東エルサレム在住パレスチナ人ジャーナリスト:スヘア・オトマン氏インタビュー 2021.4.28

東エルサレムに在住するジャーナリストのスヘア・オトマンさんに、一般のパレスチナ人は、コロナ情勢も含め、今のパレスチナ情勢をどうみているのか聞いてみた。スヘアさんは、ユダヤ人団体が運営する、主に外国人記者たちの取材活動を支援する団体で働いている。職場ではユダヤ人とともに、パレスチナ側の取材支援を行っている。

スヘアさんによると、東エルサレムの住民は、イスラエルの管轄にあるので、イスラエル人と全く同じようにワクチンの接種を受けることができたとのこと。スヘアさん自身も今年2月に接種を終えている。メディア関係なので、仕事にはなんの影響もなく、継続できているとのこと。

エルサレム市内は、もうほとんど以前と同じ様子になりつつあるが、外国人観光客はいない。旧市街で、「1ダラー、1ダラー」と土産物売り場を経営していたパレスチナ人たちの生活が気になっていたが、スヘアさんによると、エルサレム市役所やイスラエル軍が、食料、医療など全てをカバーしているので、大丈夫とのことであった。彼らの生活支援は全く全て、イスラエルから来ており、パレスチナ自治政府からの支援は、全くないとのことであった。

ならば、イスラエルに感謝があるのではと聞いてみたが、それと、政治的問題は別だとのことであった。スヘアさん自身は、先週あったような暴力行為には反対なのだが、ユダヤ人に対する暴力となると、それが悪いことだとの意識が、パレスチナ人の間では、“残念ながら”まだ低いと語る。それほど、イスラエルに対する憎しみは深いということである。敵に支援してもらっても、それが感謝になるということはまだ、ないということである。スヘアさんが「残念ながら」と言っていたのが印象的だった。

自治政府について、市民たちは、「変化を求めている」とのことであった。人々は汚職まみれの自治政府に飽き飽きしており、そろそろ若手の政治家に変わって欲しいと願っている。それが、今回の選挙への大きな関心になったとのこと。今回は、多くの若手が立候補しており、人々はそれぞれ支持するグループに投票できると期待しているとのことであった。

実際、ソーシャル・メディアで、自治政府の腐敗を指摘するパレスチナ人活動家もいる。ファディ・エルサルマンさんもその一人である。記者会見で、ファディさんは、ファタハから死の警告を受けているとのことであった。それなりの自由はあるということかもしれない。

www.facebook.com/Fadi.Elsalameen/

選挙が延期になった今、パレスチナの市民たちがどのように反応するのか、平穏を祈りつつ、注目するものである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。