ハマスがイスラエル提案に否定的も交渉は継続と時間稼ぎ様相 :ネタニヤフ首相はどう決断する!? 2024.5.2

向き合うネタニヤフ政権とブリンケン国務長官一行 GPO

人質・停戦交渉:イスラエル案に否定的も交渉続行とハマス

ハマスとの戦争が始まって7ヶ月になろうとする今、イスラエルとハマスの人質と停戦に関する交渉が、カイロで続けられている。今はイスラエルからの提案をハマスが検討している状態にあるが、ハマスは、これには否定的ながら、それでも交渉は続けるという態度をとっている。

www.jpost.com/israel-hamas-war/article-799480

ラファへの攻撃を前に、ハマスの態度は、時間稼ぎにみえる。もし、このままの状態で、イスラエルがラファへの攻撃に踏み切った場合、ハマスとの交渉は頓挫するとみられる。これはすなわち、人質を全部見捨てることにほかならないと、イスラエル国内では、懸念と政府への反発が高まっている。

一方で、政府の極右系政治家たちは、今イスラエルがハマスに提案している交渉で、人質が帰ってきたとしても、これはイスラエルの敗北だと反発している。

宗教シオニスト党のスモトリッチ氏は、ハマスとの交渉を続けるなら、連立からの離脱すると示唆した。もしそうなれば、連立政権は過半数を割ることとなり、政府は崩壊。総選挙になってしまう。

ネタニヤフ首相は、交渉がどんな結果になれ、ラファへの侵攻を止めるつもりはないと表明しているが、はたしてそれができるのか。

ブリンケン米国務長官:悪いのはハマス

このように、イスラエル国内では、意見が乱立し、それぞれが要求するというカオス状態である。こうした中、1日、アメリカのブリンケン国務長官が、イスラエルに到着した。

ブリンケン氏は、ヘルツォグ大統領と面会。ネタニヤフ首相と個別会談をした後、政府関係者、アメリカからは、在イスラエル・アメリカ大使も含めての会談が行われた。

また、南部を訪問した際、ガザ周辺や検問書を視察したほか、テルアビブでは、人質家族たちにも会っていた。

ブリンケン国務長官は、「混乱をもたらしているのはハマスだ」として、ハマスこそ早く人質を返すべきだとハマスへの非難を表明した。

一方で、ラファへの攻撃については、「イスラエルには、効果的に民間人の犠牲を予防する策がまだない。」として、明確な反対を表明した。バイデン大統領と同様、イスラエルを支援するが、その反対の部分もあるという姿勢である。

ネタニヤフ首相は、ここからどんな決断を下すのだろうか。非常に難しい決断である。

*イスラエルが出している人質解放と停戦案

レバノン系メディアが、イスラエルがハマスに出している条件を明らかにした。確かにブリンケン国務長官が言うように、イスラエルが、かなり譲歩している。テロ組織に相当な代価を払って、人質を返還してもらう形なので、強硬右派政治家たちが敗北だと言っているのである、。

しかし、ハマスはこれでもまだ合意しようとしていない。最初からまだ完全な停戦ではないことと、ガザ復興に、ハマスはかかわらず、非武装とされているところが、ハマスとしては問題なのだろう。要するに、ガザ市民より、組織維持を考えているということである。

www.timesofisrael.com/hamas-indicates-it-will-snub-latest-hostage-deal-offer-but-says-talks-to-continue/

第一段階(少なくとも40日間は攻撃を停止)

① 人道支援物資のトラック(燃料を搭載した50台を含む約500台)が、毎日ガザへ入るとともに、避難住民がガザ北部へに戻る。イスラエル軍は、これが可能になる程度に撤退する。
② イスラエル軍は、上空の監視を1日8時間停止する。人質交換の日は10時間、上空監視を停止する。

③ この間にハマスが解放する人質は、生存している33人(女性と女性兵士、19歳以下の子供、高齢者と病人、負傷者)

④ イスラエルは、女性と子供の人質1人あたり、20人のパレスチナ人女性と未成年テロリストを釈放する。
高齢者、病人、負傷者の人質1人あたり、やはり病気や負傷しているパレスチナ人(50歳以上で、懲役10年以下)を釈放する。
女性兵士の人質1人あたり、20人の終身刑と、20人の懲役10年以下のテロリスト、つまり40人を釈放する。
どのテロリストを釈放するかは、ハマスがリストを提出できる

⑤ 第一段階がはじまってから16日目から、停戦に関する交渉を始める

第二段階(次の42日間)

① 持続可能な停戦についての話し合いをする
② 男性と兵士の人質を解放し、イスラエルは交換にパレスチナ囚人(人数は不明)を釈放する。
③ イスラエル軍がガザから完全に撤退する

第三段階(次の42日間)

① 双方が遺体を交換する
② ガザの復興5年計画を開始する(ハマスは非武装とする)

石のひとりごと:戦争と政治・外交

非常に難しい状況になっている。これをどう扱うかで、自国民の怒り、自国民のサバイバル、中東、世界情勢まで大きく影響される。ネタニヤフ首相は、海千山千の相当したたかな政治家ではあるが、それでも、これほどの難問はないだろう。

今日、読んだみことばは以下の箇所だった。ネタニヤフ首相が、今、いつもより、本気でイスラエルの神、主に耳を傾けて決断するようにと祈る。

わたしが、あなたの神、主である。わたしはあなたをエジプトの地から連れ上った。あなたの口を大きくあけよ。わたしが、それを満たそう。

しかしわが民は、わたしの声を聞かず、イスラエルは、わたしに従わなかった。それでわたしは、彼らをかたくなな心のままに任せ、自分たちのおもんばかりのままに歩かせた。

ああ、ただ、わが民がわたしに聞き従い、イスラエルが、わたしの道を歩いたのだったら。わたしはただちに、彼らの敵を征服し、彼らの仇に、わたしの手を向けたのに。(詩篇81:10-14)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。