ユダヤ教新年のウマン(ウクライナ)巡礼:警告しつつ補助金出す政府 2023.9.11

2017年のウマンの新年の様子(photo credit: REUTERS/VALENTYN OGIRENKO/FILE PHOTO)

ユダヤ教では、この15日から新年祭に入る。新年祭では、多くの超正統ハシッド派の男性たちが、ウクライナのウマンにある、ラビ・ナフマンの墓に墓参することが、宗教的な巡礼、重要行事になっている。

昨年も戦争中にもかかわらず、2万人以上のユダヤ人超正統派たちがウマンを訪問したのであった。今年は、ウクライナのロシアへの反転攻撃が進む中であり、ゼレンスキー大統領は、今年も、安全の保証はできないと言っている。

イスラエルも、正式なウクライナへの渡航勧告はレベル4で、原則渡航禁止としている。しかし、超正統派たちは、神の律法には、厳密に従うが、人の法律には、あまり敬意を払わない人が多いというのが現状である。政府の警告など気にせず、今年も、大勢がウマンに行くものと思われる。

MARC ISRAEL SELLEM/THE JERUSALEM POST)

ネタニヤフ首相は、「神はヨーロッパで必ずしもユダヤ人を助けなかった。」(ホロコーストを想定していると思われる)として、今年ウマンに行くことは控えるようにとの声明を出した。

すると、超正統派たちからは、ネタニヤフ首相の発言は神への冒涜だと、激しい怒りが噴き出した。逆に、ウマンへ行く人が増える結果になるかもしれない。。

なお、昨年、警告にもかかわらず、ウマンに行ったユダヤ人たちは、国境で屋外で待たされるなど様々な問題が発生していた。イスラエル政府は、そういった様々な問題に対処するため、400万シェケル(1億5000万円)の経済支援を承認したという。おそらくはユダヤ教政党の圧力によるものだろう。

いわば、渡航しないように警告しながら、渡航者たちの保護の準備をしているという、なんとも矛盾するような方策である。ここにも、政府の混乱を見るようである。

www.timesofisrael.com/netanyahu-warns-against-uman-travel-god-has-not-always-protected-us-in-europe/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。