シリアの化学兵器と米ロの対立 2012.8.23

シリアはサリンガス、マスタードガス、シアンガスなど、世界一の化学兵器保有国と言われる。これらが、反政府勢力に対して使われること、またアルカイダや、ヒズボラの手に渡ることが非常に懸念されるところである。

アメリカのオバマ大統領は、シリアのアサド政権に対し、「化学兵器の使用はもはや許容の限界を超えている。アメリカは注意深く監視している。」と、化学兵器使用時には軍事介入も辞さないとの意味合いを含む表明を行った。

ロサンゼルス・タイムスによると、アメリカは実際に、万が一の場合に備えて小さな規模のチームをシリア領内へ派遣する具体的な計画を立てているという。

<西側と共産圏の対立>

これに対し、ロシアのラブロフ外相は、安保理承認なしの、アメリカの単独軍事介入は認められない。」と牽制。ロシアはあくまでもシリアへの軍事介入には反対するもようだ。

するとイギリスが、アメリカに続いて、シリアの化学兵器に対する懸念を表明。アメリカ、イギリスに、フランスも加えた3首脳は、今後シリアのスムースな政権移行について協力する方向で電話会談を行った。

すると中国が、「西側は、化学兵器を理由に、軍事介入しようとしている」と非難。あくまでも国連の仲介による停戦を目指すべきと語っている。

<シリア現地では・・・>

こうしている間にも人は死んでいる。シリアでは、ダマスカスなどの激戦で、昨日も全国で180人以上が死亡。先日、日本人女性ジャーナリストの山本さんが死亡したが、今日もダマスカスでジャーナリストが一人死亡した。

これまでにシリアで死亡したジャーナリストや現地ブロガーは54人に上っており、シリア政府軍がメディア関係者を狙っているとの分析もある。

シリア国内には、支援がとどかない120万人の避難民がいる。先月だけで、国連は82万人もの人々に食糧支援をした。

シリア内戦、レバノンへ波及、死者7人 2012.8.23

レバノン北部とシリア国境の町で、レバノン第二の都市トリポリ(人口20万人・地図参照)で、昨日より、スンニ派イスラムと、シーア派イスラムのアラウィー派(アサド政権)が撃ち合いの戦闘をはじめた。これまでに7人が死亡。70人以上が負傷した。

トリポリは、シリアと同様、多数派のスンニ派イスラムの中に、少数のアラウィー派が住んでいる町。今回の戦闘は、昔からある軋轢に、シリア内戦が火をそそいだ形だ。

レバノンのミカリ首相は「よそ(シリア)の戦争にまきこまれないようにと警告してきた。愚かな争いは止めるように。」とトリポリの人々に呼びかけた。

シリアで日本人女性ジャーナリスト死亡 2012.8.21

時事通信によると、日本通信社アジアプレス所属のビデオジャーナリスト、山本美香さん(45)が、激戦地となっているシリアのアレッポで、政府軍の攻撃を受けて死亡した。遺体は自由シリア軍(反政府勢力)によってトルコに搬送され、在日トルコ大使館によって、身元が確認された。

山本さんは、山梨県出身。放送局の記者を経てフリーとなった。コソボやボスニア、アフガニスタンやイラク戦争など様々な戦地に出向いてビデオカメラで取材し、2003年には国際報道の分野で賞も受賞。気鋭のジャーナリストだった。

アサド政権は、最初から現在に至るまで、基本的に外国からのメディアの入国を拒否している。しかし、多くの命知らずのジャーナリストたちが、自由シリア軍(反政府勢力)の協力で潜入し、報道を試みている。

イスラエル防衛関係者が、超正統派のチーフラビにイラン攻撃を相談 2012.8.21

イランを攻撃すべきかどうかで揺れるイスラエル政府。ハアレツ紙によると、イスラエルの防衛関係者が、ユダヤ教超正統派チーフラビ、オバディア・ヨセフ師(91)を訪れている。

オバディア師は、いわば現在の大祭司的存在。イスラエル政府は世俗派だが、イラン攻撃に関しては、オバディア氏の賛同を得たいと言う者もあれば、そうでない者もいる様子。

オバディア師は先の安息日の説教において、「今イスラエルがどんな状況におかれているか知る必要がある。今は神の前に祈るときだ。」と語ったという。

一方、野党に転向したばかりのモファズ・カディマ代表は、イラン攻撃を推進するネタニヤフ首相に対し、「イラン攻撃は、益よりも害の方が大きい。いったいなんのためにイランを攻撃するのかその理由を説明せよ。」と首相につめよったという。

シリア情勢:国連停戦監視団撤退 2012.8.20

国連安全保障理事会の決定により、国連停戦監視軍300人が19日をもって撤退となった。内戦が激化する一方で、”停戦監視”の意味がなくなっているため。代わりに、今後の交渉拠点として、国連事務所がダマスカスに置かれる。

これまで停戦を目標に活動していたアナン元国連事務総長も8月末をもって辞任する。代わってアルジェリア出身のベテラン外交官ブラヒミ氏(78)が、戦闘停止に向けた努力を続けることになる。

国連停戦監視軍の撤退は、シリア市民にとっては強烈な「見捨てられ」感となる。またこれほどの無秩序に対して、国際社会は何もできないというメッセージを発することになり、戦闘が激しくなるだけでなく、世界的テロ活動を助長することにもなりかねないと懸念されている。

アラブ人リンチ犯行グループ逮捕 2012.8,20

先週木曜夜中過ぎ、エルサレムの目抜き通りシオン広場でアラブ人少年ら4人が、ユダヤ人少年らにリンチされた一件。被害者のアラブ人少年(17才)は重傷で、エルサレムのハダッサ病院の集中治療室で治療を受けている。意識は戻ったものの記憶喪失がある様子。あとの3人はのそのいとこで、軽傷のみ。

イスラエル警察は土曜、19才のエルサレム在住ユダヤ人少年を逮捕。続いて日曜、13,15,17才の少年3人と、15才の少女1人を逮捕した。いずれもユダヤ人。3人は、今も拘置所で拘束されているもよう。逮捕された5人は未成年であるため、刑務所には入らず、少年院などで対処されることになると思われる。

<週末前の夜は別の顔:エルサレム>

エルサレム新市街。日中は、観光客や親子連れ、高齢者が目立つ普通の町だが、夜、特に安息日前の木曜、金曜になるとまったく違う顔になる。バーなどが開かれ、通りには、10代とみられる少年少女が集中してたむろする。シオン広場には通常パトカーが配備される。(写真)その中で、ハバッド派などユダヤ教正統派が、”悔い改めへの伝道活動”している姿もみられる。

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通常、イスラエルの世俗派の若者の夜は遅く、夜10時以降に外出するのも普通。週末前の木曜(日本でいえば金曜)や金曜では、特に夜は遅く、そのまま朝方まで騒いでいる者も少なくない。当然アルコールや麻薬も出回っていると思われる。

<ネタニヤフ首相、アッバス議長に謝罪>

西岸地区でパレスチナ人のタクシーに手榴弾が投げ入れられた事件。被害者は重傷で、ハダッサ病院で手当を受けている。こちらの犯人はまだつかまっていない。ネタニヤフ首相は、アッバス議長にラマダン明け例祭の祝辞とともに、この一件について謝罪。犯人を徹底的に処罰すると伝えた。

しかしこの後にも、ユダヤ人がパレスチナ人の車に投石する事件が発生し、犯人はまもなく逮捕されている。

イランの悪口極まる:反イスラエルラリー 2012.8.18

www.youtube.com/watch?v=7AtwCJkZwOg 

イランのアフマディネジャド大統領は、テヘランでの反イスラエルラリーにおいて、「シオニスト(イスラエル)は人類のしみ。癌。細胞が(パレスチナに)一つ残っただけでも、また同じことの繰り返しになる。完全に消し去ってしまわなければならない。」と公言、悪口を極めた。

またレバノンのヒズボラは、「イスラエルの要所をロケット弾で攻撃する用意がある。ターゲットは少なくても、実行すれば大勢のイスラエル人の死につながり、イスラエルは地獄になる」と語った。これは、イスラエル南部ディモナにある核兵器(イスラエルはその所有を肯定も否定していない)保管地をさしているものと思われる。

ユダヤ人がアラブ人をリンチ 2012.8.18

16日夜、エルサレムの中心地シオン広場で、木曜夜、多数のユダヤ人の10代の少年たちが、3人のアラブ人少年(同じく10代)らに対し、罵声を浴びせて暴行を加え、一人は意識不明の重体となった。救急隊が駆けつけたときには、犯人らはすでに逃走していたが、目撃者によると、リンチのようだったという。

この前日、西岸地区ではパレスチナ人のタクシーに手榴弾が投げ入れられ、子ども2人を含む6人のパレスチナ人が負傷した。6人はエルサレムのハダッサ病院で手当を受けている。負傷者の証言によると、犯人は、キッパをつけた(ユダヤ人)若者たちだったという。

イスラエルの治安組織は全力を挙げて犯人の捜査にあたっているが、西岸地区ユダヤ人入植地の過激派であるとみられている。

明日、国際反イスラエル・ラリー 2012.8.16

明日、イスラム教徒は、1ヶ月に及ぶラマダンの最終の礼拝日(金曜日)を迎える。それに合わせて、今年もイランが中心となり、世界中で「アル・クッズ・デー」と呼ばれる親パレスチナ、反イスラエル・ラリーが行われる。

このラリーは1979年、イラン革命をおこした故ホメイニ師が、全世界のイスラム教徒(シーア派が中心)に対し、「ラマダン月の最終の金曜日は、特にパレスチナ人を覚え、反イスラエルを呼びかける日」と創設したもので、以来、イランを中心に世界各国で毎年行われている。

開催国は、イランの他、レバノン、シリア、イラクなどのアラブ諸国、イギリス、フランス、アメリカ、ドイツ、シドニーなど世界各国の主要都市。どの都市でも数千から数万人の群衆となり、明日世界中で、反イスラエルスローガンが叫ばれることになる。今年の反イスラエルラリーでは、特に世界のイスラムの一致が呼びかけられている。

反イスラエルラリーを前に、今年もイランの最高指導者ハメネイ師が「シオニスト(イスラエル)は、地図から消え去る。」と宣言。イランの将軍も「イスラエルは破壊されなければならない」と語った。

<イランの反イスラエルデー>

国際反イスラエルデーの創始国イランでは、2005年、100万人以上が、イラン全国でのラリーに参加し、「アメリカに死を!イスラエルに死を!」と叫んだ。

2009でも、同様の100万人規模のラリーとなったが、この年、反イスラエルラリーに乗じて、テヘランで約10万人が立ち上がり、反政府運動「反アフマディネジャド」運動を行った。少なくとも10人が逮捕され、運動はイラン政府によってまもなく鎮圧された。

*世界中が、パレスチナを抑圧するイスラエルだと叫ぶのだが、ムハンマドが昇天したというエルサレムの神殿の丘は、確かに様々な規制はあっても、パレスチナ人たちが自由に礼拝できる状態である。添付写真は先週金曜日。神殿の丘に大勢のパレスチナ人が、ラマダンの礼拝に来ている。神殿の丘内部にイスラエル軍兵士の姿は見えない。

神殿の丘2012ラマダン3

神殿の丘2012ラマダン4

エジプト軍シナイ半島に駐留(イスラエルとの和平条約違反) 2012.8.16

シナイ半島で、テロリストの掃討を続けているエジプト軍が、イスラエルとの和平条約に違反して軍をシナイ半島に駐留させている。この件について、イスラエルに連絡はないという。

エジプトのムルシ大統領は、14日、メッカでのイスラム・ソリダリティ・カンファレンス(国際イスラムサミット)において、「パレスチナ人の問題は最優先課題。これが解決するまで、エジプトがイスラエルとの関係を正常化することはない。」と語った。

国際イスラム・サミット、シリアを除名 2012.8.16

OIC(Organization of Islamic Cooperation イスラム国際協力組織 加盟57カ国)は14日、メッカで開かれたイスラム・サミットにおいて、内戦で自国民を虐殺しているシリアを除名、速やかな政権委譲を求めることで合意した。

こ会議には、イランの代表団の他、エジプトのムルシ大統領も出席している。