2021年幕開け:外交・中東情勢注目点 2021.1.4

イスラエル国会

1)1月20日アメリカの新政権発足:イスラエルへの影響は?

アメリカでは、明日5日、ジョージア州で、2議席の上院議員選挙が行われる。この結果のあと、6日にはバイデン氏が次期大統領として承認、決定するかどうかの決議が行われる。つまり、ジョージア州で共和党が取るか、民主党が取るかで、バイデン候補が最終的に大統領になるかどうかが決まるという重要な選挙ということであった。

しかし、ジョージア州では、現在、民主党48議席、共和党50議席であるため、もし、民主党が2議席とも取った場合、民主党、共和党が50/50となる。この場合、副大統領(現時点では民主党のハリス氏)が、最終的な決定権を持つと定められているため、民主党が過半数ということになり、バイデン氏による政権が上院下院ともに過半数を得ることを意味する。

一方、もし、共和党が1議席でもとれば、そうはならず、上院は共和党が過半数となり、いわゆるねじれ状態になる。しかし、トランプ大統領は、市民の約半数が支持しているのではあるが、共和党内にトランプ大統領を支持しない人もいることがわかっている。まだどうなるかは不透明である。いずれにしてもアメリカの分断は深刻になるだろう。

INSS(イスラエル国家治安研究所)は、仮にバイデン候補が大統領になった場合でも、トランプ大統領が始めた「世紀の取引」はじめ、中東政策には大きな変化はないとみている。

さらに、ハリス副大統領候補が、イスラエルとの協力関係への支持を表明していることから、アメリカのイスラエルへの安全保障は継続されると予測する。それを保証するかのように、イスラエルのアイアンドーム(迎撃ミサイルシステム)2セット目が、アメリカに到着した。

www.inss.org.il/publication/biden-and-the-middle-east/

イスラエルが、今後、バイデン氏が大統領になった場合に、最も注目する点は、アメリカがイランとの核合意に復帰する努力をするかどうかである。その内容によっては、イスラエルが武力行使に出る可能性も出てくる。イランは、昨年末、ウラン濃縮を20%にまで上げると発表している。

また、イランでは、スレイマニ総司令官がアメリカのドローンで暗殺されてから1年を迎える。テヘランには、スレイマニの写真が溢れている他、イラクでは、現場のバグダッド航空付近で、数千人が大規模な対米デモを行った。

トランプ大統領が、在職中ぎりぎりになって、イランを攻撃するのではないかとの懸念もある。

www.france24.com/en/middle-east/20210103-thousands-march-in-baghdad-to-mark-anniversary-of-iran-general-s-assassination

この他、INSSのエキスパートは、イスラエルと中国の技術協力について、アメリカが懸念を表明しており、今後、中国をめぐってイスラエルに圧力をかけてくる可能性が懸念されている。

2)湾岸諸国との国交・中東のこれから

昨年劇的に始まった湾岸諸国、UAE、バーレーンと、スーダン、モロッコとの国交正常化の動きは今年も続いていくと予測されている。

一番最初にイスラエルとの国交正常化を実現したUAEとは、すでにイスラエル人5万人が観光で訪れている。UAEからは、イスラエル企業への投資が始まっている。両国の文化交流も始まり、UAEの役者がユダヤ人に扮したり、これまでには考えられなかった様子もみられる。コロナが収束すれば、この動きはさらに加速されると期待されている。

さらに、UAEは、予想以上にイスラエルに接近しているようである。イスラエルとアメリカが、ハマスへの支援が疑われ、機能不全が指摘していたUNRWAの解体に向けた動きに加わったとのこと。同時に、UAEは、カタールが支援に力を入れているガザ地区に、コロナ対策となる医療支援も開始している。

www.jpost.com/breaking-news/israel-uae-plotting-to-eliminate-unrwa-report-653356

また、興味深い動きは、トルコがイスラエルとの関係改善を表明している点。これからの動きが注目される。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。