過激化する超正統派グループと警察の衝突 2021.1.27

燃やされたバス 出展:イスラエル警察

超正統派と警察の衝突

イスラエルでは、ユダヤ教超正統派と、警察との暴力的な衝突が問題になっている。理由は二つ。コロナ対策によるロックダウンへの反発と、エルサレム市内を走る路面電車の通路への反発である。

テルアビブ近郊のブネイ・ブラックと、エルサレムのメア・シャリームでは、超正統派たちの一部が、政府のロックダウンに従わず、密集した状態での結婚式を行ったり、子供たちを学校へ通わせたりしていた。

ブネイ・ブラックでは、これを取り締まりに来た警察隊と暴力的な衝突となり、バスが炎上する騒ぎとなった。バスドライバーは、バスが燃やされる前にバスから引き出され、暴行を受けたと証言している。

www.timesofisrael.com/police-firefighters-stood-by-for-an-hour-as-ultra-orthodox-mob-torched-bus/

また、エルサレム市内を走る路面電車の経路を変更する計画に反発し、レールにセメントを流し込む事態になった。このまま路面電車が走っていたら、脱線し、大事故になるところであった。

www.timesofisrael.com/haredi-protesters-endangered-light-rail-passengers-lives-operator-says/

無論、超正統派の人々すべてがこのように過激に走っているわけではない。こうした過激な行動に出ているのは、超正統派社会の過激なユースたちが中心になっている。こうした動きに、怒りを表明する超正統派もいる。

コロナで両親を失った超正統派男性

イスラエルでZAKAと呼ばれる組織は、テロ現場や、変死体などを扱うボランティアの救急隊で、運営しているのは超正統派たちである。今も、海外から到着するコロナで死亡したユダヤ人の遺体の処理などを行っている。

このZAKA指導者のイェフダ・メシ・ザハブさんは、家族とともにエルサレムのメア・シャリームに住む超正統派であるが、最近、両親を立て続けにコロナで失った。

Yehuda Meshi-Zahav with his mother Sarah in an undated picture. (Courtesy Mendy Hachtman)

イエフダさんの家族は、イエフダさんの警告と反対にもかかわらず、昨年12月、プリムのパーティを催した。結果、イエフダさんの母親はこのパーティで、コロナに感染して先週、死亡した。数日後には、父親もコロナで死亡し、イエフダさんは、わずか10日ほどの間に、コロナで両親を失った。

イスラエルでは、新型コロナ感染者の実に40%は、人口比20%の超正統派である。医療の逼迫が問題になっている中、入院中のコロナ患者の多くが超正統派で埋められている。

超正統派の間では、指導者であるラビたちの多くが、きちんと感染予防対策をするよう指導していない。イエフダさんの母親が所属するシナゴグでも、「もうコロナは終わった」的な認識になっていたという。

イエフダさんは、自身も超正統派だが、「超正統派のリーダーたちは、まるで別世界にいる。両親や、その他の多くの感染者の血の責任は彼らにある。」と超正統派社会のリーダーたちが間違っていると指摘する。

超正統派:イスラエルの中の別社会

Times of Israel は、この問題が、たんにラビたちが十分な情報を得ていないとか、現実逃避による自殺行為をやめさせなければならないと指摘する。

超正統派社会が、一般社会とは別世界のセミ自治区になっていることにあることを指摘する。そして、このセミ自治区は、政府がこの人たちを祭司とみなして、兵役につかせず、経済的にも保護することをし続けてきた国によってつくられたのである。

今この社会との分断が問題になっているが、この状態にまでこの社会の拡大を見過ごしてきた政府にも責任があると指摘している。

www.timesofisrael.com/ultra-orthodox-covid-extremists-betray-judaisms-emphasis-on-sanctity-of-life/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。