医療崩壊への赤信号:主要病院で満床超える 2020.7.28

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イスラエルでは、新型コロナの被害が拡大を続けており、新規感染者は、検査数に応じて増減するものの、やはり毎日2000人近く増えている。

検査数は、これまで1日3万近く実施していたが、この日曜から1万2000件程度と大幅に減らしていた。その結果、検査数に対する感染率は、9.2%と、それまでの7.6%から上昇した。本日の検査数は再び2万件以上に戻ったせいか、感染率は7.9%となっている。

重症者は毎日10人程度、また、死者は、24時間で毎日3人から多い日は13人と、増え続けており、コロナが原因で失われた命は、計474人となった。

現在、病院に入院している人は、28日の時点で738人。このうち、315人が重症で、104人が人工呼吸器につながれている。

人工呼吸器につながれている人は通常、集中治療室(ICU)にいるが、ICUの病床は、多くても10床ぐらいである。それが104人もいるということは、ICUが10ユニット以上、すでに満杯であるということを意味する。

イスラエルでコロナ患者を受け入れている病院は、エルサレムのハダッサ医療センター、シャアレイ・ゼデック医療センター、テルアビブのイチロフ医療センター、シェバ医療センターだが、先の3病院では、すでにコロナ病棟もICUも満杯を超えている。ハダッサのコロナ病棟は、164%で、廊下にベッドを並べている状況になっている。

www.ynetnews.com/article/BkoVdeneD

シェバ医療センターは、イスラエル最大の総合病院で、最初の波の際には、コロナ対策の拠点であった。この病院では、今は、かろうじて90%だが、満床は目の前である。

<医療従事者の感染と隔離>

こうした中、医療従事者にも感染者が出て、隔離に入っている人が少なくない。主要病院では、ハダッサからは103人、シャアレイツエデック93人、アサフ。ハロフェ86人、イチロフ病院78人が、濃厚接触ということで、隔離中である。

全国的には、医療従事者で隔離に入っている人は3046人。このうち468人は医師、861人は看護師、1740人はその他の医療スタッフとなっている。イスラエルは、最初の波の際に、人工呼吸器を1万台用意する手はずを整えたが、それを操る病症も人材も足りないということである。

www.timesofisrael.com/coronavirus-wards-at-four-of-israels-largest-hospitals-are-full/

こうした状況を受け、保健省は、比較的軽症の患者を退院させ、高齢者は、高齢者病棟に移すなどして、できるだけ重症者を多く病院に入れるようにとの方策を模索している。

シェバ医療センターの感染症ユニットのガリア・ラハブ教授は、このまま冬になると、普通に肺炎になる人の入院が増えてくるので、受け入れられない状況になりうると危機感を表明。ラハブ教授は、病院本体と切り離した別のコロナ病棟を立ち上げるべきだと訴えている。

<石のひとりごと:コロナは怖いかそうでないか?>

新型コロナについては、様々な分析がとびかっている。医療のエキスパートたちの中からも、統計的に見れば、通常の風邪や、インフルエンザのようなもので、恐れすぎることの方が危険だという意見がけっこう出回っている。

なにが正しいのかはわからないが、筆者は、長くイスラエルを見ていて、この国が無駄をいっさいしないということを目撃してきた。テロや戦争の危険については、かなり慎重に見ていて、危険がないとの確証が出るまでは、決して防衛体制を解くことはない。

一方で、危険は去ったということがわかると、さっさとセキュリティチェックをやめている。したがって、そのイスラエルで、「コロナは怖くない。」という説がまだそれほど出回っていないことに筆者は、危機感を覚える。

コロナ危機はまだ終わらず、まだもうしばらく、厳しさを増していくのかもしれない。きわめて非科学的な石のひとりごとではあるが・・・これが誤りであること願うところである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。