反ネタニヤフ首相デモ衝突で50人逮捕:エルサレム首相官邸前 2020.7.15

エルサレム首相官邸前では、汚職で起訴されているネタニヤフ首相が、そのまま在職して、民主主義を危うくしているとして、辞任を求めるデモが、これまでからも行われていたが、10日にも1000人規模のデモが発生していた。

このため、ここしばらく、首相官邸前には、テントがいくつも貼られて、座り込みデモ状態になっていたが、警察は、13日、これを強制的に撤去した。

すると14日夜、エルサレムの首相官邸前に600−700人が集結し、ネタニヤフ首相辞任を求めるデモを行い、警察との衝突となった。同様のデモは、同時刻に、テルアビブなど、全国各都市でも行われた。合計すると6000−7000人がこのデモに参加していたとみられる。

なお、このデモの背景には、主催はブラック・フラッグと呼ばれる反ネタニヤフフループがあると言われている。

エルサレムでは、暴徒が、警察が設置した策を乗り越えようとしたり、解散後、ダウンタウンに移動すると、「ビービー(ネタニヤフ首相)恥を知れ。帰ってしまえ。」と叫びながら、ヤッフォ通りの路面電車を妨害したため、警察は放水砲を使ったりしてデモ隊を解散させようとした。

カレン・カヤソッド通りでは、デモ隊が、公共の火のついた大きな公共のゴミ入れを押して、道路封鎖の策を押し出して危険な場面にもなった。これにより、警察官一人が軽い負傷を負ったほか、50人が逮捕された。

警察は、「言論の自由はみとめるが、公衆を危険にさらすことは許さない。」と言っている。

<超正統派デモも3日目:エルサレム超正統派>

エルサレムでは、超正統派地域で、ロックダウンに反対する超正統派と警察との衝突が3日になる。火曜日には16人が逮捕された。

感染は拡大を続けている中、国民の怒りを受けて、政府も、対策をまとめることができず、立ち往生である。しかし、それでも感染拡大は、容赦なくどんどんすすんでいるので、エデルステイン保健相は、これはもうロックダウンしかないと語っている。

<石のひとりごと>

今回の様々なデモ映像を見ていると、真剣に民主主義が危ないと見て、平和的にデモを行っている人がほとんどではあるが、中には、ゲイの虹色の旗をふりかざしたり、妙なコスチュームで叫ぶ若者など、これに乗じるかのように参加する人もある。

感染拡大と、経済悪化の先が見えない中、人々はどこに怒りを向けたらいいのか、わからないのかもしれない。聖書時代に、続く困難の中で、当時の指導者であったモーセに怒りを向けたのと似ているようでもある。

とはいえ、イスラエル国内の大方の大衆は、デモには参加せず、ニュースを見ながら、不安の中で、日々の生活を送っていると思われる。調査では、85%は、この先の生活に不安があると答えていた。

イスラエルでは、新型コロナ治療薬レムデシビルのストックが底をつきはじめており、別の治療法や、ワクチン開発が進んでいるとのニュースも出ているが、どれもまだ、大きな前進にはなっておらず、先行きはますます見えなくなってきている。

イスラエルという国は戦いには慣れているので、通常ならかなり先まで見越して、よく練られた作戦をもって戦うのだが、今回だけは、まるで予想ができず、いったいどうしたらいいかわからない。。という姿にみえる。

イスラエル人は文句を言うときは容赦なく言うが、いったん満足すればすぐに方向転換する。激しいが根に持たないという特徴があるので、この衝突も今だけのものであろうとは思うが、このまま国がバランスを崩して崩壊してしまわないように、この苦しみの時を縮めてくださるよう、主へのとりなしが、前にも増して必要になっている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。