エルサレム・マラソンに4万人 2019.3.16

テルアビブにロケット弾が発射された翌朝、エルサレムでは予定通り、毎年恒例の国際マラソンが行われた。参加者は、イスラエル人の他、海外80カ国から来た4万人で史上最多を記録した。フルマラソンでの優勝は、今年もケニア人で記録は2時間18分。

イスラエルでは例年にない雨が続いているが、昨夜冬の嵐となり、マラソンの今日だけはなんとか曇り時々晴れで雨はなし。明日からは雨が戻るみこみ。今日だけマラソンに最適な天気となった。熱くすぎず、寒すぎず、医療的な課題は出なかった。

www.jpost.com/Israel-News/Jerusalem-Marathon-attracts-over-40000-participants-for-annual-race-583569

今年は、特にイスラエルの障害児童の支援団体シャルバを支援するために参加したランナーが1600人もいたことが注目された。シャルバ宣伝を支援するために、海外から集まったランナーは650人。障害児とその家族1000人が800メートルのマラソンに参加した。

シャルバからは、最近、目が見えないなどの障害がありながらも、優れたバンドを結成し、イスラエル社会でも人気が上がっていたが、その効果ともみられる。このマラソンで、シャルバに集められた献金は150万ドル(約2億円)にのぼった。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/260414

また、マラソンに参加する人で、市内のホテルはすべて満室。これだけでエルサレム市に2000万シェケル(6億円強)の経済効果があったという。

<シリア人も参加?>

今年は、現在、オランダに在住するシリア人、ハサン・アルジャクリさんもエルサレムマラソンに登録していた。アルジャクリさんは、ダマスカス出身で、国際マラソンのレベルの記録を持つ。

これを受けて、エルサレム市は、アルジャクリさんに敬意を表し、国会近くの会場にシリアの旗を掲げた。しかし、実際に、来て走ったとの報道はない。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5478069,00.html

<石のひとりごと>

おそらく世界に誤解されているのが、イスラエル人の多様性、寛容性であろう。

確かにユダヤ人としてのアイデンティティと、ユダヤ人の国としてのイスラエルを守ろうとする姿勢は、ユダヤ人だけを重視するように見えるかもしれない。しかし、それは単に生き残るためにどうしても必要なことであって、だからといって、イスラエル人が、多様性に欠けるということではない。

ヘブル的価値観では、たとえば自分と違って、障害がある人を下に見ることはない。その人も神の支配の中でたまたまそうなったのであって、障害があるからといって、すぐに役立たずだというふうには、本人も周囲もならないわけである。

したがって、障害のある本人も、世話をしてもらって当然とはならず、自分にできることを考えるし、周囲も、「助けてあげなければ」という、チャリティ的な見方とは違う視点で彼らを支援する。うまく説明できないが、「当たり前」のように、特別なことではないかのように、だれもが、助けを必要としているのに気がつけば、手をさしのべるのである。

それだからといって、支援した人々は、何かえらいことをしたような気にもならないし、だからと言って、神からの特別な報酬というか祝福を期待することもない。ここが、基本的に神の支配の中にいるヘブル的価値観(聖書的)と、人間の価値観で回っている普通の国々との違いかもしれない・・とイスラエル人を見ていて思わされる。

先日、バス停でバスを待っていると、止まったバスの中に、携帯で話している男性が見えた。その男性は扉の前にいる車椅子の男性に気がついたようだった。すると、そのまま携帯で話しながら、車椅子乗降用の鉄板を下ろした。すると車椅子の男性はそれを利用してバスに乗り込んだ。携帯の男性は、そのまま携帯で話しながら、鉄板を戻した。

車椅子の男性と携帯の男性の間に会話はない。携帯の男性は、当たり前のことを当たり前にやっただけであって、車椅子の男性も、「すみません・・」と頭を低くすることもない。双方、日常なのである。なんともすがすがしい光景であった。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。