イスラエル最大の脅威はイラン:第17回国際テロサミットより 2017.9.12

イスラエル中部ヘルツェリアでは、9:11を記念して、毎年、国際対テロサミットが行われる。今年も第17回目となるカンファレンスが、9月11日より、4日間の予定で行われている。テロの現場から、どう対処するのか、専門家や政治家たちがそれぞれの意見を述べている。

<イスラエル最大の脅威はイラン>

第17回対テロカンファレンスにて、リーバーマン防衛相は、すべてのイスラム過激派の背後には、イラン政権があると指摘。イスラエルにとって最大の脅威はイランであると強調した。

「イランの支援なしに、ヒズビラ、ハマス、イスラム聖戦が今のような力を保てるはずがない。テロ組織支援に加え、イランは、核兵器開発、非核兵器を充足して革命軍をさらに強大化させ、サイバー攻撃をもってイスラエルの破滅をねらっている。」と指摘した。

右派ユダヤの家党のナフタリ・ベネット党首は、対テロサミットにて、「9:11事件のとき、ちょうどニューヨークにいて、ビルの炎上と逃げてくる人々の波を目撃した。あの時、人間の残虐性に限界はないと思った。もしビン・ラディンがあの時核兵器を持っていたらそれを使っていただろう。

イスラエルは、いかなる妥協もしない。イランは、ゴラン高原、またシリアから完全に撤退するべきだ。」と語った。

*イラン・シリアの動き

シリアでは、ISISが徐々に支配域を徐々に失いつつあり、その空いたところに、イランが入り込みつつあると伝えられている。特に、シリアとヨルダン国境付近、ゴラン高原の近くを、ロシアとアメリカが停戦域にしたことで、その空白へイランが入ってきているという情報があり、イスラエルは神経をとがらせている。

9月7日、シリアのハマ(ダマスカスから約200キロ北)にある科学研究所が空爆、破壊された。シリア政府の科学研究所で、化学兵器を開発しているとみられる。爆発の様子からミサイル施設もあったとみられている。

シリアのメクダド外相は、空爆はイスラエルの空軍機によるものだったと発表。「イスラエルは、(ISISと戦う)シリアを攻撃し、 ISISを支援するテロ国家だ。」と非難し、イスラエルはひどいツケを受けることになると脅迫した。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/235331

こうしたシリア軍施設への空爆は、過去に何度も発生しているが、今回も含め、イスラエルは、ノーコメントである。

しかし今回は、11日、リーバーマン国防相が、「シリアは、イスラエルを試すようなことはしないほうがよい。イスラエルが脅迫を軽く受けることはないからだ。」と脅迫しかえした。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5015343,00.html

*イランと北朝鮮問題:イスラエルへの影響

北朝鮮が、6回に及ぶ弾道ミサイル発射実験を行った後、9月3日、ICBM(大陸弾頭弾)に装着可能な水爆実験に成功したと発表。アメリカだけでなく、韓国、日本にとって大きな脅威となっている。

この問題はイスラエルにも無関係ではない。イランと北朝鮮が軍事、特に核開発において緊密な相互支援関係にあるからである。

INSS(イスラエル治安研究所)所長で、元イスラエル軍諜報部長官のアモス・ヤディン氏は、今、国際社会が北朝鮮に徹底した対処を行わない場合、次はイランが、2015年にイランと世界諸国が合意した核開発保留の期限切れ(2030年)とともに、一気に核保有国になると警告する。

これはイスラエルへの脅威になるだけでなく、中東での核競争の引き金となる。イランが核保有国になるとなるとサウジアラビアが核を保有しないわけにはいかないからである。サウジが核保有になれば、周辺諸国も競って核を保有しようとするだろう。

先週、北朝鮮の核実験を受けて、国連安保理は、北朝鮮への対処について協議を開始した。アメリカ、日本、韓国などが、最強の経済制裁を求めたのに対し、中国、ロシアがこれに同意せず、最終的には12日、最強とは言えない「制限」とも言える、新たな制裁が課される形で合意したと発表された。

言い換えればアメリカが折れたということである。ここから見てもわかるように、北朝鮮はすでに核保有国になってしまったため、武力行使するには危険すぎる状態になったのである。

ならば、戦争がないということか・・・?というわけにもいかない。キム・ジョンウンが、予測不能な独裁である以上、いつなんどき核兵器を使ってしまうかわからないという危険が、これからはつきまとうということである。

イランとの関係において、イスラエルが、これと同じ状況になることを受け入れることはできない。イランがすでにイスラエルを破壊し一掃すると公言しているからである。

イスラエルの防衛は、まだ国外にあるうちに、武器に関しては、まだ完成する前に、根こそぎその脅威を取り除くということが基本である。そのため、諜報活動を非常に緊密に行っており、全く予想外の時に、脅威となりうるものを完全に破壊する。

常に先手を打つことが最大の防衛であるということを、イスラエルは体験してきたのである。

この考え方で、イスラエルは、1981年、イラクの原子力施設を奇襲。完全に破壊した。これにより、イスラエルは、東側の脅威を大きく排除したといわれている。こうしてみると、北朝鮮に水爆まで作らせてしまった国際社会はすでに後手に回っていると言えるだろう。北朝鮮はすでに核保有国になってしまった。

しかし、こうした攻撃は、相手がまだイスラエルを攻撃する前にやることであるので、下手をすれば、国際法違反ということになり、国際的には窮地に立つというリスクも伴っている。イスラエル以外の通常の国がこれを実施することは困難だろう。

しかし、イスラエルは、たとえリスクを伴っても、国民を守るためには、常に先手を打つことが必要だと、これまでに痛いほど体験して学んだのである。

これから15年、20年先、ヤディン氏が警告したようにイランもまた核保有国になるのか、それまでにイスラエルがイランを攻撃して対処してしまうのか。イスラエルは、危険が明らかになれば、躊躇しないだろう。これから先、イスラエルがどう出るのか、注目されるところである。

*北朝鮮危機への対処:イスラエルの視点

イスラエルは、隣国からのミサイル攻撃には慣れている。北朝鮮の度重なる挑発的なミサイル実験について、イスラエルの視点ではどう見ているのだろうか。INSSのアモス・ヤディン氏は、北朝鮮の挑発を止めるためには、ミサイルの発射地を、だまって(奇襲)、事前に攻撃することが必要だと語る。

その際には、北朝鮮が現存するミサイルを一つも残さず、一気に全部壊滅させなければならないと警告する。一つでも残せば、それを使って韓国や日本、アメリカにまで核兵器を撃ち込んでくるからである。

しかし、今のアメリカが北朝鮮のすべてのミサイル発射地を把握しているとは考えられず、もしアメリカと北朝鮮が、本当に戦争になれば、最も被害を被るのは、韓国や日本だとヤディン氏は警告する。

しかし、この問題は、イスラエルとヒズボラの問題にも当てはまる。レバノン南部のヒズボラは、すでに15万発ものミサイルをイスラエルに向けて配備している。

ヒズボラとの戦争になれば、ヒズボラが危険なミサイルをイスラエルに撃ち込んでくる前に、できるだけ早く、南レバノンを一気に、一掃してしまわなければならない。その際、そこにレバノン市民がいるなどと考慮している暇はないだろう。

同様に、もし、今アメリカと北朝鮮が戦闘に入った場合、アメリカと韓国は、一気に北朝鮮を一掃してしまうような大攻撃を行わなければならないだろう。この際、日本はどうしているだろうか。

日本も核保有国になるのか、少なくとも、アメリカの核兵器を受け入れるようにするべきなのか。石破元防衛相が問題提起しているように、核の問題を、論議をしていかなければならない時代に来ているようである。

www.jpost.com/Israel-News/Ex-IDF-Intelligence-Chief-Trump-should-strike-preemptively-in-NKorea-504086

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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