今後過激な分子が台頭してくる可能性が高く、反ユダヤ主義の暴力が拡大するのではないかと懸念されている。

過ぎ越し直前:いなごの大群が来た!2013.3.5

出エジプトによると10の災いのうちの一つがいなごの大群だった。(出エジプト10:12-15)それを連想させるような”食い尽くす”いなごの大群が、2日からエジプトを襲っている。

いなごは3000万から1億2000万匹とみられ、空の色を変えるほどである。(写真)エジプト27県のうち15県が被害にあっているという。

このいなごの大群の一部が、4日夕方よりイスラエルのネゲブ地方にも流れてきている。農業省は、農家に注意を呼びかけるとともに、対処にあたっている。イスラエルでは2004年にもいなごが来て農業が大きな打撃を受けた。

*過ぎ越し3月25日より

今年の過ぎ越しは3月25日から4月2日まで。イスラエルでは3月に入ると同時に種なしマッツァや新しい食器が売り出され、スーパーでは特別セールも始まっている。日本では正月には物価が上がるが、イスラエルでは逆に安くなる。

パレスチナ人専用バス運行開始 2013.3.5

西岸地区からイスラエル国内に働きにくるパレスチナ人専用のバスが4日から運行をはじめた。運行はエイヤル検問所からイスラエル国内を往復するバスラインである。

これまでは、乗り合いタクシーを利用したり、検問所からユダヤ人の入植地まで歩いてイスラエルのバスで出勤していたのだが、治安の問題や、バスが混み合うことなどを考えて、検問所を拠点にしたパレスチナ人専用のバスラインを発足させたもの。

人種差別との批判を受ける一方で、運賃を節約できると喜ぶパレスチナ人もいる。しかし、大勢のパレスチナ人利用者の割に本数が少ないこと、またこのバスラインができたために、これまでのように、イスラエルのバスを利用できなくなるなど様々な不便が生じて、ほとんどのパレスチナ人は怒りを表している。

*今回のニュースを通じて、大勢のパレスチナ人(一家をささえる男性たち)がテルアビブ周辺で働いていること、彼らが毎日早朝3時から4時のバスで出勤していることがわかった。