ワクチン接種200万人突破:感染はピーク越えか 2021.1.15

ワクチン(1回目)接種200万人突破

イスラエルでは、昆虫から50歳以上の人々のワクチン接種が始まり、14日には、1回目のワクチン接種を受けた人が200万人(総人口の21%)を超えた。記念すべき200万人目は、幼稚園で働く22歳女性で、ネタニヤフ首相、エデルステイン保健相とともに写真に収まっている。

www.timesofisrael.com/israel-hits-2-million-vaccinated-with-1st-dose-police-to-up-closure-enforcement/

2回目のワクチン接種も始まっており、2回目もすませて、ワクチン接種を完了した人は11万人。この人々にはグリーンカードが発行され、行動の自由が与えられることになる。

各地のワクチン接種会場には、人々の列ができている様子が伝えられている。目標は3月末までに520万人の接種を完了することである。

知人のホロコーストサバイバー(93))も1回目接種をすませ、まもなく2回目を受けると言っていた。60歳過ぎの男性も、ワクチン受けたとうれしそうに言っていた。ただ高齢でも重篤な基礎疾患やアレルギーを持つ人々はまだ接種を受けていないということだった。

昨日、プレスオフィスから、記者証を持っている外国人ジャーナリストで、50歳以上の人は、希望するならワクチン接種するとの知らせを受けた。しかし、これはあくまでも希望するならということで、強制はないということである。

一方、イスラエル人でも、接種に消極的な人も少なくない。ファイザー社のワクチンは、わずか4万人の人体治験のみで承認されたワクチンである。まだまだ未知の部分が多い。アメリカでバイオテクノロジーの会社にいたという知人(40歳代)は、絶対に、ワクチンはしないと言っていた。しかし、今のところは、ワクチンを受けたいと思う人の方が多いようである。

傾向として、アラブ系市民の方がワクチンに消極的であるとの記事もある。それを反映してか、ワクチンの接種率は、テルアビブが、19.7%であるところ、アラブ系市民が多いエルサレムは、まだ10.5%である。

www.timesofisrael.com/health-officials-said-to-believe-third-wave-has-peaked-consider-easing-lockdown/

このように地域によっては、ワクチンを準備しても実際に接種に来ない人がいた場合、余ってしまうことになる。ファイザーのワクチンは、いったん冷蔵庫から出すと、使いきってしまわないと廃棄することになる。このため、まだ接種を受ける順番にない若い人々が、スタンバイで申し込んでおき、1日の終わりに、余った分から接種してもらっている。40歳以下の友人たちもけっこう接種を終えたとのことであった。

ところで、イスラエルでは、PCR検査もワクチン接種もすべて国の費用で実施している。ワクチンについては、計算すると、一人47ドル(約5000円)かかっているということであった。

新規感染者1日9000人以上:ロックダウン継続へ

ワクチン接種が急がれる中、コロナの感染拡大は続いている。イスラエルでは、7日から、自宅から外出は1キロまでとし、教育機関も閉鎖する厳しいロックダウンが始まった。それからちょうど1週間が経過になる。

この時点での1日の感染者は、11日に9665人、12日は9226人、14日は9338(陽性率7.8%)とまだ非常に多いがで、横ばいになっている。保健省は、今回の第3波はピークに達しており、今後減少に向かうとみこんでいる。

しかし、重症者は,まだ1094人と多いことから、21日までであったロックダウンは、継続するみこみとなっている。

*アメリカからERスペシャリスト医師移住

日本で、米倉凉子さんが、「あたし、失敗しないので」と演じたドクターXばりに有能なER女性医師、デイナ・ワッセルマンさんが、このコロナ禍の真っ只中の昨年8月、イスラエルへ移住していた。アメリカで、ヘリコプターEMSの一員としてコロナとの戦いの最前線で働いていたワッセルマンさんは、イスラエルでも、コロナとの戦いに貢献している。

現在、アシュドドのサムソンアスタ大学病院で働いている。ワッセルマンさんは、アメリカでは相当の収入がある中で、目が点になるほど収入が減るにもかかわらず、イスラエルで働くことを決めたという。特にコロナ禍でもあり、迷いもあったが、イスラエルで働くことに意義を見出したと言っている。

www.timesofisrael.com/spotlight/to-help-israel-fight-the-pandemic-er-doctor-specializing-in-disaster-relief-makes-aliyah/

経済:5月には回復のみこみ?イスラエル銀行

イスラエルの経済への打撃は、2020年末で、赤字1603億シェケル(約5兆円)GDPの11.7%となり、昨年の525億シェケル(約1兆6000万円)GDPの3.7%から大きく低下した。これは80年代のデフレ以来の事態だという。

悪化の主な原因は、税収入の減収と、コロナ対策資金に686億シェケルかかったことである。

赤字は世界でも最大級だが、GDPの下がり方が、他国より小さいことから、イスラエル銀行は、ワクチン作戦の完了とともに、経済が回復し、今年5月には、通常に戻っているとの見方を示している。

www.ynetnews.com/business/article/Sy05AWcCw

イスラエルでの経済への打撃は、おそらく日本よりも激しい。しかし、イスラエルでは、命優先というのが、すべての国民の暗黙の了解である。長引くロックダウンに反発する業者はいるが、それほどニュースには上がってきていない。

データとしては持ち合わせていないのだが、政府の補償も悪くないのか、おそらくは、自殺が日本より少ないと思われる。ユダヤ人の間では、他人だけでなく、自分の命ほど大事なものはないというのが、疑問の余地のない常識である。創造主を見る聖書文化の国とそうでない国の違いかもしれない。

コロナ禍をパロディに

日本では、日々悲壮感ただよう、コロナ番組がテレビで流されている。しかし、イスラエルでは、悲惨なニュースの後にお笑い番組となり、コロナをモチーフにしたコントも出回っている。

以下は、イスラエルのテレビで人気のお笑い番組のパロディ。ワクチンを受けに来た男性達が、恐れから後から来た人に、順番をゆずり合う様子ーイスラエルでは割り込みが通常なのでありえない光景ーがおもしろおかしく描かれている。

イスラエル人は、あらゆる予想外と危機に慣れているので、危機がきたらきたで、そうなのだと考える。それがいくら不条理であっても、文句を言う前に、どうやったら、助かるかを考える。

さらには恐れでちぢこまることなく、それぞれが、それぞれの考えでまず何をしなければならないかを察知して対処し、あとは笑うのである。サバイバルのプロたちに学ぶところは多い。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。