世界最速でワクチン接種中:ロックダウン開始も感染急拡大続く 2020.12.29

ファイザー/ビオンテックのワクチン

急ピッチのワクチン接種:28日時点で約50万人に一回目

イスラエルでは、先週日曜から、新型コロナに対するファイザーのワクチン接種が始まり、まずは医療従事者、60歳以上の高齢者、ハイリスク患者、また学校教師など教育関係者、イスラエル軍兵士も優先される形ですすめられている。

このリスト以外の一般の人々への接種は7−10日後には開始される見通しとのこと。政府は当初、1日10万人に接種すると発表していたが、後に目標を1日15万人に切り替えると発表。1月末までには、全人口の25%の接種を完了すると発表した。

これに基づき、150のワクチン接種会場を開設。テルアビブでは、ラビン・スクエアに大きなワクチン接種場を開設。さらに接種会場を増やすという。28日の時点で、全国ですでに約50万人が、1回め接種を終えた。

命を守るための仕事は赦されるという理解から、安息日も休まず、ワクチン接種を実施した。安息日は別として、3蜜回避には非協力的であった超正統派もすすんでワクチン接種を受けているという。

なお、ワクチンについては、今週も毎日アメリカのファイザー社から届く予定で、今週末までには、380万回分(190万人分)が到着する。さらに2月には400万人分が届く予定。

ワイツマン研究所の生物学者エラン・シーガル博士は、このペースでいくと、2−3週間後には、感染者数が激減するとみている。一方、保健省のシャロン・アルロイ・プレイス博士は、ファイザーワクチンの成功率が95%であることと、ウイルスの変異も予測不能だとして、市民への急ピッチワクチン接種に、慎重な声もある。

気になる副反応だが、昨日、75歳の男性が、ワクチン接種2時間後に心臓発作を起こして死亡。一時副反応かと懸念されたが、基礎疾患によるものと発表された。その後のワクチン接種に変化はない。

ネタニヤフ首相は、1月末までに、225万人(全国民の4人に1人)のワクチン接種を終えるとし、イスラエルは、世界で一番先に新型コロナの脅威から脱出すると語っている。

www.timesofisrael.com/israel-nears-500000-vaccinated-in-new-daily-record-teachers-to-be-prioritized/

3回目ロックダウン開始と混乱

急ピッチで国民のワクチン接種が進められる中、イスラエルは、27日日没から、予定通り、3回目のロックダウン(2週間予定)に入った。マーケットなどの店舗は閉店となり、外出は、原則、食料調達や医療、ワクチン以外は、禁止で、家からの外出は1キロ以内と指示された。

しかし、学校は閉鎖になっていないので、「このロックダウンにあまり意味はないのでは。」との矛盾も指摘されていた。その後、政府がまた方針を変えたことから、いったいどの学年は登校でき、どの学年はできないのかとの混乱となっていた。

また、ロックダウン開始後の27日、テルアビブ近郊の交通量はあまり減っておらず、バスは、本数が減っている分、満員になっていたとのこと。1日目、感染予防策に従っていなかったとして警察に罰金(500シェケル・約1万5000円)を課された人は1286人。

www.timesofisrael.com/despite-restrictions-on-movement-lockdown-has-little-impact-on-traffic/

マハネイ・ヤフダなどのオープンマーケットではおおむね閉店しているが、空いている店もあった。

もう一つの混乱は、海外から帰国したイスラエル人のホテル隔離の問題である。イギリスから変異株コロナの発表があると、ネタニヤフ首相はただちに、空港からの入国制限を強化するよう指示した。

また、その時点の特別許可で、家族を訪問しようとイスラエルに向かう機内にいた外国人や、ドバイなどへ行っていて帰国したイスラエル人の一部はそのまま国が定めたホテルで2週間隔離するようにとの指示を出した。

実際に対象となったのは6300人で、このうち2555人がホテルへ搬送されたが、これに承服しない人々がホテルの警備員と衝突。これを受けて、空港での検疫を条件に帰宅を許すと指示すると、空港内に長い列ができた。

www.timesofisrael.com/forced-hotel-quarantine-said-likely-to-be-nixed-as-dozens-try-to-break-out/

28日新規感染者4513人:10月以来最大

ワクチン接種とロックダウンが開始される中、28日、新規感染者は、4513人とこの10月以来、最大数を記録。29日はもっと増えるみこみとなっている。

27日に行われた検査7万2895件から算出した陽性率は、4.9%と非常に高い。現時点での陽性者は3万7510人。重症者は592人で人工呼吸器依存者134人。27日の死者は、18人で、28日時点の死者は3256人。

www.timesofisrael.com/health-ministry-reports-4513-new-cases-highest-daily-tally-in-nearly-3-months/

コロナ対策は公立機関で実施するべき:アルノン・アフェク博士(コロナ中核シェバ・ホスピタル・ディレクター)

イスラエルのワクチン接種大作戦とロックダウンについて、元保健省長官で、病理法医学の専門家、現在はコロナ中核病院シェバ・ホスピタル・ディレクターのアルノン・アフェク博士は、イスラエルが、スピーディに、検査やワクチン接種を実施できていることについて、次のように語った。

イスラエルの利点はまず国が小さいということ。北端から南端まで400キロしかないことである。次にイスラエルの保健システムが、統一された公的機関なので、国の責任と負担で、一貫した対処が実施できるというという点をあげた。

特にイスラエルでは、国の社会構造の一つとしての軍隊があるので、全国一斉に、完全に一致した計画の元で、まるで戦時体制のごとくに、スピード感を持ってコロナ対策も実施できるわけでる。

アフェク博士は、他の国々がイスラエルと同じにはならないとはしながらも、新型コロナに関する検査体制、医療、ワクチン接種など、すべて公的機関で担うべきだと強調する。プライベートが入ると、一致した動きがとれないからである。そういう意味では、日本のコロナ対策に懸念を覚えざるをえないところである・・・

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。