9:11より16年:現状とこれから 2017.9.12

今日は9月11日。2001年にニューヨークで同時多発テロが発生してから16年。イスラエルには、アメリカ以外の国では、唯一となる9:11のメモリアル(犠牲者と消防士など殉職者の名前が刻まれている)があり、今年もフリードマン米大使を招いての記念式典が行われた

<9:11以後の現状(エルサレムポストより)> http://www.jpost.com/Middle-East/5840-days-later-Reflections-on-911-504723

2003年、テロとの戦いを宣戦布告したアメリカは、また世界はどうなったのか。エルサレムポストがまとめたところによると以下の通り。

アメリカでは、大統領が3人交代。死亡した米軍兵士は6928人。負傷した兵士は100万人。かかった費用は、トリリオン・ドル(兆の次の京、ものすごい額という意味)。同時多発テロ関連で逮捕された者たちのうち、41人が、今も拷問で問題になったグアンタナモ刑務所にいる。

2003年にアメリカの侵攻を受けたイラクは、以来、18万人が死亡。イラクで混乱が続く中、隣のイランが強くなった。

2003年、同じくアメリカの侵攻を受けたアフガニスタンは、さらに混乱がすすみ、オバマ前大統領は米軍を撤退させようとしたが、トランプ大統領は、駐留の延長を決めた。

2006年、ハマスがガザ地区を掌握。2011年には、エジプトから、中央政府に反旗をひるがえす”アラブの春”が中東、北アフリカへ広がり、特にリビアでは、カダフィ政権が転覆して国はカオスとなり、北アフリカ諸国に混乱が広がった。アフリカではボコ・ハラムという凶悪なテロ組織が台頭した。

こうした中、2014年、シリアで内戦が始まり、ISIS(スンニ派)が生まれた。これは中東で強くなってきたイラン(シーア派)の影響もあるといわれている。これにより、サウジアラビアなどのスンニ派諸国と、イランなどシーア派との対立が明確になり、中東情勢は、明らかに前より不安定になった。

結果的に、2001年に”テロとの戦い”が始まって以来、逆にテロは激増し、73000件のテロで、17万人が死亡。テロの現場は、9:11以前は、コロンビア、ペルー、北アイルランド、スペイン、インドであったが、以後は、イラク、インド、アフガニスタン、パキスタン、タイ、フィリピン、イスラエルとなった。

またISISの台頭以来、ベルギーを筆頭(ベルギーだけで5000人)に、ISISに加わる若者がヨーロッパから多数生み出され、それらが、ヨーロッパの中でテロを起こすようになってきた。

テロ現場は、いよいよヨーロッパ諸国へと広がり、今や世界のどこででもテロは発生しうるという時代になった。アメリカのテロに対抗する特殊部隊は、2001年には4万3000人だったものが、現在は7万人にふくれあがっているという。

9:11以来、テロは増加・拡大したといえる。しかし、国際テロは9:11から急に始まったのではない。1993年にアメリカの貿易センタービルが爆破されるなど、イスラム過激派のテロは以前からすでに脅威になりはじめていたのである。

結局のところ、9:11は、単にテロが拡大していく前触れにしか過ぎなかったと、エルサレムポストは締めくくっている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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