解放されたアレッポでシリア人クリスチャンたちがクリスマス準備 2024.12.8

Ynetによると、反政府勢力に解放されたアレッポでは、開放後24時間以内に、1日(日)を迎え、キリスト教とたちが、礼拝を捧げることができた。

アレッポには、シリア正教、ギリシャ正教、アルメニアカトリックなど11の宗派と30の教会があり、信者は約2万人いる。

記事によると、アサド政権が崩壊したあと、反政府勢力が、キリスト教徒に宗教の自由を保証したとのこと。このため、クリスチャンたちが、ツリーを飾るなど、クリスマスの準備を始めているとのこと。

アレッポ出身でキリスト教の法律家イブラヒム・ハンナ・マラキ氏は、アサド政権に反発したことから逮捕、投獄され、その後逃亡していたが、今年のクリスマスには、故郷に戻ることを考えているという。

www.ynetnews.com/article/rkof9dxnjx

メルボルンでシナゴーグ放火:反ユダヤ主義事件4倍に急増中 2024.12.8

メルボルン郊外でシナゴーグ放火

オーストラリアのビクトリア州メルボルン郊外で、12月6日(金)早朝4時すぎ、アダス・イスラエル・シナゴーグが放火され、消防車17台、消防士60人で消火にあたったが、建物は燃え上がって大規模に破損した。

シナゴーグ内部とトーラーの巻物も燃えてしまった。火災当時、シナゴーグの中で祈っていたユダヤ人はまだ少数だったので、男性1人が軽い怪我をしただけだったが、あと1時間遅かったら、数百人が被害に遭っていた可能性がある。

このシナゴーグは、メルボルンでは最大級の大きなシナゴーグだった。

放火犯は、マスクをしていた男たちで、まだ逮捕されていない。事件を受け、アルバネーゼ首相は、「これは、反ユダヤ主義暴力だ。オーストラリアにあってはならないことだ」と犯行を批判した。

いわゆる会堂管理者にあたる、ベンジャミン・クライン氏によると、このシナゴーグは、1995年にも放火されていた。当時子供だったクライン氏は、ホロコーストサバイバーの祖父と、焼けこげたシナゴーグに立っていたことを覚えていると語っている。

クライン氏は、またシナゴーグを立て直すと言っている。

オーストラリアのニュースによると、シナゴーグ関係者たち数百人が集まって、こうした行為に負けずに、支え合っている様子が伝えられている。

放火の数時間後ユダヤ人パン屋襲撃も:昨年10月7日以来反ユダヤ主義暴力4倍

シナゴーグ放火の数時間後、メルボルンのユダヤ人パン屋で、ハンマーを掲げた男が逮捕された。パン屋は、ホロコーストサバイバーであるメンデル・グリックさんが1960年に設立した店で、ユダヤ人のビジネスの象徴のような存在だった。

オーストラリアでは、昨年10月7日以来、反ユダヤ主義暴力が4倍になっているという。政府は、昨年から1600万ドルを費やして、対処しているが、あまり効果はあがっていないようである。

オーストラリアでは、現在、シナゴーグやユダヤ人関係施設周辺の警備を強化している。

ネタニヤフ首相がオーストラリアの政府を批判で政治問題に発展の様相も

シナゴーグへの放火について、事件当初、アルバネーゼ首相は、これは明らかに反ユダヤ主義暴力だと批判した。

しかし、その後、ネタニヤフ首相は、これは反ユダヤ主義暴力だと批判するにとどまらず、「現在の労働党(左派)政権が反イスラエルの態度をとっているからだ」と政府を批判した。

ネタニヤフ首相が、そう言うのは、オーストラリアが先週、イスラエル人の右派より政治家であるシャキード氏を「不和と先導する」として、入国を拒否したことや、国連総会が、イスラエルは西岸地区から撤退して、占領を止めるべきとの採択を行った時、オーストラリアは賛成票を投じたからである。

しかし、オーストラリアでは、これに反発が噴出。今後のイスラエルとオーストラリアの関係を懸念する声も高まっている。

野党や、親パレスチナ勢は、これは、「オーストラリア市民に対するテロ事件というべきだ。だから、オーストラリアにあってはならないことなのだ」として、反ユダヤ主義だからよくないのではないと、反発している。

なお、オーストラリアでは、シドニーなどで、反イスラエル、親パレスチナデモが毎週、行われている。

www.timesofisrael.com/melbourne-synagogue-sustains-severe-damage-in-predawn-attack-by-masked-arsonists/

シリア反政府勢力急激台頭でアサド政権崩壊危機:イスラエルへの影響は?2024.12.7

シリア反政府勢力がアレッポとハマを制覇・ホムスへ前進

11月30日(土)、シリアとトルコの国境に近い、イドリブ県で、反政府勢力が立ち上がり、ロシア軍とイラン軍の援軍を送る中、シリア政府軍を撃破して、3日(水)には、シリア第二の都市、アレッポを制覇した。

イギリスのシリア人権監視団体によると、この戦闘で、311人(反政府勢力183人、政府軍100人、民間人28人)が死亡した。

反政府勢力は、続いて南部へ向かい、4日(水)には、ハマと制覇。アサド大統領の銅像が倒されている。住民の歓迎を受ける様子が伝えられていた。

 

Residents take to the streets of Hama, to welcome anti-government fighters after they took control of Syria’s west-central city on December 5, 2024. (Photo by Bakr Alkasem / AFP)

5日(木)には、さらに40キロ南、シリア第3の都市、ホムスに向かっている。これを防ぐために、ロシア軍が、ホムスに続く道路を激しく空爆しているとのこと。

アレッポ、ハマに続いてホムスも失えば、ダマスカスにいるアサド政権は、地中海へのアクセスを失い、沿岸ラタキアや、タルススにある海軍と空軍基地を失うことになる。アサド政権は、急速に崩壊の危機にある。

www.bbc.com/news/articles/c2ex7ek9pyeo

予想外の速度で、アサド政権が、反政府勢力に敗北している原因として、考えられることは、これまで、アサド政権を支えていたロシアが、ウクライナとの戦争で、シリアを守りきれなくなっていることが考えられる。

加えて、イスラエルとの戦闘でヒズボラが、機能不全に近い状態になったこと。またここ数年、イスラエルは、シリア領内のイラン関連施設の破壊を大胆に行っており、首都ダマスカスとその空港にも攻撃が及び、アサド政権が、かなり弱体化していたことが考えられる。

イスラエルへの影響と対策:シリア国境に壁・シリアにある化学兵器注視

ゴラン高原のIDF IDF

こうなると、ゴラン高原の国境を超えて、シリア政府軍やシリア人がイスラエルになだれ込んでくる可能性がある。

イスラエル軍は、ゴラン高原の国境に、対戦車塹壕を掘るとともに、壁を設立する様子が伝えられている。ヨルダンもまた、戦火が及んでくることへの対処を始めている。

また、イスラエルの懸念は、シリア領内にある化学兵器である。これが、イランはじめ、反イスラエル勢力の手に渡って、イスラエルに向けて使われることは、絶対に避けなければならない。イスラエルは、情勢を見極めており、必要であれば、シリア内にあるうちに、これを破壊することも示唆している。

しかし、もし化学兵器を爆破したら、シリアにいる人々がその影響を受けることになるだろう。イスラエルは動きを注視している。

www.timesofisrael.com/idf-bolsters-forces-on-syria-border-as-rebels-appear-set-to-capture-homs/
www.ynetnews.com/article/b1yexu1v1l?minutetv=true
www.jpost.com/middle-east/article-831951

イランは共通の敵?反政府勢力(HTS)がイスラエルのイラン攻撃支持を表明

こうした中、今、シリアで立ち上がっている反政府勢力は、イスラエルに対し、イランは共通の敵だとして、イランへの攻撃を支持すると言っている。

今、シリアで急進的にアレッポなどを制覇している組織は、HTS(ハヤット・タハリール・アル・シャムス)と呼ばれる組織で、指導者は、アブ・ムハンマド・アル・ジュラニ(42)である。以下は、CNNによるアル・ジュラニへのインタビュー

以下は、Times of Israelが、電話インタビューした記事からの要約である。

www.timesofisrael.com/syrian-rebel-commander-urges-israel-to-support-uprising-strike-iran-backed-forces/?utm_campaign=most_popular&utm_source=website&utm_medium=article_end&utm_content=1

HTSは、アルカイダのシリア支部として設立された、シリア人による、スンニ派のジハード系組織である。イドリブ県では、国連に人権侵害も指摘されており、アメリカは、アル・ジュラニに賞金をつけて指名手配している。

しかし、HTSは、アルカイダとは2016年に決別し、穏健派であると主張している。

また、アル・ジュラニは、海外が指摘するような過激派は、シリア人ではなく、海外から持ち込まれたものだと主張。

(Photo:Ghaith Alsayed / AP, Reuters)

今回アレッポなどを制覇したことについても、イスラム主義を持ち込むことが目的ではなく、ただ、住民をアサド政権やイランの支配から解放することだと言っている。

アル・ジェラニは、アサド政権が崩壊した後は、シリアを民主国家にするビジョンを語っている。確かにHTSがアレッポを制覇すると、住民たちはこれを歓迎し、その後、パン屋などが回復する様子も伝えられている。

, on February 7, 2023. (Omar HAJ KADOUR / AFP)

アル・ジェラニは、「敵は、アサド政権と、ヒズボラ、イランだ」と述べ、イスラエルを含むそれ以外の組織に敵対するつもりはないと言っている。また、イスラエルがヒズボラを弱体化したことに、高い評価も表明している。

こうしたシリア人による反政府勢力には、まずFSA(自由シリア軍)があるが、こちらは、トルコの支援を受け、その宿敵であるクルド人とも戦っている。

しかし、アル・ジェラニは、HTSは、トルコの支援も受けていないと述べ、ただシリア人のためにだけ戦っていると言っている。イスラエルはクルド人とは協力する立場である。

アル・ジェラニがイスラエルとコンタクトをとっているかどうかについては、返事はなかったが、イスラエルはこれを否定している。

しかし、アル・ジェラニは、シリア領内にいるイランが、イスラエルを攻撃する準備はしているので、イスラエルはこれを攻撃すべきだと言っている。

こうした中、NYTは、最新の動きとして、イランが、軍指導者たちをシリアから脱出させる動きがあると報告している。テヘランから飛行機で脱出する者、ラタキアから船で脱出する者もいるとのこと。今後の動きに注目したい。

www.nytimes.com/2024/12/06/world/middleeast/iran-syria-evacuation.html

*シリアのアサド政権と反政府勢力の対立について

シリアは、1946年にフランスの支配からシリア・アラブ共和国として独立。その後も動乱が続いたが、1970年からは、バアス党のハーフィズ・アル・アサド大統領が治める国となっていた。

イスラエルとは、その後、1973年に、水問題をきっかけに、ヨム・キプール戦争に発展。以後、シリアとイスラエルは、ゴラン高原をはさんで睨み合う関係となった。2000年に、ハーフィズ・アル・アサド大統領が死亡した後は、次男のバッシャール・アサド大統領が就任した。

それから約10年後の2011年、中東では、反政府運動が次々に伝播していく「アラブの春」が発生し、シリアのアサド政権も崩壊直前となっていた。これを助けたのが、ロシアであった。

ロシアの支援で、アサド政権は一気にまきかえすこととなり、シリア北部のアレッポを中心とした地域にいた反政府勢力を鎮圧した。

2014年には、イスラム国(スンニ派テロ組織)が出てきたが、ロシアとイラン、イラン傀儡のヒズボラ(シーア派テロ組織)も戦闘に出て、アサド政権は危機を乗り切った。しかし、これで、シリアのアサド大統領は、ロシアとイラン、ヒズボラに頭が上がらなくなる。

それから約10年、イランは、アサド政権の元、シリア領地を通過して、レバノンのヒズボラへの軍事支援を続けた。

イスラエルは、これを阻止するため、シリア国内にあるイラン関連地点や、武器輸送経路への攻撃と破壊をここ何年も行なってきた。この1―2年は、首都ダマスカスとその空港をも遠慮なく攻撃するようになっていた。シリアへの打撃は、すでに積み上がっていたといえる。

石のひとりごと

なんともややこしい感じだが、HTSとイスラエルは協力できるのか否か。

今のところ、イスラエルのメディアは、懐疑的な様子でアル・ディラニについての記事を出している。まだまだ様子を見ないといけないだろう。

ヒズボラと停戦になったはいいが、また新たな問題の登場である。

個人的には、地図上で、シリア南部にいるアメリカがどうなるかが気になった。

トランプ次期大統領は、この部隊を撤退させてしまうかもしれない。そうなったら、ロシアとイランを含む部隊がイスラエルになだれ込む、ゴグ・マゴグの戦争も可能になってしまうのではないだろかと思ったりする。。

 

 

イランがヒズボラ再建の動き・IDFシリア・レバノン国境攻撃 2024.12.7

イランのアラグチFM AFP

アサド政権が急速に崩壊に向かう中、イスラエルの最大の懸念は、イランである。

イランのアラグチ外相は、反政府勢力が台頭する中、12月1日(日)、ダマスカスを訪問。アサド大統領と会談。イランは、断固としてアサド政権を支持すると表明していた。

www.euronews.com/2024/12/02/iran-fm-visits-assad-in-damascus-pledges-support-in-countering-surprise-offensive

ただ、最新の情報によると、イランが軍司令官たちをシリアから脱出させているとの情報もあり、この約束がどうなったのかはわからない。

いずれにせよ、イスラエルにとっては、イスラエル絶滅を言い続けているイランが、シリアの混乱に乗じて、どう出てくるかが最大の懸念である。

イスラエルは、12月5日(木)、レバノンとシリアを結ぶ。アリダ検問所を空爆した。イランがヒズボラに武器を搬入して、その戦力を復帰させる動きがあるとのこと。

 damage to the Arida Crossing between northern Lebanon and Syria after overnight Israeli airstrikes, December 6, 2024. (SANA)

攻撃はかなり激しく、検問所はもはや機能できないとのこと。写真は、シリアの国営メディアによるもの。

イスラエルは、ヒズボラと停戦中ではあるが、ヒズボラに武器が供与される動きがあれば、すべて武力で阻止することを継続すると言っている。

ヒズボラからのイスラエルへのロケット弾はほぼなくなっているが、南レバノンでは、まだロケット弾発射施設が発見され、単発の攻撃の応酬が、まだ時々続く状況にある。IDFはまだ撤退を開始していない。

www.timesofisrael.com/idf-strikes-syria-lebanon-border-crossings-used-by-hezbollah-to-smuggle-arms/

イスラエルとヒズボラ・イランのサイバー戦争・1日数千件 2024.12.7

戦争は、陸海空軍による実質の戦闘だけではない。目には見えないサイバー戦争が繰り広げられている。レバノンからは、ハッカー集団が、イスラエルの重要なインフラなどを標的にした攻撃を続けている。

www.ynetnews.com/business/article/bjytijyqyx

イスラエルへの攻撃

イスラエル北部では、ジブ医療センターがハッキングされた。国家案戦保障省のウェブサイトもハッキングされた。法律事務所や、商業施設へのハッキングも発生している。

2020年には、イスラエルの給水システムがハッキングされ、あやうく、排水される水の塩素濃度を上げられるところ、阻止するといった事件もあった。

(photo credit: JIM HOLLANDER / POOL / REUTERS)

また2023年には、イスラエル南部ディモナにある原子力発電所が、「アノニマス」と呼ばれるグループにハッキングされ、重要な情報が盗まれた。幸い、重大なことにはならなかったが、ITに強いイスラエルとしては、屈辱だった。

このほか、首相官邸に関わる件が報告されているが、首相官邸へのリモート接続のハッキングが4900万回、サービス拒否攻撃が100万回、悪意あるリンクを含む電子メールが600万回とのこと。

こうした、サイバー攻撃は、ハマスとの戦争勃発以来、それ以前の7倍に増え、1日数千回にも上っているという。

今の所、まだ重大な結果にはなっていないが、イランは、まだその能力をすべて使っていないとみられており、警戒が続けられている。

今後、特に警戒されるのは、発電所、製油所、銀行などへのハッキング。阻止できなければ、社会がたちまち大混乱に陥る。

政府機関や企業への攻撃で情報が盗み出されることや、ソーシャルメディアを通したプロパガンダ、すでに問題となった、情報漏洩のための闇バイト募集も問題である。

ヒズボラ・イランへの攻撃

一方で、ヒズボラ、イランの方でも深刻なサイバー攻撃にみまわれている。2020年、イランでは、コンピューターウイルスの影響で、核の遠心分離機が故障した。イスラエルとアメリカによるものと考えられている。こうした死傷者を出さない作戦を、「ピンクボタン」と言う。

先月のポケットベル爆発では、多数のヒズボラ司令官たちが死傷したが、これは、遠隔操作による、イスラエルのサイバー攻撃である。こうした1回だけの攻撃で終る作戦を「レッド・ボタン」という。

イスラエル軍には、こうしたサイバー戦争に対処する、IT天才の兵士たちによる部隊8200がある。また、Ynetが紹介するのは、テルアビブのシンベト(国内諜報部)本部にある、「ハオルガン」と呼ばれるセンター。

ハオルガンは、ヒズボラとイランに対するサイバー攻撃を担当。24時間365日、休みなしで稼働している。

目に見える戦争だけでなく、目に見えない戦争も日夜、繰り広げられているということである。

ガザで人質の兵士遺体で発見保護:人質の予想以上に劣悪な環境に愕然 2024.12.5

カイロで人質交渉の中人質兵士の遺体をガザで発見・保護

カイロでは、エジプトとアメリカが主な仲介者として、人質解放と停戦の関する交渉がはじまっているようで、本日、イスラエルの代表団がカイロ入りするといったニュースが出ている。

そうした中、12月4日(水)、イスラエル軍のハガリ報道官が、イスラエル軍が、ガザでの作戦実行中に、イスラエル人の人質、イタイ・スビルスキーさん(38)の遺体を保護したと発表した。

ガザでは、まだ戦闘が続いており、作戦上、どこでどのようにイタイさんの遺体が発見されたかなど詳細は発表できないとのこと。

それによると、イタイさんは、テルアビブ在住だが、昨年10月7日、仮庵の祭の最終日、シムハット・トーラーの週末を、キブツ・べエリの両親とともに過ごしていて、ハマスの襲撃に遭遇していた。

イタイさんは、拉致されてから、午前10時ごろに母親に最後の連絡をしていた。その後、イタイさんの両親、オリットさんとラフィさんも殺され、埋葬も終わっている。イタイさんは独身だが、兄弟が3人のこっており、大勢の甥や姪に愛されていたという。

January 14, 2024. (Screenshot combo)

イタイさんは、今年1月のハマスのビデオクリップに、ノア・アルガマニさんとヨシ・シャラビさんとともに、引き出されていた(右端)。その後、ノアさんは救出され、ヨシさんは、イスラエル軍の誤爆で死亡したと見られている。

今もガザにいる人質は、遺体になっている34人を含め、96人となった。

www.timesofisrael.com/body-of-slain-hostage-itay-svirsky-recovered-from-gaza-by-troops/

8月に保護された人質6人の遺体から見える地獄図

ハガリ報道官は、また、今年8月にハンユニスで、イスラエル軍が、遺体で保護した人質6人、アレックス・ダンツィグさん(75)、ヤゲフ・グシュタフさん(35)、ハイム・べエリさん(79)、ヨラム・メッツガーさん(80)、ナダフ・ポプウェルさん(51)、アブラハム・ムンダーさん(78)についても、分析の結果を発表した。

6人は、人が立つこともできないような高さで、長さは100メートルといった狭い地下トンネルで、封鎖状態に置かれて死亡していた。

ハガリ報道官によると、6人が発見されたトンネルは、2月にイスラエル軍が空爆した地点から100〜120メートルしか離れていなかった。

そのため、イスラエル軍の空爆後に、保護担当者たちに復讐として銃殺された可能性が高い。銃殺されていなかった場合でも、この狭い空間の中で封鎖状態にあることから、窒息死かそれに類する形で死に追いやられていたと推測されるとのこと。

6人の死が、イスラエル軍による空爆となんらかの関係があることを認めた形である。

www.timesofisrael.com/idf-finds-slain-hostages-were-likely-shot-by-captors-in-february-amid-israeli-airstrikes/

石のひとりごと

世界はイスラエル軍によるガザで、大勢の子供達が死んでいると非難するが、ハマスの残虐性を考えたことがあるのだろうか。

今も、人質になって、生きている人々がどんな地獄状態に置かれているかを考えると、気が遠くなる。交渉が行われている今、生存する人質を思い、解放をとりなす時である。

イスラエル軍が、自らの責任、失敗の可能性も覆い隠すことなく、ごまかしもしないことは、この発表からもわかる。隠蔽が不可能な国であることからも、この国が創造主である主のもとに国であることを思わされる。

アメリカ国籍IDF兵士人質死亡確認:トランプ次期大統領の人質解放への最後通告とその影響 2024.12.5

アメリカ国籍IDF兵士人質の死亡確認

イスラエル軍は、12月2日(月)、これまで人質となり、生きていると信じられていた、戦車小隊指揮官オメル・マキシム・ノイトラ大尉(21)が、昨年10月7日の時点で、ハマスとの戦闘中に死亡し、遺体として人質になっていることを確認したと発表した。

ノイトラ大尉は、アメリカ国籍でニューヨーク出身。両親はアメリカにいる中、一人でイスラエルに移住し、イスラエル軍に従軍していた。しかし、大学に行くことになっていたため、もうすぐアメリカに帰る予定だったという。

ノイトラ大尉は、3の兵士、シャキード・ダハン軍曹、ニムロド・コーヘン軍曹、オズ・ダニエル軍曹とともに、ナハル・オズで警備にあたっていて、ハマスの襲撃を受けていた。

ダハン軍曹、ダニエル軍曹はすでに死亡が確認されている。あと残るのは、コーヘン軍曹だが、父親は、生きていることを信じていると語っている。

ノイトラ大尉死亡の発表は、ハマスが、やはりアメリカ国籍を持つ人質、イダン・アレクサンダーさん(20)の様子をビデオで公表した2日後だった。

人質の中には、多数のアメリカ国籍の人も含まれているということを忘れてはならない。

トランプ次期大統領のハマスへの人質解放への最後通告とその後の変化

ノイトラ大尉死亡確認が発表された数時間後、アメリカのトランプ次期大統領は、「私が大統領に就任する1月20日までに、人質をとらえている者は、全員釈放せよ。そうしないなら、こんな残虐行為をしている者は、「地獄の苦しみ」を受けることになる。今すぐ人質を解放せよ。」と、最後通告的な脅迫的な発言を発表した。

www.timesofisrael.com/trump-warns-there-will-be-all-hell-to-pay-if-hostages-arent-released-by-jan-20/

トランプ次期大統領の就任まではあと6週間を切っている。それまでに人質解放に持ち込めるのか。エジプトで行われている交渉は、進展がまだほとんど報告されていないが、変化が見え始めている。

1)次期米中東特使スティーブ・ウィトコフ氏活動開始:来週イスラエル代表がカイロへ

次期トランプ政権で、今のホフスタイン氏に代わって中東特使となるスティーブ・ウィトコフ氏が、11月末、イスラエルでネタニヤフ首相と人質家族に面会。

続いてカタールを訪問して、アル・サーニー首相と会談した。

またウイーンで、イスラエルのこれまでの交渉で、イスラエル代表だった、モサドのバルネア長官とも会談した。チャンネル12が報じたところによると、イスラエルの代表団が、来週、カイロ入りする予定とのこと。

*トランプ次期大統領は、人質に関する交渉を担当する人物として、これまでにアブラハム合意など様々な中東での交渉役を担当した経験をもつビジネスマン、アダム・ボーフラー氏とを指名する意向も表明している。

www.timesofisrael.com/trump-taps-businessman-and-former-abraham-accords-negotiator-as-hostage-point-man/

2)カタールの仲介再開:交渉場がカイロからドーハに戻る見通し

アル・サーニー首相January 14, 2024. (Screenshot combo)

カタールは、先月、ガザ外ハマス指導者たちを首都から追放し、いっこうに進展しない交渉の仲介役を降りると宣言していた。しかし、首都ドーハにある、ハマスオフィスは温存しており、完全に関係を切ったわけではなかった。

ウィトコフ氏との会談後、カタールは、ハマスとイスラエルの交渉役に復帰し、会談は再びドーハで行われる可能性が高いとみられている。

交渉は、今後45日から60日の間、停戦に持ち込み、段階を追って人質が解放され、イスラエルがガザから撤退する方向ですすめられている。

なお1月20日までは、まだバイデン政権である。トランプ氏のチームと、バイデン政権チームの協力はあるのかどうか、注目されている。

www.timesofisrael.com/qatar-said-resuming-gaza-mediation-role-as-trump-envoy-pushes-for-deal-by-jan-20/

トランプ氏が戻ってくることでハマスの読みが崩れはじめた:TOIラザー・ベルマン氏分析

先週、泣きながらビデオに出ていた人質イダンさんの家族に会っていたトランプ氏January 14, 2024. (Screenshot combo)

Times of Israelの分析家、ラザー・ベルマン氏によると、トランプ氏が次期大統領に再登場してくることで、「シンワルの3つの賭け」とも言われた、3ポイントで、ハマスの読みが大きく崩れ始めている可能性があるとみている。その三点とは以下の通り。

①ハマスとヒズボラと2局面での戦闘で、イスラエルが望まぬ停戦に応じるという賭け

シンワルは、イスラエルに2局面で、長く戦闘が続くことで、停戦を余儀なくされると言う読みを持っていた。

②ICC(国際刑事裁判所)のネタニヤフ首相への逮捕状発行で、国際社会から停戦圧力がかかると言う賭け

シンワルは、ICCからのネタニヤフ首相への逮捕状発行で、イスラエルが国際社会から大きな停戦への圧力をかけられることになり、ハマスが残留して、ガザ復興の役割を担う立場に立つと言う読みを持っていた。

③イスラエル国内からの圧力でネタにタフ首相が停戦に応じると言う賭け

シンワルは、イスラエル国内で、人質解放にむけた停戦を求める声が高まっていることから、ネタニヤフ首相はこれに応じるしかなくなるとの読みを持っていた。

しかし、この読みはほぼすべて外れた様相にある。ヒズボラは、ナスララ党首はじめ指導者をほぼ失った上、ハマスのことは条件にも上げない状態で停戦に応じてしまった。

背後にいるはずのイランは、これまでに2回、イスラエルを攻撃したが、3回目は、攻撃するといいつつ、まだ何もしていない。

ICCからの逮捕状が出ても、最強のアメリカがこれを受け入れないトランプ氏が次期大統領である。ハマスにも停戦に向けた、しかもイスラエルに有利な形での停戦に大きな圧力をかけ始めている。

また、ネタニヤフ政権については、国民からの圧力はあるものの、ギャラント前国防相をカッツ氏に交代させるなどして、政権としては前より安定させた状態になっている。

トランプ氏はネタニヤフ首相を支持するとみられるので、政権崩壊の読みも、崩れかかっているといえる。

www.timesofisrael.com/isolated-hamas-faces-collapsing-negotiating-stance-after-drastic-trump-threat/

こうした読みから、カッツ国防相も、ハマスとの交渉に楽観的な見方を表明している。

先見えず・・ガザその後のビジョン:イスラエルがニツァリム回廊に拠点設立中か 2024.12.5

ガザ停戦後はどうする?

交渉がすすみ、ガザでも停戦に入ったとすると、問題は、それからガザをどう管理し、復興させていくのかという点である。イスラエルとしては、復興は、ハマスを排斥した形で、穏健派アラブ諸国や国際社会が担当し、治安維持については、イスラエルが目を光らせる形を望んでいる。

しかし、国際社会は、イスラエルにはガザから撤退するべきだと考えており、今後、この点でぶつかる可能性が高い。

1)イスラエルはガザに軍事拠点設営

こうした中、衛星写真から、イスラエル軍が、ガザの中央を横断する重要なルートに沿った、ネツァリム回廊に数十ヶ所の基地を設置していると、12月2日(月)、ニューヨークタイムスが伝えた。

この回廊は、ガザ中央部、北部、南部にも続くアクセスを制御できる位置にある。イスラエルは周辺にあった600の建物を破壊し、回廊とされる地域の拡大を図っている。

NYTは、戦闘工兵隊が働いているとも報告し、イスラエルが、ここで長期的な滞在を計画しているのではないかと記録している。

www.nytimes.com/2024/12/02/world/middleeast/israel-gaza-bases-netzarim.html

2)ハマスとファタハが共同ガザ復興委員会立ち上げ

一方、ハマスとファタハ(パレスチナ自治政府)は、カイロでの交渉で、戦後のガザを統治していく共同の委員会を立ち上げるために合意したとのこと。12月3日(火)明らかにした。

それによると、メンバーは10-15人で、経済、教育、健康、人道支援、ガザ再建について考える。最終的な決断は、パレスチナ自治政府(PA)のアッバス議長。そのために重要な役割を果たすラファ検問所を両者が共同で管理することでも合意したとのこと。

www.timesofisrael.com/fatah-hamas-agree-to-form-committee-to-run-postwar-gaza/

イスラエルの計画をハマスとPAは受け入れないだろう。一方、ハマスとPAの計画をイスラエルが受け入れるとは思えず、ガザについては、たとえ停戦になり、人質が戻ったとしても、そこからが問題・・という感じである。

無秩序で悲惨すぎのガザ内部の様子

in Jabalia in the northern Gaza Strip on December 4, 2024. (Omar AL-QATTAA / AFP)

海外からは、いろいろな計画が持ち上がっているが、ガザ内部は、無政府状態で、ギャングが横行している。

支援物資はどんどん略奪され、市内に物資はあるものの、その値段は沸騰している。そのための飢餓ということであり、そのために路上で人が死にかけているのである。

たとえば、パン一斤が7ドル、小麦粉1袋が250ドル、牛乳1缶10ドルなど。タバコの変動が異常で、1箱7―8ドルの時もあれば、55ドルとかになっている。

強奪だけでなく、空腹の人々が食料に飛びついて暴動になることもある。ハマスはとりあえず、支援物資の強奪を止める部隊を設立したところ、衝突で20人を殺害したとの情報もあるという。

ガザの冬は寒い上に雨も降るが、家はなく、テントにいる。ガザにいる人々は、限界にあり、とにかく停戦してほしいと言っている。

www.ynetnews.com/magazine/article/ry87aq07jx

ヒズボラとイスラエル交戦で9人死亡もかろうじて停戦維持の認識:イランの動きに最大限警戒. 2024.12.5

停戦後ヒズボラとイスラエルの軍事衝突で9人死亡:まだ停戦合意は維持との認識は継続

ヒズボラとイスラエルが停戦で合意してから、10日になる。レバノン軍は、保有する8万人の軍隊から5000人をレバノン南部に派遣し、アメリカとフランスが協力して平穏を監視している。

しかし、すでにイスラエルとヒズボラの間には、軍事的な衝突も発生している。12月2日(月)夜、ヒズボラが、停戦後初めてゴラン高原のドブ山にむけて、2発の迫撃砲を発射した。

南レバノンでの攻撃の様子
on December 2, 2024. (Jalaa MAREY / AFP)

これに対し、イスラエルは、停戦合意への重大な違反だとし、ヒズボラ関連地点や、ロケット発射地など数十箇所への空爆を行った。レバノン保健省は、この攻撃で、2つの村が被害を受け、少なくとも9人が死亡したと発表した。(戦闘員か市民かの区別なし)

www.nytimes.com/2024/12/02/world/middleeast/hezbollah-israel-lebanon.html

このようなことがありながらも、イスラエルもヒズボラも、双方、停戦合意は維持しているとの認識を維持している。アメリカのカービー報道官も、まだ予想以内だと述べ、停戦合意はまだ維持されているとの認識を語っている。

www.timesofisrael.com/in-first-fire-since-truce-hezbollah-launches-2-mortars-israel-vows-firm-response/

ヒズボラ戦力復帰に向けた気配:シリア内乱でイランへ最大の警戒

南レバノンにいるヒズボラ
December 4, 2024. (MAHMOUD ZAYYAT / AFP)

ヒズボラは、かなり弱体化したとはいえ、今また戦力回復への動きを始めているとの情報もある。

ロイターによると、ヒズボラはまだロケット弾数千発を保持しており、まだ無力化にまでは至っていない。イランの支援を受けて回復しようとしているとの動きも指摘されている。

そのルートはシリア経由になるが、実際、イスラエル軍は、12月1日(日)、ヒズボラに武器を届けようとしていた航空機を、イスラエル軍がシリア上空で発見。攻撃して引き返すよう仕向けたところ、引き返していくということも発生している。

イランはこの方法で、ここ数ヶ月の間、ヒズボラに武器を供給していたとみられている。

シリアでは、反政府勢力がアレッポを制圧するなどの動きが出ており、ロシアとイランが、シリアに軍隊を派遣している。

また、シンベトによると、イランは、イスラエルの指導者らに対するサイバー攻撃も200回以上行ったと報告している。イスラエルは最大限の警戒を行なっている。

www.timesofisrael.com/israeli-jets-block-iranian-plane-suspected-of-ferrying-arms-to-hezbollah-over-syria/

12月4日(水)、イスラエルのカッツ国防相は、ヒズボラとレバノンに対し、攻撃を続けた場合、イスラエルは、ヒズボラもレバノン軍も区別なく、大規模に反撃すると釘を刺す声明を出した。

なお、イスラエルは、まだレバノン南部からの撤退は開始していない。

www.timesofisrael.com/israel-warns-lebanon-to-ensure-hezbollah-adheres-to-truce-or-face-attacks-itself/

北部国境ぞい避難民一時帰宅:北部地域で1年ぶりに新学期で児童登校再開 2024.12.5

北部国境周辺住民の悲しすぎる一時帰宅

ヒズボラと停戦になったことを受け、一部の国境沿いの住民は、様子見の一時的な帰宅をしている様子が報告されている。

12月2日(日)、イスラエル北部国境に面するキブツ・マナラ(住民300人)で生まれ育ったハガル・エーリッヒさん(72)は、家族と共に、カルミエルへ緊急避難してから14ヶ月ぶりに、自宅に戻った。

このキブツでは、155の建物のうち、110棟が破壊された。緑豊かだったキブツは、ヒズボラのロケット弾などの攻撃を受けて焼けて黒くなり、水道や電気などのインフラも、破壊され尽くしている。

ハガルさんの息子のノアムさんは、ここでビールの製造工場を運営していたが、今はカルミエルでその仕事を継続している。

まだ停戦が確実になったわけではないので、政府は北部住民に対し、2025年2月1日まで本格的な帰宅はしないようにと通達している。しかし、キブツ・マナラはあまりにも破壊が激しいので、2月1日になっても、急には帰宅できないとみられる。

マナラ復興チームの責任者ナオール・シャミア氏は、政府の復興支援金だけでは足りないので、資金集めから始めないといけないと語っている。来年9月には、学校教育を再会したいとの夢をもっているが、果たして幼いこどもをつれた家族が帰ってくるだろうかとも感じている。

December 1, 2024. (Marc Walg)

取材中、破壊され尽くした、キブツからは、レバノンの山が見え、爆発音と煙もあがった。

ナオールさんは、「あれは停戦の音だ」と皮肉を言った。イスラエル軍が撤退して、はたして、安心できるのかという不安も語っている。

メトゥラでは、5週間前に、りんごの果樹園でタイ人労働者4人と働いていた息子のオメルさんを、ヒズボラの攻撃で失った、モシェ・ワインスタインさん(75)が、戻っている。

オメルさんの遺体を、果樹園で発見したのは、父親のモシェさんだった。果樹園にいるだけで、その時のことを思い出す苦しみを語っている。

北部国境で最大ともいえる被害を受けたキリアット・シモナのスターン市長は、停戦について、「ネタニヤフ首相は完全な勝利を約束したが、完全な敗北の道を選んだ」と批判していた。当事者である北部住民にとっては、安心というにはほど遠い状況だからである。

キリアット・シモナでは、383棟の建物が破壊され、破損は、2億7500万ドル(400億円)に上るとみられている。」住民の90%が避難したが、残った人もおり、住民2人が死亡した。

www.timesofisrael.com/residents-returning-to-israels-decimated-far-north-worry-their-neighbors-wont-come-home/

停戦までにヒズボラとの戦闘で死亡した市民は45人。イスラエル軍兵士は76人であった。北部の打撃と住民の心の傷は深い。

1年ぶり北部学校新学期再開

キブツ・マナラなど国境近くは、まだまだだが、イスラエル北部地域全体では、12月1日(日)、学校や幼稚園が再開され、数万人の子供たちが、1年ぶりに登校を再開することができた。

たとえば、ハイファのテルハイ小学校では、子どもたち400人が登校を再開していた。避難所の整備が完了すれば、15万人が学校に戻ることになる。しかし、大喜びの祝い風景の映像も見当たらない。

教育省によると、まだ自宅に戻れていない子供や学生は1万6000人いるとのこと。

www.timesofisrael.com/children-return-to-schools-in-north-as-hezbollah-ceasefire-holds/#:~:text=In%20other%20areas%20of%20northern,their%20classes%20at%20alternative%20institutions.

ガザ人質解放交渉に期待:この時に生存する人質ビデオを公開するハマスの残虐性 2024.12.2

ハマスとの人質交渉は楽観的?非楽観的?

ヒズボラとイスラエルの停戦協定に合意したことを受けて、アメリカは、ハマスとイスラエルの停戦合意にも乗り出している。Times of Israelによると、トランプ次期米大統領は、就任までに、ガザも停戦に持ち込んでおきたいとして、ネタニヤフ首相に圧力をかけているとの情報もある。

イスラエル国内でもその機運が高まっている。チャンネル12が行った世論調査によると、停戦と人質返還を望むと答えた人は、71%であった。イスラエル軍の間からは、交渉に楽観的な見通しも出ている。しかし、実際には、まだ先行きは、不透明と言えそうである。

交渉については、現在、カイロで、水面化で行われている。Ynetによると、ガザでも60日間の停戦が提案されており、その間に人質の返還と、それ対してイスラエルが何を提供するかが問題となっている。

December 1, 2024 (Eyad BABA / AFP)

今のハマスは、指導者を失い、武器も失い、ガザにおける人々からの支持もかなり失ってはいる。

しかし、まだ残党は残っていることと、海外には指導者もいる。今の残党ハマスにとって、人質は最後の武器なので、そう簡単には引き渡さないだろう。

ハマスは、今に至ってもまだ強気姿勢で、イスラエル軍の完全撤退と、人質の解放の代償として、イスラエルが絶対に容認できない、パレスチナ囚人を含む多数の解放を求めているとのこと。要するに、ガザでのハマスの復興をイスラエルが認めることが条件ということである。

しかし、ガザ内部では、ハマスに対する疑問や怒りもで始めており、それがハマスに何らかの影響になるか、また次月に、トランプ政権の再来で何らかの影響が出てくる可能性もある。ネタニヤフ首相は今、じっくりとそれを見定めているとみられる。

www.ynetnews.com/article/bjeb6tc7jl#autoplay

人質家族の心をえぐるビデオを公開する残虐ハマスの本質

Tel Aviv, November 30, 2024.(AP Photo/Ohad Zwigenberg)

11月30日(土)、テルアビブの人質広場では、今こそ人質奪回につながる交渉をする時だと訴える人質家族とその支援者たち、約2000人が集まった。

参加者の中には、ハマスの人質になったあと、交渉で解放された元人質たちも含まれていた。

キブツ・ベエリにいた、エミリー・ハンドさんは、9歳で人質となり、50日後に解放された。エミリーさんがトーマスさんに話したところによると、ガザで支給される水は腐敗していたという。

トイレを使用する時は、男性のハマスがいる前で扉を開けた状態で使用しなければならなかったという。その後、アラビア語で何かを言わされ、「お前はもうイスラムだ」と言われたとのこと。トーマスさんは、ネタニヤフ首相に、今こそ人質解放の交渉に乗り出す時だと訴えた。

www.timesofisrael.com/make-a-deal-bibi-a-year-since-nov-2023-truce-thousands-rally-for-hostages/

このデモの数時間後、ハマスが、今も生存する人質と見られるイダン・アレクサンダーさん(20)の映像を公表した。

イダンさんは、人質になってから420日といい、ネタニヤフ首相が、交渉ではなく、人質を解放した人には500万ドル出すと言ったことに落胆を表明した。明らかに今、生存しているということである。

イダンさんは、ネタニヤフ首相が、IDFに対し人質に近づいた時の新しい支持について聞いた(どんな指示かは不明)と述べ、毎日1000回死ぬ経験をしていると語っている。そうして、イスラエルの人々に人質を忘れないでほしいと頭を抱えて泣いている。

イダンさんは、父母、祖父母に向かい、「会いたい。毎日帰る日が来るよう祈っている。早く会いたい」と泣いている。しかし同時に、これも時間の問題だから、しっかりしいてほしいとも涙声で言っている。

真っ暗な暗闇の中で延々とすごしていることの地獄をあからさまにみせつけられるような映像である。

ハマスは最後に、砂時計の絵とともに、「もう時間はない。。。」と締めくくっている。*以下の記事の中で、ビデオクリップを見ることが可能

Koby Gideon (GPO)

www.timesofisrael.com/in-hamas-propaganda-video-hostage-edan-alexander-pleads-with-trump-to-push-for-deal/

この映像はイスラエルの人々のこころを引き裂いた。

ヘルツォグ大統領夫妻は、翌日、イダンさんの家族を大統領官邸に招いて、会談し、「レバノンと同様に、今人質を解放する交渉をする時だ」との声明を出した。

アメリカでも人質交渉を求めるデモ:ニューヨークで数百人

Demonstration in New York’s Central Park for release of the hostages from Gaza

イダンさんは、アメリカ国籍でもある。ハマスが公表したビデオメッセージの中では、英語でアメリカの政府にも訴えをしていた。

アメリカ人の人質も死んだといい、アメリカが強い国なのだから、その力を使って、私たちを助けてほしいと言っている。

イダンさんの父親アディ・アレキサンダーさんは、ニューヨークのセントラルパークで、他の人質家族と、支持者数百人とともに、現場バイデン政権と次期大統領のトランプ氏に対し、ガザにいる101人の人質の解放のために行動するよう訴えた。

www.ynetnews.com/article/r1ubzpcmkg

石のひとりごと

真っ暗闇の地下のトンネルに延々と1年以上も置かれたままという、まさに地獄であると思わされた。また、今この時に、こんな映像を出すとは、ハマスがどれほど、人の心を傷つけることに無関心で、非人間的で、狡猾であるかを表している。

いったいどれだけ、なぜそこまでイスラエルを憎むのか。ハマス一人一人は、イスラエルに何をされたというのか。それなのに、こんなことをするとは、普通の人間にできることではない。悪霊に支配された行為としか言いようがない。

この様子とタイミングからして、確かに、ネタニヤフ首相が言うように、イスラエル市民によるデモは、ハマスの策略の援護射撃になってしまっていることも理解できる。

人質解放にネタニヤフ首相は動くだろうか。しかし、これに負けて、今ハマスが出している強気に条件に応じたら、ハマスに敗北することになる。右派たちは、これを絶対に受け入れないだろう。

ネタニヤフ首相は今、非常に、非常に、非常に難しいところに立っている。しかし、総じて、ハマスには屈しない可能性の方が大きいと思う。となると、人質を、力で早急に奪還する奇跡が起こることを祈るしかない・・・。

ヒズボラとの停戦が意味すること:焦点はイラン/元国家安全保障顧問 ヤコブ・アミドロール少将 2024.11.29

今回のヒズボラとの停戦が意味することは何か。これからイスラエルは何に焦点を合わせなければならないのか。元国家安全保障顧問のヤコブ・アミドロール少将が以下のように解説した。

ヒズボラとの停戦が意味すること:今後どうなるのか・イスラエルはどうするべきか

1)ヒズボラとの停戦はイスラエルに有益

今回、ネタニヤフ首相が停戦に応じたのは、ネタニヤフ首相はアメリカから、武器支援差し止めなどの圧力を掛けられたためと見られている。しかし、アミドロール少将は、それを否定しないものの、それ以上に、イスラエルの計算上のことだったとみている。

その理由として、まずヒズボラが、すでに相当な打撃を受けていることを挙げた。これまでの戦闘で、ヒズボラは、ナスララ党首はじめ、トップレベルの指導者をほとんど失い、武力もかなり失っている。

また、ヒズボラは、パレスチナ問題への繋がりがなく、ただイスラエルを滅ぼすためにのみ存在する、悪でしかない組織なので、中東諸国からは同情を得る理由がない。中東の国々のほとんどは、イスラエルがヒズボラをほぼ壊滅にまで追いこんだことを歓迎していると考えられる。

またイスラエルは人口1000万人に満たない小国で、資源は限られている。ヒズボラとの戦闘は、ずっと最小限に止めていたのであり、本格的な戦闘になったのは、ハマスの弱体化が明らかになった9月末からであった。イスラルは、2方向に前線を抱えることを避けているということである。

さらに、戦闘が1年を超えた今、イスラエルでは、予備役を招集することによる働き手不足や、経済的負担も重くなっており、これ以上戦闘を続けることに限界もある。

さらに2006年の時と違って、今回は、ヒズボラがどんな形であれ、合意条件に違反した場合、イスラエルは、攻撃する権利を有するという書面での約束を受け取っている。予告なしでも攻撃して良いということである。これは、イスラエルにとって非常に有利な状況である。

アミドロール少将は、このように、全体像を見れば、今この時点で停戦に入ったのは、アメリカの圧力でというよりは、計画的に停戦に応じた、言い換えれば、イスラエルが勝利したということだと語る。

ただ中東では、停戦に応じるということは、弱いからと考えるのが常識なので、イスラエルが勝ったとはだれも認識しないだろうとのこと。

2)停戦は続くのか:停戦が破綻したらイスラエルは力で反撃する必要がある

停戦が続くかどうかは、ヒズボラが、どれだけ自分が弱体化したかを自覚するかによる。もしまだまだ戦えると自覚した場合、停戦は破綻する。

しかし、もしかしたら、これまでヒズボラに頭が上がらなかったレバノン政府が、今は、ヒズボラを抑え込むことができるようになっているかもしれない。停戦が破綻するか続くか、ここ数日の間に、明らかになるだろう。

もし停戦が破綻して、ヒズボラが攻撃してきた場合、イスラエルは、力で対応しなければならない。これまでイスラエルはいったん停戦したら、あとは何があっても反撃しないという失敗を繰り返して来た。

アメとムチの対応の中で、常にアメの道を取って来たのである。その結果、敵はどんどん強大になっていった。

今回は、必ずムチを使うべきだ。攻撃了解の書面をもらっているのであるから、レバノンの領内でもよい。ヒズボラとレバノン軍を区別しないほどに、圧倒的な力でこれに対処しなければならない。それでようやく平穏になる。

しかし、その場合、国際社会の非難を受け、イスラエル軍にも犠牲が出るだろう。大きな犠牲を払うことになるが、それでも力でもって対応するべきである。

ガザでのハマスとの交渉はどうなるのか

ヒズボラは、もともと、ガザのハマスを援護するために、イスラエルへ攻撃を仕掛けて来た。しかし、停戦協定において、ハマスのことは一切、条件に出して来なかった。ハマスはもはや孤立している。

ヒズボラというバックアップが無くなった今、ハマスは、これまでのような強気の態度を改め、交渉に応じようとするかもしれない。その場合、イスラエルは応じるべきである。たとえ、大きな支払いをするとしても、人質を取り戻されなければならない。

これからの焦点はイラン:海外にいるイスラエル人を狙う?

アミドロール少将は、これからの最大の焦点は、イランだと語る。

イランは、国としては非常に強大な国だと指摘する。優秀な人材が多く、国のシステムや、イラン軍も安定している。そのため、イランは、これまで自分が手を出すのではなく、傀儡組織のハマスとヒズボラ、フーシ派などにイスラエルを攻撃させて来た。

しかし今、イラン最強の傀儡組織であるハマスとヒズボラが役に立たなくなり、イランは、イスラエルと直接対立する絵図になっている。しかし、イランはイスラエルとの直接対決は望んでいないと考えられる。

イスラエルは、今年のイラン本土への攻撃で、イランの防空能力を破壊した。また苦撃したスポットから、イスラエルが、イランの機密情報を得ていることを見せつけることにも成功している。イスラエルはイランをいつでもどこでも攻撃できるということである。

このため、イラン市民の間で、現政権の落ち度や弱さも明らかになった。今や、国内からの圧力もある。

この状態で、最も懸念されることは、イランが、国外にいる無防備なイスラエル人、ユダヤ人を標的にすることである。

また、イランには、まだ核という問題があることも忘れてはならない。核については、来年トランプ政権がイランに制裁を再開するなどの政策を取るかどうかなども見て、判断しなければならない。

停戦後はネタニヤフ首相の責任追求も

イスラエル国民は、イスラエル軍は信頼しているが、政府への信頼は低い。ネタニヤフ政権の評価は、停戦ではなく、今後、北部国境の治安をどう守り、どう復興していくかで決まる。官僚をどう配置し、予算をどの程度北部に回すのかなどである。

また、状況が落ち着けば、いよいよ10月7日を招いた政府やイスラエル軍指導者の失敗の検証と責任の追求が行われる。ネタニヤフ首相への訴追は避けられないだろう。

*IDFのハレヴィ参謀総長は、すでに責任を認めており、検証が終わった時点で辞任することを表明している。

*これを避けるために、ネタニヤフ首相はあえて危機的状況を維持しているといった陰謀論も、イスラエル国内にはある。

石のひとりごと

停戦となり、南レバノンでは、喜んで、踊っている市民たちの様子が伝えられている。

イスラエル中部北部では、ほぼ1〜2時間おきに鳴っていた、サイレンが、もう2日以上、鳴っていない。しかし、イスラエル国内で、停戦を祝う様子は見られない。

停戦とはいえ、戦争が終結したわけではなく、まだヒズボラが攻撃してくるかもしれない。6万人の避難民も帰れないでいる。政府がこれから被災した北部地域とその住民に対してどんな方策を取るかもチャレンジである。

またイランがこれからどう動くのか。世界にいるイスラエル人は早く帰国するように、あらゆるところにいるユダヤ人が守られるよう、今まで以上にとりなす必要がある。

停戦はイスラエルにとって有利なのだろうが、勝利したのかそうでないのか、何やらよく分からない感じである。