安息日にガザから広範囲ロケット弾5000発で死傷者:イスラエル領内侵入でIDFと市街地で戦闘・イスラエル市民ら人質に 2023.10.7

Rockets are fired from Gaza City towards Israel on October 7, 2023. (SAID KHATIB / AFP)

シムハット・トーラーの朝サプライズ攻撃:遅れとるイスラエル

本日7日(シムハット・トーラー土曜・安息日)早朝7時前ごろから1時間あまり、ロケット攻撃が続き、イスラエル南部スデロットなどガザ周辺と、テルアビブ、エルサレムにまでサイレンが鳴り続けた。

ハマスは、この作戦で5000発のロケット弾をイスラエルに向けて発射したと発表している。

同時に、武装したハマス戦闘員数十人が、ガザからイスラエル領内スデロットに侵入し、市街地で戦闘になっている。テロリストたちは、街に火を放ち、市民たちが助けを求める中、複数のイスラエル市民を連れ去ったとのこと。

兵士にエスコートされて逃げる市民(アシュケロン)Ashkelon, southern Israel, Oct. 7, 2023 (AP Photo/Tsafrir Abayov)

MDA(救急隊)によると、これら一連の攻撃で、イスラエル人5人が死亡。少なくとも16人が負傷。2人は重傷となっている。加えて、逃げる時に転んで負傷したり、心理的なケアを要した人も多数いた。*その後の報道で負傷者は100人を超えているとのこと。

イスラエル軍のハレヴィ参謀総長は、状況把握の後、今後、状況が悪化していくとして、戦争に備えるようにとの緊急指示を発表。市民たちには、大勢が集まる集会を控えるようにとの指示を出した。

後に、治安閣議が開かれ、ギャラント防衛相から、ガザから80キロ圏内(テルアビブは70キロ)を緊急事態地域に指定するとの発表が出された。

この発表が出たのは、土曜安息日の朝8時15分(日本時間午後2時15分)と、ユダヤ人たちが、ちょうどシナゴーグに向かう時間帯である。メシアニックの教会、エルサレム・アッセンブリーからは、礼拝に来ないで家のシェルターか防護室に留まって、そこで祈るようにとの指示が届いている。

毎週続けられてきた反司法制度改革デモは、今週の安息日明けのデモを中止すると発表した。

また、今は季節的にも仮庵の祭りの最終日で、ICEJのクリスチャンたちはじめ、全世界からは特に大勢の旅行客が来ている。ツアーガイドたちへの指示を円滑にするため、観光省が特別なオンラインオフィスを立ち上げて、混乱回避に勤めている。

ガザからイスラエル南部・中央部にもロケット攻撃:死者5人か

ガザからのロケット弾は、イスラエル南部のガザ周辺だけでなく、テルアビブから、スデ・ボケル、アラッド、ディモナや、エルサレムなど中央部にまで到達している。アシュケロンでは、アパート群の間の駐車場に着弾したのか、駐車中の車が炎上している映像も届いている。

エルサレムポストによると、アシュドドの北東部にあるゲデロットで、アパートのビルが直撃を受け、女性(60代)が死亡した。また2人が重傷、6人が中等度負傷、7人が軽傷を負った。

まだ情報が錯綜している中だが、ガザから65キロの南部ベドウィンの街、クセイフェの市長からの報告として、少なくとも4人が死亡しているとTimes of Israelは伝えている。

スデロットにハマス武装兵数十人侵入:市街地でイスラエル軍と銃撃戦:イスラエル市民複数拉致

ロケット攻撃と同時にガザからは、ハマス戦闘員数十人が、スデロットに侵入。市街地で銃撃戦になっている様子が伝えられている。スデロットでも死傷者が出ているもようだが、詳細は不明。

市内のどこにテロリストがいるかわからないので、住民は恐怖の中、声を顰めながら、家の周囲からの侵入を防ぐ手立てを講じている。屋外では銃声が鳴り響いているという。

街に自由奔放に火をつけるなど、まるでシリアかどこかの戦場のようになっている。そうした中で、複数のイスラエル人たちが捉えられ、連れ去られているとのこと。

www.ynetnews.com/article/rysg8i0l6#autoplay

今しがた入っている情報によると、パレスチナ人たちは、ガザ国境で、イスラエル軍の戦車を奪っているもようである。

ハマスが犯行声明「アル・アクサ洪水作戦」開始を宣言:敵対アラブ諸国とイスラエル国内のアラブ人にも蜂起を呼びかけ

ハマスは、一連の攻撃を「アル・アクサ洪水」作戦だと犯行声明を出し、イスラエルに向けて5000発のロケット弾を撃ち込んだと発表した。

攻撃の理由について、軍事指揮官モハンマド・デイフは、イスラエルが、エルサレムのアルアクサモスクを汚したからだと述べた。またイスラエルは、今年すでに数百人のパレスチナ人を殺し、捕虜交換にも応じなかったと述べた。「今日、我われは、革命と帰還への行進(March of return)を再開したと宣言した。

現地メディアによると、トラックから、ガザで捉えられたままになっていたイスラエル兵らしき遺体をひきづり出して、その上でジャンプ、「神は偉大だ」と押しつぶす映像が流れていたとの情報もある。

さらに、Times of Israelによると、デイフは、“イランの支援を受けている”レバノン、イラク、シリアとレバノン国内の抵抗運動している組織に対し、今、パレスチナ人とともに立ち上がるよう、呼びかけたとのこと。

イスラエルの反応:めずらしく遅い?

サプライズでハマスからの急襲を受けて、イスラエル軍は急遽、大規模な予備役の招集をかけた。ギャラント防衛相は、「ハマスは、致命的な間違いを犯し、イスラエルに戦争をしかけた。イスラエル軍は、すべての地点で戦っている。」と述べた。しかし、その詳細はまだ伝わってきていない。

国境でイスラエル軍の戦車が、パレスチナ人に奪われるなど、本当にありえない話だ。

ネタニヤフ首相の先陣をとる様子もまだメディアには出ていない。これはかなり、めずらしいのではないかと懸念させられる。*さきほど首相声明が出た。

*悪化するパレスチナ人との暴力:50年前のヨムキプール戦争勃発記念日翌日にイスラエルに油断あった?

これまでからも伝えてきたが、この状態が勃発する直前の5日、西岸地区ツルカレム難民キャンプで、ハマス戦闘員3人が死亡。イスラエル兵5人が負傷するという大規模な衝突が発生していた。以下はその様子。

cdn.jwplayer.com/previews/isQzTL2i

今年に入ってから、頻発する同様の衝突で死亡したパレスチナ人は、194人(大部分は戦闘員)となっている。一方、テロで死亡したイスラエル市民は27人で、イスラエル兵は2人である。

パレスチナ人との対立は悪化を続けていたので、イスラエル軍部は、今のような大規模な戦闘は、必ず勃発すると考えていたのであった。しかし、まさか、仮庵最終日、シムハット・トーラーの日にこんなことになるとは、思っていなかったのではないかとの指摘もある。

皮肉にも、この攻撃の前日の6日、イスラエル人は、50年前のこの日、ヨム・キプールの日で油断している時に、戦争が始まったことを記念したばかりであった。

*ネタニヤフ首相から市民たちへメッセージ(GPO情報)

スクリーンショット

ネタニヤフ首相は、12:00(日本時間18:00)に市民へのメッセージを出した。

ネタニヤフ首相は、今回は、作戦ではなく、戦争に突入したと市民に伝えた。そしてまずは、ガザからの侵入があった地域の地域の治安確保を支持したこと、大規模な予備役招集を命じたこと伝えた。

敵はこれからいまだかつてないようなツケを払うことになるとして、今は治安組織の指示に従ってほしいと述べ、「私たちは、勝つ戦争の中にいる。」と述べた。

石のひとりごと

皆で喜ぶべきシムハット・トーラーの日にこの事態である。

時間が経つごとに、深刻な戦争状態になりつつある。時期的なこともあり、ちょっとまずいかもしれない。イスラエル市民たちが生きたまま人質になっているのである。

このままヒズボラが、何万発もミサイルを放ってきたら、それこそイランも登場して、本当に戦争になっていくかもしれない。

いずれにしても、このままイスラエルが黙っているはずもなく、これからの動向は分刻みで変わっていく。この状態では、さすがに内部分裂して予備役を拒否するイスラエル人はいないだろう。

しかし、今、サウジアラビアとイスラエルの国交が成立するかもしれない空気、いいかえれば、パレスチナ人が見捨てられる空気というものも出ている中でのことであり、今後ヒズボラ、レバノンやシリア、イランなどがどう反応するだろうか。加担してきたら、本当に大戦争になる。

しかし、もし彼らが手を出さなかった場合、イスラエルに勝てるはずもなく、パレスチナ人はいよいよ惨めになっていく。逆に、サウジアラビアがイスラエルと国交を結びやすくなることにもなるのかもしれない。パレスチナ人としても最後の賭けに出たということだろう。

今は予想は難しいが、ともかくも、イスラエル人に死者が出ないようにと祈る。特に誘拐された人が心配だ。また世界から来ている旅行者も心配だが、特にイスラエルに愛を伝えるために来て、たった今、イスラエル国内にいる福音派たちは、今こそ、現場でとりなす時だ。

またこうした緊急事態、現地の教会の動きにも注目される。国から礼拝で集まることを控えるようにとの指示である。日本にはここまでの緊急事態はないかもしれないが、イスラエルにはあるということである。日本の教会もオンラインでの連絡網はぜひ確立しておくべきと思う。

エルサレムアッセンブリーは今、オンラインで連絡を取り合っている。また、「私たちの神はすべての主権者であることを忘れないように」とのコメントと共に、助けが必要な人の連絡先が届いている。こうした時に、励まし合い、助け合うことのできる教会があることは本当に大事なことだと思う。

事態は刻々と変わる。配信は、1日一回なので、ブログサイトを時々見ながらとりなしていただければと思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。