ベネット首相・バイデン大統領会談24時間延期:カブール自爆テロ影響 2021.8.27

Secretary of State Antony Blinken meets with Israeli Prime Minister Naftali Bennett at the Willard Hotel in Washington, Wednesday, Aug. 25, 2021. (Olivier Douliery/Pool via AP)

バイデン大統領との会談27日(日本時間夜夜11時以降)に延期

アフガニスタンでは、カブール空港周辺でテロがあるとの情報が25日夜、自国民の脱出を急ぐ国々にもたらされた。その予告通り、26日朝、カブール空港で2つの自爆テロが発生。アメリカ兵13人とアフガン人70人以上が死亡すると言う大惨事となった。

バイデン大統領が対処に追われていることから、この日に予定されていたベネット首相との会談は、24時間延期されることとなった。ベネット首相がバイデン大統領に会うのは27日朝10時半、日本時間今夜遅くになる。

ベネット首相は、安息日が終わる29日土曜夜までワシントンに滞在することとなった。

26日夜、ベネット首相はバイデン大統領に電話を通じて、追悼の意を表明。「アメリカが何年もイスラエルとともに立ってくれたように、イスラエルもアメリカとともに立つ」と伝えた。

バイデン大統領も、イスラエルが、会談の延期を理解し、ベネット首相と同行者、メディア関係者など全員が、アメリカでの滞在日程を延期したことに感謝したとのこと。

実はこの週末には、退陣を目前にしたドイツのメルケル首相がイスラエルに来訪し、29日(日)には、国会で演説をする予定であった。しかし、メルケル首相もまた、アフガニスタンにいる自国民救出問題で、訪問をキャンセルしていた。このため、ベネット首相のアメリカ滞在延長も大きな問題なく実現できたとのこと。

ベネット首相は、ツイッターでもイスラエルのアメリカへの支持を表明。続いてラピード外相(時期首相)も同様のコメントをアップした。

www.timesofisrael.com/bennett-and-biden-hold-call-after-kabul-attack-pushes-meeting-to-friday-morning/

前とは違う政府:アメリカとイスラエルの信頼関係回復をめざす

なんというタイミングであっただろうか。アメリカの、バイデン大統領のこれほど大きな国難の時に、ベネット首相がアメリカにいて、そのサポートを表明しているのである。

今回、ベネット首相は、イスラエルからアメリカに“新しい関係のスピリット”をもっていくと強調していた。これは、今回の訪問の最大の目標が、今、少々ギクシャクしているアメリカとイスラエルの信頼関係を改善するということの現れだと、INSS(イスラエル国家治安研究そ)エキスパートのエルダッド・シャビット氏は解説する。

前の民主党オバマ政権時代、アメリカとイスラエルの関係はかなり冷え込んだ。オバマ大統領が左よりであったところ、ネタニヤフ首相は右よりであったからである。

今のバイデン政権は、その民主党政権で、バイデン大統領は、オバマ政権時代の副大統領で会った人物。一方、ベネット首相は過去に極右とまで言われた経歴の持ち主である。このままでは、アメリカとイスラエルの関係は、冷えたままになる可能性もある。

そのため、今の新しいベネット政権は、前のネタニヤフ政権とは、大きく違っているということをアメリカに理解してもらい、まずは信頼関係を再構築しなければならない。しかし、だからといって、アメリカのいうままになるわけにはいかない。

違いの違いは認めつつも、互いを陥れるのではなく、支え合う関係。違いがあってもともに働ける関係をめざすということである。

具体的にいうと、イスラエルにとっての最大の課題は、イランという大きな問題について、アメリカと一致していないという点である。これについて、ただ反論しあうのではなく、まずは信頼関係を取り戻し、その中で、アメリカにもイスラエルの立場を理解してもらい、協力してもらうという考え方である。

今、ベネット首相は、中国やロシア、トルコやパキスタンなどの周辺諸国、世界諸国が、アフガニスタンからの撤退を急いだことはバイデン政権の失敗だと避難する中で、「イスラエルはアメリカの“ブーツ・オン・ザ・グランド”(地上軍)だ。」というほどに、アメリカへの友情と支持を全開で表明している。

イスラエルはアメリカの味方だと認識してもらいたいというところである。

今のバイデン大統領にイランを考える余裕はあるか

アフガンでの自爆テロ後の記者会見
スクリーンショット

今以上に互いの信頼関係を回復できる時はないとも考えられなくもない。しかし、今バイデン大統領が、イスラエルの立場を理解してイラン問題を話し合うという余裕があるだろうか。事態は予想以上に深刻になっている。

ベネット首相は、強硬派政権になったイランへの対策を方向転換させるプランBを提示するとみられていたが、果たしてその話を持ち出せるかどうかは不透明である。

おそらく肝心の話ができないまま、ベネット首相は帰国することになるのではないかとの見方もある。

www.timesofisrael.com/kabul-blast-shatters-illusions-of-bennett-biden-honeymoon-on-iran/

27日の二人の会談でどんな結果が出てくるだろうか。混乱の極みに至っているようなアフガニスタン問題が中心になるだろう。

ベネット首相は、強硬派政権になったイランへのプランB、新たな方針を提示するとみられているが、その話を持ち出せるかどうかは不透明である。会談後にどんな発表が出てくるのか、注目される。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。