クリスチャン人口減少のアメリカ:イスラエルを支持する若い福音派も減少 2021.12.17

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国内外での困難に直面するアメリカだが、今、クリスチャン人口が減る傾向にあること、また特に福音派クリスチャンが昔ほど親イスラエルではなくなっているという調査結果をイスラエルが注視するようになっている。

アメリカで教会離れと無神論者増加

アメリカでは、クリスチャン人口がここ10年、減少傾向にあるが、14日にPew Research Centerから発表された統計によると、クリスチャンであると自覚していると答えた人は2011年は75%だったが、2021年は、12%も減って、63%となっていた。

特に現象が深刻なのが、プロテスタントで、自分の所属する教会があるという人は2011年には51%だったが、2021年には、11%も減って、40%になっていた。カトリックも減ってはいるが、所属教会があると答えた人は、今年21%で、10年前からの減少率は3%にとどまっていた。

アメリカでは、クリスチャンだけでなく、他のイスラム教などの宗教からも離れる傾向にある。アメリカ人で宗教が重要だと考え、教会、モスク、シナゴーグなどに所属している人は、今年47%となった。50%を下回るのは初めてである。

これに並行すると思われるが、宗教について、2021年、特になしと答えた人(無神論者)は、10年前から11%も増加して、29%にまで増加していた。

www.forbes.com/sites/marisadellatto/2021/12/14/christians-decreasing-as-more-us-adults-not-affiliated-with-any-religion-study-shows/?sh=5d6a08814b3c

次世代福音派の親イスラエル支持者減少

アメリカの福音派クリスチャンは、イスラエルを支持することで知られる。福音派は、イスラエルが今あるのは、聖書に預言されていた通りであり、神は最初に選んだイスラエルを見捨てたわけではなかったと考えているからである。

このため、福音派は、政治的にも活発で、アメリカ政府の周辺でイスラエルのためのロビー活動もしている。しかし、これが今、変わりつつある。次世代の若い福音派が、イスラエルを支持せず、パレスチナ側を支持する人が増えているのである。

調査を行ったのは、ノースキャロライナ大学の承認を受けているバルナ・グループ。今年3-4月に行われた調査によると、18-29歳の福音派クリスチャン700人に、イスラエル〜パレスチナ問題で、どちら側を支持するかとの質問に対し、イスラエルと答えた人は33.6%。パレスチナと答えた人は24.3%、どちらでもないと答えた人が42.2%であった。

2018年に、同大学が行った同じ調査(福音派18-29歳)では、イスラエルを支持すると答えた人は69%で、パレスチナを支持すると答えた人は5.6%。どちらでもないは、25.7%であった。若い福音派のイスラエル支持者は、3年前の69%から、今年33.6%にまで減ったということである。

またイスラエルを支持するのは、聖書の信仰に基づくと答えた福音派は38%で、パレスチナ問題と信仰とは分けて判断すると答えた人は44%にのぼった。若い福音派の中には、イスラエルを聖書の視点から見ないとする人が増えており、興味もないので、イスラエル問題に関する知識がほとんどない人が65%に上っているという。

それでも、パレスチナ国家設立を支持すると答えた人は45%、支持しないは20.5%で、まだ反対する人のほうが多かった。また、エルサレムについては、71.6%が、イスラエルの首都だと答えていた。

www.timesofisrael.com/support-for-israel-among-young-us-evangelicals-drops-sharply-survey/

まとめると、若い世代は、福音派でも、かつての福音派のように、聖書的にイスラエルは大事と考えるのではなく、もう少し冷静に、現状をみながら、判断する人が増えているということである。

福音派でもトランプ前大統領を支持しない人々

これまでのところ、福音派は、一般的には保守系右派よりのイスラエル支持者である。このため、ネタニヤフ前首相とトランプ前大統領を支持していた。特にこのペアが、エルサレムをイスラエルの首都とするなど多くの聖書的な制作を進めたことも、福音派をエクサイトさせた。

しかし、今の若い次世代福音派は、そうとは限らないようである。政治と信仰を分けていることもあり、明確な右派ではないこともあり、必ずしもトランプ氏支持するとは限らないのである。先のノースキャロライナ大学の調べでは、若い福音派の48.5%は、トランプ氏の共和党ではなく、民主党支持で、46%は、2020年の大統領選挙でバイデン氏に投票していた。

www.timesofisrael.com/support-for-israel-among-young-us-evangelicals-drops-sharply-survey/

こうした中、先週あたりから、トランプ前大統領が、ネタニヤフ前首相を、Fのことばで罵倒していたことが明るみに出た。イスラエル人ジャーナリスト、バラク・レービッド氏のインタビューで、トランプ氏が、ネタニヤフ氏との関係の現状を話した際に出したコメント中で出たものである。

トランプ氏は、バイデン大統領が選挙で勝利した際に、ネタニヤフ首相が、予想より早く祝辞を送っていたことや、ネタニヤフ氏が、トランプ氏の意向に反して、西岸地区のユダヤ人家屋建築に着手するなどしたことに対して、非常に立腹していたもようである。

Fのことばは、決して出してはならないことばであるだが、かつての戦友であり、他国の首相であった人、またトランプ氏とネタニヤフ氏は、アメリカとイスラエルの関係の中では、最も親密な関係であったとみられていただけに、イスラエル国内でも驚きの中でしばらく報道が続いたのであった。

www.jpost.com/israel-news/f-him-trump-expresses-resentment-towards-netanyahu-in-interview-688401

これに対し、不思議に福音派からの声明を出ていなかったが、今週に入ってようやく、イスラエル支持派福音派で、特にトランプ氏とネタニヤフ氏を支持してきたマイク・エバンズ氏(74)が声明を出している。エバンズ氏は、トランプ氏に対し、「私たちに、あなたかイスラエルを選ばせるようなことはしないでほしい。私たちの支持がなければ、あなたは大統領に復帰できないはずだ。」と述べた。

こうしたどろどろしたところを見せたことで、若い福音派は、さらにイスラエル支持から退いていったかもしれない。イスラエル政府はこうした状況に危機感を持っている。GPO(イスラエル政府プレスオフィス)からもその情報が届いたほどである。在米イスラエル大使のロン・ダーマー氏は、イスラエルはもっと福音派の支持を得られるよう、働きかけるべきだと語っている。

アメリカは、内外で大変な患難に直面しているが、霊的にも後退が始まっているのだろうか。今後アメリカがどうなっていくのか、気になるところである。

www.timesofisrael.com/dont-make-us-choose-between-you-and-israel-evangelical-warns-trump-over-bibi-rift/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。