米フロリダ州でマンション崩壊:イスラエル人含むユダヤ人20人以上不明 2021.6.25

倒壊したビル Chabad (Photo: Miami-Dade Fire Rescue)

フロリダ州マイアミで12階マンション崩壊

24日深夜1時30分、アメリカのフロリダ州、マイアミで、12階建マンション、チャンプレイン・タワーが突然、大崩壊した。崩壊した部屋は55室とみられる。

これまでに1人の死亡が確認され、35人が救出されたが、まだ建物にいたとみられる99人と連絡が取れてない。連絡がとれない人のうち、20人以上がユダヤ人で、中にはイスラエル人も含まれているとみられる。

この地域に大きなシナゴーグを展開する超正統派組織ハバッド派は、ヘブル語の名前を持つ23人と連絡がとれないとして、そのリストを公開し、祈りを呼びかけている。また、住居を失った家族を保護するとともに、被災者への緊急支援金の募集を始めた。

www.chabad.org/news/article_cdo/aid/5170108/jewish/At-Least-One-Dead-Many-Trapped-as-Condominium-Collapses-in-Surfside-Fla.htm/fbclid/IwAR0CsaEzyY0kCe9QSZ4waIGTBn9hEnh__0cPrtdpEEX7tNA6AhUandMt62g#utm_source=facebook&utm_medium=social&utm_campaign=fb_en

建物は、文字通りぺったんこになっているので、生存者を探し出すことはもはや絶望的とみられているが、現場では、現在も、60-75人の消防隊による必死の救出活動が続けられている。

その中で、奇跡的に子供が救出されたとか、ある女性は子供とともに救出されたが、足を切断しなければ、がれきから救出できなかったなど、悲惨な様子が伝えられている。

以下は、10階にいた夫と連絡をとろうとしてとれないままだという夫人。

また、ある夫妻は、アルゼンチンでの新型コロナの感染拡大を受けて、アメリカに来ていたが、この夜、下の娘がこのビルの知人宅に遊びにきていて、被災したとみられる。

夫妻は何時間もこの知人と連絡を取ろうとしているが、まだ連絡がつかないという。夫妻の心を思うとあまりにも厳しいものがある。
現場では、ユダヤ教のラビたちが、心理的霊的ケアにあたっているという。

www.timesofisrael.com/many-members-of-jewish-community-feared-among-99-missing-in-miami-condo-collapse/

ビル倒壊の原因は?安全性確認不足か

ビルの倒壊の原因はまだ明らかではないが、このビルのように、海に直面しているビルは、傷みが激しいので、より慎重なメンテナンスが必要になる。
このビルは、築40年で、今年安全性の確認登録の更新が行われることになっていて、多数の修理が予定されていたところだったという。

しかし、このビルでは、2015年の時点で、すでに住民の一人から、ビルの構造的な問題や、メンテナンスの不徹底を法的に訴えられていた。ニューヨークタイムスは、この他にも、このビルの安全性を疑問視していた人の声を報じている。

www.nytimes.com/2021/06/24/us/miami-building-collapse-survivors.html?action=click&module=Top%20Stories&pgtype=Homepage

イスラエルから救急隊派遣

イスラエルのラピード外相は、地域のユダヤ人コミュニティと連絡をとっている。正統派ユダヤ教政党のシャス党のデリ党首も、現地と連絡を取り合っているとのこと。

イスラエルからは、救急救出隊のユナイテッド・ハズバラから、緊急事態における心理ケアのチームが、現地に派遣されることとなった。

家族を失ったり、重症を負った人や、その目撃者などへの心理的外傷に対応する。ユダヤ人だけでなく、幅広いコミュニティで活動するとのこと。

チームを導くのは、ネパールやハイチ、日本の東日本大震災の時にも救急隊として活躍したドーブ・マイサルさん。先月のメロン山での将棋倒しでも働いたとのこと。

www.jpost.com/diaspora/israels-united-hatzalah-sends-support-to-victims-of-condo-collapse-672011

正統派たちに降りかかる倒壊事故について

ユダヤ教超正統派たちは、ここしばらく、こうした倒壊事故で多くの犠牲者を出している。今年4月のラクバオメルでは、メロン山での将棋倒しで45人が死亡。その2週間あまり後の5月シャブオットの時、エルサレム郊外ギブアット・ゼエブでは、礼拝中に座席の一部が倒壊し、2人が死亡した。

この事故については、事故後40日たった24日、負傷して治療を受けていた39歳のラビ・エリヤフ・カーペルさんが死亡し、この事故による死者の総数が、3人になったところである。

www.timesofisrael.com/40-days-after-disaster-synagogue-bleacher-collapse-claims-third-fatality/

今回はアメリカではあるが、今回も多くのユダヤ教関連の人たちに災難がふりかかった形である。神を礼拝している人々をねらいうちするかのような災難が続いている流れである。

家財道具でも一つが老朽化すると、どれもだいたい同じ時期に買い揃えた場合が多いため、一気に買い替えなければならなくなったりする。今、古い建物などは、安全性を確認する必要な時期に来ているのだろうか。

今、さまざまな分野で新時代が始まろうとする中、建物もまた、なにかの区切りにさしかかっているということなのかもしれない。

この事故で、メンバーを失ったとみられるユダヤ教ラビのシャロム・リプスカルさんは、CNNのインタビューで、「私たちの理解を超えた出来事だ。でも我々は受け入れ、そして学ばなければならない。それが私たちの(ユダヤ教)文化なのだ。受け入れそして前進する。試練が私たちを引き止めることはない。」と語った。

www.timesofisrael.com/jewish-groups-scramble-to-help-after-condo-collapse-amid-grim-search-for-missing/

石のひとりごと:ユダヤ教に学ぶこと

ユダヤ人の苦難への対応には、いつも学ばされている。ありえないような苦難に見舞われた時は、無論、ユダヤ人でも神への疑問はあるだろう。しかし、最終的には、多くの人が、それで神の存在を疑うとか、信仰を離れるとか言うことに繋がっていかないというのがユダヤ教だと思う。

希望した通りの守りや祝福がなくても、神は神。主は与え、またとられる。その背後にある理由は人間には全部わからないと考えるのである。だからこそ、ユダヤ人は災難にあっている同胞には、できるだけのことをしようとするのかもしれない。

しかし、この事故による被災者では、ユダヤ教でない人々も多数いる。そういう人たちに、十分な物的、精神的、霊的ケアはあるだろうか。あまりに突然の大被害。大喪失。家族も家もすべてを失った人々を神がどうか、あわれんでくださるようにと、今は祈る他ない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。