モスクワの市民コンサートホールをISが襲撃・60人以上死亡:シナゴーグ襲撃阻止の2週間後 2024.3.23

Emergency services vehicles are seen outside the burning Crocus City Hall concert hall following the shooting incident in Krasnogorsk, outside Moscow, on March 22, 2024. (Stringer/AFP)

ISがモスクワの市民ホール襲撃

22日金曜夜、モスクワの市民ホール「クロッカス」で、6000人が集まるロックコンサートが始まろうとしていたところ、迷彩服で武装した男たちが、侵入してきて、ロビーとコンサートホールで、ライフルや自動小銃などを乱射した。

その後爆発物が爆発し、会場は激しく炎上した。タス通信によると、建物の3分の1が燃える大火災であったようである。

犠牲者は60人を超えているが、数はまだ増える可能性がある。搬送された負傷者は145人。このうち少なくとも9人は重傷。犯行グループはすでに現場を離れて逃走中。1人が逮捕されたとの報道もある。会場には、自動操縦や弾丸など様々な武器が回収されている。

tass.com/emergencies/1764539

疑いは、ロシアと戦争中のウクライナに向けられたが、ウクライナは、関与を完全に否定。その後、IS(イスラム国)が、自らと繋がりがある通信社を通して、「ロシア・モスクワ郊外のキリスト教徒の大集会を攻撃した。」と犯行声明を出した。

2週間前にISがモスクワのシナゴーグ標的:アメリカがロシアに警告か

この事件の約2週間前の3月7日、FSB(ロシア連邦保安庁)は、ISがモスクワ市内のシナゴーグへのテロ攻撃を企てているとの情報を得、モスクワ南西部かルーがにあるISの拠点に突入していた。

FSBはそこにいたISのメンバーを逮捕しようとしたが、抵抗したため全員射殺していた。同時に地図などの他多数の武器が押収された。これにより、モスクワのシナゴーグは守られた形である。

この数時間後、在モスクワの米大使館が、ロシア政府に対し、ISが、モスクワで大人数が集まるイベントでの大規模なテロを計画していると警告をだしていたという。アメリカ政府は、この警告と今回のクロッカス市民ホールでのテロとの直接の関連は否定している。

www.timesofisrael.com/russia-says-it-thwarted-islamic-state-plot-to-attack-moscow-synagogue/

*IS(イスラム国)とは

ISはISIS(Islamic State of Syria and Iraq)とも呼ばれ、日本語では「イスラム国」と呼ばれている。

元は2004年にアルカイダの分派として発足し、2年後にISISとなった。カリフによる国を目指して、シリア北部からイラク中部を支配する過激組織として立ち上げられた。

イスラム教スンニ派のカリフ製に基づく国家を立ち上げることを目標に、文字通り全世界でテロを実施した。アルカイダが、どちらかというと組織的であるのに対し、ISISは、イデオロギーで動かされた個人によるテロもあり、その残虐性もあり、掃討はアルカイダよりはるかに難しいとされていた。ヤジディ教徒、キリスト教徒を殺害していたことで知られる。

ISISのトップはカリフとされたアブバクル・バグダディ。ラッカを中心地として、一時、イラク第二の都市モスルを掌握するまでに大きくなり、油田も得て、シリアの石油資産の半分も支配するようになった時期もある。この時期、ISに同意する多くの外国人が来て、戦闘員として雇われていた。

www.cnn.co.jp/special/interactive/35060149.html

文字通り世界中でテロを行い、2019年、シリアでアメリカの特殊部隊に追い詰められて、3人の子供と共に自爆した。その後、後継者が立ち上がっては死亡し、最後は2023年4月に立ち上がったアブ・フセイン・フセイニもトルコに殺害された。

ただISは、アルカイダのような組織が土台ではなくイデオロギーなので、完全に消滅することなく、また再び同じ考えの者が集まってテロを決行するということは、終わらないということである。

石のひとりごと

この恐ろしい事件は、イスラム教ラマダン中、2回目の金曜日に発生した。明確にキリスト教徒を標的にしたものだと言っている。その2週間前には、ユダヤ教シナゴーグへの攻撃も計画していたのをロシアが阻止していたという。

ラマダン中、2回目のイスラム礼拝日金曜の犯行であることからも、ユダヤ教、キリスト教、つまりは聖書の神への大胆な挑戦といった様相である。

ISは、アメリカなどが、ビンラディンを殺害したが、その存在が消えたわけではなく、またこのような事件を起こすまでに回復しているということである。

ネタニヤフ首相は、ハマスは世界にとってのISのようなものであり、今、中途半端に停戦すれば、世界は過激派を徹底的に叩かない可能性を学んでしまう。それはイスラエルにとどまらず、世界にとっての危機になっていくと警告してきた。

今、実際にISによる残虐なテロが発生したわけだが、今後、ISが民間人の背後に隠れたとしたら、ロシアはどう出るだろうか。世界はロシアに、ISと交渉し、停戦するように強要するだろうか。

ところで、今ロシアは、10人以下?のテロリストにより、60人以上の犠牲者を出しているのだが、イスラエルは、3000人のテロリストにより、1200人以上の市民を残虐に殺された。今も100人以上の人質がそのハマスの手の中にいる。

イスラム教を利用する過激組織ISや、ハマスがいかに危険な存在か、世界が少しでも理解すればと思わされる。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。