戦時下で発見:アッシリアの石とローマ帝国軍常設基地 2024.2.26

(Emil Aladjem/IAA)

イスラエルは、戦争が続く中にあるが、それでも考古学の発見はある。2つ紹介する。

タボル山自然保護区で2800年前のアッシリアかバビロニアの石

しばらく予備役兵として徴収されて、2日間だけの休暇で帰国していたエレズ・アブラハモブさん(45)が、ガリラヤ地方のタボル山自然保護区を散歩していたところ、雨で浮き上がってきたのか、赤茶オレンジ色のスカラベ(昆虫フンコロガシ)のようなものを発見。

 

カーネリア石から作られており、面はフンコロガシだが、裏には、当時一般的だった翼のある馬の絵がほられている。イスラエル考古学庁によると、推定2800年前、紀元前8世紀のアッシリアもしくは、バビロニアのものと考えられている。

スカラベが見つかったエリアには、紀元前6―7世紀のアッシリア、もしくはバビロンに関係する遺跡が発見されている。第一神殿時代が終わりに近づいたころの遺跡である。今回見つかったスカラベは、この時代の高官が持っていたものではないかと考えられている。

このように、イスラエルでは、大雨が降ると、こんな貴重な遺跡が出てくる可能性があるという。いうまでもなく、非常に貴重なものであり、違法に取引するものも出てくる。イスラエルでは、1700年以前のものとみられる考古学的な発見物は、国の考古学庁に提出することが義務付けられている。国宝である可能性があるからである。(写真IAA)

www.timesofisrael.com/galilee-hiker-stumbles-upon-2800-year-old-assyrian-scarab-seal/

テル・メギドに1800年前の巨大ローマ軍基地!?

IAA

2000年前のローマ帝国にはレギオンと呼ばれる強大なローマ軍があり、その常設基地が、イスラエル北部のテル・メグ土の麓、66号線両側に広がっていたとイスラエルの考古学庁が14日に発表した。

基地はかなり巨大で、西暦120年から300年ぐらいまでの約180年間、レギオン軍団の5000〜6000人の兵士が駐屯していた常設基地とみられる。

年代からすると、第二神殿時代のイスラエルがなくなる前のローマ帝国とイスラエルの戦い(66-73年)とバルコフバ戦争に関わっていたと考えられる。

これほどに巨大な常設基地が発見されるのは初めてだという。ここでは、建物の屋根や、床、壁の他、硬貨や、ローマ軍特有の武器の一部、陶器の破片もみつかっている。ローマ軍の一時的な包囲網用の臨時基地は多数みつかっているが、このように常設の基地がみつかるのは初めてとのこと。

この地域には、世界遺産とされるテル・メギドと、刑務所の中に、1世紀初期キリスト教会の遺跡もみつかっており、考古学的に非常に重要な地位として、将来の観光にも期待されている。

www.timesofisrael.com/buildings-roads-in-huge-complete-roman-era-military-base-revealed-by-excavations/

石のひとりごと

イスラエルの場合、考古学的発見は、単に科学的歴史的に重要であるだけでなく、それだけ昔からイスラエルが、存在していたことを証明するものでもあり、非常に重要なのである。

また時に考古学的な発見が、その時代への預言的意味合いを含むこともある。イスラエルが建国する1年前に、死海写本のイザヤ書全巻が発見されたなどである。

www.timesofisrael.com/galilee-hiker-stumbles-upon-2800-year-old-assyrian-scarab-seal/

今回発表がつづいた2つの発掘は、第一神殿時代のイスラエルを包囲したアッシリアに関するものと、第二神殿時代のイスラエルを包囲したローマ帝国に関するものであった。

今のイスラエルも、南北から、敵に包囲されている中での発見であり、なんとも不気味な感じもする。特にテル・メギドは、新約聖書によると、イスラエルが包囲される、世界最終戦争の現場としてもその名前が出てくる場所である。なんとも不気味な感じ。。。単なる石のひとりごと。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。