テルアビブで大規模デモ:政府のコロナ対策に不満 2020.7.13

テルアビブのラビンスクエアに集結したデモ隊  出展:i24 https://youtu.be/JDqJIiskpLQ

テルアビブで1万人級デモ

11日安息日開けの夕方から、テルアビブのラビンスクエアでは、数千人から1万人ともみられる大群衆が集まり、政府のコロナ対策、特に、自営業者やフリーランスへの経済支援が不十分だ、明日食べるパンがないと訴えた。

これだけの群衆が集まることは、感染予防上、好ましくないことは当然だが、警察は、マスク着用や、パーソナルディスタンスを維持することを条件に、デモへの許可を出した。デモが始まる前には、感染予防の原則を守るように叫ぶ声が聞こえたとのことである。

参加した人のなかには、こんなデモには通常参加したことがないという人も含まれていた。無休休暇に置かれたり、給与が月1500シェケル(約4万5000円)と生活不可レベルまで下がっている人もいる。

デモに参加した人は、「これは通常のテルアビブのデモ(政治的)ではない。私たちは、単に遅れている支援を早くしてほしい。明日食べるパンがない。」と言っているのだと言っている。また、政府は、国民の困窮を理解せず、西岸地区の併合や、税収入のことを考えていると怒りを表明する人もあった。

現在、イスラエルの失業率は、21%、失業者は80万人前後で推移している。先週、政府が5地域の封鎖を決めたことで、失業者は若干増えた。これは先進国でダントツである。青白党党首のベニー・ガンツ防衛相は、SNSでこれを支持する意向を表明。「政府はこの声を聞いて対処しなければならない。」と述べた。

このデモは、基本的に、国民が経済対策を求めてのデモであったが、デモにまじって、ネタニヤフ首相の汚職を批判し、辞職を要求する政治的なグループの訴えもみられた。また、ローマ兵のような、なんとも場違いなコスチュームに身を包んでいる人もいた。

デモはおおむね平和的だったが、一部は、テルアビブの主要道路を閉鎖しようとしたため警察と衝突し、20人ほどが逮捕された。

カッツ財務相:経済はコントロール下にある

ネタニヤフ首相は先週木曜、高まる国民の批判を受けて、あらたな経済制裁と、支援金の送金を急ぐと発表したばかりであった。またこのデモの翌日、政府は、先週ネタニヤフ首相が、自営業者に約束した7500シェケル(約23万円)支給案を承認した。

テルアビブでのデモの最中、チャンネル13のニュース番組に出演したカッツ財務相は、「支援金の遅れは、前任者の時の不備であり、自分が引き継いでから(5月17日)は、すべてコントロール下にある。」と述べ、約束した支援金は、14日には銀行に送金され、15日には手元に届くと述べた。

www.timesofisrael.com/thousands-demand-government-action-at-tel-aviv-protest-against-economic-policy/

少なすぎる支援金:わずか2000シェケル(約6万円)の人も

しかし、この7500シェケルという額について、イッツィク・シュムリ厚生相は、額が低すぎると指摘。「これでは、自営業者のための絞首刑執行人を呼び込むようなものだ。政府への信頼が失われているのも無理はない。」とコメントした。

すると、ネタニヤフ首相は、「新米の若い大臣が、私にむかってメディアのスローガンに乗じて言うことではない。政府には多くの責任がある。一大臣がそのような口をきくものではない。」と厳しく言い返したという。

www.timesofisrael.com/government-okays-expedited-stipends-for-self-employed-amid-public-anger/

ところが実際にフタをあけてみると、多くの人が、その7500シェケルよりも大幅に少ない2000シェケル(約6万円)であった。額が前年度の収入に準じてであったからである。

メンタリスト(偽預言者)のショーがイスラエルでは受けているが、そのメンタリストで多くのショーがすべてキャンセルとなったハレル・パポさんに届いた政府からの通知には、1492シェケル(約5万円)と記載されていた。コロナが来なければ、14万4000ドル(1500万円)の収入が出るところだったという。

自営業者たちは、「失業の経験がない政府は、現実生活からかけはなれてしまっている。」と怒りを募らせている。

www.timesofisrael.com/anger-mounts-as-self-employed-discover-virus-stipends-far-less-than-promised/

ネタニヤフ政権のコロナ対策不支持:75−85%

チャンネル13の調査(イスラエル人702人対象、うち601人がユダヤ人)によると、今後の経済が不安だと答えた人は83%であった。30%は、毎月の出費を維持することが難しくなったと答えているが、収入が低い層になると、この率は50%となる。

それでも、57%が、感染予防のための制限を強化すべきだと答えた。このためか、経済を優先している今回のネタニヤフ政権のコロナ対策を支持しないと答えた人は、61%。一方で、今の経済対策については、85%が不満だと答え、満足とした人は、16%だけであった。

ネタニヤフ首相個人については、15%が満足、19%がかなり満足と答えた。これは、4月の時点での同じ調査において、70%が、満足と答えていたことからすると、かなり急落している。新政権のカッツ財務相、エデルステイン保健相についても国民のほぼ半数が不満を表明した。

www.timesofisrael.com/polls-most-israelis-dissatisfied-with-netanyahus-handling-of-pandemic/

石のひとりごと

イスラエル人が大群衆となって、政府に「明日食べるものがない」と訴えている様子をみると、かつて聖書時代、出エジプトを果たして砂漠を旅していたイスラエルの民が、指導者のモーセに、「食べ物がない。」と詰め寄ったと書かれている様子が思い浮かんできた。

これと同時に、疫病まで発生しているとは、主の前に、聖書時代も今も、基本的に人間社会は同じなのだろう。

それにしても、明日食べるものがない、という状況は深刻である。イスラエルでは、感染はもう収集つかなくなっているようであるし、経済はインポッシブルな状況になっている。ネタニヤフ首相は今、モーセのように主に向かって助けを求めているだろうか。

一方で、昨今、イスラエルでは、人々の思いや将来を言い当てるメンタリスト、聖書でいえば、偽預言者たちが、はやっていて、一昨年前には、イスラエル政府が、公式のイベントであるプレスイベントに、ゲストとしてこれを呼ぶという事態になっていた。今、奇しくもコロナが、これにストップをかけたようである。

コロナが、人間社会をリセットして、クリーニングをしながら、次の時代へすすませているという側面も否定できない。これを思えば、いかに納得できなくとも、やはり、すべてのことは、主の手の中で起こっているということであろう。私たち信仰者も今、一人一人、あらためて主の前に、生き方を見直す時ではないだろうか。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。