終わりなきガザとの戦い:人道支援再開も国境では暴動 2021.8.30

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ガザ国境での紛争とガザからの火炎風船による火災。それへのイスラエルの報復。この悪循環が、南部ガザ国境で続いている。

イスラエルとガザは5月に11日間の激しい戦闘となった。この戦闘で、イスラエルに打ち込まれたミサイルは、4360発。イスラエル軍によると、ガザではハマス関係者200人を含む250人が死亡した。市民で犠牲になった50人うちの多くは、ハマスの不発弾やイスラエルにまで届かなかったミサイルによる犠牲だとイスラエルは主張している。

これ以降、停戦になったあとも、イスラエルは、ガザへの物資搬入などを厳しく制限してきた。しかし、パレスチナ自治政府以上に、経済が崩壊しそうなのがガザ地区である。このため、カタールと国連、イスラエルも協力して、カタールからガザ市民への現金配給を開始した他、人道支援物資のガザへの搬入を再開させたのであった。

ところがその直後、先週末、国境での激しい暴動ともいえるデモ活動が始まり、イスラエル兵1人が重症を負い、ハマスのメンバーが1人死亡した。さらには、この時の暴動の時に負傷した13歳のパレスチナ少年が1週間後に死亡したと、ガザ保健省が報じている。これを受けて、停戦の仲介者であったエジプトは、約束を守らないハマスに怒りを表明し、ラファ国境を閉鎖した。

しかし、それでは解決にはならないので、エジプトは、国境を徐々に解除し、イスラエルもセメントなど復興物資の搬入を再開。ガザから労働者1000人をイスラエルに受け入れた。したし、25日水曜にはまた暴動になり、パレスチナ人20人が負傷。されに、ガザからは、火炎風船がイスラエル南部に飛来して火災をなったことを受けて、また29日朝、イスラエルがガザのハマス拠点へ空爆をおこないという一連の動きがあった。

www.timesofisrael.com/egypt-reopens-gaza-crossing-after-4-days-as-israel-eases-restrictions/

ガザ国境では、この土曜、日曜と2日続けて、夜暗くなってから、パレスチナ人たちが、タイヤを燃やしたり、イスラエルの治安部隊に投石したりという暴動となった。イスラエルは催涙弾や、威嚇用手榴弾などできるだけ命にかかわらない武器で対処しているが、今週末もパレスチナ人18人が負傷した。

<すべてを否定するイスラム主義の難しさ>

なぜガザがここまで反発するのか、これまでからの恨みもあるだろうが、もしかしたら、パレスチナ自治政府とイスラエルが歩み寄りを始めていることに、反発しているのかもしれない。アフガニスタンでは、タリバンが、2018年にアメリカのトランプ前大統領と和平を約束して以来、イスラムを裏切っているとして、イスラム国が登場しタリバンへの反発を続けている。それと同じような背景がもしかしたら、動いているのかもしれない。

イスラエルは、ガザのハマスにイスラエル人2人とイスラエル兵2人の遺体を捕虜にとられたままである。そのため、水面下では、交渉が続けられているのだが、いっこうに進まない。手に負えないやっかいな隣人を抱えているということである。

この難しさは、今後アフガニスタンに出てきたタリバンや、イスラム国に対処する世界もまた、経験していく困難になるかもしれない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。