ウクライナ・ダム崩壊のユダヤ人被災者たちと支援活動 2023.6.13

Kherson, Ukraine, on June 8, 2023. (ALEKSEY FILIPPOV/ AFP)

カホウカ水力発電所ダム決壊とその被害状況

先週6日早朝、ウクライナ南部、ヘルソン州のカホウカ水力発電所のダムが決壊してから約1週間になる。浸水地域は、ヘルソン市が壊滅に近く、90キロ先のドニプロ川河口付近にまで広がった。

www.bbc.com/news/world-europe-65869999

13日時点でウクライナ政府が発表したとこころによると、少なくとも10人が死亡。行方不明が子供7人を含む43人。被災した人は、ドニプロ川西側、ウクライナ側で、1万7000人、東のロシア側で、2万5000人が被災したとみられる。

BBCによると、被災地にあった動物園も完全に水没し、動物300匹が全滅となった。

浸水した地域の水位はこれから徐々に下がっていくとみられているが、まだ1週間ぐらいは、水没状態が続くと予想されている。

被災地では、水道、下水も止まっているため、今後、夏に向けて、水不足と伝染病の拡大も懸念されている。また、埋められていた地雷が、浮遊してオデーサのビーチまで流され爆発したことが報告されており、地雷がどこでどのようになるかわからないという、とんでもない事態になっている。

また、救命ボートで避難しようとしているウクライナ人がロシアの攻撃を受けて3人が死亡。被災地にいるウクライナ人がロシア側への強制移送される点も懸念されている。

www3.nhk.or.jp/news/html/20230610/k10014095771000.html

また大きな懸念の一つは、このダムが、ザポリージャ原発の冷却に関わっているという点。今すぐに危険はないと言われている中、IAEA(国際原子力機関)のグロッシ事務局長が、現場視察にため、ウクライナへ向かっているとのこと。

カホウカダムの崩壊については、ウクライナとロシアが、互いを非難しあっている。国際刑事裁判所(ICC)は、現地ヘルソンに代表団を派遣し、調査を開始している。なお、ICCは、この戦争については、ロシアのプーチン大統領に責任があるとして、今年3月に逮捕状を発行している。

jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-icct-idJPKBN2VJ16A

フランス、ドイツ、ポーランドの首脳たちは12日、ウクライナが反転攻勢に出ていると発表。13日時点で、ウクライナは、7地域をロシア軍から奪還したと発表している。戦場には、ドイツの戦車が登場するなど、いよいよ国際社会を巻き込んでいく様相いある。

イスラエルはダム破壊を非難も責任者を名指しせず

イスラエルは、ウクライナ問題について、ウクライナにも武器以外の支援はしつつ、ロシアへの経済制裁には参加しないという、微妙な立場を続けている。イスラエル政府は、ダムの破壊への非難生命は出したが、名指しはさけた。

www.ynetnews.com/article/bjviempu3#autoplay

一方で、被災者たちにむけて、水、数十万リットルと、食料10トン以上をウクライナ国内で購入し、被災地へ送ったとのこと。中継は、キエフにあるイスラエル大使館とボランティア組織。

www.jpost.com/international/article-746032

ヘルソンのユダヤ人も被災

ヘルソンは、昨年3月から8ヶ月、ロシアによる激しい攻撃と支配を受け、拷問を受けた人も多いと言われている。ロシアへ強制移住させられた人も多い。今年一月になって、ようやくウクライナが奪回した町であった。

この町にいたユダヤ人家族も多くは、イスラエルへ移住して行ったが、ヘルソンに残る決意をしてとどまっているユダヤ人もまだ150人ほどいたという。

この人々は、アメリカのユダヤ人組織で、ホロコーストの時代にもナチス支配下にあるユダヤ人を助けたJDC(American Jewish Joint Distribution Committee)が、支援を続けて生活を維持していた。そこへ、ダム破壊による洪水が襲った形である。

ヘルソンでは、世界に支所を持つユダヤ教正統派ハバッド派も支援活動を行なっており、被災した人々の避難所の手配などを行なっている。そのシナゴーグは地上20メートルの位置にあり、水没を免れていた。このため、JDCも、このハバッド派に合流し、活動を継続している。

IDCの責任者であるコブラーさんは、洪水の被害を受け、両親をオデーサのホテルに非難させ、自身は夫とともにヘルソンに残って、ユダヤ人への支援活動を継続している。コブラーさんの自宅も水没しており、ボートでしかアクセスできない状態にある。

www.timesofisrael.com/as-kherson-floods-one-evacuee-plans-return-to-aid-citys-hardy-jewish-holdouts/

なお、ポーランドのハバッド派は、現在、ダムの崩壊で、あらたに隣国ポーランドへ避難してきたユダヤ人への支援を行なっている。

www.israelnationalnews.com/news/372611

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。