西岸地区でパレスチナ人約1000人が自宅から避難:過激ユダヤ人入植者への恐怖 2023.11.21

ヘブロン南部のパレスチナ人村ザヌータ 過激ユダヤ人の攻撃の後住民は避難した(Jeremy Sharon / Times of Israel)
白い部分がC地区

ヨルダン川西岸地区は、パレスチナ自治政府が主権をもつA地区、治安だけはイスラエルが主権を維持するB地区、イスラエルが主権を持ち、ユダヤ人入植地が存在するC地区がある。いうまでもなくC地区が最大なので、その中に、パレスチナ人居住地も多数混じっている。

今年初頭に、イスラエルで、強硬右派政権が発足して以来、このC地区でのユダヤ人入植地を拡大する動きにあり、パレスチナ人たちと衝突することが多くなっていた。そうした中で、ハマスとイスラエルの戦争が始まったということである。

ハマスはガザだけでなく、西岸地区、特にA地区のジェニンやナブルス、ヘブロンなどを中心にかなり進出している。イスラエルはパレスチナ自治政府に取り締まりを任せていたが、アッバス議長の求心力が弱体化して、もはや任せておけなくなった。

このため、イスラエル軍や国境警備隊がA地区にも入って、武力でテロ計画やテロリスト、密輸武器の摘発を行うようになっている。これまでに、イスラエル軍との衝突で死亡したパレスチナ人は200人を超えた。

また、西岸地区のもう一つの問題は、セトラー(入植者)と呼ばれる過激ユダヤ人たちが、パレスチナ人を追い出そうとして、嫌がらせや暴力を振るっていることである。最近ではモスクや家屋への放火といった深刻な暴力も発生していた。

こうした中で、始まったハマスとイスラエルの戦争である。C地区にいるパレスチナ人は、過激ユダヤ人の怒りが自分達に向くことを恐れて、これまでに、16地区に住む963人にのぼるパレスチナ人が、自宅を離れて避難していることがわかった。(左派系ユダヤ人の法律家の団体・ベツァルエル調べ)

こうした状況を受け、特に普段からユダヤ人との衝突が多いヘブロン南部のスシヤ、ワジ・ジャラッシュやヨルダン渓谷の村などに住む26人のパレスチナ人が、イスラエルの高等裁判所に対し、イスラエル軍か警察が出動し、過激ユダヤ人からパレスチナ人たちを保護するよう要請する訴えを提出した。

訴えによると、入植者たちが、繰り返し現れて、家やインフラを破壊したり、道路を閉鎖し、時に住民を銃撃することもあるという。警察に連絡しても、軍も警察も助けに来ない共訴えている。

以下は、実際にパレスチナ人の村に来た、正式なIDFの制服をきていないユダヤ人の様子。特に暴力にはなっていないが、パレスチナ人たちには十分恐怖を与えているようである。この2人は後にIDFから追放の処置を受けたとのこと。

西岸地区に来るイスラエルの治安部隊は、イスラエル軍、国境警備隊(警察権限下)両方が入ってくるので、ユダヤ人入植者をとりしまるのが、どの権限なのかが、明確になっていないとの見方もある。

しかし、エリアCはイスラエルの管轄であるので、国際法だけでなく、国内の法律に基づいても、イスラエルの警察や軍にパレスチナ人を保護する法的責任があると言われている。

しかし、ハマスとの戦争が進む中、イスラエル軍が、パレスチナ人を保護するという頭に切り替えもなかなか難しいかもしれない。過激右派が、大きな暴力を決行しないよう、とりなしを。

www.timesofisrael.com/high-court-petition-demands-idf-police-protect-palestinians-from-settler-violence/

www.timesofisrael.com/facing-violence-and-harassment-hundreds-of-palestinians-flee-west-bank-villages/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。