カブールの空港自爆テロでアメリカ兵13人・アフガン人90人以上死亡:ISが犯行声明 2021.8.27

カブールの空港入り 自爆テロ前の様子 スクリーンショット

日本のニュースでも報じられているように、26日午後6時、アフガニスタンの首都カブールのカルザイ空港で2件の自爆テロが発生。アメリカ軍兵士13人を含め、アフガン人、タリバンメンバーなど90人以上の死亡が確認されている。イスラム国(IS)が犯行声明を出した。

バイデン大統領は、「犯人を許さない。追い詰めて代償を払わせる。」と述べた。しかし、アフガニスタンからの民間人撤退の期限は8月31日である。取り残した市民はもう取り戻すことはできなくなる。

2つの自爆テロとそのカオスの中、滑走路は無事であったことから、今、アメリカなど各国は、自国民とその協力者の救出を再開させている。

レフト・ビハインドの恐怖

アフガニスタンの首都カブールでは、タリバンの監視の元、アメリカや、その他の各国が自国民やそれぞれに関係したアフガニスタンを国外へ避難させる作業を急いでいた。

バイデン大統領は、一時、アメリカ人やその関係者を今月末までに避難させるられるかどうかがわからなくなてきたとして、米軍の完全撤退を延期することを示唆した。すると、タリバンは、これを「占領の延長だ」として認めないと表明。救出期限は8月31日ということが確定となった。

アメリカは、この攻撃までに、約10万人の救出を終えている。このうち、66000人はアメリカ人で、37000人がアフガニスタン人協力者とのこと。しかし、ブリンケン国務長官によると、まだ多数が残されているもようである。

また、今もカルザイ空港にはアメリカ兵が5800人。イギリス兵も1000人いる。これらの人々も、全員31日までに撤退しなければならない。

BBCによると、カナダ、ベルギー、オランダ、デンマークは、避難者の移送を終えたのかどうかは不明だが、すでに救出作業を停止している。韓国もアフガン人375人を含め、自国民の韓国への移送を完了した。

日本も自衛隊が日本人を救出に向かったが、遅かった。この自爆テロへの警告もあってか、約束の26日に、空港までくることができなかったとして、まだ一人も救出できていない。この状況下で、独自に空港へ来るよう指示しただけといところに無理があったと思われる。

この20年の間にアメリカ軍に協力したアフガニスタン人は30万人に及ぶともみられている。全員が避難することは難しいだろう。8月31日までに、避難すべき人々が、できるだけ多く避難できるよう祈りが必要である。

終末の様相:カブール自爆テロ現場のカオス

各国が自国民の救出を急ぐ中、25日夜、深刻なテロ予告があった。アメリカ軍は、アメリカ人たちに空港へは来ないように、空港から離れるよう指示を出していた。そうした中26日午後6時、2件の自爆テロがカブールの空港周辺で発生した。

最初の爆発は、カブールのカルザイ空港敷地内のバロン・ホテル。タリバンが威嚇射撃する中、人々が逃げ惑う様子が伝えられている。続いて、空港への入り口の一つアビー・ゲートでも爆発があった。

この周辺には、なんとか飛行機で国外脱出をしようと、朝から10時間以上も集まっていた群衆と、その整理にあたっていたアメリカ軍兵士、イギリス軍兵士たち、タリバン・メンバーが密集していた。この群衆の中での自爆テロである。空港へ入ろうと水路のような中でうごめいていた人が、次の瞬間、血みどろで倒れて折り重なっている。

その場にいた元国際機関で働いていたと言う人の証言によると(エルサレムポスト)、爆発とともに、足元の地面が引っ張られる感じがして、遺体や、ちぎれた肉片などが、降ってきたという。

周囲は血みどろの遺体やちぎれた手足などが散乱し、まさに地獄の様相、終末の様相だった。自分はこの光景に一生苦しむだろうと語っている。

www.jpost.com/international/a-survivor-from-the-bombing-attack-in-kabul-i-saw-doomsday-with-my-own-eyes-677850

これまでに明らかになった犠牲者は、ペンタゴンによると、アメリカ兵13人、負傷者15人。カブールの保健関係者によると少なくともアフガニスタン人90人が死亡。150人が負傷している。カブールの病院は崩壊。血だらけの患者のベッドが隙間もなく並べられている。

www.bbc.com/news/world-asia-58349010

アフガニスタンに進出する中国

この混乱の中、中国は、アフガニスタンのタリバンに接近。タリバンの政権掌握を事実上承認した形をとっている。このためか、中国人はアフガニスタンから撤退する様子はない。

中国は、人権無視を避難されている新疆ウイグル地区を挟んで、アフガニスタンと接している。ウイグル自治区にいるイスラム教徒とアフガニスタンのイスラム過激派が接近することを防ぐ目的でタリバンに近づいているともみられている。

しかし、それだけでなく、アフガンの地下には、1-3兆ドルともみられる地下資源があり、そこにも目をつけているのかもしれない。中国がこれからアフガンの復興支援に大きな役割を果たすようになることが予想されている。

www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2391P0T20C21A8000000/

アメリカが、中東から撤退するのは、戦力をアジアの対中戦略に回すためともみられているが、結局、世界規模で見れば、中国の勢力拡大は、歯止めがかからなくなるのではないか。

今後、アメリカは、予定通り、今後もイラクなど中東から軍の撤退を続けて行っていくだろうか。そうなるとユーフラテス川がオープンになってしまい、イスラエルにも深刻な事態になってくる。

アメリカの権威が落ちて、民主主義国がますます弱体化し、代わりに先制主義国の覇権が強くなっていく。疫病と戦争、天変地異の終末の様相が、さらに現実味を帯びてきた感じである。

イスラエルは中東で唯一の民主国家である。27日、ワシントンで待機しているベネット首相とバイデン大統領の会談に注目したい。

 

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。