アメリカがイスラエル大規模支援とイスラエル軍制裁のダブルスタンダード? 2024.4.25

US President Joe Biden speaks after signing the foreign aid bill at the White House in Washington, DC, on April 24, 2024. (Jim Watson/AFP)

アメリカの名門大学が混乱する中、アメリカ政府も複雑な動きをしている。バイデン大統領の言動を聞いていると、イスラエルを支持していることは見えてくるのだが、同時に、人間的な正義も首をもたげてきて、両立しないことが多いように思う。

ウクライナ、台湾、イスラエルへの軍事支援決定

23日、アメリカ議会は、反対勢力を押し切り、戦争支援措置として、ウクライナ、イスラエル、台湾へ950億ドルを支援することで合意。24日、バイデン大統領がこれに署名した。

このうち、イスラエルへの支援額は170億ドル(2兆6000億円)で、ガザなど復興支援に90億ドルとされている。ガザへは、追加で10億ドルを加え、100億ドルを当てるとバイデン大統領は言っている。

www.timesofisrael.com/biden-signs-95-billion-war-aid-measure-with-relief-for-ukraine-israel-and-taiwan/

イスラエルでは、これから戦争がエスカレートすると予想され、迎撃ミサイルも大量に必要な時、非常にありがたい決定だ。

ところで、イスラエル軍は、お金がありあまっているわけでなく、兵士たちのブーツや軍服などさまざまな物資を献品にたよっているというのが現状である。このアメリカの軍事支援はほっとしたというところだろう。

www.timesofisrael.com/six-months-into-war-israeli-soldiers-still-count-on-donations-for-basic-supplies-why/

イスラエル軍部隊に制裁を検討:西岸地区の過激入植者問題

イスラエルに支援金を決定したアメリカだが、同時進行で、パレスチナ人への暴力を働いている、西岸地区の過激右派ユダヤ人入植者個人への経済制裁を発動。その対象が、これに協力したと言われているイスラエル軍部隊にも広がっている。

Neza Yahudi HP

部隊の名は、ネツァ・ヤフディで、超正統派や宗教的シオニストたちからなる部隊である。この人々のイデオロギーは、過激入植者と同様、西岸地区は、神がユダヤ人に与えたものと信じている人々である。

西岸地区で、任務に当たっていた時には、入植者たちの暴力を取り締まらないなど指摘されていたが、特に問題となったのが、2022年1月に、78歳のアメリカ系パレスチナ人オマール・アサドさんを建築現場に放置し、ストレス性の新発作で死亡させたことが挙げられる。

オマールさんは、この部隊に、猿ぐつわされ、手錠をはめられた状態で死亡しているのが発見された。アメリカとの二重国籍でもあり、アメリカが問題視しているようである、

イスラエル軍は、調査した上で、オマールさんが心臓を患っていたことに兵士は気づいていなかった、オマールさんの死因とネツァ・ヤフディとは直接関係はないとして、刑事問題にはしないという判断に至っていた。その後、ネツァ・ヤフィディ部隊は、ガザで戦闘に当たっている。

アメリカは今、これを問題にし、これは重篤な人権侵害であり、アメリカの法律に触れるとして、この部隊に制裁を課そうとしているのである。

アメリカは、今、イスラエルへの軍事支援を決定したわけだが、この部隊には、アメリカの資金が行かないようにするということである。

ガンツ氏は、この部隊も、国際法に準じてガザで、活躍している最中だとして、今この時点で、IDF部隊への制裁を課すということは理解できないと反発している。

www.reuters.com/world/middle-east/what-is-israeli-netzah-yehuda-battalion-accused-2024-04-22/

石のひとりごと

入植者のパレスチナ人への暴力には、確かに問題はある。しかし、この部隊に制裁を課すほどのことがあったかどうかは、はっきりはしていないということである。

右派系ユダヤ人部隊への制裁は、イスラエル支援に反対する国内勢力の怒りを和らげる方策なのかもしれない。

しかし、ガンツ氏が言うように、今、制裁を課すということは、ハマスと戦っている部隊に、ブレーキをかけることにもつながる。イスラエルの軍事支援とは相反する動きともとれるわけである。

これまでの流れを見ると、アメリカの大統領は、イスラエルを支えるために、時に、本人の意思を超えて、イスラエルを支えることに、用いられている時があるような気がする。

トランプ大統領が、大使館をエルサレムに移すという大それたことをした時もそうである。バイデン大統領も、社会派紳士ではあるが、軍事支援を決めて、イスラエルを見捨てるようなことにはなっていない。

しかし、同時に、社会派真摯であるベテラン政治家としては、できるだけ人間的な正義も守らなければならないという葛藤もそのスタンダードから見えてくる。それが、ダブルスタンダードだと言われることにつながっているのだろう。

次回のアメリカ大統領選挙では、そういう紳士的配慮がない、トランプ大統領復帰するようである。いったいどんなことになるのか、想像もつかないというところだろうか。。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。