ブネイ・ブラックでパレスチナ人銃乱射テロ:5人死亡 2022.3.30

ブネイ・ブラックの現場 スクリーンショット

ISによるテロが2件続き、治安部隊が厳戒態勢をとっている中、22日夜8時前、テルアビブに近い、超正統派の町、ブネイ・ブラックで、パレスチナ人のよる無差別銃乱射テロが発生。イスラエル人5人が死亡した。この8日間で、イスラエル人11人が3件のテロで命を奪われたことになる。

3件目ブネイ・ブラックでのテロ

現地メディアによると、テロリストは、西岸地区ジェニン近くのヤバド住民で、イスラエル国内に違法に入国していたパレスチナ人、ディア・ハマスシェア(26)。どうやって検問を通過したのかはわからないという。

ディアはテルアビブ東部、超正統派が多いブネイ・ブラックに車で乗り付け、車から降りると、歩行者に向けて無差別に大きなライフルで乱射した。この時に3人が即死した。

自転車の男性を撃ち損ねたあと、近づく車に「止まれ」と言いながら乱射し、車は建物につっこんだ。さらに数百メートル移動して、また乱射。この時に1人が即死。ディアは、近くにいた警察官2人が射殺した。しかし、2人のうちの1人が撃たれて病院に搬送されたが、後に死亡が確認された。

現地メディアによると、ディアは、過去に、テロ組織との関連や武器所有で、イスラエルの刑務所に収監された過去があった。事件直後、パレスチナ地域にいるディアの家族が、スイーツを配って、大勢のパレスチナ人たちと“祝い”をしたという。

www.timesofisrael.com/palestinian-gunman-kills-five-in-bnei-brak-terror-spree/

犠牲者は若い父親や優秀な警察官ら

犠牲者は、ヤアコブ・シャロムさん(36)遺族は、母親と妻と4人の子供たちである。ヤアコブさんは、昨年コロナで死亡した、ブネイ・ブラックで著名なラビ・メイール・シャロムの息子であった。ヤアコブさんの母親は、短い機関に夫と息子を亡くしたことになる。

アビシャイ・イェヘジケルさん(29)さんはイシバ(ユダヤ教神学校)学生だった。2歳の息子をベビーカーに乗せて散歩に出た時にテロに遭遇し、息子を守ろうとして死亡していた。遺族は、この2歳の息子と、妊娠8ヶ月の妻である。

もう2人の犠牲者はウクライナからの外国人労働者(23歳、32歳)で、名前はまだ発表されていない。

5人目の犠牲者となったアミール・コーリーさん(32)は、ナザレに在住するアラブ人警察官(クリスチャン)だった。父親もベテラン警察官の警察一家だという。遺族は両親と姉妹2人。シャブタイ警察長官が直々に家族に訃報を知らせている。

www.timesofisrael.com/among-victims-of-bnei-brak-terror-attack-two-fathers-and-a-police-officer/

4月ラマダン中、テロの波への警告:ベネット首相

ウクライナ問題でベネット首相や政府も外交に集中していたこの8日の間に、実は国内では、コロナ感染拡大と、パレスチナ人との衝突が発生しており、政府への批判が出始めていたところであった。

結局、この8日間の間に、3件ものテロ事件が発生し、11人が犠牲になったのだが、ここ数週間、西岸地区や東エルサレムでも、パレスチナ人とイスラエル治安部隊との衝突が散発しており、その時々に死亡したパレスチナ人(10代少年も複数含む)も、10人にのぼっていたのであった。

最近では、3月15日にも西岸地区で、イスラエル治安部隊とパレスチナ人の衝突で、パレスチナの若者2人が死亡している。以下はその葬儀の様子。

今回のテロは、先のベエルシェバ(4人死亡)とハデラ(2人死亡)での2件のテロが、IS関連であったことから、月曜から火曜にかけての夜間に、警察が、西岸地区パレスチナ人地域へ捜索に入り、IS関連の疑いがある12人の身柄を拘束した、その日に発生していた。

パレスチナ人の間に拡大する敵意がまた活発化しているとみえ、事件後、家族は周囲にスイーツを配り、多くのパレスチナ人と祝いをする様子が伝えられている。

一方、ブネイ・ブラックでは、現場で、右派を含むユダヤ人たちが、「アラブ人に死を」と復讐を叫ぶ様子もあり、双方の過激な人々の間で、敵意がまた危険なレベルになっていることが懸念される。

パレスチナ自治政府のアッバス議長は、めずらしく、事件直後にテロを非難し、「ラマダンを前に、イスラエル人とパレスチナ人を殺すことは、状況を悪化させるだけだ。」との声明を出した。

ベネット首相は、ガンツ防衛相や警察関係者と緊急対策会議を行い、国民に対し、イスラエルは今、アラブのテロの波に直面しているとの警告を発した。

コロナにウクライナ、一難去って、また一難、追加である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。