首相交代になるか?:ネタニヤフ首相起訴前最終聴聞終了 2019.10.9

<第22国会就任>

10月3日、9月17日の総選挙で選ばれた120人の議員からなる第22クネセット(国会)の就任式が行われた。同様の就任式は5ヶ月前にも行われたが、すぐに解散総選挙となったのであった。

就任式には、ネタニヤフ首相、ガンツ氏、リーバーマン氏、ユダヤ教政党党首たちなどが一堂に会し、就任式にのぞんだ。アラブ系議員は、北部でアラブ人のボイコット運動があったため欠席。リブリン大統領は、違いを乗り越え、政権を立ち上げるよう要請するメッセージを語った。

国会議長のユリ・エデルステイン氏は、「ユダヤ人の国は政府の立ち上げに2回も失敗した。また失敗して3回目の総選挙になるようなことになれば、国民は我々を赦さないだろう。」と語り、分離ではなく、ともに政府をたちあげるようにと語った。

www.timesofisrael.com/at-knesset-swearing-in-rivlin-urges-lawmakers-to-shed-politics-of-division/

<連立政権の見通し立たず>

国会の就任式は終えたものの、肝心の連立政権はまだ立ち上がっていない。

リブリン大統領から、連立立ち上げの指名を受けたネタニヤフ首相は、ブルーアンドホワイトのガンツ氏との交渉したが失敗。リーバーマン氏との交渉にも臨んだが、合意を得ることはできなかった。すぐにも指名を返上するのではとも言われていたが、今の所、返上はしていない。

しかし、このままでは何も動かないため、ネタニヤフ首相は、リクードの党首選挙を示唆。これでリクードが再びネタニヤフ首相を党首に選べば、ネタニヤフ氏は強気で連立立ち上げに臨める。

ところが、ネタニヤフ首相は、すぐにこれを撤回した。リクード内部では最強のライバル、ギドン・サル氏(52)が、もし党首選が行われるなら「出馬する用意がある。」と表明したからである。

今後、もしネタニヤフ首相、続いてガンツ氏も連立政権を立ち上げられなかった場合、国会が首相を選ぶことになるが、その場合、可能性が出てくるのがサル氏と目されている。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5604531,00.html

ともかくもイスラエル政府が例祭の休暇に入ったことと、ネタニヤフ首相の聴聞が始まったことで、この件は、一時おあずけ状態になっているが、3回目総選挙の可能性はまだ残されている。

<ネタニヤフ首相の起訴前最終聴聞終了>

国をあげての悔い改めスリホット中、また次の連立交渉が進むと同時に、ネタニヤフ首相を起訴するかどうかの最終聴聞が、司法省で4日間行われた。これにより、マンデルビット司法長官が、ネタニヤフ首相を起訴するかどうかの最終決定と行う。

ネタニヤフ首相の弁護チームがめざすのは、まったくの不起訴ではなく、司法長官の起訴状が、収賄から背任(もっと悪いように聞こえるが。。)などに軽減することである。

ネタニヤフ首相の汚職疑惑は、現在3件あるが、最初の2日間の聴聞は、ケース4000(通信会社ベゼックにビジネス上の便宜をはかる見返りとして、そのメディア・ワラにネタニヤフ首相に有利な記事を書かせた疑惑)についてが話し合われた。

首相側弁護士代表はラム・カスピ氏。対する国家検事は、シャイ・ニツァン氏と副検事のベン・アリ氏。女性検事のベン・アリ氏は、前オルメルと首相を有罪にした強者である。

次に2日間延長して、ケース1000と2000についての聴聞が行われた。ケース1000は、ネタニヤフ首相夫妻が、アメリカの億万長者らから、非常に高価な贈り物を多数受け取っていたという疑惑。(例 27万7254シェケル(800万円以上)分のシガー、19万9819シェケル(約600万円分のシャンパンなど)

ケース2000は、大手メディアのイディオト・アハロノトとイスラエル・ハヨムに、知人を通じて、首相に有利な記事を書かせていたという疑惑。

この中で、問題として残るのは、おそらくケース4000とみられている。

マンデルビット長官は、早ければ来週、少なくとも12月までに起訴に関する決定を行うことになる。ややこしいのは、この決断と連立交渉が並行しているということ。もし起訴が決まれば、ネタニヤフ首相の政治生命は終わることになるが、そうならない可能性もまだ残されており、まだまだ先行きは不透明。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。