西岸地区緊迫 2012.12.14

<西岸地区にもハマス>

先週、ハマスがガザ地区で盛大に創立25周年集会を行ったが、13日、西岸地区のナブルスでもハマスが記念集会を行った。これまで、パレスチナ自治政府は、ハマスが西岸地区内で集会をすることを禁じてきたのだが、和解の一環として許可したとみられる。西岸地区でのハマスの集会は5年ぶり。

テルアビブやエルサレムにもミサイルを撃ち込んだハマスの人気は西岸地区でも高まっているようである。

<イスラエル軍兵士への攻撃続く>

ガザの戦争での”勝利”、パレスチナの国連での格上げなどで、すでに勢いづいていたパレスチナ人の反イスラエル感情だが、先週、ネットに流れた、パレスチナ人の投石を受けてイスラエル兵たちが逃げるビデオに刺激され、さらに勢いづいた可能性がある。

先週から西岸地区内に駐留するイスラエル軍兵士にむかって激しく投石する動きが続いていたが、12日、国境を警備していたイスラエル軍兵士に向けて、銃をバッグから出そうとしたパレスチナ人がいた。それを見た女性兵士がその場で射殺した。

後になり、射殺したのは17才の少年、また銃はおもちゃの銃だったことがわかった。イスラエル軍は対応は正しかったと評価しているが、この女性兵士は現在、フェイスブックなどに写真入りで「死の脅迫」を受けている。

翌13日、この少年の葬儀で興奮したパレスチナ人らとイスラエル軍兵士がヘブロンで再び衝突。この時は、イスラエル軍は催涙弾を使用して沈静化させたが、夜になり、パレスチナ人らが再び火炎瓶を投げつけてきた。イスラエル軍の反撃でパレスチナ人が1人負傷した。

今後、勢いづいたパレスチナ人とイスラエル軍との衝突にどう対処するのか、また過激なユダヤ人入植者をどこまで押さえられるかが焦点となる。

<イスラエル軍の武器使用基準に変化なし>

投石する市民レベルの暴動に対してどう対処するのか、対応を協議していたイスラエル軍だが、これまでと同様、「命の危険がせまった場合にのみ殺傷能力のある武器を使用する。兵士はそれぞれよく判断すべし。」とのガイドラインを変えない方針となった。個々の兵士に難しい判断がゆだねられることになる。

1980年代後半に始まったインティファーダ(民衆蜂起)では、石投げのパレスチナ人をイスラエル軍が殺害することで、事態がエスカレートした。同じ失敗は避けたいというところ。

ヨーロッパの反イスラエル主義 2012.12.14

ガザでの戦争以来、ヨーロッパでは反イスラエル主義が高まっている。フランスなどに続いて、デンマーク政府も、万が一に備え、ユダヤ人たちにキッパなどユダヤ人だとわかるアイテムを外で着用しないよう進める方針を決めた。デンマークのユダヤ人は6000-8000人。

デンマークに続いて、13日、ヨルダンもイスラエル人旅行者に同様の勧告を出した。

ハヌカ6日目 2012.12.14

イスラエルの周囲が日々きなくさくなってくるが、エルサレムではイスラエルの神の奇跡に思いをはせるハヌカの祭りの真っ最中である。

エルサレム旧市街のユダヤ人家庭では、日暮れ直前に親子がが玄関先に出てハヌキヤとよばれる9本のろうそくにあかりをともす。光の祭りと呼ばれるにふさわしい美しい光景で、夜もツアー客でごったがえしている。

カフェやレストランは満員。甘いスフガニヤを選ぶ親子連れでにぎわっている。(写真は、旧市街の親子、クレーンで明かりをともす新市街、スフガニヤを選ぶ子供たち)

シリアに潜伏するイスラエル兵 2012.12.10

化学兵器の使用に関して緊張するシリア。イスラエルのチャンネル2などで9日、シリアがすでに化学兵器を使ったとみられると訴えるビデオが流れた。http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/162968

その数時間後、イギリスのサンデータイムスが、シリア国内にイスラエルの特殊部隊が潜伏し、化学兵器のゆくえを細かく監視していると報告した。イスラエル国連大使のマイケル・オレン氏も10日、イスラエルは現在、非常にきびしくシリアの化学兵器を監視しているということを明らかにした。

イスラエルが懸念するのは、生物化学兵器が、ヒズボラなどのテロ組織の手に渡ること。70000ものミサイルを保有するヒズボラに、万が一化学兵器が引き渡された場合、数千人のイスラエル人が死亡する可能性もある。

現在シリアにいるイスラエルの特殊部隊の任務は、化学兵器を監視すると同時に、それらがヒズボラに移動しないよう妨害することである。

オレン国連大使は、ほんの少しでも化学兵器がヒズボラへ移動する兆候があれば、イスラエルは軍事介入を辞さないと言った。それはアメリカが軍事介入する基準とは違う(躊躇しない)とも警告している。

逃げるフル装備イスラエル兵!? 2012.12.10

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4317755,00.html

9日、先週金曜のヘブロンでの衝突に引き続いて、再び西岸地区でイスラエル兵と、パレスチナ人の石投げのデモ隊との衝突があった。衝突があったのはナブルス近郊のクファル・カドムという村。西岸地区では最も危険とされる地域の一つである。

イスラエル兵らは、暴動に対処するフル装備の兵士だったが、パレスチナ人らに石を雨のように投げつけられ、途中から背中を向けて遁走。兵士たち3人は、負傷して病院に収容された。この様子はビデオに撮影されユーチューブに流されるというイスラエル軍にとっては屈辱的なこととなった。

<民主国家軍のジレンマ>

兵士たちはフル装備で武器を持っていたのだが、相手が投石レベルの民間人の場合、兵士が実際に武器を使えるのは、自分の命の危険が迫ったときのみという制限が付けられている。

もし違反すれば、兵士は裁判に訴えられる。そのため、どんな状況でも「これは命の危険が迫った場合かどうか」を考えなければならない。この状況を兵士たちは「まるで後ろ手に縛られているようだ。」と語っている。

また、そうした危険な場面でも常につきまとっている記者たちのカメラがいかに足かせになるかも語っている。

9日のケースでは、西岸地区では最も危険な地域に、しかもすでに西岸地区での暴動への危険性が高まっていることがわかっているにもかかわらず、わずかな数の兵士が送り込まれていた。

イスラエル軍では、この状況を重要に受けとめ、今後最前線に出ていく兵士たちの訓練と司令体制の見直しを行うという。(写真はヘブロンに駐留するイスラエル軍兵士:Yネット・ロイター)

なお、ガザで勢力を強めているハマスが、西岸地区の眠っているハマスのセルを活性化しているとの情報がある。

ネタニヤフ首相「パレスチナ人にイスラエルとの和平の意思なし。」 2012.12.10

8日、ガザ地区で「イスラエルを認めない」と豪語したハマスのカリッド・マシャアルだが、9日にはガザのイスラム大学で講演し「ガザの人々に祝福あれ。バラク国防相を失脚させた(バラク国防相は雲の柱作戦の後、引退を発表)。次はネタニヤフ首相だ。」と過激な発言を続けた。

ネタニヤフ首相は、「これでハマスの本音がはっきりした。ハマスはイスラエルとの和平には全く興味がない。そのハマスの発言に沈黙を続け、さらにハマスと和解しようとしているアッバス議長(西岸地区パレスチナ自治政府)も同じだ。」と語った。和平はさらに遠のいたとYネットは伝えている。

ハマス強気の打倒イスラエル宣言-創立25周年ラリー 2012.12.9

8日、ガザ地区ではハマス25周年ラリーが開催され、見渡す限りの大群衆が集まった。設置されたステージには、エルサレムと中央に大きなM75ミサイルがあしらわれ、その前に指導者らが立ち並んだ。

7日から48時間の予定で、ガザを45年ぶりに訪問しているカリッド・マシャアル政治部門長官が、大群衆にむかって「ハマスは決してイスラエルを認めない。海(地中海)から川(ヨルダン川)、北から南まで、パレスチナはすべて我々のものである。」と豪語した。また、雲の柱作戦で暗殺されたジャバリを殉教者と呼び、イスラエルとの徹底抗戦を叫んだ。

マシャアル長官は昨日ガザ入りしたとき「今日はガザ、明日はラマラ、次はエルサレム、ハイファだ。」と語っている。

<停戦でよかったのか?>

イスラエルは、1997年、ネタニヤフ首相(前任)の時に、エルサレム・マハネイ・ヤフダ爆破テロへの報復として、マシャアルをヨルダンで毒殺しようとして失敗。最終的にヨルダンの要請に応じて、マシャアルのために解毒剤を提供したという経過がある。

今回、雲の柱作戦からわずか3週間以内に、そのマシャアルが堂々とガザに入り、はっきりとイスラエルへの闘争心を明らかにしたことで、BBCは、停戦に応じたイスラエルが「恥をかいた」と表現、数週間後の総選挙でネタニヤフ首相の支持率に関わるのではと報道していた。

ハヌカの祭り初日 2012.12.9

ハマスが25周年ラリーを行ったその日、イスラエルでは、8日間のハヌカの祭りに入った。

ハヌカは、紀元前164年、シリアの暴君アンティオコス・エピファネス王の圧政からたった6人でイスラエルを解放したマカビー一家の勝利とその背後で働かれたイスラエルの神の奇跡を記念する例祭である。(参照・ダニエル書8:5-14)

町のあちこちに、ハヌキヤとよばれる大きな9本枝のメノラーが設置され、今日から16日まで1日に一本づつ光がともされる。これはエピファネスに汚されたエルサレムの神殿を、マカビー一家がきよめ直して再奉献し、聖所に光を復活させたことからくる伝統。

新約聖書においては、イエスはこれを宮きよめの祭りと呼んでいる(ヨハネ10:12)。ハヌカは、終末時代に、イエスの再臨の後、75日目(ダニエル12:12)の宮きよめを指しているという説もある。

<今も同じシリア、エジプト、イスラエルの位置関係と現状>

マカビー当時も今もイスラエルが、シリア(当時はアッシリア)とエジプトの間で危機に立つ状況は変わっていない。

内戦が泥沼化するシリアでは、シリア政府がいよいよ化学兵器を使うのではないかと恐れる世界に対し8日、アサド大統領が、「政府軍が化学兵器を使うことはない。だが反政府軍が使うかも知れない。」と言っている。

イスラエルが恐れるのは、そうした大量破壊兵器が、イスラム主義テロ組織の手に渡ることである。

エジプトでは、ムルシ大統領が、強行的にイスラム主義に傾く憲法を制定しようとして民衆と衝突が続く。プロパガンダを押しつける政府の圧力に耐えかねて、エジプト国営放送などメディア関係者が辞任している。ムルシ大統領の独裁と、上記ハマスとつながるイスラム同胞団の台頭が懸念されるところである。

*聖書は、最終的にはシリア、イスラエル、エジプトがそろって主に立ち返る様子を預言している。(イザヤ19:23-25)

シリアのサリンガスをどう防ぐ? 2012.12.7

シリアのアサド政権が、窮地に陥り初め、いよいよ化学兵器を動かしている・・サリンガスをすでにミサイル弾頭に装着したもよう・・などというニュースが世界を駆けめぐっている。アメリカのパネッタ国防長官も7日、シリアのこうした動きについて「非常に懸念している」と語った。

アメリカは、アサド大統領に対し、「もしシリアが化学兵器を使えば、軍事介入も辞さない」との強い警告を発している。ロシアは、アサド政権を指示するという点ではアメリカと反目しているが、化学兵器についてはアメリカに同調しているという。

<もしサリンを搭載したミサイルが、空中で迎撃されたらどうなるのか>

もしサリンを搭載したミサイルが、トルコやイスラエルに向けて発射された場合、迎撃ミサイルが空中で破壊することになる。するとサリンは空中でばらまかれるのか!?という疑問がわく。

イスラエルの軍事専門家によると、サリンが毒性を発揮するためにはある程度の濃度が必要になる。最近の迎撃ミサイルは性能が良くなっており、空中高くで迎撃するので、地上に落下するまでに、毒性はかなり下がるはずだとのこと。

<悲惨なシリアの女性たち>

CNNによると、シリア国内にとどまっている女性の多くがレイプの犠牲となり、犠牲者の20%は殺されるか、自殺しているという。家族が武装勢力に捕まって、娘だけおいて行けと言われ、家族全員を助けるために、泣く泣く娘を犠牲にした父親もいる。

シリア難民はトルコだけでも12万人。寒さの中で暖房なし。夏服しかもっていない。病気で死亡する子供も出ている。

エジプトの騒乱、その後 2012.12.7

エジプトではムルシ大統領が、強行的に進めている憲法案をめぐって、反ムルシ派が大統領府周辺で大規模なデモを展開。これまでの騒乱で、7人が死亡(6人はムスリム同胞団関係者)した。警察は昨夜から戦車を出動させ、沈静化をはかっている。

ムルシ大統領は、テレビを通じて、「8日(土曜)に反対勢力との話し合いに応じる。大統領の最高権力は、15日の国民投票の結果がでたらすぐに解除する」と発表した。

しかし、反対派らは、起草されている憲法案の破棄を条件としており、話し合いに応じる気配はない。反ムルシ勢力は7日、イスラムの礼拝後に、再び大規模デモを計画している。

イスラエル総選挙アップデート-全34党が選挙名簿提出 2012.12.7

1月22日の総選挙を前に7日、全政党が、選挙名簿を提出した。日本では13党だが、イスラエルではなんと34党。(イスラエルは小さな国なので比例代表はなし、国民は、党名だけを書いて投票する。)

これまで選挙名簿をめぐって、様々な駆け引きや根回し、人の移動などがあったが、それも終了ということになる。

<右派優勢はかわらず>

結局、野党である中道左派政党4党は、ばらばらで一致することができなかった。ネタニヤフ首相率いる中道右より勢力のリクードと、リーバーマン外相率いる右派ベイテイヌの合併党を打ち破ることは困難とみられる。

「雲の柱作戦」以後増えるイスラエル軍とパレスチナ人の衝突 2012.12.7

6日、ヘブロンで駐留しているイスラエル軍に対し、パレスチナ人たちが投石するなどの攻撃。これに対し、イスラエル軍は、催涙弾で対応するなど、かつてのインティファーダ(民衆石投げ蜂起)の様相となった。

調べによると、イスラエル軍と衝突を起こしているパレスチナ人は、いずれもハマス支持者。西岸地区ではハマス支持者が増えているもよう。

イスラエル軍によると、雲の柱作戦以来、西岸地区でのこうした衝突が急激に増えている。また国連総会でパレスチナが「国」との認識を得た後にも、こうした事件が増えるとみて警戒しているという。

西岸地区では13日も、パレスチナ人がイスラエル軍のジープに車ごと衝突し、ジープは横転。はい出てきた兵士に向かって、「アラーこそ神」と叫びながら斧で襲撃、2人を負傷させた後、その場で射殺されている。

<ガザ地区でハマス25周年-パレスチナから追放されていたマシャアル政治部長官もガザ入り>

国連総会で「国」の認識を得たパレスチナ自治政府(ファタハ)だが、ハマスとの和解を目指している。ハマスも、創立25周年を迎え、明日の式典にファタハをガザへ招待。ファタハも出席する予定。

7日、パレスチナ地域から追放され、イスラエルからの暗殺未遂も経験しているハマス政治部門長官のカリッド・マシャアルが、45年ぶりにガザ入りを果たした。