イスラエルをとりまく状況が緊張している中、先月に引き続き、北米より350人が、北米移住促進ユダヤ人組織(ネフェシュ・ベネフェシュ)の特別機に乗って、イスラエルのベングリオン空港に到着した。今回もほとんどが若い世代で、移民早々従軍する人が130人。
新移民たちは、「イランの攻撃が怖くはないか」との問いに、「イスラエルへの移住は私の夢だった。」と語っている。
イスラエルをとりまく状況が緊張している中、先月に引き続き、北米より350人が、北米移住促進ユダヤ人組織(ネフェシュ・ベネフェシュ)の特別機に乗って、イスラエルのベングリオン空港に到着した。今回もほとんどが若い世代で、移民早々従軍する人が130人。
新移民たちは、「イランの攻撃が怖くはないか」との問いに、「イスラエルへの移住は私の夢だった。」と語っている。
イラン、シリア、エジプト(シナイ半島)など日々緊張が高まっている中東情勢。20年前の湾岸戦争の時と違ってイスラエルは戦いに突入する準備ができていない。以下に今の現状と、イスラエルの準備状況についてまとめた。
1.イラン
核兵器疑惑の続くイランだが、いよいよ核弾頭(爆弾)完成に近づいていると言われる。イスラエルのネタニヤフ首相とバラク国防相は、これまでよりも強い言葉で、イスラエルがイランを攻撃する可能性について世界に発信している。
しかし今回、世界はこのイスラエルの警告にほとんど耳を貸していない。本当にイスラエルが攻撃を実行するとは考えていないのか・・・。しかし、攻撃しないとも言い切れず、微妙な状況が続いている。
なお、実際にイスラエルがイランへの攻撃を実行した場合、イスラエル国土は、イランからのミサイルの雨となり、イスラエルとアメリカが反撃するなど、地域をまきこむ戦争に陥ると思われる。
<どうしたらイランの核開発を止められるか>
これまでのところ、アメリカ、EUともかなり厳しい経済制裁を行っているが、イランの方針を変えるには至っていない。昨日、イランのタンカー36隻が船旗を無断でタンザニアと偽って原油の輸出をしていたことがわかった。経済制裁には抜け道もあるということである。
軍事攻撃について、専門家は、「たとえ今イランの核工場を爆破したとしても、その後に開発を再開するだけで意味がない。サイバー攻撃や科学者の暗殺で、開発を若干送らせることも可能だが、それも抜本的な解決にはならない。」と言っている。
イランの核開発を止める唯一の方法、それは、イランの最高権威者であるハメネイ師が自ら、止めることである。世界は、その道を模索しなければならない。
<対立の図式>
イラン、シリア、レバノン(ヒズボラ)ロシア 北朝鮮/ 対 /イスラエル、アメリカ、EU諸国、湾岸アラブ諸国
*そのイランだが11日、北西部でマグニチュード6.3の地震が発生。捜索活動が続いているが、これまでに227人の死亡が確認されている。1万6000人が避難所生活を強いられている。(2003年のイラン南部ボムの地震では3万人が死亡・イランは地震が多い)
2.シリア
シリアの内戦が混迷を増している。先週政府軍がアレッポの要所を奪回し、激戦となっている。ダマスカスでも大きな爆発があった。金曜には、ヨルダン領内でも衝突があったもよう。死者の合計はこれまでに21000人。
難民はさらに増え、現時点で15万人が周辺のトルコ、ヨルダン、レバノン、イラクの国境に設置されたキャンプで避難生活を送っている。最も難民を多く受け入れているのがトルコで、その数50000人にのぼる。アメリカは、これまでに難民支援金として8200万ドルを供出している。
シリアには、現在、アサド政権を支援するイラン革命軍兵士数千人、対する反政府勢力の中にはアルカイダの存在が目立ち始めている。時間がたつにつれて、シリアの外からのテロリストがより複雑で危険な状況を作り始めている。
アサド大統領がいよいよ追いつめられた場合、化学兵器を使う可能性が高いとして、イスラエルはじめ、ヨルダン国王もその懸念を表明している。
*シリアは1982年、現アサド大統領の父ハーフェズ・アサド大統領の時に、ハマ虐殺で、シリア市民(スンニ派)20000人を殺害している。この時、化学兵器を使ったいう報告もある。
また、シリアへの圧力を軽減するため、イランがヒズボラに命じてイスラエルを攻撃させる可能性もある。
<対立の図式>
イランと西側の対立と同様の対立の図式だが、シリア問題についてはトルコが大きく関わっている。現在、アメリカとトルコが協力して反政府勢力を支援しながら、アサド政権が倒れた後の対処について協議している。
<携帯を通じた警報システム>
イランからのミサイル、核弾頭、シリアからの化学兵器など、いつ何時イスラエル国土を巻き込む戦闘も否定できない現状を受けて、イスラエル国防軍は、全市民に携帯を通じて危険を知らせるシステムを構築中で、今週いっぱいテストが行われる。
ガザ周辺地域ではすでにこのシステムが使われており、国防軍から、シェルターに入れという緊急指令の他、いつまでシェルターで過ごすのか、シェルターから出てもよいのかなどの通知が市民に配信されている。
こうした通知はショックが大きく、パニックになってもいけないので、17才以下の子どもには配信されない。大人が受信し、それぞれの親が子どもを守るシステムだ。
<なおざりのシェルター(防空壕)>
かつては、すべての家屋の近くにシェルター(防空壕)を作ることが義務だった。しかし、平和が続くと、その規制がゆるみ、シェルターのない家が増えている。
全国的に見ると、約170万人、人口の40%がミサイル攻撃や空襲があっても入れるシェルターを持っていない。また、町の経済力によってシェルターの配備に差が出ていることがわかった。貧しい町ほどシェルターが完備されていない。
またシェルターがあっても物置になっており、実際には使えないシェルターも多い。(Yネットニュースによると、現存するシェルターの60%がこの状態)
<テルアビブ>
ユダヤ人が世界一集中して住んでいるテルアビブだが、ハアレツ紙によると、人口約40万人のうち、シェルターに入れるのはその1割の4万人しかないことがわかった。テルアビブ市が、規制をなおざりにしてきたため。
またテルアビブ市内には公共のシェルターが約400カ所あるが、係官が回って鍵を開けるだけで24-48時間かかるという調査結果が出た。これではいかなる攻撃にも間に合わない。
<ガスマスク不足>
1991年の湾岸戦争の時は、ほぼ全市民にガスマスクが配布され、イスラエル軍からは、いざ化学兵器が撃ち込まれた場合にどう動けばよいのか、徹底したマニュアル指導が行われた。そのため、実際にスカットミサイルが着弾した時も市民はあわてずに密閉した部屋に入り、パニックにはならなかった。
ところが現在、シリアやイランからの同様の攻撃の可能性がある中で、ガスマスクを持っている市民は60%。これから全市民に配布するだけの、ガスマスクを製造、配布するのに2-3年はかかると計算されている。*ガスマスクは海外から注文できず、国内で生産するしかないため。
今、もし本当に戦争になったら、イスラエル市民の多くが逃げる場所もガスマスクもないというのが現状である。
シナイ半島で武装組織に16人の警察官を殺害され、本格的軍事的にシナイ半島の治安に乗り出しているエジプト。武装組織を空爆し、多数のテロリストを逮捕している。
またガザの地下トンネルを使ってシナイ半島に出入りしていることがわかり、エジプトはトンネルの閉鎖を行っている。こうした強行とも言える徹底した軍事行動により、大統領の力を誇示し、「救世主のムルシ(大統領)」のイメージが打ち出された形となった。
<元軍最高評議委員会・タンタウィ国防相を更迭>
元ムバラク政権下で働き、政権が倒れたあとは軍最高評議会として国を治めたタンタウィ氏。いったん国防相に任命したムルシ大統領が昨日、突然同氏に対して定年退職するよう命じた。タンタウィ氏とともに軍のNO2も更迭された。タンタウィ氏は、続けて大統領アドバイザーになるが、実質は更迭である。
<大統領に権威を与える新憲法を発布>
大統領の権威を制限する前の憲法は、上記軍最高評議会が暫定的に発布した物だった。ムルシ大統領はタンタウィ国防相の更迭とともに、前の憲法を廃案とし、新しい憲法を発布した。
シナイ半島の混乱に乗って、ムルシ大統領がエジプト政権を一掃した形である。イスラエルは、ムスリム同胞団の背景を持つムルシ大統領とエジプトの動きを注意深く見守っているところで、そろそろムルシ大統領との会談をするべきではないかとの意見も出ているところである。
シリアの首都ダマスカスの大学に留学中だったドルーズ族学生約100人のうち、80人が7日、ゴラン高原の自宅に無事帰還した。(2012年7月31日の記事参照)
学生たちはダマスカスの様子について、全員が「メディアは実際の10%ぐらいしか報道していない(もっとひどいということ)」と語っているという。
生還した学生たちは非常に恐れており、PTSD(心的外傷ストレス症候群)に陥っている者もある。ダマスカスにはまだ20人ほどが残っていることになるが、自ら残って反政府軍と共に戦っている者もいる。
<シリア内戦その後>
シリアでは、ダマスカス、アレッポの2大都市を中心に激しい戦闘が続いている。アレッポでは、政府軍が戦車を含む地上軍を送って血みどろの戦いになっている様子。
一昨日、アサド大統領は、イラン政府高官のジャリリ氏と共にいるところをテレビで放映し、イランとの深い友好関係をアピールした。しかし、シリアでは一昨日、ヒジャブ首相が離反し、アサド政権に大きな打撃となったところである。
4日、シナイ半島、ガザ国境ラファ付近で、イスラム武装勢力*に警察官16名を殺害されたエジプト。ムルシ大統領が、無法地帯化しているシナイ半島の安定化に乗り出した。
*この武装勢力は、この直後奪った輸送車でイスラエルでのテロを実行しようとして国境を越え、イスラエル空軍に阻止されている。
<シナイ半島の武装勢力へ空爆>
まずは、昨日からガザとエジプトの間の密輸トンネルを閉鎖。今日8日には、ラファ付近、空軍を使ってシナイ半島北部を空爆した。これにより、武装勢力20-23人(情報によっては30人)が死亡している。
エジプトが、シナイ半島、イスラエルとの国境付近で本格的な軍事行動に出るのは1973年にイスラエルと和平条約を結んで以来のこと。
<諜報機関チーフとシナイ半島知事を解雇>
今回警察官が16人殺害された事について、エジプトの諜報機関長官は、数日前にイスラエルから警告を受けていたことがわかった。
長官は、情報を得ていたことを否定せず、「まさか、同じイスラム教徒が、ラマダンの断食明けの食事を取っている最中の警察官を襲うとは思わなかった。」とミスを認めた。
これを受けてムルシ大統領は、この諜報機関長官、ならびにシナイ半島知事を解雇した。シナイ半島には、暴動対処になれている部隊を派遣するよう、タンタウィ国防相に要請した。
先月、テルアビブでモシェ・スリマンさん(57)が政府の福祉政策に抗議して焼身自殺したが、その2週間後に、障害のある元イスラエル軍兵士が同様の焼身自殺を試み、死亡した。
その後精神病院で1人、今日また70才の女性が政府に抗議して焼身自殺をはかった。あとの二人は重傷となり、病院で手当を受けている。
昨日発生したシナイ半島でエジプト警官16人を殺害し、APC(軍用車両)を2台を強奪してイスラエルに入ろうとしたテロ事件。犯行グループは500キロもの爆発物を持ってイスラエル領内2キロの地点まですすんでいたことがわかった。
車両は、空軍によって爆破されたため、市民に対する大きなテロは未然に防がれたことになる。作戦はわずか15分で終了しており、イスラエル軍のガンツ参謀総長は、現場にいた兵士らの的確な対処を高く評価した。
しかし、今回の事件でシナイ半島がいかに無法地帯になったのか、より明確となり、イスラエル軍は続けて警戒する。
<エジプトムルシ大統領の対処>
エジプトの警官16名が死亡した今回の事件は、エジプトのムルシ新大統領にとっては大きなテストとなる。ムルシ大統領は犯行グループを激しく非難。エジプト警備隊が殺害されたガザとの国境ラファを包囲して、付近にいるジハードのメンバーの逮捕を試みている。
<だれがなんの目的で???>
今回のテロ未遂事件は、だれの犯行か、何の目的かがよくわかっていない。ムスリム同胞団は、エジプトとガザ地区の関係を悪化させようとするイスラエルの陰謀だとイスラエルを非難した。無論、イスラエルはこれを否定。
今回のテロは国際ジハード(聖戦)の犯行と考えられており、イランやヒズボラ関係ではないとみられている。ではだれの犯行かということになるが、イスラエルのバラク国防相は、シナイ半島が本当に無法地帯になってきていること、エジプトのムルシ大統領がシナイ半島の現実に目を向けるきかっけになってほしいとのコメントを出している。
昨日、シリアのヒジャブ首相がアサド政権から離反。自由シリア軍に助けられて、家族と共に国外へ脱出した。現在、どこにいるかは不明だが、ヒジャブ首相は、月曜、アルジャジーラを通じて、アサド政権から離反したことを表明した。
CNNによると、ヒジャブ首相の任命はわずか2ヶ月前であり、彼の離反はアサド大統領の面目をづぶすが、実質アサド政権に及ぼす影響は少ないとみられている。
ニュージーランドのトンガリロ山が115年ぶりに、なんの前触れもなく突然噴火した。火山灰はニュージーランドの北部に広範囲にわたって降っており、航空機などに影響が出ている。
5日午後8時(日本時間6日午前2時)、グローバル・ジハーディスト(アルカイダ関係のイスラム過激派で聖戦主義者・・イスラムのために殉教する者)のグループが、シナイ半島北部ラファ付近を警護していたエジプト警備隊を、RPGミサイルなどで襲撃し、15名を殺害。
エジプトのAPC(兵士運搬軍用車)2台を強奪して、イスラエルとの国境カレン・ショムロン検問所へ移動し、警備中のイスラエル軍に対して対戦車砲などで攻撃を開始した。イスラエル軍が応戦し、1台は爆破したが、1台はイスラエル領内へ侵入した。
エシュコル地域などイスラエル南部ガザ周辺住民には、一時外出禁止の指令が出されていたが、まもなくイスラエル空軍が侵入車両を空爆して、ジハーディストら7人はすべて死亡した。イスラエル市民、兵士らに被害はなかった。
<再燃するガザ情勢>
これに先立ち、イスラエル空軍は、ガザへのピンポイント攻撃を行い、1人(19才)が死亡した。イスラエル軍によると、ガザで死亡したのは、ジハーディストで、イスラエルに対するテロを計画中だったという。
その後まもなく6時ごろ(日本0時ごろ)、イスラエル南部スデロットなどに連発したミサイルが着弾している。
上記事件の2日前の4日、ゴラン高原で、鉄条網を断ち切ってイスラエルへ侵入しようとしたシリア人1人がいた。イスラエル軍が発砲し、負傷している。
シリアではアレッポでの激しい戦闘で、町の60%を反政府勢力が制圧していると言われていたが、現在、2万人の政府軍がアレッポを包囲しているもようで、今後、ゴラン高原へのシリア人侵入もさらに増えるとみられる。
イスラエルが恐れるのは、南部シナイ半島からジハーディストが侵入してきたように、北部ゴラン高原からも、シリア内戦の混乱に乗じて、テロリストが侵入してくるのではないかということである。
<ゴラン高原のシリア側がシナイ半島と同様の無法地帯になりつつある>
今回、シナイ半島からジハーディストが侵入してきたが、これは、シナイ半島が、ムバラク政権が倒れた後、無法地帯と化し、今やアルカイダなどあらゆるイスラム過激派の潜伏地帯となった結果である。
シリアについても、アサド政権が倒れた後、ゴラン高原に接する地域が無法地帯となり、イスラム過激派のイスラエル攻撃の拠点になるのではないかとイスラエルは警戒を強めている。