シリア緩衝地帯に展開するIDFに批判:IDF報道官が防衛目的でありシリア侵攻は否定 2024.12.12

イスラエル軍は、シリアで反政府組織HTSが、アサド政権を打倒するにあたり、12月8日(日)、シリアと2分していたヘルモン山のシリア側を制覇し、地域を見下ろす非常に重要な場所を獲得した。

また、シリアとの間にある緩衝地帯も制覇した。既存の国境線から5-7キロ、シリア側にはみ出すことになり、地域には、レバノン人の7つの村があるが、無抵抗だった。シリア軍は、全てを放棄して東へ逃げていった。

イスラエル軍は、シリア軍の戦車や、ミサイルなど軍備、インフラを押収するとともに、その地域に軍隊を展開し、シリアとの国境を監視する体制に入った。イスラエル軍はまた、安全のための防護壁も設立する予定とのこと。
7つの村の住民たち数千人は、変わりない日常を続けている。いわば、イスラエル軍に保護されている形である。

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国際社会はイスラエルにシリア緩衝地帯から撤退を要請

イスラエルがシリアの緩衝地帯に前進したことについて、国際社会は、イスラエルが、ダマスカスへ侵攻を計画しているのではといった懸念が広がっている。

12月10日(火)、カタール、トルコ、エジプトが、イスラエルがシリアの領地を占領したと非難した。

www.timesofisrael.com/qatar-turkey-egypt-join-condemnation-of-israels-activity-across-syrian-border/

以前シリアを支配していたフランスは、これは、1974年の第四次中東戦争(ヨムキプール戦争)後の合意に違反すると指摘。イスラエルに対し、シリアの主権と領土保全を尊重して、緩衝地帯から撤退するよう、要請してきた。

また11日(水)になり、アサド大統領を保護しているロシアが、フランスと同様に、1974年の合意に違反するとして、イスラエルに撤退を要請するとともに、シリア領内でアサド時代軍備を空爆していることに懸念も表明した。

またドイツとスペインは、イスラエルに対し、アサド政権から次の政権への意向を妨害するような行動は、自制するようにと要請した。

これに対し、アメリカとイギリスは、イスラエルの安全上の問題を理解するとして、これを支持すると表明した。

www.timesofisrael.com/france-calls-on-israel-to-exit-syria-buffer-zone-as-spain-germany-urge-restraint/

これに対し、イスラエル軍のハガリ報道官が、緩衝地帯に立って、声明を出し、イスラエルは、自国の防衛のために、ゴラン高原の緩衝地帯に駐留しているだけで、ダマスカスはじめシリアに侵攻する予定はないと強調した。

シリア暫定政権が政権移行プロセス開始:HTSが国際機関とともに化学兵器排除着手と発表 2024.12.12

シリアでは、アサド政権崩壊に伴い、次期政権への政権移行の動きが始まっている。

シリア暫定政権設立

12月10日(水)、アサド政権の崩壊に導いたHTS(シャーム解放機構)と、連携する組織とともに、HTS領域における救済政府(HS)のモハンマド・アル・バシル代表を、暫定首相として指名した。任期は、2025年3月となっている。

救済政府は、今年1月に立ち上げられた、HTS領域(人口400万人)の政府的な組織で、BBCによると、イスラム法に基づく宗教評議会を維持しながらも、地方自治や治安当局なども行なっていた。

アル・バシル暫定首相は、暫定政府メンバーとともに、10日(水)、ダマスカスで、旧アサド政権の幹部との会談を行なった。

国連のシリア特使、アメリカのブリンケン国務長官も、これを見守る姿勢を表明している。しかし、HTSは元アルカイダでもあり、国際社会からは、今もまだテロ組織指定を受けているままなので、国際社会としても、ためらいながら、シリアのこれからを見守っているところである。

しかし、ダマスカスでは、店舗が再開するなど平穏な日々への復帰の様相も見え始めているとのこと。

HTSが化学兵器廃絶で国際機関と協力と

(Mahmoud Hassano/Reuters)

こうした中、HTS の指導者アフマド・アル・シャラー(モハンマド・アル・ゴラニ)は、11日(水)、ロイター通信に対し、旧アサド政権時代からの化学兵器の排除に向けて、国際機関と協力していると報告した。

イスラエルは、旧アサド政権の軍事施設を空爆しており、その中には化学兵器関連施設も含まれている。今後も危険なものがみつかれば、躊躇なく攻撃して破壊する可能性がある。

アメリカのオースティン国防相は、イスラエルのカッツ国防相に対し、アメリカは、平和的な解決の方を希望するとして、HTSの様子を見守るので、今後もし攻撃する場合は、アメリカとの緊密な連絡が必要だと伝えたとのこと。

www.timesofisrael.com/syrian-rebel-chief-says-working-with-intl-groups-to-secure-potential-chemical-arms-sites/

ヨルダン川西岸地区で銃撃テロ:12歳ユダヤ人少年死亡 2024.12.12

60号線上銃撃テロ:イスラエル人少年(12)死亡

12月11日(水)夜、西岸地区入植地グッシュ・エチオンから、60号線上を、エルサレムに向かっていたバスが、アル・カデル交差点で、走り去る車からの23発もの銃撃を受けた。

バスは、負傷者を乗せたまま検問所に向かい、そこで警察や救急の処置を受けた。

(Courtesy)

このテロ時件で、イェホシュア・アーロン・トゥビア・シムハさん(12)が死亡。

男性(20代)が重傷。女性(40代)が中等度で負傷した。別の2人も、銃撃で割れたガラスで負傷している。

テロリストは走り去ったままつかまっていない。イスラエルの治安部隊(IDF、国境警備隊、警察、シンベト共同捜査)は、付近の道路を封鎖したほか、パレスチナ人居住地のフサンとベツレヘムを封鎖して、捜査を行っていた。

その後のニュースによると、12日(木)早朝、犯人のエズ・アルディン・マルアが、自首してきて、逮捕された。

マルアは、当初、パレスチナ自治政府に自首して、武器をとりあげられたが、逮捕はされていなかった。その後、イスラエルの治安部隊に自首してきたもようである。

www.ynetnews.com/article/byk1ifdnjx#autoplay

Ariel, near Nablus, November 29, 2024. (Ahmad GHARABLI / AFP)

西岸地区では、先月11月29日(金)にも、入植地アリエルで、民間バスが銃撃テロを受けていた。このテロで、8人が負傷し、このうち、パレスチナ人バス運転手を含む3人は重傷だった。

テロリストは、射殺されたが、ハマス戦闘員で、アル・カッサム旅団メンバーだった。

www.timesofisrael.com/hamas-terrorist-opens-fire-on-civilian-bus-in-west-bank-8-wounded-3-seriously/

西岸地区では2023年10月7日以降、こうしたテロ事件が増加しており、これまでに死亡したイスラエル人は、治安部隊隊員を含め人47人となっている。

一方、イスラエル軍との衝突で死亡したパレスチナ人は、800人。5250人が逮捕されたが、このうち2050人はハマス関係者だった。

西岸地区で続いているテロ:強硬右派ユダヤ人の暴力も

ヒズボラやシリア問題で忙しくなっている背後で、西岸地区ではパレスチナ人によるテロ、また強硬右派ユダヤ人たちによる暴力も相次いでいた。最近のケースは以下の通りである。

1)西岸地区で続くテロ事件とイスラエル軍との衝突

ナブルスの近くにあるヨセフの墓とされるユダヤ教正統派には聖地とされる場所がある。12月10日(火)、イスラエル人超正統派ユダヤ教徒の3人が、IDFとのアレンジなしに車で訪問しようとして、銃撃を受けた。3人は軽傷だった。

www.timesofisrael.com/3-israelis-lightly-hurt-as-gunmen-open-fire-during-uncoordinated-visit-to-nablus-tomb/

その1週間前の12月3日(火)には、西岸地区北部、ヨルダン渓谷のパレスチナ人居住地で、イスラエルのドローンによる攻撃で、ハマス戦闘員3人が死亡した。イスラエルは3人が、イスラエル国内でテロを計画していたと言っている。

www.timesofisrael.com/idf-says-3-gunmen-planning-imminent-terror-attack-killed-in-west-bank-drone-strike/

その3日前の12月7日(土)には、西岸地区南部のアル・ファウワル難民キャンプ近くで、イスラエル兵たちが立っているところに車が突っ込み、イスラエル兵1人が重傷となった。イスラエル軍はヘブロンを封鎖して、捜査を行ったが、テロリストは自首して出てきたとのこと。

同じ日、カランディア検問所では、IS(イスラム国)のマークをつけたパレスチナ人がナイフをもって、イスラエルの治安部隊になぐりこみ、逆に射殺された。

www.timesofisrael.com/soldier-seriously-hurt-in-west-bank-ramming-attacker-flees-later-turns-himself-in/

2)過激右派ユダヤ人の暴力・イスラエル軍との対立も

一方で、過激右派ユダヤ人の暴力もエスカレートしている。西岸地区では、11月4日、ラマラに近い、パレスチナ人居住地、エルビレに入植者が入って、車19台に放火して大損害を与えた。

www.haaretz.com/israel-news/twilight-zone/2024-12-07/ty-article-magazine/.highlight/like-a-bombed-out-scene-20-palestinian-cars-torched-by-masked-settlers-in-dead-of-night/00000193-9aaf-d794-a3ff-dbef4cd50000

続いて11月16日には、ナブルス近郊のパレスチナ人村ベイト・フリークに、仮面をつけたユダヤ人入植者たち数十人がなだれ込み、家屋や車両に放火していった。

この時、パレスチナ人たちは投石して反撃し、両者の紛争になった。イスラエルの治安部隊がこれを鎮圧し、死傷者は出なかった。入植者たちは、過激で知られるイタマルから来ていた。

この6日後の11月22日、ユダヤ人過激入植者たちは、ヘブロンで彼らを取り締まろうとするイスラエル軍に投石するに及んだ。これにより5人が逮捕された。

www.timesofisrael.com/several-dozen-jewish-extremists-in-hebron-try-to-attack-idfs-top-west-bank-commander/

ところが、この日、カッツ国防相は、裁判前に緊急に身柄を拘束できるとする行政拘束政策を、ユダヤ人には適応しない方針を発表した。今後、ユダヤ人の場合は、現場で取り押さえられも、身柄は拘束できない、すぐに釈放されるということになる。

過激右派ユダヤ人入植者を取り締まる唯一の方針がなくなったと、バイデン大統領はこれを批判していた。

石のひとりごと

いろいろ情報を加えてしまったが、西岸地区では、パレスチナ人とイスラエル人との間に、まさに憎しみの連鎖の混乱になっている。その巻き添えで12歳の少年が死亡してしまった。なんとも不条理なことである。

また、12月はクリスマスで、ベツレヘムは、毎日たいへんな賑わいになるところだが、今現在、テロ事件の影響で、イスラエル軍が包囲しているという。

私たち人間の愚かさというか・・・全ての創造主、天の父なる神様は、これをどうみておられるのだろうかと思う。。

イエメン・フーシ派のドローン警報なしでヤブネのマンションに着弾:負傷者なしの奇跡 2024.12.12

12月9日(月)、テルアビブとアシュドドの間に位置するヤブネに、イエメンのフーシ派が発射したドローンが、高層アパートのバルコニーに直撃。火災が発生した。

ドローンが飛んでいるのを目撃した人はいたサイレンは鳴っていなかった。死傷者が出なかったことは奇跡であった。

ドローンは、エジプト方面を経由して地中海のスデロット、アシュドドを経由して、ヤブネに到達していた。迎撃に戦闘機が発進したが、間に合わなかったという。

www.timesofisrael.com/drone-from-yemen-damages-apartment-block-in-yavne-flying-in-undetected-no-injuries/

フーシ派はイラン枢軸の一つである。シリアのアサド政権が崩壊し、イランは、今や、ハマス、ヒズボラを失い、ヒズボラを復帰させるために重要な経路になるシリアも失った。

イスラエルと世界は今、イランが今後、どう動くのかに敏感になっている。今の所、イスラエルは、フーシ派が、イスラエルに大きな脅威にはなることはないとみている。

ガザでイスラエル兵3人死亡:反撃でハマス10人死亡 2024.12.12

カタールでは、人質解放と停戦に関する交渉が行われており、ハマスが、イスラエル軍の駐留を一部認める中、返還する人質の名簿を出したなど、希望的と表現されるニュースが届いている。

IDF troops operate in northern Gaza’s Jabalia, in a handout photo issued on December 9, 2024. (Israel Defense Forces)

しかし、現地ガザでは、特に北部でハマスとの戦闘が続いている。IDFによると、9日(月)、ジャバリヤでの戦闘を終え、休暇に向かう兵士たちが、輸送用系装甲車に乗り込んで帰還しようとしていたところ、ハマスが対戦車砲を発射してきた。

この攻撃で、イスラエル兵3人が死亡。12人が負傷した。このうち、2人は重傷とのこと。死亡したのは以下の3人。

衛生兵のイド・ザノ二等軍曹(20)、バラク・ダニエル・ハルバン二等軍曹(19)、オムリ・コーヘン二等軍曹(20)

ジャバリヤ、ベイト・ラヒヤ、ベイト・ハヌーンでの作戦で、少なくとも1750人のハマスなど戦闘員が死亡。1300人を逮捕した。この地域から避難を余儀なくされたガザ市民は約9万人。イスラエル軍の戦死者は、34人となっている。

www.timesofisrael.com/three-idf-soldiers-killed-in-north-gaza-as-hamas-fires-on-troops-prepping-to-leave-strip/

この後、場所は明らかではないが、イスラエル軍は反撃の空爆を実施した。これにより、ハマス関係者10人が死亡した。

www.timesofisrael.com/idf-says-strike-kills-10-hamas-men-involved-in-slaying-of-3-soldiers-monday/

南レバノンでの作戦中の事故でイスラエル兵4人死亡:停戦後イスラエル軍一部撤退 2024.12.12

作戦中事故でイスラエル予備役兵4人死亡

ヒズボラとの停戦に入ったイスラエルだが、12月8日(日)午後、イスラエル軍が、南レバノンのラブブネ地域で、ヒズボラのトンネルや武器庫の捜索を行なっていた際、友軍がしかけていた爆弾が事故で爆発し、イスラエル兵(予備役)4人が死亡した。以下の4人である。

エブゲニー・ジネルシャイン少佐(43)、サギ・ヤアコブ・ルビンシュタイン大尉(31)、ベンジャミン・デスタウ・ネゴス第一軍曹(28)、エレス・エフライム軍曹(25)

www.timesofisrael.com/four-troops-killed-in-southern-lebanon-by-accidental-blast-inside-hezbollah-tunnel/

イスラエル軍が南レバノンから一部撤退

破壊された南レバノンvillage of Odaisseh, on December 4, 2024. (Jalaa MAREY / AFP)

イスラエル軍は、11日(水)、ヒズボラとの停戦合意に従って、レバノン南部のヒアムから部隊を撤退させた。

撤退後は、レバノン軍が、UNIFILとの協力で、監視を続ける。

不発弾の除去を行い、安全が確認されるまで、住民にはまだ帰宅しないよう、指示されている。

なお、イスラエル軍が撤退したのはここだけで、他の部隊は引き続き駐留を続けている。停戦の発効は11月27日で、IDFは、それから60日以内に、南レバノンから撤退する。

ヒズボラは、リタニ川まで撤退し、そこから南部にある軍備インフラを解体する予定である。

アメリカのCENTCOM(中央司令部・クリラ陸軍少将)がこれを監視することになっている。

www.timesofisrael.com/idf-confirms-withdrawal-from-southern-lebanons-khiam-in-accordance-with-ceasefire/

ネタニヤフ首相汚職刑事裁判で証言開始:裁判所前デモに見る社会の分断 2024.12.11

戦時中にネタニヤフ首相が刑事裁判で証言台に

国は戦争の只中だが、12月10日(火)、ネタニヤフ首相が、2019年に告発されていた、汚職問題等の刑事被告人として、テルアビブ地方裁判所で証言台に立った。

今後、12月末ぐらいまで、週3回、1回4時間、証言台に立つことになる。現職首相が刑事事件の証言台に立つのは、イスラエル史上、初めてのことである。

戦時下であることから、ネタニヤフ首相と治安閣僚のほぼ全員が、裁判所と、ガリ・バハラブ・ミアラ検事総長に対し、裁判を延期するよう要請していたが、は裁判決行に踏み切った形である。今後、首相の任務遂行に課題となることが懸念されている。

ネタニヤフ首相は何を訴えられているのか

今回、訴えられているのは、2019年に告訴されたネタニヤフ首相への訴えで、ケース1000、ケース2000、ケース4000と呼ばれる3件。

ケース1000は、ネタニヤフ首相が通信大臣だった時に億万長者アルノン・ミルツィン氏の有利を図ることで、見返りに高級な葉巻やシャンパン、妻のサラが高級な宝石を受けとったという収賄容疑である。

ケース2000は、ネタニヤフ首相が、イスラエルのメディア、イディオト・アハロノトの所有者アルノン・モーゼスに、自分に有利な記事、政敵に不利な記事を依頼していたという背任容疑である。

ケース4000は、この中で、最も重要視されている件で、ネタニヤフ首相が、イスラエルの大手通信会社ベセックに関係するメディア、ワラ!にネタニヤフ首相に有利な情報を流させ、その見返りにベゼックに有利な規制変更を行ったとする、詐欺、背任、収賄容疑である。

www.timesofisrael.com/netanyahu-1st-pm-to-testify-as-criminal-defendant-ridicules-charges-denies-illicit-media-ties/

ネタニヤフ首相は証言台で訴えは「全くの嘘」と一蹴

裁判が始まる前日から、また証言台においても、ネタニヤフ首相はこの訴えを全面的に否定。まったくの嘘だと一蹴した。また公の場で反論する日を8年間待ったと述べた。

また、裁判所には、リクードの議員らがかけつけ、検察側に野次をとばした。またテルアビブ地方裁判所外では、今この時期に裁判することに反対するネタニヤフ首相支持者と、ネタニヤフ首相に反発する人々、それぞれ100人ずつぐらいが、デモを行った。

www.timesofisrael.com/netanyahu-1st-pm-to-testify-as-criminal-defendant-ridicules-charges-denies-illicit-media-ties/

ネタニヤフ首相と司法の争い:右派と左派対立の構図

戦争中にもかかわらず、ネタニヤフ首相を刑事裁判で証言させるなど、およそ考えられないことである。その背後には、イスラエル国内にある深い疑いと分断の構造がある。

今回、裁判にかけられるのは、上記3ケースだが、上記3ケースとともに、もう一つあった。ケース3000と呼ばれ、2003年に以降、ネタニヤフ首相が、ドイツの単一の造船会社から潜水艦4隻という、必要以上に購入していたことから、国を利用して、贈収賄を行っていたのではないかという疑惑である。

これについては、証拠不十分ということもあり、論議は終了となっていたが、疑惑は続いていた。実際、この問題は、今年2024年6月に、国の治安を脅かした可能性があるとして、別の方向から再度問題に上げられている。

こうしたどろどろの疑惑の中、ネタニヤフ首相は、2021年から首相を退陣し、リクードは野党となった。この間、ベネット首相とラピード首相が政権を担ったが、わずか1年後の2022年、ネタニヤフ首相は首相として返り咲いたのであった。

ネタニヤフ首相は、再就任するとすぐ、司法が首相を監視し、裁判にかけ、最終的には解任する権限まで持っている、既存の司法制度そのものを改革する、司法制度改革案を出した。

これが成立すると、政府を見張る者がなくなり、ネタニヤフ首相はその座を追われることはなくなる。しかし、独走を許す可能性も出てくることや、国の性質を変える重大事項であるため、イスラエル国内では、大きな論議となり、成立にはいたっていない。

その後、2024年10月7日、ハマスの奇襲が発生し、主に左派で、世俗派の若者たちが壮絶な被害を受けることになった。

これについては、ネタニヤフ首相のこれまでのガザに対する政策の防衛に問題があったことが明らかであった。このため、人質家族など、左派世俗派たちの反ネタニヤフ感情に火がつくことになった。

最近では、ハマスのシンワルに関する情報をネタニヤフ首相府報道官の一人、エリ・フェデルスタインがドイツのメディアに機密情報を漏洩したことが発覚。フェデルスタインは、刑務所で自殺未遂にまで追い込まれたが、これについては、ネタニヤフ首相は無関係とされている。しかし、実際は、ネタニヤフ首相の指示だったのではないかとの疑惑も出ていた。

石のひとりごと

長年、ネタニヤフ首相に関するニュースを追いかけているが、ネタニヤフ首相は、絶対にイスラエルを守り切るという執念を持っていると感じる。

何があっても、首相のポジションに留まり続けているのは、その確信があるからである。そのせいか、危機をぎりぎりに、予想外にすり抜ける様子もあり、主が背後におられるのではと思わされることもあった。

いずれにしても、中東でイスラエルを守っていこうとするネタニヤフ首相が、12年も首相にとどまり続ける中、海千山千で、悪知恵も使いこなす、超超ベテランの政治家、戦略家であることは間違いない。

今回の裁判も起訴されているのは、比較的軽いものばかりで、逆にネタニヤフ首相が、公の場で、容疑を覆す場として、あえて、こういう動きにさせたのではないかとも思ってしまうほどである。戦争がもっとも繊細な時期なので、国民も深入りしない方がいいと思う時期でもある。

しかし、そうしたしたたかさが、人間的基準で正義を守ろうとする司法、また社会性を強調する左派たちの反感を買うことにもなる。

ネタニヤフ首相は、何があっても負けない。そうした正論の勢力を超えるほどのしたたかさを持ち合わせている、けっしてあなどれない人物であると思う。

IDFの軍拠点攻撃でアサド政権の軍事力80%破壊:シリア政府軍4000人イラクへ逃亡 2024.12.11

イスラエル軍アサド政権軍事力80%を破壊

シリアで反政府勢力がわずか12日でアサド政権を崩壊させたが、イスラエルはその横で、緩衝地帯を制覇し、標高2814メートルのヘルモン山を支配下に置いた。これにより、ダマスカスからその周辺一帯を見下ろす位置に立ったことになる。

また、イスラエルは、戦闘機、ドローンなどで、シリア各地にあった軍事拠点への空爆を行っていたが、明らかになった情報によると、攻撃は350回以上に及び、アサド政権の軍事力、戦闘機、戦車、防空ミサイル、巡航ミサイルなど、重要な戦略兵器の80%は、失われたとみられている。IDFは、この攻撃を「バシャンの矢」と呼んでいる。

攻撃は、ラタキヤの海軍基地にも及んでおり、15隻の戦艦を撃沈する壮絶な破壊の様子が伝えられている。

ネタニヤフ首相は、シリアの新政権と協力する用意はあるとしながらも、イスラエルの治安を少しでも脅かす気配があれば、躊躇はしないと表明している。

この状況から、国際メディアは、シリアに侵攻している、恐怖のあまり戦火に油を注いでいる、といった批判的な表現で報道している。

シリア反政府勢は軍病院で拷問跡がある遺体40体発見:アサド政権を拷問犯罪で指名手配へ

シリア反政府勢力HTS(シャーム解放機構)は、9日、ダマスカス郊外の軍のハラスタ病院の遺体安置所で、拷問の形跡がある遺体40体を発見した。

遺体は、ダマスカス郊外にある、サイドナヤ刑務所の拘留者である可能性が高い。サイドナヤ刑務所では、2011年から2018年までに、少なくとも3万人が、拷問、医療の欠如、飢餓で死亡したと推定されており、「死の刑務所」と呼ばれている刑務所である。

HTSはダマスカスを解放した際、真っ先にこの刑務所を解放しており、留置者の家族たちが、解放された人々の間に家族がいないか探しにきている様子が報じられていた。

イギリスの人権保護団体によると、アサド政権下の民主主義運動の弾圧で、2011年以来、10万人が行方不明となっている。このうち6万人が拷問で死亡したとみられていた。

HTSは、アサド政権を拷問・致死で訴えると言っている。

イラクへ逃げるシリア政府軍

こうした中、これまでにシリア軍兵士たち4000人以上が、イラクに逃れたとイラク西部民兵当局が発表した。兵士たちは、武器弾薬、装甲車も引き渡しているという。イラク政府によると、その後テントで保護されているとのこと。場所は不明。

イラクは、シリアとイランとも関係が深いが、現時点では中立の立場を表明している。

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イスラエル軍と米軍がシリア各地の危険地点を空爆:IDFゴラン高原シリアとの緩衝地帯制圧 2024.12.9

シリアを制圧した反政府勢力、その主要な勢力であるHTSの指導者アル・ジェラニは、今の所、イスラエルに寛大な姿勢を見せている。

しかし、HTSは、今は決別したとはいえ、元アルカイダで、聖戦主義組織である。初めは寛大な姿勢でも、いつ過激なイスラム主義に転じる可能性は小さくない。

また、反政府勢力は、HTSの他にも少なくとも3組織がシリアで支配域を持っている。それらがどう出てくるかもわからない。今はシリアから出ていったイランが、今後どう出てくるもわからない。あらゆる点で、楽観は禁物である。

イスラエル軍がシリア各地の武器庫など危険地点を攻撃:化学兵器関連も

今後の混乱が予想される中、イスラエル空軍は、12月7日(土)夜から8日(日)にかけて、戦闘機数十機で、シリア各地にある戦略兵器保管地など10か所を空爆し、武力の無力化を図った。

アサド政権が保有していた、危険な兵器が、テロ組織の手に渡ることを避けるためとしている。破壊した兵器は、最新のミサイル、誘導ミサイル、防空システム、兵器製造工場で、化学兵器関連の施設も攻撃していた。

攻撃した地域は、ダマスカス郊外のメゼ空軍基地の他、安全保障施設、政府研究センターを空爆。隣接する関税本部、軍事情報局にも大きな被害が出て、軍事機密情報や、イラン科学者によるミサイル開発情報も失われたとみられる。

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南部では、ダラア県とスゥエイダ県で空爆が報告されており。スウェイダ郊外のハルカラ空軍基地も攻撃されていた。これらの空爆は、非常に焦点のあたったものであり、死傷者が出たという報告はない。

また、8日(日)には、米軍が、戦闘機でシリア中部のIS(イスラム国)関係の拠点75か所以上を空爆し、組織のメンバーが死亡している。

www.timesofisrael.com/as-assad-falls-israeli-jets-destroy-his-deadly-arsenals-before-they-fall-to-rebels/

イスラエルがシリアとの緩衝地帯から周辺シリア領内を制圧:住民には警告後

イスラエル軍はまた、イスラエルとシリアの間にある緩衝地帯(ピンクの部分)からシリア軍が撤退したことを受けて、その地域の制圧にも踏み切った。

制圧した地域は、一部、緩衝地帯周辺のシリア領内も含まれている。

この地域は、ヘルモン山を含む高台で、シリアやレバノンも見下ろす位置にあり、戦略的にも非常に重要な地域である。しかし、イスラエルは、この制圧は、シリア国内に混乱に伴う、一時的な措置であること、またシリア反政府具勢力HTSとは無関係であることも強調している。

なお、この地域では、UNDOF(国連兵力引き離し隊)がイスラエルとシリアの停戦を監視しているが、イスラエルは、UNDOFとの連携を図っており、衝突は発生していない。また、イスラエル軍は、この地域に住む住民たちに、家から出ないよう警告してから、作戦に踏み切っていた。死傷者は報告されていない。

イスラエル軍のハレヴィ参謀総長は、IDF精鋭、ゴラン旅団の新兵たちへの演説の中で、イスラエルは、今、ヨルダン川西岸地区、ガザ、レバノン、そしてシリアという4局面での戦闘に直面することになったと語った。

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*シリア緩衝地帯

シリア緩衝地帯は、1973年の第四次中東戦争(ヨム・キプール戦争)後、1974年に締結された合意により,ゴラン高原のイスラエルとシリアの国境を挟む形で制定された地域である。

この時、PKO(国連平和維持活動)の枠組みで、UNDOF(国連兵力引き離し隊)を設立され、ポーランド、オーストリア、カナダ、スロバキア、インド、日本が兵力を出して運営されてきた。

日本の自衛隊は、1996年から最大3人で、後方支援の運送を担当したが、現地の治安悪化が著しく、隊員の無事を確保できなくなったことから、17年後の2013年に撤退している。

ネタニヤフ首相がゴラン高原ベンタル山から世界にメッセージ

ネタニヤフ首相は8日(日)、カッツ国防相とともに、シリアとの国境を見下ろすベンタル山を視察。そこから世界に向けて、英語でメッセージを発した。

ネタニヤフ首相は、シリアのアサド政権が崩壊し、イスラエルがこの緩衝地帯を制圧したことは、中東に新たなチャンスとともに、新たな危機ももたらす、歴史的な日だと語る。

ネタニヤフ首相は、「これは、イスラエルが、アサド政権の主な支持基盤であったヒズボラとイランに打撃を与えた結果であり、先制的な独裁政治に不満を持つ人々の連鎖反応の突破口になった。

しかし、これは同時に、私たちは、起こりうる全てに事に対応しなければならないということでもある。その一つは、1974年に成立し、50年続いてきた、イスラエルとシリアの合意が、昨夜、崩壊したという点である。

シリア軍は、駐屯地から離脱した。そのため、その場所に入って、過激な組織が入ってこないようにするよう指示した。イスラエルの国境線のすぐ外側だからである。これは、よい代替策が出てくるまでの一時的な方策である。私たちは国境の向こうにいる、すべてのシリアの人々、ドルーズ人、クルド人、クリスチャン、そして、平和に生きたいと願うイスラム教徒にも、手を差し伸べるつもりだ。

今状況を見ている。隣人として、平和な関係が築けるような政権が、シリアに出てくることを願っている。しかし、そうならないなら、イスラエルの国とその国境を守るためには、あらゆる事をしていくことになる。」と語った。

石のひとりごと

イスラエルの戦闘の前線は、4方向になった。しかし、シリア人分析家ハゼム・アルガブラ氏は、中東でイスラエルは今、最も恐れられる勢力になったと言っていた。

イスラエルがハマスとヒズボラを、撃退し、今やイランをもシリアから追放する勢いにあるためである。中東は、やはり、実質の力がものを言う地域だと思う。

今後、ハマスとの交渉も、イスラエルに有利に動いていく可能性もささやかれている。また、イスラエルの最大の期待は、この反政府勢力の動きが、イラン国内に連鎖していくことである。今後、イランがどう出てくるのかが、焦点である。

中東はとにかく予想外だらけである。すべての専門家が、「自分の分析どおりにはいかないかもしれないが」と強調する時代に入っている。

私は一心に知恵を知り、昼も夜も眠らずに、地上で行われる人の仕事を見ようとしたとき、すべては神のみわざであることがわかった。

人は日の下で行われるみわざを見きわめることはできない。人は労苦して捜し求めても、見いだすことはない。知恵ある者が知っていると思っても、見きわめることはできない。(伝道の書8:16-17)

HTSのアル・ジャラニがダマスカスで勝利宣言:シリアは(イランから)解放されたと 2024.12.9

シリアで旗を上げた、イスラム主義、反政府勢力HTSの指導者、アブ・モハンマド・アル・ジャラニ(42)は、12月8日(日)、ダマスカスに入り、1300年の歴史を持つ、ウマイヤ・モスクにおいて、勝利を宣言した。

2011年、ロシアとイランの支援を受けて、ねじ伏せられたアラブの春、専制主義政権打倒が、13年後に実現した形である。

アル・ジャラニは、宣言の中で、この勝利は、イスラム諸国全体の勝利だ。新しい歴史の始まりだと語った。また、シリアは、様々な野望に利用されてきたが、今、全能の神の助けにより、それらから解放され、きよめられたと宣言した。

アル・ジャラニが言っているのは、イランのことである。イランは、イスラエルを攻撃するため、シリア各地に拠点を持ち、そこからヒズボラに武器を搬送していたのである。またイランはそこから、ヨルダンや、アメリカ軍にも攻撃をしかけていたのである。

またアル・ジャラニは、宗教や宗派を超えた、新しい国へのビジョンも語った。勝利宣言の後、モスクで祈りを捧げた。

内容は非常に理性的に聞こえる。バイデン大統領は、「彼は正しいことを言っている」と言ったとのことだが、アル・ジャラニは、過激派テロリストとして、アメリカに1000万ドルの懸賞金をかけられている人物である。

NYT

また、シリアには、少なくとも4種類の反政府勢力がいる。(①HTS、②クルド人関係組織、③トルコが関係する組織、④その他の組織)これらが今後どう出てくるかもわからない。

アル・ジャラニが言っていることが、よい響きであったとしても、結局、今後どう動くのかであり、世界の国々は、それを見ているところである。

edition.cnn.com/2024/12/08/middleeast/analysis-syria-rebel-leader-speech-iran-intl-latam/index.html

アサド大統領はロシアに亡命 :ロシア・イラン・トルコがドーハで会談 2024.12.9

アサド大統領とその家族はロシアで生存・保護

city of Hama. OMAR HAJ KADOUR/AFP

アサド大統領は、ダマスカスを飛行機で脱出したが、途中でレーダーからその姿が消えていたため、死亡している可能性があるとされていた。

しかし、ダマスカスで、アル・ジャラニたちが、勝利宣言をした、8日(日)、ロシアのクレムリンが、アサド大統領とその家族が、モスクワに到着して生きており、人道的亡命者として、ロシアに受け入れられたと伝えた。

ロシア外務省は、アサド大統領が辞任して、平和的な権力の移譲を支持すると言っていると表明している。

これまでアサド政権を支えてきたのは、ロシアだった。それが、わずか8日で打倒されたのである。ロシアは、威厳を失ったといえる。

またロシアは、地中海に面する空軍基地と、海軍基地をシリア領内に持っている。アサド政権打倒で、ロシアはこの両基地へのアクセスを失い、地中海へのアクセスがなくなった形である。

このため、ロシアは、アサド大統領を保護しながらも、反政府勢力とコンタクトもとっているもようである。これまでのところ、基地も基地にいるロシア軍関係者も無事とのこと。

アサド政権の打倒は、中東と世界の勢力図に大きな影響を及ぼす可能性がある。ロシアが、その影響力に影を見せ、イランも、アサド政権を失うことで、いよいよ悪の枢軸と呼ばれるシステムの崩壊かとも言われているからである。

イランでは、現政権に反発する勢力は、小さくないので、政権が弱っている今、イランでもシリアのような反政府勢力によるクーデターが発生する可能性もある。しかし、イランが何を考えているかは今の所、情報が少なく、楽観や期待は禁物である。

www.jpost.com/middle-east/article-832456

www.ynetnews.com/article/bjccrpqeye#autoplay

www.bbc.com/news/videos/cdd690jp6rmo

ロシア、トルコ、イランがドーハでシリア対策を協議:今回はトルコが台頭か

12月7日(土)、カタールの首都ドーハでは、ロシア、トルコ、イランの外相が、今後のシリアについて、協議した。3国の外相は、シリアの敵対行為を直ちに終わらせなければならないという点で合意したが、大した結果は出ていないようである。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/russian-iranian-and-turkish-fms-call-for-end-to-syria-violence/

www.themoscowtimes.com/2024/12/07/turkey-russia-and-iran-meet-in-doha-seeking-exit-from-syria-chaos-a87258

APによると、ロシアとイランが、アサド大統領を支援して、反政府勢力を追放する案を出したのに対し、トルコは、アサド大統領が、国民と和解することと、反政府勢力を支持する意見を出したとのこと。

apnews.com/article/turkey-syria-insurgents-explainer-kurds-ypg-refugees-f60dc859c7843569124282ea750f1477

現状からすると、トルコの影響力が大きくなっていると考えられる。トルコは、反政府勢力の中で、シリア北部で勢力がある自由シリア軍(HTSとは別の組織)に影響力を持っている。

また、トルコは、シリア難民300万人を受け入れていたため、トルコ国内では、この難民たちが、ようやく故郷に帰れると、大祝いしているところである。反政府勢力がシリアを制圧したことは、トルコにとっては、都合が良い点が多い。

憶測的な分析ではあるが、今回のシリアでの反政府勢力の動きにトルコが関わっていたとの味方もあるが、トルコはこれを否定している。

www.timesofisrael.com/where-turkey-stands-after-assad-regime-falls-to-syrian-opposition/

2017年 ソチ Sputnik, via Reuters

なお、ロシア、イラン、トルコの3国は、2017年にもシリアの内戦についての対策を協議していた。この時は、ロシアが影響力を拡大することで、シリアを安定させる方向で合意していたのであった。

www.nytimes.com/2017/11/22/world/europe/russia-turkey-iran-syria-war-peace-talks.html

この3国はエゼキエル書によると、将来、結託してイスラエルに攻めてくる国々であると言われている国々である。

石のひとりごと

個人的には、アサド大統領が、家族を連れて亡命していたことが、なんとも気になった。どんなに残酷な独裁者でも、家族はやはり家族なのである。やっぱり人間なのである。

またロシアが、アサド大統領を見捨てなかったのはなぜだろうか。プーチン大統領が、義理人情で動くはずはないので、やはりまだ復帰させる可能性も捨てていないのかとも思う。

ダマスカスのアサド政権無抵抗で陥落:IDFはゴラン高原国境駐屯で警戒

ダマスカス無抵抗で陥落:アサド大統領は逃亡

シリアの反政府勢力HTSは、11月末に立ち上がり、2週間にもならない、12月7日までにアレッポ、ホマ、ホムスを制覇した。その後、シリアの首都ダマスカスに向かい、本日12月8日早朝、抵抗を受けることなく、ダマスカスへの入場を果たした。

アサド大統領は、ダマスカスの空港から国外へ脱出したとみられているが、乗っていた飛行機がレーダーから消えており、墜落した可能性もあるとのこと。

HTSは、ダマスカスより南のダラア、スウェイダ、またイスラエルとの国境から見ることもできるほどに近い、クネイトラも反政府勢力が制圧している。

シリア各地からはシリア政府軍が撤退し、ホムスとダマスカスの間に位置するアル・クサイルでは、ヒズボラ戦闘員数百人が、少なくとも150台の装甲車で、撤退していく様子も目撃されていた。

こうしたことから、HTSは、54年続いたアサド一家による支配は崩壊したと発表。政治犯として捉えられ、拷問と処刑も行われていた悪名高いセドナや刑務所にいた数千人を解放した。

www.timesofisrael.com/syrian-rebels-take-homs-advance-into-damascus-as-hezbollah-ousted-from-key-border-city/

ダマスカスの人々は、「自由が戻ってきた」と、アサド独裁政権からの解放を喜んでいるようである。アサド大統領の写真を破って踏みつけ、アサド大統領の父親ハーフェズ・アサド氏の銅像を倒して、破壊する様子。

以下はアサド大統領宅に入る反政府勢力

2011年の内戦で、国外への避難を余儀なくされた数百万人のシリア人たちも、泣いて喜んでいるとのこと。

ゴラン高原クネイトラ制圧でイスラエル警戒

HTSは、イスラエルとの国境にあるクネイトラも制圧している。クネイトラは、ゴラン高原に位置しており、イスラエル国境からも見えるほどに近いところにある。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/syrian-rebels-say-they-have-taken-quneitra-near-border-with-israel/

シリアでの内乱が急速に展開していることを受けて、シリア人たちが国境を超えてこないように、ゴラン高原の国境周辺に戦車隊と歩兵を派遣した。土を盛り上げた“壁”も設営している。

www.ynetnews.com/article/rkxqpjme1l#autoplay

今後シリア、ヒズボラ、イランはどうなっていくのか

シリアの反政府勢力はHTSだけではない。添付地図にあるように、HTSは今回の反乱を決行したグループで、今は、首都ダマスカスを含む、シリア西側から、アサド政権が支配していたエリアすべてを支配に置いた形である。

HTS以外に、トルコの支援を受けてトルコ軍も共に支配している反政府勢力と、クルド人勢力の地域もある。これが、今後、だれがどう、運営していくかである。また内乱に戻る可能性もゼロではない。

アサド大統領が、ダマスカスから逃亡した後、シリア政府のモハンマド・ガジ・アル・ジャラリ首相は、ダマスカスに残留しており、国民の願う政治をおこなっていく用意があると発表した。

また野党代表のハディ・アル・バフラ氏は、「シリアの暗黒の時代は終わった」と述べた。これまでは、アサド政権に反対すると、すぐに逮捕されていたからである。バフラ氏は、復習や報復の動きはないし、人権侵害も起こっていない。人々の尊厳は守られている述べ、すべての宗派宗教の市民に対し、他者に武器を使わないなら、ダマスカスは平穏だと、落ち着くよう、呼びかけた。

HTSの指導者、アル・ジャラニも、イスラム主義を押し付けるつもりはなく、ただアサド大統領の独裁からシリア市民を解放したかったといっている。

今後、シリア人たちが、力を合わせて、民主的なシリアに変えていけるのかだが、まだまだ先行きはわからない。

ロシアとイランの言いなりであったアサド政権が崩壊し、シリアは、今や反政府勢力が支配する国となりつつある。ヒズボラとイランは重要な武器移送経路を遮断された形である。

今後ヒズボラだけでなく、イランも弱体化していくことも考えられるが、反政府勢力とイスラエルの協力については、サル外相がこれを否定する声明を出している。

また、今この時に、イランが、核兵器を完成させようとする動きも報じられており、もっと悪い事態に発展する可能性もまだ十分残されている。

イスラエルは、あらゆるシナリオに対処する用意があると言っている。