シリア:数千人規模の政府軍、アレッポを総攻撃 2012.7.29

反政府勢力が優勢となったアレッポを政府軍が奪回しようとして、数千人規模の軍隊を投入し始めた。地上では戦車、上空からは戦闘機と攻撃用ヘリで激しい攻撃が行われている。

アレッポは人口250万の都市で、戦略的にも重要な場所。もしアサド政権がこの町の主権を失えば、勢力図は大きく変わる。そのため、アサド政権もここを死守する構えであるもよう。

激しい戦闘で、アレッポ住民はじめ、シリアからの難民が、周辺諸国へさらに流出している(30日の時点でアレッポから20万人と報告されている)イスラエルのゴラン高原では、高い警戒態勢がとられているが、難民は来ていない。

<国際社会への影響>

ロシアがアサド大統領の亡命先になるのではないかとの噂があったが、ロシアのラブロフ外相はそれを否定した。

ロシアが主張するように、アサド政権が倒れた後に何が立ち上がるのか、だれにも予測不能となっている。アサド政権が倒れるのがよいのか、倒れた方が危険な状態になるのかわからない。そのためどちらをも支援できないのである。

国際社会としては、一般市民への虐殺を食い止めること、増え続ける難民に対処しなければならないのだが、相変わらず実質的な介入はいっさいできていない。

<堪忍袋の緒が切れかかっているトルコ>

シリアの内戦で発生した難民をほとんど無条件で受け入れ、国境付近で保護しているトルコ。現在も難民は増え続けている。トルコは、2日前から難民以外のシリアからの流通を遮断。事実上、シリアへの経済制裁となっている。

トルコにとって、シリア北部にいるクルド人も気になるところだ。この混乱に乗じて、クルド人の独立運動にまで発展すれば、シリアだけの問題ではなくなる。

哀歌の出番-ティシャ・ベ・アブ(アブの月の9日・神殿崩壊記念日) 2012.7.29

イスラエルでは、昨日の日没から今日29日の日没まで、ティシャ・ベ・アブ(アブの月の9日)。「神殿崩壊記念日」と呼ばれ、エルサレムの神殿を失った事を悲しみ、神の前に罪を悔い改める日である。

各地のシナゴーグでは聖書の「哀歌」全5章が朗読される。”私たちの道を尋ね調べて、主のもとに立ち返ろう”哀歌3:40 *「哀歌」はヘブライ語でも「Eicha エイカ」。

今日の嘆きの壁は、祈りにくるユダヤ人で通常より混み合っている。多くの人が地べたに座り込んで祈っている。ラマダン中のイスラム教徒との衝突を避けるため、ユダヤ人が神殿の丘に入らないよう、多数のフル装備のイスラエル軍兵士が、入り口を警備していた。

<悲劇の記念日>

この日は、ソロモンの第一神殿が、バビロンによって焼き尽くされた日。さらに第二神殿がローマによって焼き尽くされた日も同じアブの月の9日目であったといわれている。この他、最も古いところでは、モーセにスパイとして送られた12人の否定的な知らせを聞いて立ち上がらなかったため、神の怒りをかい、40年間、約束の地へ入れなかったことを覚える。

近代では1492年、スペインのユダヤ人追放(迫害を伴う)があったのもこの日とされる。最近では2005年のガザ撤退もこの時期であったとして、ティシャ・ベ・アブの悲劇の一つに数えることが検討されている。

ロンドンオリンピックとイスラエル 2012.7.27

今日からオリンピックが始まる。イスラエルからは、水泳、柔道など計38人の選手が出場する。メダルに期待がかかるのは、セーリングのベレッド・ブスキラさん(29)柔道100キロ級のベテラン、アリック・ゼエビさん(35)など。

パレスチナからも6人が出場。今年は柔道73キロ級で、初めて実力で選手となったマヘル・アブルミラーさん(28)が出場する。開会式では旗手を務める。(これまでの選手は皆、招待による出場だった)

内戦が激化中のシリアからも選手10人が参加。イランからは56人が出場。前回、前々回とイスラエル選手が出ている試合への参加を拒否してきたが、今年は出場すると表明している。

<ミュンヘンオリンピックでのイスラエル選手虐殺から40年>

今回のオリンピックは、1972年のミュンヘンオリンピックで、イスラエル人選手11人が虐殺されてから40周年にあたる。

イスラエルは開会式での黙祷を要請していたが、アラブ諸国からの拒否を受けて実現できなかった。かわりに選手村での記念式典となったが、参加者は少なく、イスラエル政府には遺憾となるような内容だった。

<オリンピック会場厳重な警戒態勢>

先日ブルガリアで、イスラエル人を狙ったテロが発生したところだが、オリンピックをねらったテロが懸念されている。イギリス政府は、最初は7500人だった治安部隊を3500人増やし、開会3日前になって、さらに1500人を増強。オリンピック会場周辺を、地上、及び上空からも厳重な警戒態勢をとっている。

イスラエルもイギリスと協力して選手たちを守っているもよう。

<BBC、東エルサレムをパレスチナの首都として記載>

イギリスのBBC放送は、ホームページのオリンピックコーナーの各国プロフィールにおいて、イスラエルの首都を白紙とし、パレスチナの首都を東エルサレムと記載していた。イスラエル政府のクレームを受けて、イスラエルの「政府機関所在地」エルサレムと変更された。

シリア:戦闘機でアレッポを攻撃 2012.7.25

20日以降、シリア第二の都市で、世界遺産もあるアレッポで激しい戦闘が行われ、自由シリア軍(反体制派民兵軍)が町の各所を占領したと伝えられていたが、昨日、親政府軍は、戦闘機を使って巻き返しを図っているもよう。戦闘機が使われるのは初めてで、町の破壊は激しい。

また昨夜3時ごろ(日本時間朝9時ごろ)、政府軍は、首都ダマスカスから8キロ北の町テルを激しく攻撃した。テルは、反体制派が解放し、比較的安全だったため、ホムスなど他の町からも避難民が集まっていた。夜中就寝中の攻撃で住民たちはパニックとなり、山へ逃げたと報告されている。

シリアの内戦は、だんだんダマスカス、アレッポの二都市に集中しはじめており、アサド政権が追いつめられてきているのではないかと考えられている。

懸案の生物化学兵器だが、シリア軍は国境近くに分けて移動させており、使用できない状態で保管されているという。

*シリアの死者はこれまでに19000人以上。国内で難民となっている市民は150万人。国外に避難した難民は、トルコに42600人、ヨルダン34700人、レバノン29900人、イラク7500人となっている。

<シリアの駐キプロス大使も離反>

アレッポへの攻撃を受けて、シリアの駐シリア大使が、昨日、離反を表明。政府から離反する大使は、シリアの駐イラク大使ファレス氏についで二人目。アメリカのクリントン国務長官は、「今からでも遅くない。アサド大統領は、政権を移行機関へ委譲するように」との声明を出した。

<イスラエルから>

シリア情勢を注意深く見守っている諜報機関だが、シリア政府自体がイスラエルを攻撃してくる可能性は低いと伝えた。ガンツ・イスラエル軍参謀総長も、もし現時点で(生物化学兵器問題で)シリアを攻撃したら、イスラエルは地域を巻き込む戦争に巻き込まれるとして、攻撃が現実的でないとの見解を発表した。

シリア:化学兵器について記者会見 2012.7.24

シリア情勢において、現在、イスラエル最大の懸念は、シリアにある生物化学兵器や、大陸間弾道ミサイルがヒズボラの手に渡ることである。万が一、そうした動きになれば、イスラエルは軍事力を用いてでも阻止するとして、慎重に情報収集が行われている。

シリアの外務省は23日、それらの大量破壊兵器について記者会見を行い、シリア政府軍が、生物化学兵器を確保・管理していることを認めた。

その上で「そうした兵器は、外国からシリアが攻撃された場合にのみ使うもので、国内で同じシリア人に対して使用することはない」と発表した。*つまり外国からの攻撃に対しては使うということ。

<じわじわ近づいている!?ゴラン高原近くでも戦闘>

シリアでは、首都ダマスカスからシリア第二の都市アレッポにまで戦闘が広がっている。先週は自由シリア軍(反体制派民兵軍)が優勢だったが、政府軍はヘリコプターや戦車を使い反撃しているもよう。

先週、ゴラン高原からもシリア国境近くで戦闘の様子が見えていたが、今日はシリアとイスラエルの間の非武装地帯のすぐ近く(シリア側)に迫撃砲が着弾するのが観測された。*これは流れ弾で、イスラエルを狙ったものではないことが確認されている。

<増える難民>

BBCによると、内戦による死者はこれまでに19000人を超え、現在シリア国内でホームレス難民となっている市民は150万人と推測されている。その他、トルコには42600人、ヨルダンには34700人、レバノンに29900人、イラクにも7500人となっている。

イスラエルもシリアと国境を接しているが、間に非武装地帯がある。先週末、シリア難民とみられる500人と車両50両が、シリアとイスラエルの間の非武装地帯に侵入したという報告があったが、それ以後の動きはない。イスラエルは、この件を国連に苦情として提出している。

イスラエル国会内、タル法をめぐって嵐 2012.7.24

軍事外交情勢が緊迫しているが、イスラエルでは内政状況も厳しい。8月1日に期限がせまったタル法(徴兵制)をめぐって、イスラエル国会は荒れている。

先週、タル法(徴兵制)をめぐって、カディマのモファズ党首は、ネタニヤフ首相と合意に達することができず、党の連立政権離脱を発表した。その後、ネタニヤフ首相は、カディマ28議員に対し、「連立政権に残るなら政府内にポジションを与える」と個別に持ちかけ、4人の議員がこれに応じた。

続いて、治安のエキスパートで現法務大臣も務めるハネグビー氏も、今日、カディマを去って、リクードへ移籍(正確には出戻り)を発表した。ハネグビー氏は、他のカディマ議員らにも連立政権残留を説得している。

カディマのモファズ党首は、こうした行為を「政治買収」と呼んで非難。政権に残留する4名に関しては、時期選挙でカディマから立候補できないとする処置を主張している。

ラマダン中も殺戮続く中東 2012.7.24

先週金曜にラマダン(イスラム教徒の断食月)が始まったが、シリア以外でも殺戮が起こっている。23日、イラクでは、19の町で同時爆弾テロが起こり、107人が死亡した。犯人はアルカイダと見られている。イラクではアメリカ軍が昨年12月に完全撤退してから、治安が悪化していた。

レバノンにシリア難民の群衆 2012.7.21

シリアの首都、ダマスカスでの戦闘が激しくなり、レバノンへ逃れる難民が急増している。

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、レバノンへの難民は、この二日間だけで少なくとも3万人。さらに流入は続いているもよう。*レバノン国境は、ダマスカスから車で45分と近い。

イスラエルは北部ゴラン高原で、国連監視による緩衝地帯を介してシリアと国境を接しているが、今のところ難民は来ていない。しかし、アサド政権が倒れた後には、難民がイスラエルにも来る可能性があるとして、今週末、兵士たちは、休暇返上で警戒態勢をとっている。

バラク国防相:イスラエルがシリア国内へ軍事介入の可能性を示唆 2012.7.21

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ゴラン高原から見えるシリアの町(2010年12月)
バラク国防相は、昨日ゴラン高原を視察。「1キロ先のシリアの町に戦火が見える。銃撃戦の音も聞こえる。その200メートル南に国連(UNDOF)がいる。800メートル西に(イスラエルとの)国境のフェンスがある。だんだん近づいてきている。アサド政権の崩壊は現実問題だ。」と語った。

その後、イスラエル国営放送チャンネル10でのインタビューで「アサド政権が崩壊した後には、シリア国内が完全な無法地帯になる。その時にはイスラエルは全力をあげて諜報活動を行う。

もし化学兵器などの危険な武器が、ヒズボラに引き渡されるような場合は、武力を用いてでもそれを阻止する」とイスラエルによるシリアへの軍事介入の可能性を示唆した。

*ヒズボラは、エルサレムやテルアビブを射程に入れたミサイルを確保している。ヒズボラが化学兵器まで持つことは非常に危険。

<国連シリア監視団>

20日期限切れとなった国連シリア監視団だが、安保理はその活動を30日延長することを決めた。

ブルガリアのテロ犯:ヒズボラか?2012.7.21

ブルガリアでイスラエル人観光客をねらった自爆テロ。犯人がだれなのか、ブルガリアとイスラエルが協力して調査をすすめている。昨日から犯人のDNA検査が行われているが、結果は数日後になる見通し。

アメリカ国防相は、「犯行にヒズボラを指し示す点がある」と言っている。ネタニヤフ首相は、最初からヒズボラとその背後にいるイランの犯行だとして、報復を示唆している。

<テロ被害者葬儀>
昨日、イスラエルに戻った犠牲者の葬儀が、それぞれの出身地で行われた。病院に収容された負傷者は、重傷の3人以外、自宅に戻っている。

イスラム教徒 ラマダン入り 2012.7.21

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本日、イスラム教徒はラマダン月(今年は7月20日から8月18日まで)に入った。この間、イスラム教徒は日の出から日没までの間は飲食をせず、日没後にのみ食事する。目的は自らをきよめ、アラーに近づくこと。

イスラエルは、この間、パレスチナ人の移動制限を軽減する。さらに、警備につく兵士たちに、パレスチナ人の前では飲食をや喫煙を控えて、イスラム教徒に敬意を払うようにとの指示を出した。

なお、断食しているからといって、テロが控えられるということはない。