シリアが化学兵器リスト提出 2013.9.22

先週、シリアの化学兵器に関してアメリカとロシアが合意した項目によると、シリアが化学兵器のリストを提出する期限は1週間。その期限が今日、21日に期限を迎えた。

シリアは21日朝、OPCW(化学兵器禁止機構)に対し、1000トンはあるとみられる化学兵器のリストを提出。OPCWもこれを確認した。現在、内容の検証がなされているが、すべて申告したとはいえないとの情報がある。

OPCWは、41カ国代表からなる委員会で、シリアの出したリストを検証するのだが、22日に予定されていた委員会は、突然延期となった。いつ再開かはまだ発表されていない。

<責任たらいまわし!?>

シリア問題を追いかけていると、最終的な責任を負うのはだれかという責任問題がたらいまわしになっている感がある。最初は、超大国アメリカのオバマ大統領1人の肩に責任がかかっていた。しかし、オバマ氏はぎりぎりになって、最終決断を議会の判断にゆだねると言った。

イギリスは、アメリカより先に決断を議会に回した結果、この問題から逃がれた。ヨーロッパは、シリアにはいった査察団の結果しだいということで責任を査察隊の結果発表に回した。

今、大きく責任を負っているのが、ロシアである。ロシアは、化学兵器の申告という案を出して、アメリカのシリア攻撃を回避させた。

つまり、ロシアが責任をもってシリアに化学兵器を提出させると言ったようなもので、いわばロシアが、シリアの保証人になったということである。今やシリアが、正直なリストを出すかどうかは、ロシアの威厳にも関わる問題となっている。

したがって、今最終的な責任は、正直なリストかどうかの結果を出すOPCWということであろう。委員会が延期になっているが、結果をどう発表するのか、これは決して簡単な問題ではない。

<今後は?>

もしシリアが完全なリストを出さない場合、アメリカは、攻撃の可能性を残している。ただし、アメリカは、攻撃する前に、現在開催中の国連安保理でのバックアップを強く求めるだろう。

つまり、OPCWの結果が出た次には、国連安保理がシリアに対し、どういう決議案を出すのか、が焦点になってくる。

しかし、ロシアはあくまでもシリア攻撃には反対することを明言している。アメリカが主張する攻撃には拒否権を発動することは避けられず、再びどうどうめぐりになるかもしれない。今後どう動くのかは専門家にもわかっていない・・・。

<”性的聖戦”が行われているシリア>

国際社会が上記のような混乱に陥っている間も、シリア国内は、相当な暗黒となっている。一昨日のトルコとシリア国境付近の戦闘は反政府勢力どうしの戦闘だった。

戦っていた自由シリア軍とアルカイダは今日になって停戦を宣言したものの、シリア問題の複雑さをあらためて露呈することになった。

さらにシリアに”性的聖戦”と称して、反政府武装勢力の戦闘員を対象に性的サービスに行くチュニジアの女性たちがいるとチュニジア政府筋が発表した。

この女性たちがすすんでか、無理矢理かなどの詳細は不明だが、行けば、100人近い男性と関係を持ち、妊娠して帰ってくるという。アルカイダを含む極端な聖戦主義者サラフィストの間では「性的聖戦」ということが、宗教的に正当化されているということである。

そのアルカイダだが、21日にはケニアのショッピングセンターで乱射事件を起こし、39人が死亡した。この恐ろしいサラフィストの勢力が勢力を伸ばしてこないよう霊的な戦いが必要になってきているようである。

来週正念場:シリア危機 2013.9.20

戦争か、停戦か。シリア問題は来週大きな分岐点を迎える。

<来週・アサド政権の化学兵器リスト期限>

一つは、アサド政権が、化学兵器のリストを提出するかどうか。これについては、ロシアの副首相が、数日前からダマスカス入りして、準備を進めているところ。

プーチン大統領は、「アサド政権が、正直に全部申告するかどうか、100%確実ということはできない。しかし、これまでの経過をみると、全部申告すると思う。」と言っている。

<来週・国連総会+安全保障理事会>

次に、定例の国連総会が始まるのも来週である。国連総会では、国連安保理も平行して開催される。シリア問題について、ロシア、中国も同意する武力行使も含む厳しい決議案が出ると予想されている。(このためにケリー国務長官が根回しのため、奔走していたのである)

ケリー国務長官は、「来週、最初のテストが来る。我々がどう決断するのか、世界中が見ている。」と、来週が正念場であるとの覚悟を語った。

繰り返すが、シリア問題がどうころぶかは、イラン、北朝鮮の核兵器問題にも関わる問題なので、シリアだけの問題に終わらないということをケリー国務長官は言っているのである。

しかし、アメリカとロシアが最終的に希望するのは、武力による解決ではない。アサド大統領がすみやかに化学兵器の申告を行い、破棄破壊への道を歩み始めること。また頓挫したままのシリア・ジュネーブ国際会議を再開し、内戦そのものを停戦へと向かわせることである。

<シリア自ら停戦に向かう可能性も!?>

19日、シリアの副首相が、シリア政府の見解として、「アサド政権側も、反政府勢力も、どちらの側にも、相手を倒して新政権を立ち上げる力がない。完全に行き詰まり状態だ。」と語り、もし、国際社会がジュネーブで国際会議を開催するなら、アサド政権は、停戦を呼びかける可能性を示唆した。

またイランのロウハニ大統領が、ワシントンポストの記事において、「我々は協力してシリア問題に対処しなければならない。イランは、アサド政権と反政府勢力の和平推進に貢献する用意がある」と発言し、注目されている。

<反政府勢力は、停戦など頭にない??>

反政府勢力は、アサド政権に相当怒りを燃やしている。そこへアルカイダなどスンニ派イスラムの過激派グループが入りこんでいる。今やシーア派のアサド政権+イランに対するスンニ派の対決という構図にまで発展している。こうなると両者が和解することは、ほぼありえない状況となる。

昨日、シーア派でアサド大統領の一派、アラウィー派の人々が乗ったバスが、ホムス付近にしかけられた爆弾で爆破され、少なくとも14人が死亡した。戦闘上の要所ホムスが再び反政府勢力に押さえられたとの情報がある。

また昨日、トルコ国境の町でも反政府勢力とシリア軍が激しい戦闘状態となった。シリア国内の実際の現状をみれば、停戦はそう簡単には実現しそうにもない。

しかし、このまま停戦になり、化学兵器が処分されれば、何よりの解決となろう。来週、主が奇跡を起こしてくださり、停戦へとむかい、シリアの人々にも希望が与えられるような展開になることを願う。

国連総会・イスラエルの焦点はイランの核問題 2013.9.20

国連総会で、イスラエルにとっての最大の関心事はイランの核兵器開発問題である。昨年、ネタニヤフ首相が図で説明した赤線(核開発の容認の限界)を、イランはとうに超えている。

来週、ネタニヤフ首相は、国連総会出席のためにニューヨークを訪問するにあたり、オバマ大統領と会談することになっている。議題は無論、イランの核兵器問題である。なお、オバマ大統領は、イランのロウハニ師と会談する可能性もある。

<ネタニヤフ首相のイランへの要求4項目>

1.イランの核開発の停止 2.ウランの濃縮を停止し、現存するウランをすべて排除する 3.コムの核濃縮施設の閉鎖 4.プルトニウムの精製停止(アラクの濃縮工場停止)

エジプト軍:ムスリム同胞団弾圧中 2013.9.20

シリア問題で世界が忙しくしている間、エジプトでは、エジプト軍がムスリム同胞団を次々に押さえ込んでいる。昨日はカイロ近郊で、同胞団の町ケルダサに軍が突入し、激しい銃撃戦となった。

警察官11人が死亡。少なくとも55人のムスリム同胞団メンバーが逮捕された。

仮庵の祭り・前日準備 2013.9.19

9月18日、仮庵の祭りが始まった。18日、エルサレムのオープンマーケット、マハネイ・ヤフダは祭りの準備で大忙しだった。

仮庵といえば、レビ記23:40で命じられた4種の”神器”、美しい木の実(エトログ-レモンの大きいような柑橘類)、なつめやしの葉(ルラブ-葉とはいえ、せんすのように閉じて棒状になっている)、茂り合った木の大枝、川縁の柳。

これらは、日本のお正月でいえば、しめ飾りのような、この時期、”一家に一つ”的な必需グッズである。この他、仮庵の中を飾るカラフルな飾りも店に並んでいる。

これらの販売のため、マハネイ・ヤフダでは、巨大なテントの特設会場が設置されていた。これら4種のもの、特にエトログは、色や大きさなどぴんきりで、高いものは目が飛び出るほと、どこまでも高くなる。しかし、一般人が買い求めるものは、全部セットでだいたい60シェケル(2000円程度)。

しかし、最終日になると、もう売ってしまわなければならないと、廉価が始まり、最終的にはセットで30シェケルにまで下がった。夕方4時近くになると、「もってけどろぼう」的な、たたき売り状態になっていた。

<子どもも大人もカオス状態でも平気>

夕方近くには意外に超正統派の人々がやってきて、買い物をしていた。この時間なら、よいものが安く買えるからであろう。またこの時間、目立ったのは10才以下ぐらいの正統派ユダヤ人子どもたち。大人にまじって大声で売っていた。大人の手伝いをしているのか、雇われているのか、実にたくましい。

正統派の白ひげの豊かなおじいさんが「おい、子ども。これはいくらだ?」と普通に商談していた。その横で、テントの取り下ろし作業は始まっている。日没までに商売の人たちも家に帰らなければならない。お客への配慮など全くないのがイスラエルだ。

たたき売りの声、子どもの声、テントのとりおろし作業、まだ商売している人、それをとりかこむ人々、そこら中にちらばる空き箱やゴミ、大勢の人がまったくなんのオーダーもなくあちこちしている様子は、これぞ「カオス」状態だった。その喧噪の中でも、超正統派たちは沈着冷静に、商品に傷がないかをじっくり確かめながら買い物をしていた。

この後日没になると、あちこちの家の庭や、ベランダに作られた仮庵にあかりがともり、中で食事する声、大声で歌っている家など、ほのぼのした光景となっていた。

<仮庵の意味>

つい5日前のヨム・キプールには嘆きの壁で泣いていたユダヤ人だが、仮庵では「まったき喜び」でなければならない1週間となる。人々は仮庵の中に家族、友人を招いて食事する。そこで寝泊まりする人もいる。これから毎日、仮庵の中で、賛美の歌が捧げられる。

屋根はすけて星が見えるようにし、テントの一面はあけておくことになっている。昔、イスラエル人がそまつなテントだけで、荒野をさまよっていた間、自己防衛できない彼らを、神が守ってくださったことを覚える。

テントが結婚式のフッパにも見えることから、主とイスラエル民族の、親密な関係を意味するとも言われる。仮庵では、何よりも、天地創造の神が共におられることを喜ぶのである。

<仮庵の預言的意味>

ユダヤ人たちは、仮庵の時に、今は神殿がないが、メシアが来て立て直す時が来るということに思いをはせるという。

新約聖書によれば、仮庵は、救われて主を心に迎え入れた時に、その人自身が神殿になると教える。またイエスが再臨されて実現する千年王国、そしてその後に来る新しいエルサレムを現しているとも考えられている。(黙示録21:1-4)つまり、クリスチャンにとってもこれ以上の喜びはない時となる。

エルサレムでは今年も国際クリスチャン・エンバシー(ICFJ)が、仮庵のフェスティバルを20日から始める。世界万国からくる5000人が集まってくる。(ゼカリヤ14:16)カラフルな万国旗を掲げてのエルサレム・パレードは24日。

*ICEJは、ユダヤ人の移住を中心に、最も古くからイスラエルを支援してきたクリスチャン団体。世界70カ国に支部があり、現在、世界最大のクリスチャン・シオニストの団体である。イスラエル政府に対し、政治的影響力もある。集会には、事情が許す限り、歴代首相や、エルサレム市長もあいさつに来ている。

<ネタニヤフ首相の第4回聖書研究会>

ベングリオン初代首相から始まった首相官邸での聖書勉強会。途中でとぎれていたのをネタニヤフ首相が昨年から再開。ラビや神学者を首相官邸に招いて、数ヶ月おきに勉強会を行っている。

仮庵の前日17日には、第4回となる聖書勉強会が行われた。この日の学びは申命記33,34章。ネタニヤフ首相、サラ夫人とチーフラビが共に、農耕暦1年の始まりとなる仮庵の学びとお祝いを行った。

*この勉強会に、メシアニック・ジューは含まれていないので旧約聖書のみの学びであることに注意。

シリアの化学兵器その後 2013.9.19

<ケリー国務長官とネタニヤフ首相>

先週末、ジュネーブでケリー国務長官とロシアのラブロフ外相が、シリアの化学兵器をどのように処分するかの具体案を出した件。それによると、シリアは来週中旬までには化学兵器の完全リストを提出することになっている。

ケリー国務長官は、ジュネーブでの会議終了後の15日、エルサレムへ直行。同盟国で、この件で大きな影響を受けるとみれるイスラエルのネタニヤフ首相に、ロシアとの取り決めを報告した。

ネタニヤフ首相は、計画には賛同したものの、「大事なのは結果だ。」と釘をさした。ついでにパレスチナ問題に関する打ち合わせもして、ケリー国務長官は、その日のうちにパリへと向かった。

<化学兵器問題・国連へ>

パリで、ケリー国務長官は、フランスのホーランデ大統領、イギリスのハーグ外相と会談。3国は、次の段階として国連安保理での厳しい決議案に持ち込むことで合意した。ケリー氏によれば、ロシアも合意しているという。

時を同じくして、シリアに入った国連の化学兵器査察隊が正式に調査結果を事務総長に提出。バン・キ・ムーン事務総長は、「シリアでの殺戮は、地対地ミサイルに仕掛けられたサリンによるものだったと公式な発表を行った。

今後、アサド政権が1週間以内に、正直にリストを出すのか、国連安保理はどういう決議をだすのか、注目されている。

<ロシアのシリアへの働きかけ>

ジュネーブでの米ロの会談後、ロシアの副外務相がシリアを訪問。アサド大統領に圧力をかけたもよう。アサド大統領はアメリカとロシアの合意事項を受け入れると語っている。

しかし、8月21日のサリンによる殺戮は反政府勢力によるものと主張し、犯行は認めなかった。逆に、それを裏付ける物的証拠をロシアに提出したと報じられている。

<アメリカは10億ドルを出せ:アサド大統領>

アサド大統領は18日、米国メディアFOXテレビのインタビューに答えて、「化学兵器のリストは提出する。しかし、それらを全部処分するのに1年はかかる。また少なくとも10億ドルはかかる。化学兵器が破壊できるかどうかは、アメリカがこの10億ドルを出すかどうかだ。」と語った。

<石のひとりごと>

シリア危機が始まったのはちょうど秋の例祭の直前。もしあのまま戦争になっていたら、実際にはそまつな仮庵ではなく、ガスマスクをつけて、防弾シェルターに出入りする毎日だったかもしれない・・・。

化学兵器破棄プラン発表 2013.9.15

シリアの化学兵器処理について、予定を延長してジュネーブでの会議を続けてきたアメリカのケリー国務長官とロシアのラブロフ外相。14日午後、今後のアウトラインを共同で発表した。

両者は、まずこの問題は武力では解決しないという認識で一致。また、化学兵器処理問題を入り口として、内戦の解決へも視点をひろげていくことで合意したと発表した。

●化学兵器処理に関する今後の手順は以下の通り。(実際は6項目をまとめたもの)

1.シリアのアサド政権は化学兵器の種類、量、場所などのリストを提出する。期限は1週間以内。(来週中旬めど)

2.そのリストに基づいて国連の査察団が入る。期限は11月まで。

3.2014年中旬までに、すべての化学兵器を破棄する。(シリア国外に出して破棄する事も含む)

もし、シリアが、今後1週間以内にリストを提出しないなど、ロシアとアメリカの上記要請に従わない場合、第7国連憲章により、国連安保理で武力を含めた対処を講じることになる。・・・が、これについては、ロシアは、あくまでも軍事攻撃には反対する姿勢をくずしてはいない。

<シリアの反政府勢力は受け入れず>

シリア難民や反政府勢力はひたすらアサド政権の崩壊を願っている。今回アメリカの攻撃が先送りになったことは、シリア人にとっては落胆のできごとだった。

シリアの反政府勢力・自由シリア軍の代表は、ロシアとアメリカの上記合意事項について、アサド政権の時間かせぎにすぎないとして、これを受け入れず、今後も戦闘を続けていくと発表した。つまり協力しないということ。

ダマスカスにいるBBC特派員は、アメリカの攻撃が先送りになった時から、シリア国内での戦闘が激しくなっていると伝えている。

こうした条件下で、50個所近くに分散されている化学兵器を、無事確保することが、実現可能なのか。アサド政権が、化学兵器のリストを提出する期限が1週間以内というのもかなり厳しい制限である。

これについてケリー国務長官は、「アサド政権は、化学兵器を反政府勢力が届かない場所に確保しているはず。いくら内戦中でもそれらを確保することは、いわれているほど難しいことではない。」との見解を語った。

<国連の化学兵器査察隊の結果>

ところで・・・という感じだが、8月末にシリアの化学兵器が使われたとみられる地域でサンプルと持ち帰った査察隊が、調査結果を整えたとの情報がある。「シリアは間違いなく化学兵器を使った。」という事で、すでにわかりきったことだった。

なお、査察隊結果では、犯行がアサド政権かどうかは明らかではないが、バン・キ・ムーン国連総長は、その可能性を示唆する発言をしている。

<シリアのためのジュネーブ国際会議にむけて>

ロシアとアメリカは、問題を化学兵器だけに終わらせず、内戦解決にむけての国際会議を開く方向で一致している。しかし、実際には先行きはかなり厳しい。

会議にはアサド大統領、反政府勢力、アルカイダなどの聖戦主義者、またアサド政権を支援しているイラン、反政府勢力を支援しているサウジアラビアの参加も必要になる。

現時点ではありえない状況だが、何が起こっても不思議がないのも中東だ。今後、米ロのリーダーたち、特にシリアに特別な影響力を持つロシアの動きが注目される。

*ケリー国務長官は、続いて15日、エルサレムのネタニヤフ首相訪問予定。

ヨム・キプール無事終了 2013.9.15

今回のヨム・キプールは、金曜土曜と週末とぶつかった。そのため金曜のイスラムの礼拝後、暴動になるとの懸念があった。イスラエルは治安部隊を増強し、厳重な警戒にあたっていたが、幸い、何事もなく、2日間が終了した。

<国をあげての完全なシャットダウン>

13日、日没が近づくと、テレビも放送を停止。ニュースも1日半なしだった。驚きは道路。信号が全部シャットダウンしているのだ。

いくら道路を閉鎖しても信号ぐらいは作動していないと、もしかして車が通った場合に危ないと思うのだが、とにかくこの日は道路上を車が走ってはならないということである。

電車もタクシーも観光客のバスも、もちろん商売のトラックもいっさい走れない。本当に国がシャットダウンしている。日本ではありえない、この様子。イスラエルのガッツに驚かされた。ここはやはりユダヤの国、いや聖書の国なのだ。

この2日間は移動手段が徒歩しかないため、遠方に住む敬虔なユダヤ教徒で、嘆きの壁で過ごしたい人は、ユダヤ地区のイシバ(神学校)に寝袋やマットレスを持ち込んで泊まり込み。エルサレム・アッセンブリーでも、歩いて礼拝に来れる人以外は、教会に泊まり込んで土曜の礼拝を守った。

<シナゴグでの礼拝>

ヨム・キプールの夜、近くのシナゴグに行ったが、大勢のユダヤ人でいっぱいだった。祈祷書にしたがって、ろうろうと祈りを歌い上げる男性の声(コール・ニドレ)に民衆が時々一緒に歌うという祈り、賛美のくりかえし。

途中で、「身を戒める」「信仰をためされる」の一環として、シナゴグへの献金の時があった。教会のようにかごが回ってくるのではなく、階下の男性たちが「400シェケル!」「300シェケル!」などと、まるでせりのように献金の宣言が行われていて興味深かった。

通常じっとしているのが苦手なはずのユダヤ人だが、延々と2時間半たっても礼拝は終わらなかった。9時になって疲労に耐えかねて外へ出ると、歩行者天国になった道路で大勢の子どもたちが自転車をのりまわしていた。

大人たちは夕涼み、散歩などでにぎわっていた。昼間は38度を超える暑さだが、日没後は実にすごしやすい気候である。エルサレムでは、83%の人が断食すると言われているが、12才以下のちびっ子は断食する必要はない。

通常、金曜の夜となると、若者たちが夜中でも騒いでいるが、この夜ばかりは木々のそよぐ音がひびくだけの非常に静かな夜、祈りやすい夜となった。

<嘆きの壁の様子(終了直前)>

14日、夕刻になり、嘆きの壁に(歩いて)行った。夜7時半に25時間の断食が終わると同時に、ユダヤ教の男性たちが、小さなサンドイッチと飲み物を群衆に配布。

男性も女性も、その場でがっついているのは、前のティシャベアブの時と同様だ。ごみの後かたづけは、例によってアラブ人たち。

一昨日のスリホットとちがって、ヨム・キプール終了1時間後の午後8時半ぐらいには、人々の姿はもうかなりはけていた。スリホットの時は夜中でも群衆が歩いていたのに、今日は帰り、やばい道を1人で歩かなければならなかった。

この極端・・・。人々の心はもう18日から始まるスコットに向いているのだろう。イスラエルは実にめりはりのきいた国である。

シリアの”ミッション・インポッシブル” 2013.9.13

ロシアがぎりぎりになって、シリアに化学兵器を返上させ、国際管理するという案をだしてから2日目。世界は徐々に、それがいかにインポッシブル(不可能)かということに気がつきはじめている。

<アメリカとロシアのとりくみ>

オバマ大統領が、ロシアの案を受け入れて攻撃を保留にした後、昨日から、ケリー国務長官と、ロシアのラブロフ外相が、具体的にどうやってシリアの化学兵器を国際管理下に置くのか、ジュネーブで具体的な計画作りに入っている。

双方ともエキスパートのチームを引き連れての真剣な取り組みだ。しかし、しょっぱなからすでにつまづきの石が置かれた。ロシアが、シリアに化学兵器を返上させる条件として、アメリカの臨戦態勢を解くよう、要求したのである。

無論、アメリカはこれを受け入れていない。この他、いろいろな話し合いがなされているが、結局、このつまづきの石が問題になる可能性も否定できないと懸念する専門家もいる。

<化学兵器の国際管理はミッション・インポッシブル?>

ロシアが化学兵器返上案を出した時は、世界は戦争回避ということで明るい希望だと受け取った。しかし、フタをあけてみると、これが実際には、いかに非現実的であるかということが明らかになりつつある。

そもそも、シリアのどこに化学兵器があるのか、確認のしようがない。アメリカのメディアによると、今回のシリア危機が始まってから、アサド政権が化学兵器を、全国50個所以上に動かしているという。

化学兵器の場所を最も把握しているのはイスラエルだといわれるが、そのイスラエルもよく完全に把握しているわけではないのだ。これでは、全部はき出したことをどうやって証明するというのか。

アサド大統領本人は、「化学兵器は国際管理下へ提出する。これはロシアがそういうからであって、アメリカの脅迫に屈したわけではない。」と言った。

イギリスのハーグ外相は、「これまで、うそをつき続けてきたアサド大統領を容易に信用してはならない。」と釘をさした。いずれにしても、1000トンもある化学兵器をすべて集めて破棄するには数ヶ月から何年もかかる作業と予想されている。

<結局、地上軍が必要>

さらに激しい内戦中のシリア国内で、どうやって全国に散らばっている化学兵器をまとめて管理するのか。オバマ大統領は地上軍は派遣しないと言ったが、化学兵器を管理、警護するためには、逆に地上軍が少なくとも75000人規模で必要になるという。

反政府勢力と戦闘になり、死者が出たり、化学兵器を反政府勢力のアルカイダなどに奪われる可能性もある。

結局、化学兵器の返上だけでは解決にならない。アサド大統領が、政権を返上して内戦が終わり、テロ組織の関わらない、きちんとしたシリア人からなる暫定政権が立ち上がってはじめて、化学兵器の処分が可能になるのである。

<ジュネーブでのシリア国際会議開催にむけて>

ケリー国務長官は、化学兵器の返上だけでなく、内戦の解決を目指した国際会議をジュネーブで開催しようという方向でロシアに提案。アメリカとロシアは、この点で一致したと報じられている。

両者は、次回、2週間後の28日、国連安保理でこの件についての話し合う。ケリー国務長官は、15日、イスラエルに来て、ネタニヤフ首相と会談。シリアと国際会議について、またパレスチナ問題の進捗確認を行う。

なお、今回のシリア攻撃が保留となったことについて、ネタニヤフ首相、ヤアロン国防相は「結局、だれもあてにしてはならない。イスラエルを守るのは我々自身だけだということだ。」と改めて自己防衛の決意を語っている。

<石のひとりごと>

ケリー国務長官について一言。彼を見ていると、使命のために生きるというお手本を見せられているような気がする。

オバマ大統領と完全に同じところにたち、休む間もなく、文字通り世界をまたにかけて、あちこち、あちこち、あちこち・・・。時差ぼけなどケリー国務長官にはゆるされない贅沢である。

アメリカ代表として、スピーチは説得力あふれてわかりやすく、ことばに無駄がない。国務長官としての働きは数年だから、今は休みなく働いてるのだろう。ケリー国務長官の姿に励まされる今日この頃である。

ところで、ケリー国務長官には病身の妻がいる。ほとんど一緒にいてあげられないのは明らかだ。ケリー国務長官夫妻を覚えてお祈りいただければ幸いである。

エルサレムで一斉に悔い改めの祈り:スリホット(赦し) 2013.9.13

ヨム・キプール前の最後の夜の12日、嘆きの壁には、夕刻から夜中まで相当な人々が続々と集まってきた。

不思議なことに正統派の姿は目立たず、保守派、または世俗派と見られる若者がたくさん来ている。群衆の中に立っていると、流ちょうなアメリカン・イングリッシュがさかんに聞こえる。アメリカからユダヤ教を学びにきている若者たち、将来の有望な移住者たちだ。

深夜0:00を過ぎると嘆きの壁広場、またその周辺で、人間が立てる場所にはすべて人間が立つというぎっしり状態となった。0:15分、ラビがメロディにあわせて「わたしたちは罪を犯しました」とろうろうと歌うはじめる。民も一斉に歌ったりアーメンと言ったり。(CGNTVで次週放送予定)

<悔い改めの心は意外にうすい・・かも・・>

「私たちは罪をおかしました」と歌ってはいても、意外に本気でそう思っている人はそう多くはないのかもしれない。嘆きの壁に来ている若者たち数人に聞いてみたが、だれも罪の赦しとか、悔い改めとかは考えていないようだった。

むしろ、これから始まる新年が良い年になるように、この決まった祈りをささげている・・というのがおおかたの人々の動機のようである。つまり、日本の大晦日と同じ動機である。

<預言的には重要な意味をもつスリホット>

しかし、この翌日がヨム・キプールであることを考えると、この前日にユダヤ人の大群衆が、いっせいに赦しをもとめるという「スリホット」が非常に預言的であることがわかる。

聖書には、メシアが来る直前に、ユダヤ人がエルサレムで、神の前でいっせいに泣いて悔い改めると書かれているからである。ゼカリヤ14:6-14 ローマ書11:25-27 

今はかっこだけの悔い改めでも、最終的に絶体絶命の中で、エルサレムに集まったユダヤ人たちが、最後の本気のスリホットの祈りを捧げるのだろう。その本気の声を聞いてメシアが到来するのである。このスリホット、よく考えると、鳥肌がたちそうな気がした。

<鶏の苦難・・正統派のスリホット儀式”カパロット”>

嘆きの壁でスリホットが行われている時、正統派たちは、鶏を頭の上で振りかざして、来年の”不運”を鶏に写す「カパロット」という儀式をやっていた。

業者が鶏をもってきて、正統派たちに販売する。その場でカパロットを行い、1-2分で終わった後、”悪運を持つ”鶏はまた業者が持って帰ることになっている。鶏は裁いた後、貧しい人々に贈られる。

赤ちゃんでも1人に一羽必要なので、相当な数の鶏がこの日、虐殺されることになる。鶏は1羽20シェケルくらい(600円)だったが、終盤近くになると10シェケル(300円)にまで下がっていた。

これは罪の身代わりだと思っていたが、実は、「来る新年」におこるかも知れない不運を鶏に与えて、鶏はその身代わりとなって殺されるのだという。悔い改めの要素はほとんどなく、新年の家内安全、祝福のための儀式だった。

鶏は頭の上で振りかざした後、地面において、しあげに蹴り上げるというから、鶏にとっては年に一度の大艱難というところだ。振り回される鶏がきゃーきゃーないて実にかわいそうだった。最近はこの習慣を非難する声がイスラエルでも大きくなっている。

ところで正統派は、スリホットが行われている肝心なときに、城壁の外でカパロットをやっている。メシアの到来を見過ごすことがなければよいが・・・。

*ヨム・キプール今夜から

なお、今夜からヨム・キプールが始まる。イスラエル人の75%が今夜から25時間の完全断食に入る。今年のヨム・キプールは10年で最高といわれるほど暑いという異常気象になっている。

シリア攻撃保留へ 2013.9.11

アメリカ議会がオバマ大統領のシリア攻撃案の議論を始めた直後、ロシアのプーチン大統領が突然、シリアのアサド政権に全化学兵器を返上させた後、破棄破壊するという案を持ち出した。

シリアはこれに応じると発表。オバマ大統領も、シリアがどの程度本気なのか、様子を見たいとしてシリア攻撃を保留にすると発表した。ただし、臨戦態勢は継続し、もし、これがたんに時間稼ぎにすぎず、化学兵器返上が実行されないなら、攻撃すると言っている。

<ひょうたんからコマ!?のどんでん返し>

ロシアがこの突然の案を持ち出す直前、ケリー国務長官が、記者会見で、「アメリカがシリアへの攻撃を中止するとしたらどんなことが考えられるか?」と聞かれ、「来週中にでもアサド大統領が、化学兵器全部を国際社会にひきわたすようなことがあれば。・・まあ無理だとは思うが。」と答えた。

ロシアが、化学兵器返上案を出したのはこの直後である。シリアがロシアの提案を正式に受け入れると発表したため、これまでのすべてがひっくりかえったようになった。

まず、オバマ大統領は「今後のシリアの動きをみきわめたい。」として議会でのシリア攻撃に関する採択を延期。

オバマ大統領は、イギリスとフランスに声をかけ、ロシア・中国も含めてこの問題を安保理で話し合おうと提案している。(実際には、まだ早急だとして、10日夜に予定されていた安保理緊急会議はキャンセルされた。)

<おおむね全員ををまるく治めた?化学兵器返上案>

今回、ロシアはまるで救世主のように現れて、八方ふさがりのシリア攻撃を”とりあえず”の回避へ導いた形となった。

かつて日本では、明治維新前夜、強力な武力を持つ薩長が同盟を結び、江戸総攻撃目前となっていた時、その直前に、徳川慶喜が政権を返上し、内戦を回避したことがあった。若干それに似たパターンである。

アメリカの脅迫により、戦争をしないで、ロシアとシリアを動かしたということで、アメリカの権威も保たれた形である。また、もしシリアが、ロシア案にそって化学兵器の返上を世界が納得いく形で実行しなかった場合、そのときにはシリアを攻撃することについて、国際社会や議会からの支持は格段得られやすくなる。

ヨーロッパは最初からシリア攻撃には反対していたので、このロシア案は歓迎している。

<ロシア、シリア、イランも助かった?>

ロシア案はアサド政権も救った形となった。アサド大統領は、アメリカの攻撃を避けただけでなく、化学兵器を返上するだけで、民衆殺害については、とりあえずはおとがめなし状態である。政権が維持されることにはまったく触れられていないので、アサド政権が生きのびる可能性すらある。

これはイランにも好都合となった。イランにとってアサド政権が支配するシリアは、地中海へのアクセスなど、中東での権力維持には欠かせない存在だ。今回、アメリカが攻撃を保留してアサド政権が維持されるなら、ヒズボラ、シリア、イランの回廊が維持されることを意味する。

以上のことから、ロシアは、今回の突然の介入で、大いに株を上げた形となった。同盟国シリアを温存し、かつ、欧米との関係も維持したからである。

<イスラエルにとってはどうか>

シリア問題でイスラエルの最大に懸念は化学兵器がヒズボラの手にわたることだった。シリアが化学兵器を完全に返上することは、イスラエルの治安にとっては大きな前進である。

しかし大手をふって喜べないのは、化学兵器返上だけでは、アサド政権には大きな痛手にならない点である。

アサド政権が生きのびている限り、ヒズボラ、シリア、イランの連絡網は分断されない。イスラエルにとっては反政府勢力のスンニ派聖戦主義者らよりも、このシーア派3兄弟のほうが脅威だとも言われる。

いずれにしてもイスラエルは、シリアが本当に化学兵器を返上するのか、かなりの疑いの目で、今後の動きを注目している。

<オバマ大統領:臨機応変かポリシーなしか??>

このロシア案が発表される直前まで、ケリー国務長官は、シリア攻撃への支持基盤を得ようと相当精力的に、海外を飛び回り、熱弁を繰り返していた。

そのケリー国務長官熱弁直後の、オバマ大統領の攻撃保留発言である。アメリカ国民の中からは、戦争回避はいいとしても、オバマ大統領のじぐざぐの動きに、ポリシーを疑う声も少なくない。(BBC)

イスラエルにしても、これまでの沈黙を破って、アメリカ議会にシリア攻撃を承認するよう動き始めたところだった。AIPAC(アメリカ・イスラエル政治協力団体)も、いよいよシリア攻撃へのロビー活動を展開していたのである。

いまや、この人々が、まるで戦争したい”悪者”に挙げられる可能性もある。今後オバマ大統領にどの程度ついていくのか、大統領に一番忠実な同盟国にとっては、考えどころになりそうである。

ヨム・キプール前のエルサレム 2013.9.11

14日のヨム・キプールを前にエルサレムの旧市街の夜は、大混雑もいいところである。ヨム・キプール当日は、悔い改めの日ではなく、贖いがなされる日である。従って、和解と赦しはそれまでにすませておかなければならない。

エルサレムの嘆きの壁には、全国からユダヤ人が押しかけ、ラスト・ミニッツ悔い改めがラッシュとなっている。ユダヤ人を満載した大型バスが旧市街周辺につらなり、そこから大勢のユダヤ人がぞろぞろと列をなして旧市街に入っていく。

この大群衆、なぜか昼間ではなく、夕方から夜中にかけての「嘆きの壁参り」となっている。夜ということもあり、ちょうど日本の大晦日の神社へ向かう群衆の列とそっくりである。