ワクチン5-11歳承認も義務化はせず: 接種開始は来週から?2021.11.12

アメリカでの子供ワクチン接種(スクリーンキャプチャ) https://abc7news.com/pfizer-children-vaccine-for-kids-news/11033822/

イスラエルの5-11歳ワクチン接種について

新型コロナ感染が始まってすぐのころ、イスラエルは世界に先駆けてファイザーのワクチンを買い求めた。少し値をつりあげて支払ってでも、不足することのないようにしたのである。これが功を奏して、イスラエルは世界最速で国民へのワクチン接種をすすめることができた。

しかし、世界に先駆けて12歳以上のティーンエイジャーへの接種を開始したイスラエルであったが、5-11歳の子供たちへの接種については、不思議にそこまで慌てた様子はない。

ファイザーによると、2268人の子供達で治験したところ、感染予防率は91%であった。続いてアメリカのFDAは、子供3100人で見た場合、副反応が最小であったとして、10月26日、ファイザーのワクチンについては、5-11歳の子供達に接種することを推奨すると発表した。

アメリカでは、すでに5-11歳の子供への接種が始まっている他、日本国内でも承認されたことから、日本でも子供への接種も始まっていくとみられる。

ナフマン・アシュ教授
出典:イスラエル政府

イスラエルが、FDAの承認を受けて、5-11歳の子供へのワクチン接種を推奨すると決めたのは、先週10日である。子供用のワクチンが入荷するのは、来週か、もしかすると数週間先になるかもしれないとの見通しとなっている。

子供への接種について消極的な親が多く、すぐにもワクチンを受けさせると答えた親は50%強にとどまると保健省は見ている。子供のことなので、反発も予想されることが考えられ、接種拡大は困難というのが、現時点での見通しである。

こうした状況から、保健省コロナ担当のナフマン・アシュ博士は12日、子供への接種は義務ではなく、罰金が発生することもないと発表した。

また大人については、未接種の人に義務付けられている定期的なPCR検査は有料だが、未接種の子供への定期的PCR検査については、ワクチン接種の有無にかかわらず、無料で継続すると発表した。

www.timesofisrael.com/health-ministry-chief-says-there-wont-be-sanctions-on-unvaccinated-kids/

しかし、保健省によると、イスラエルでは、毎日200人の子供が感染しているという。疫学者で、コロナ担当アシュ博士のアドバイザーであるダビドビッツ博士は、子供にもワクチン接種をしておくほうが安全と思うと語っている。

ベネット首相も、これまでと同様、子供達へのワクチン接種は強くすすめる立場である。

社会で広がるコロナ・ギャップの予想

アラブ人保健専門家のエサ・ハダッド博士は、子供へのワクチン接種への対応の差を通して、イスラエルの社会的な分断、いわゆる“コロナ・ギャップ”が拡大する可能性を指摘する。

比較的教育が行き届いているユダヤ人世俗派たちは、ワクチンを受け入れる傾向にあるため、感染も死者も少ない。この人々は子供へのワクチンも受け入れる傾向にあると予想される。

一方で、通常の教育を受けないユダヤ教超正統派、経済的にも不利な人が多いアラブ・イスラム教徒で宗教的な人ほど、ワクチンの普及率が低く、子供へのワクチン受け入れも低いと予想される。

しかし、この超正統派、アラブ人家族ほど子供の数が多いので、今後、子供の間で感染が拡大し、子供たちが死亡することも懸念されている。

*高学歴のアラブ人社会では、ファイザーワクチンではなく、通常の弱毒化ワクチンに合意する人は多い。

www.timesofisrael.com/israel-approves-covid-shots-for-kids-experts-predict-uphill-acceptance-struggle/

各宗教リーダーからワクチン接種奨励:大統領官邸より

(Kobi Gideon/GPO)

宗教的な人ほど、ワクチン接種に消極的であることから、ヘルツォグ大統領は、11日、イスラエル国内にいるユダヤ教、イスラム教、キリスト教、ドルーズ教、バハイ教の代表を官邸に呼び、そろって、市民たちにワクチン接種を呼びかけてもらうイベントを開催した。

www.timesofisrael.com/israels-religious-leaders-call-on-world-to-get-covid-vaccine/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。