防衛上、非常に繊細な状況であるが、イスラエル軍のベニー・ガンツ参謀総長が任期満了(4年)となり、来週火曜16日、交代式が行われる。
時期参謀総長は、ガディ・エイセンコット氏(54)。ゴラニ部隊(エリート戦闘部隊)出身で北部参謀長を務めていた人物。副参謀総長に指名されているヤイル・ゴラン氏も北部司令官である。
www.jpost.com/Israel-News/Eizenkot-officially-appointed-next-IDF-chief-of-staff-383168
防衛上、非常に繊細な状況であるが、イスラエル軍のベニー・ガンツ参謀総長が任期満了(4年)となり、来週火曜16日、交代式が行われる。
時期参謀総長は、ガディ・エイセンコット氏(54)。ゴラニ部隊(エリート戦闘部隊)出身で北部参謀長を務めていた人物。副参謀総長に指名されているヤイル・ゴラン氏も北部司令官である。
www.jpost.com/Israel-News/Eizenkot-officially-appointed-next-IDF-chief-of-staff-383168
エルサレムは、最高気温20度となり、アーモンドなどの花が満開となっている。ネゲブ地方では、赤いカラニヨットが満開となっている。
今年の花の開花は、例年より、2-3週間早いという。来週にはまた気温が下がり、エルサレムでも雪が降る可能性も予報されており、なかなかのクレイジーぶりである。
先日ガザに最も近い地点に行って来たが、ガザとイスラエルの間に、ガザから出たゴミ捨て場の巨大な山があった。その上を鳥が集団でまっており、なんとも黙示録の世界だった。
望遠カメラで撮った写真には、破壊されたままの建物と、その瓦礫に住む人々の生活の姿があった。そのガザのごみの山とイスラエルの間にも赤いカラニヨットたちがならんで咲いていた。
www.bbc.com/news/world-middle-east-31158919
2月3日、ヨルダン空軍のパイロット・カサスベ中尉が、焼殺されるビデオが公開された。しかも、犯行自体は1月3日だったという。すでに殺害しているにも関わらず、それを交渉に出すという卑劣きわまりないイスラム国にヨルダンの怒りが爆発している。
まずは、イスラム国が要求していたアルカイダ系テロリストのリシャウイ死刑囚を含む過激派2人を即刻殺害。3日後には、ヨルダン空軍機がシリア領内のイスラム国の武器庫などの施設を空爆した。
空爆を実施した空軍機は、カサスベ中尉の自宅のある村の上空を飛行し、その成功を知らせた後、無事、基地に帰還した。ちょうどその時間にあわせて、ヨルダンのアブドラ国王がカサスベ中尉の父親を訪問し、国王が父親と2人で、空軍機を見上げている。
さらに本日、ヨルダンの国営放送は、空爆に使用した爆弾に「ヨルダン将校から、ISISの犬へ」と書かれていたことを報じた。ヨルダンは、イスラム国への空爆がこれが最後ではないと言っている。
前回の記事にも書いた通り、アブドラ国王がここまで復讐を表明する背後には、ヨルダン国内で強大な力を持つ数々のベドウィン部族制度がある。部族たちは、さらに厳しい復讐を要求している。
しかし、ヨルダンには、イスラム国支持者も少なくないとみられ、それらが今後どう出て来るか懸念される。またヨルダンが有志軍に参加していること自体に賛成していない人々もいる。引き続きヨルダンとその国王を覚えてとりなしが必要。
<アメリカの対応>
オバマ大統領は、イスラム国との対決姿勢を明確にしているヨルダンに、今後2017年まで、年間4億ドル(470億円)の軍事支援を約束している。http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM06H0T_W5A200C1EAF000/
一方、ヨルダンの戦闘機が撃墜されてパイロットが捕虜になった時点で、UAE(アラブ首長国連邦)が、攻撃から退いていたことがわかった。
アメリカは、イラク北部に、万が一に備えて、パイロット救出のための特殊部隊を待機させるなど、有志軍の士気の維持をはかっている。
ところで、有志軍の攻撃の実績については、一進一退で、あまり明確な報道がない。先月、クルド人勢力が有志軍との協力で、コバネを解放したというニュースが入ったが、詳細は不明。
別のニュースでは、有志軍が、原油の精製施設などを空爆し、原油からの収入がイスラム国に入らないようにしているろいう情報もある。
しかし、白昼堂々とヨルダン軍パイロットを焼殺するビデオが流されたことで、有志軍の無能ぶりが明らかになったとの見方も出ている。
<日本政府の対応>
人質を2人も殺害された日本だが、参議院が5日、衆議院が6日になって、イスラム国への非難決議を出した。
現在、国内や海外の日本人学校などで、テロ防止のために様々な対策がとられているが、対外的には今のところ、めだった動きはない。
1)ウクライナ情勢悪化で動きだす国際社会
東ウクライナで、親ロシア派とウクライナは昨年9月、ミンスクで停戦に合意したはずだったが、その後も戦闘は続き、先月から、戦闘が激化している。親ロシア派は、24日、まだ支配域にはなかったマリウポリを攻撃し、実質支配地域を拡大しつつあるとみられる。
また最近では、親ロシア派が、無誘導ミサイルを市内で使うようになり、市民の犠牲者が急増している。国連によると、昨年4月からの死者は5400人近くに上る。背後でロシアが武器を提供しているものと見られるが、ロシアはこれを否定している。
昨日ケリー国務長官がキエフを訪問した他、ドイツのメルケル首相とフランスのオーランド大統領が仲介に乗り出している。
2)ギリシャに逆切れの反緊縮政権誕生で、EU困惑
ギリシャ経済が破綻し、EU全体の経済に影響を及ぼしている問題で、昨年、ギリシャは、EUが課した緊縮財政案を受け入れることで、支援継続となり、EU離脱を乗り越えることができた。
しかし、緊縮があまりにも厳しい事を受けて(自殺者急増など)、先月22日、緊縮を受け入れないと主張する強気のチプラス政権に交代となった。つまり、緊縮はしないままで、支援はしてほしいという主張である。当然、これを受け入れることは難しい。
すでに欧州中央銀行はギリシャの民間銀行向けの資金供給の特例措置を取り下げるなどの動きが出ている。今後ギリシャがどうなるか、ヨーロッパ金融がどう動くのか、注目されている。
後藤さんが殺害されたとのニュースはイスラエルでも一時トップニュースだった。
今回の一連の出来事は、安倍首相が、イスラエルを訪問していた最中に発生した。ネタニヤフ首相は、安倍首相に対し、日本国民2人が犠牲となったことへの追悼の手紙を出した。「友へ」と冒頭に自筆で書いてある。(添付資料)
テロで何人もの国民を失っているネタニヤフ首相には安倍首相の心中を察することができるのではないかと思う。
<石のひとりごと>
イスラエルの報道を見ていると、後藤さんに関する報道がなされるときには、「何があっても、私の責任です。シリアの人々を責めないでください。」と最後のビデオで後藤さんが伝えたメッセージも毎回、伝えている。
日本人として、クリスチャンとして、後藤さんを誇りに思う。
また、危険と知りつつ、心配しつつ、これまで毎回、彼を送り出して来られたご家族に心からの敬意をもって、主が今、特別に支え続けてくださるようにと祈るばかりである。
身代金に関しては交渉をしなかったという日本政府。このような中にあってもヨルダン政府に協力への謝意を述べ、今後も中東への支援は続けると言い切る安倍首相。日本政府が強く対処してくれていることも心強く思う。
今後、日本がこれまでに経験してこなかった新しい、そしてかなり難しい局面を、安倍首相が、日本らしく、強く対処できるよう、心から応援したい。
なお、外務省からは、今日、国外にいる日本人に一斉に注意喚起が出された。シリアには、まだ朝日新聞の記者がいるらしい。トルコや、ヨルダンで取材を続ける記者たちの安全を覚えてとりなしをお願いしたい。
緊張していた北部情勢だが、29日以降、平穏となり、とりあえず沈静化した形となっている。住民には通常の生活に戻るよう指示が出された。ヘルモン山のスキーリゾートも開放されたが、当然スキー客はかなりまばらである。
沈静化したのは、ヒズボラが29日深夜、「イスラエル兵2人を殺害した攻撃は、イスラエルがヒズボラとイラン軍兵士ら12人を殺害したことへの報復だ。それ以上のことは望んでいない。」とのメッセージを伝えて来たことがきっかけとなっている。
イスラエルも全面戦争は避けたいところであるため、29日のレバノン領内ヒズボラ関係地点への攻撃を機に、攻撃は行われていない。しかし、軍は現在も警戒態勢を継続するとともに、レバノン、シリアからの侵入者を防ぐための国境にそった塹壕の設置を進めている。
www.jpost.com/Israel-News/IDF-remains-on-alert-as-tense-calm-takes-hold-of-northern-borders-389503
ゴラン高原は、冬はスキー、夏はハイキングや果樹園でのフルーツ狩りなど、イスラエル人にとってのリゾート地。テレビニュースによると、さすがのイスラエル人も北部情勢が緊張するのを受けて、ゴラン高原での休暇を次々にキャンセルしているという。
昨日29日、死亡した2人のイスラエル兵の葬儀が行われた。2カ所とも数百人が参列した。
www.bbc.com/news/world-middle-east-31052064?ocid=global_bbccom_email_30012015_top+news+stories
エジプトではシーシ大統領が、ハマスを含むムスリム同胞団やスンニ派過激派グループ(イスラム国傘下を主張)の激しい弾圧を行っている。
最近では、武器の密輸を防ぐため、ガザとの国境に1キロもの緩衝地帯を強硬的に設置。この時に、その地域に住んでいたベドウインとガザのパレスチナ人多数が犠牲となり、家を失った。
こうした状況を受けて、スンニ派過激派らは、シーシ大統領と、エジプト軍や政府関係機関に対し、テロを繰り返しては軍に弾圧される繰り返しとなっている。
1月29日は、エジプトで、「アラブの春」が勃発した記念日だった。これを機に、スンニ派過激派らが、シナイ半島にいたエジプト軍やエジプト警察、駐屯地、検問所、ホテルなど様々な地点を、車両爆弾などで一斉に襲撃。これまでに少なくとも27人が死亡。36人が負傷している。
シナイ半島にいるスンニ派過激派グループは、これまではアルカイダ系と言っていたが、最近では、イスラム国の傘下にあると主張している。今回、複数の地点での同時テロを成功させ、計画性が見えることからイスラム国の関与ではないかと注目されている。
<日本のエジプト支援が人道支援だけですまされない理由>
エジプト政府が行っている過激派の弾圧は、裁判もなしに、逮捕から間もなく死刑に処すなど人権無視とも言える部分が多々指摘されている。しかし、過激派討伐という大義名分により、世界はエジプトの弾圧に事実上、目をつぶる形となっている。
日本の安倍首相も、今回、こうしたエジプト政府の行為には全く触れず、無条件に支援を申し出た。イスラム国が、日本の支援が人道支援だけではなく、彼らに対する戦闘行為だと言っているのはこういう背景からである。
*追記
記事は、中東の事情を伝えるもので、エジプトの政策や、日本の安倍政権を批判するものではありません。
平和の実現と世界貢献にはリスクが伴います。シーシ大統領が目指すエジプトの平和、安倍首相が進める日本が世界に貢献する国になるというビジョンが達成することを願っています。
(モルデハイ・ケダール博士(バル・イラン大学/電話インタビュー)
29日日没までに、リシャウイ死刑囚をトルコ国境に連れてくるよう要求する新たなイスラム国期限が再び過ぎた。その後の動きはまだ明らかになっていない。後藤さん、ヨルダン軍パイロットの生存も不明のままである。
イスラエルでの報道:http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4621063,00.html
ニュースで伝えられている通り、ヨルダンは、人質交換に関して、「リシャウイ死刑囚とヨルダン人パイロットの交換」を主張し、後藤さんに関してはほとんど何も述べていない。この背景にはヨルダン王室の非常に難しい内部事情がある。
<ヨルダンの複雑な内部事情:少数派が多数派を支配する国王>
ヨルダンは、1916年、フランスとイギリスが中東に国境を定め、それぞれの領地をとりあった時に、イギリスの統治下で、国の形ととるようになった。
1921年、イギリスとフランスがシリアの王として据えたファイサル1世(アラビア半島の有力者)が追放されたため、地域の不満を解消する手段として、その兄アブドラ・ビン・フセインを国王に据えて、トランスヨルダンという国を発足させた。
その後、第二次世界大戦が終わるとイギリスが委任統治を放棄する。これを受けて1946年5月に、独立。3年後の1949年に今のヨルダン・ハシミテ王国が正式に発足する。
国王は、初代からの世襲制である。幸い、ヨルダン王室は、よい国政を行い、国を貧しいなりに安定させてきた。これまでの王たちは、それなりに国民に愛されてきたと言える。
しかし、1948年にイスラエルが建国するのにあわせて、パレスチナ人が一斉にヨルダン入りする。これでヨルダン国民の70%は、パレスチナ人となり、国王は少数派出身という微妙な構造になった。
その後、ヨルダン入りしたパレスチナ人たちは、経済的にも成功し、多くはヨルダンの有力者になっていく。国王はパレスチナ人の機嫌を損ねないよう、綱渡りをしなければならなくなった。
さらに、最近ではシリア難民が押し寄せ、総人口の10%はシリア難民という異常事態になってきた。しかし、もっとやっかいなのが、人数は少ないが、非常に扱いにくいベドウイン族で、ヨルダン王室に様々な要求をごり押しするようになっているという。
今回、人質となったパイロットは、そのベドウイン出身である。ベドウインたちは、最初からヨルダンが、イスラム国攻撃の有志軍に参加することに激しく反対していただけに、パイロットのカサスベ中尉を無事に取り戻せというベドウインの怒りは相当なものである。
また、ヨルダン国内では、ベドウインだけでなく、広く国民の間でも、イスラム国への支持率が高まっている。
イスラエルで中東問題エキスパートのモルデハイ・ケダール博士(バル・イラン大学)によると、もし、ヨルダン人パイロットを生きて取り戻せなかった場合、ヨルダン王室が転覆しかねず、状況は急変すると予想する。
つまり、今のヨルダン政府に、日本人人質の後藤さんの命に気を配る余裕は全くないということである。少なくとも、日本より、ヨルダン人パイロットが最優先ということを強調せざるを得ないのである。
<イスラム国はヨルダンをねらっているか?>
ケダール博士によると、当然、Yesである。ケダール博士によると、カリフ制を主張するイスラム国にとって、フランスとイギリスが勝手に決めた国境線や、国王に対する敬意は全くない。ヨルダンどころか、中東全体、ひいては地球全体の支配を目標にしているのがイスラム国である。
www.israeltoday.co.il/NewsItem/tabid/178/nid/24933/Default.aspx (ケダール博士による記事 2014.9.14)
昨年秋、イスラム国は、ヨルダン領内に足を伸ばしはじめた。ヨルダンがイスラム国になってしまった場合、イスラエルへの足がかりになるため、この時、イスラエルの介入も一時伝えられた。
その後、ヨルダンへのイスラム国の進出は報告されていないが、おそらくイスラエルが諜報活動などを通して、ヨルダンを支援していると考えられている。
なおイスラム国は、昨年夏にイスラエルと戦っているガザを支援しないのかと問われ、「国が安定したら、いずれはイスラエルを攻撃する。今はまだその時ではない。」と言っている。
27日、ゴラン高原シリア側から、イスラエル領内へ、ミサイルが2発着弾。被害はなかったが、これを受けて、28日深夜過ぎにイスラエル軍がシリアの軍関係施設を空爆した。死傷者の報告はない。
続いて28日正午ごろ、レバノンとの国境の町、ガジャール均衡の民間道路を走っていたイスラエル軍軍用車に突然、レバノン領内から対戦車砲が発射され、イスラエル軍兵士2人が死亡。7人が負傷した。
この約1時間後、イスラエル軍がレバノン領内へ迫撃砲で反撃。この後、UNIFIL (国連暫定監視軍)のスペイン人兵士が1人死亡したと報告された。
交戦状態となった直後、イスラエル軍は、ヘルモン山でスキーを楽しんでいた人々を避難させ、スキー場を一時閉鎖したが、今は再び解放している。周辺住民には、侵入者の恐れがあったため、一時自宅待機の命令が出された。現場周辺の道路は今も閉鎖されている。
本日28日、ヒズボラが、一連のイスラエルへの攻撃について、18日にイスラエル軍が、ムグニエ司令官を含む6人の戦闘員とイラン軍司令官と兵士6人を殺害したことへの報復だとの声明を出した。(オリーブ山便り1/22参照)
レバノンのテレビからは、作戦成功を祝う様子が伝えられている。ハマスや他のパレスチナ組織も続いて作戦成功を賞賛する声明を出した。イスラエルのテレビは、ずっと現場からの中継を行っている。
イスラエル軍は、ゴラン高原シリア側を18日に攻撃して以降、ヒズボラの報復の懸念があるとして、戦車や軍用車を国境付近に配備。侵入者を阻むため、国境にそって塹壕を掘るなど、厳重な警戒態勢をとっている。現在も厳戒態勢がとられている。
今後、このまま終焉するのか、エスカレートするのか、現時点ではどうなるかは、専門家でもまだ予想が不可能だという。
イスラエル軍によると戦死した2人は、ドール・ニニ軍曹(20)と、ヨハイ・カランゲル大尉(25)。ドールさんは、戦闘部隊隊員で、夏にガザで戦い、軍曹に昇格。ヨハイさんには、妊娠中の妻タリさんと1才の娘がいる。
<ヒズボラとイランがイスラエルに対する方針の転換か?>
今回のエスカレーションは、明らかに18日のイスラエルの攻撃で、ヒズボラの司令官ムグニエとイラン軍司令官を含む12人を死亡した事がきっかけとなっている。
イスラエルがなぜそこまで大きな攻撃に出たのかについて、バル・イラン大学のエフライム・インバル教授は、ヒズボラとイランが、具体的に何を計画していたのかは不明だが、最近、イスラエルと最前線の均衡状態を破って、新たな戦闘状態をつくりあげようとしているとみられると解説する。
インバル教授は、イスラエルは、市民が攻撃される前に、できるだけ危機がまだ国外にあるうちに処理する方針であると改めて強調。歴史をみれば明らかだが、ヒズボラとイランは、無条件にユダヤ人の殺害を望んでいる。だから、これは攻撃ではなく、防衛であると主張する。
ここで、注目されるのは、シリアのアサド政権がヒズボラとイランに加わっていない事である。またイスラエル兵が死亡した攻撃は、シリア領内からではなく、レバノン領内からだった。シリアはイスラエルとの戦闘に加わりたくないと推測できるとインバル教授。
まだまだ先行きはほとんど読めない状況だが、戦争へとエスカレートしないよう、とりなしが必要である。
27日は、国際アウシュビッツ解放記念日だった。今年70周年を迎える。国連での式典にはリブリン大統領がイスラエルを代表して参加。演説を行った。また現地アウシュビッツでは、イスラエルの旗を持った人々などが集まって式典が行われている。
リブリン大統領は、北部情勢が悪化するのを受けて、早めに帰国。死亡した兵士の家族や、負傷兵を訪問することになっている。
ネタニヤフ首相が、アメリカ議会(共和党主導)でイランに関することへの発言を求められ、3月、渡米する意志を表明した。
問題は、この件がホワイトハウスを素通りしていたことである。議会はオバマ大統領とは対立する存在。その議会の招待に、ホワイトハウスには何の断りもなく、出席表明をしたことで、オバマ大統領との関係にひびが入るとの批判がとびかっている。
案の定、オバマ大統領は、この時、ネタニヤフ首相とは面会しないと表明。「(イスラエルの)総選挙2週間前に、一方とだけ会談するのは、倫理的でない。」というのが理由である。
イスラム国に拘束されている後藤健二さんの殺害予告時時間も過ぎて、日本中が緊張に包まれていることと思う。しかし、イスラエルでは、ゴラン高原で、ヒズボラとの戦闘が発生したので、こちらの話題には手が回らなくなったようである。報道はない。
今回、イスラム国は、昨日までは後藤さんとヨルダンに拘束されているテロリストで死刑囚の交換を提示した。これは日本とヨルダンの関係に水をさすような、非常に意地の悪いものである。
ヨルダンは、数週間前に戦闘機が撃墜されたとみられ、その時にパイロットのムアス・カサスベさんを捕虜にとられている。昨夜からヨルダンが、ムアスさんの解放とひきかえに女性死刑囚の解放を準備したとの報道が入っている。後藤さんに関する情報はない。
明日の今頃までに、ムアスさんと後藤さんがそろって戻ってきていればと思うが、イスラム国がそうするとは考えにくいというのが現状だ。もし2人そろって解放されたとしたら、それは、政府が本当に大金を支払うなど裏で何かが行われたか、神の奇跡でしかないだろう。
半分欧米だが中東の一角であるエルサレムですら感じる事だが、中東は甘くない。生きるか殺されるか、基本的に強い者だけが生き残る世界である。
たとえば、イラン。日本を含む欧米諸国の考え方では、戦場には子供や女性は出さず、兵士の背後に置いて守るものだが、イランは、地雷の埋まっているところを子供と高齢者を先に歩かせ、その背後に軍隊が続く。弱いものが、強いもののために死ぬことは理にかなっているのである。
本能的にアラブ人たちは、だれが強いのかをみきわめ、右にも左にも意見を変え、自分を守るためには平気で嘘もつく。約束はあってないのも同じ。中東でのベテラン記者から、彼らが言っていることはそのまま受け取れない上、明日はまったく違うことを言っていることがあるので記事にしにくいと聞いたことがある。
これは、倫理観に欠けているのではなく、それが中東での生きるすべ、知恵だということである。
もう一つは、基本的に中東イスラムの考え方では、イスラム教徒以外には、何をしても罪意識に結びつかないということも知っておくべきである。中東、特に過激なアラブ・イスラムから見ると、仏教やヒンズーなどを信じているアジア人は、偶像礼拝者として軽蔑の対象である。殺すことになんの躊躇もない。
今回、イスラエルが、ゴラン高原で12人のヒズボラとイラン兵を殺害したが、時にはこのように先制攻撃しないと、やられてからやり返す、通常の防衛観念では、生き伸びることができないというのが中東である。
安倍首相は、国際社会に貢献する日本にしようとしていた。これであきらめてしまわず、国際社会に貢献し、尊敬される国・日本になるため、私たち国民も覚悟する時に来ているのかもしれない。