アメリカでユダヤ教コシェル・マーケット銃撃:4人死亡 2019.12.15

被害にあったコシェル・マーケット 出展:Bryan Anselm for The New York Times

10日の午後12時半過ぎ、アメリカ東海岸ニューヨーク・マンハッタンに近いニュージャージー州、ジャージー市で、コシェル(ユダヤ教食物規定を遵守する)のスーパーマーケットで、男2人による銃の乱射事件が発生。警察官1人と一般市民3人の計4人と犯人2人が死亡した。

死亡した市民は、ユダヤ教超正統派で買い物に来ていたモシェ・ハルシュ・デウチさん(24)と、レア・ミンデル・フェレンツさん(33)、スーパーの職員、ミグエル・ロドリゲスさん(49)。

警察官のヨセフ・シールさんは、近くの墓地にいたが、犯人2人がスーパーに入るのを防ごうとして射殺されたとみられる。ロドリゲスさんは、客を逃がそうとしていて射殺されたもよう。

道路に設置されていた防犯カメラが店周囲の様子を記録していた。それによると、犯人は、男性デービッド・アンダーソン(47)と、女性フランセン・グラハム(50)の2人。アンダーソンがまずスーパーの外から銃を打ち込み、続いてグラハムが店に入っている。

デービッド・ラックスさんは、この時現場にいたが、奇跡的に脱出して唯一の目撃者、生き残りとなった。ラックスさんによると、犯人の男女2人は、強盗が目的ではなく、最初から殺害を目的にしていたと語っている。

通報で、約20分後に警官隊が駆けつけ、2時間ほど店内にいた犯人と撃ち合いが続いたが、午後3時25分、ようやく踏み込んだところ、市民3人と、犯人2人の遺体を発見したという。

edition.cnn.com/2019/12/12/us/jersey-city-new-jersey-shooting-thursday/index.html

ジャージー市市長は、まだ未確認ではあったが、反ユダヤ主義暴力の可能性があるとして、市内のユダヤ関連施設に治安部隊を送って警戒に当たらせた。

こうした中ではあったが、翌日のモシェさんとレアさんの葬儀には、超正統派300人が出席した。ラビは、「これが現状だと知らなければならない。」と群衆に語った。警察やボランティアが、葬儀の間の警備に当たった。

www.timesofisrael.com/jersey-city-shooting-survivor-says-attackers-looked-well-trained-came-to-kill/

犠牲となったスーパーは、この地域では唯一のコシェルのスーパーで、超正統派たちの集まる場であった。犠牲となったレアさんは、数年前にこの地域に来て、夫とともにこのスーパーを経営しながら、イシバでも学んでいたという。

レアさんが殺害された日は、レアさんの息子の11歳の誕生日であった。

<犯人は、Black Hebrew(黒人ヘブル・イスラエル人)?>

犯行に及んだ2人は、犯行に及んだ際、銃を4丁所持していた上、乗ってきたバンにもう一丁と、パイプ爆弾まで所持していた。

被害を受けたスーパーは、ユダヤ教イシバ(神学校)に隣接しており、事件当時、イシバには、50-60人のユダヤ人小学生がいた。犯人は当初この学校を狙う予定だったが、スーパーを襲撃することに計画変更したとみられる。

もし学校が襲撃されていたらさらに大きな大惨事になるとことろであった。

www.timesofisrael.com/jersey-city-mayor-says-gunmen-wanted-to-target-next-door-yeshiva-with-50-kids/

犯人のアンダーソンは、元アメリカ兵で、武器にはなれている人物であった。また、Black Hebrew(黒人ヘブル・イスラエル人)と呼ばれる組織への興味を示していたが、実際にこの組織とどの程度関わっていたかは不明である。

このグループは、アメリカのアフリカ系黒人たちで、自分たちこそ聖書的なヘブル人だと信じており、反ユダヤ主義思想を表明するものもいる。

www.nj.com/hudson/2019/12/its-a-miracle-dozens-of-children-were-inside-jewish-school-next-door-to-deadly-jersey-city-shooting-scene-rabbi-says.html

アメリカでは、2018年にピッツバーグのシナゴーグが襲撃され、11人が死亡するという反ユダヤ主義暴力が発生している。アメリカの反ユだや主義が急激に悪化していることはもはや誰の目にも明らかである。

<犠牲になった警察官に5万ドル(約550万円)献金:ニューヨーク地域の超ユダヤ教徒たち>

ニューヨーク地域の超正統派ユダヤ教とたちは、犯行を防ごうとして殺害された警察官のヨセフ・シールさんに感謝して、その家族のための献金を募った。

結果、事件発生からわずか20時間で、5万ドル(約550万円)が集まった。多くはシールさんの葬儀(おそらくはキリスト教)にも参列する予定だという。

9:11に関連するグループも、勤務中のことで、一家の柱を失ったシールさんの妻と5人の子供たちを助けるため、家のローンなどをカバーする

www.timesofisrael.com/orthodox-community-raises-50000-for-family-of-slain-jersey-city-detective/

さすが、献金と助け合いの文化基盤があるアメリカである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。