新たなカリフォルニア変異種も発見で空港再閉鎖 2021.1.26

空港の閉鎖を決めたネタニヤフ首相、エデルステイン保健相ら 出展:GPO

<ベン・グリオン空港26日から31日まで全旅客機の着陸を禁止>

イスラエルでは、厳しいロックダウンとともに、世界最速でワクチン接種が進められ、その効果も見え始めている。新規感染者はまだ多い日は8000人を超えているが、ピークからは下り坂に向かうかに見えている。

しかし、重症者数、死者数はまだ減少には転じておらず、1月だけで、すでに1000人が死亡している。病院の逼迫も深刻である。また、海外からコロナで死亡したユダヤ人の遺体が、手に負えないほど、空港に送り届けられているという。

またイスラエルでは、コロナ変異種のイギリス型、南アフリカ型、ブラジル型に続いて、アメリカのカリフォルニア型なるものも国内で発見された。このため、これ以上の外来種の侵入を防ぐとして、政府は、ベングリオン空港での海外からの旅客機を26日から31日までの予定ですべてキャンセルすることを決めた。国内便についても検討するとのこと。

ただし、のちに、医療関連や物流は停止せず、特別な出国便は認めるとi24が伝えた。

*これまでは、イスラエル人に限り、出入国は、空港で検査を実施する形で、再開されていた。

この措置は、イスラエルへの移住者の便も例外ではなく、イスラエル史上、始まって以来の事態となっている。特に今、エチオピア系ユダヤ人の移住作戦が行われている最中だが、エチオピアは内戦中なので、移住が急がれるところである。

ネタニヤフ首相は、空港閉鎖について、変異種の流入を防いで、ワクチン接種を急ぎ、1日も早く、通常の生活の戻すことが目的だと閣僚に説明している。

www.jpost.com/israel-news/coronavirus-govt-to-shut-the-skies-as-number-of-serious-patients-increase-656518

www.timesofisrael.com/israel-halts-all-commercial-flights-in-bid-to-keep-virus-variants-at-bay/

<ロックダウンの期限1月31日:延長か否か>

こうした中、現在の厳しいロックダウンの期限、1月31日か近づいており、この延長の是非も論議されている。保健省コロナ担当ナフマン・アッシュ博士は、先週、感染拡大が緩和傾向にあるとして、ロックダウンの延長はないかもしれないと、明るい期待を語っていた。しかし、今週に入って、再び、決断は慎重に決めると言う流れである。アッシュ博士は、今回の波が最後ではないかもしれないとも語っている。

しかし、1年にもなるロックダウンで、経済への影響も大きく、すでに限界となっている。国の保険機構によると、失業率が回復しないままなので、1家族の平均収入は11%減少したとのこと。これにより、イスラエル人に平均生活水準は4.4%下がり、貧困線以下の生活になった人は7%も増えた。

ステイホームにも限界のようで、国内では、ブネイ・ブラック、エルサレムのメア・シャリームという2つの超正統派地域で、過激な超正統派の若者たちが、感染予防取り締まりに来た警官隊に暴力的な反発を見せ、大型バス2台が炎上する騒ぎとなった。(別記事でのちに報告)

ガンツ氏は、もうロックダウンの延長はむりではないかとの意見を出したが、ネタニヤフ首相と政府は、慎重な姿勢を続けている。テルアビブでは、閉店した店に、ネタニヤフ首相の写真とともに、「私が閉めました。」などと張り紙をしているところもある。

ネタニヤフ首相とカッツ財務相は、24日、国民全員への現金配布案を明らかにした。その案によると、すべての成人に1人750シェケル(2万5000円)、人家族に4人までですべての子供1人に500シェケル(1万6000円)を提供するという案である。

しかし、これについては、3月の選挙前に実施することで、人心を買うことにもつながりかねないので、ライバル政党などからは政治的だとの批判が上がっている。マンデルビット司法長官もこれに反対しているとのことで、実際に実現するかどうかは不明。

www.timesofisrael.com/netanyahu-pledges-cash-handouts-during-election-campaign-over-ags-objection/

<Go to トラベルならぬGo to UAEを黙認した政府への批判>

イスラエル政府は、アブラハム合意で国交正常化が実現したUAEとの外交関係を急速に進めている。24日、イスラエルは、公式のイスラエル大使館をアブダビに設置した。(別記事で解説)

ここへ持ち込むためかどうかは不明だが、政府は、UAEでのコロナ感染が比較的良好であることから、グリーン国と定め、今に至るまで、イスラエル人が、UAEに観光で出かけることに制限をかけなかった。このため、大勢のイスラエル人が、いっせいにロックダウンが発令さえる直前にドバイへ出かけたのであった。

しかし、ドバイは非常に国際的な都市である。ドバイへの旅行が将来、感染拡大に繋がる可能性があることは専門家たちは、警告していたのであった。実際、この人々が帰国すると、空港がかなり密状態になっていたことや、感染者が、隔離に応じないなどのトラブルも発生していた。

甘いドバイの感染予防策を封じるi24

今のイスラエル国内での感染は、政府がUAEへの旅行を止めなかったことが一因ではないかとの批判も出ている。

www.ynetnews.com/article/H100WKm3yO

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。